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2009年10月19日

問屋半減?アメリカの中間流通?

昨日、BSで大リーグのニューヨークヤンキースの試合を見ていたら、観客は分厚いダウンジャケットを着ていた。2週間くらい前から寒くなり、今年はアメリカ東海岸もヨーロッパも本当に寒い。秋がなくて、急に冬になったようだ。

2週間前、コロンビアの展示会に行く前後、アメリカに立ち寄って流通事情を見てきた。だいたい5年ごとに見ているのだが、前回と比べて変わった点は以下の通り。

インターネット花店の伸びは大きい。特にナンバーワンのProflowersは1ドル=100円換算で、開業10年目にしてもう350億円の売上があり、有機野菜や有機いちご、あるいはオリーブのバージンオイルが120?130億円あるから、もうすぐ500億円と毎年二桁成長している。もちろん他のインターネット店も伸びてきている。1-800Flowers.comやFTD.comなどである。専門店の数は5年前と比べると2/3?半分くらいになっている。同様に街の角々にあったコンビニ的なグローサリーショップの花売場は激減している。その代わり、スーパーマーケットやディスカウントストアの花売場は充実してきており、インターネット花店が「7daysギャランティ」、「10daysギャランティ」をしているし、スーパーで花保ちを保証しているところも増えてきた。

アメリカは日本のような卸売市場がないから、たとえばニューヨークであればブロードウェイの98丁目や99丁目、中南米の花の集散基地マイアミや他の都市でも多くの問屋があった。しかし小売店が少なくなったり、個人店のグローサリーショップがなくなったりで半減している。
小売店舗ではこのようにインターネット花店やスーパーのディスカウント花店が増えたわけだが、もう一つ増えたのが倉庫運送の物流業者だ。マイアミやアトランタなどに代表される物流基地で、物流業者が鮮度保持や水揚げまでして、商物分離の物流業務を担っている。まさにサードパーティーロジスティックとはこういうものであるかと感心させられるほど、コンピュータネットワークに基づききめの細かい鮮度保持とピッキングシステム、そして配送網を作っている。アメリカのアメリカたる所以だ。生産性が高い。英語を話せない人たちを使って、これだけの生産性を確保するわけだから、花束やアレンジを加工しているブーケメーカーが「美」を作っていると言うよりも、物流作業の一環として作っており、高い生産性を確保しているのも頷ける。これがヨーロッパや日本とちょっと異なる点だが、生産性は本当に高い。DHLやUPSに代表される高速宅配網。日本では知られていないが、その質に勝るとも劣らない請負倉庫物流業者たち。本当にアメリカは花の分野でオランダとは違う成長の仕方をしている。

最後にいくつかファーマーズマーケットを見たので報告しておく。花では世界最大のチューリップ生産者や枝切フリージア生産者はアメリカ人である。それはオランダから農業をやりに引っ越してきた人たちで、優秀な農場経営者が5人いる。いずれもカリフォルニア人。今まで球根類の生産はアメリカであまり行われていなかったから一挙に拡大した。ちょうど日系人の内田さんが胡蝶蘭の最大の生産者になっているように(ニューヨークの花屋さんの1/3の売り上げは胡蝶蘭ギフトではないかと言われている。そのくらいニューヨークでは胡蝶蘭ギフトが大切になっている)、球根切花、とりわけチューリップとアイリスはオランダ系アメリカ人のお手の物となっている。

サンノゼだと冷涼だから作ろうと思えば1年中作れるかもしれない。ラナンキュラスもアメリカでの生産は大きい。そういう風に花も野菜も苗物も取り扱うファーマーズマーケットが各所にある。花で有名なのは、アメリカで花のトレンドをリードするフィラデルフィアとボストンの近辺。自分で生産していないものも多いので問屋で仕入れたものや問屋が出店しているものが大人気。新しい傾向のものが売れるという。どちらかと言えばファーマーズマーケットは会員制のディスカウントストアのような感じでアメリカでは受け止められている。政府も援助しており、日本のようにきめの細かいサービスはないが、ドーンと盛りだくさんの量を買っていく人にはありがたいカテゴリーの店である。これもアメリカで問屋が少なくなっている原因だ。中間流通業者である我々もどうすれば消費者と生産者、消費者の代弁者である小売店に役立てるのか、新しい機能を考えてやっていかないと、今の時代、中間流通ほどお荷物になる。中間流通がコスト高の原因だと言われたのでは困る。長い目で見て、まず消費者利益を、次に生産者利益を考えて仕事をすることが我々の役目だと、アメリカの流通事情を見てそう思った。

投稿者 磯村信夫 : 2009年10月19日 00:00

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