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2010年4月26日

保証と説明責任を生産者は行ってほしい

丸の内フラワーウィークスの市場協会青年部のせりは毎年熱気を帯びてきて、今年で3回目だが、年々楽しみにしてきてくれている人がいる。産地の協賛を得て展示やせりを行った。丸の内フラワーウィークスは成功裏に終わったが、今年は足利の藤のつぼみが硬くて展示を1週間延長し、今週末まで飾ることになった。

ゴールデンウィーク中の花の需要は5月1日のスズランの日に始まる。フランスではスズランをプレゼントすると幸せになると言われ、メーデーの日にはたくさんのスズラン売りが街頭に立つ。スズランは今ようやく東京周辺で花をつけ始めたところなので、主産地の長野県や北海道のスズランは残念ながら二週間ほど遅れて出荷される。スズランの日が終わると端午の節句に向けて花ショウブと、お風呂や玄関口、あるいは屋根に飾られる香りの良い葉ショウブの需要期に突入する。これも発育が遅れており、期間中は例年の80%の出荷だ。それが終わると母の日でカーネーションの切花や鉢物、アジサイやクレマチスの鉢物など母の日は花のプレゼントの日となっている。それもカーネーションのように日光が大好きな植物は温室の中が暖かくても咲いてこないので、作付けの80%しか出荷できないと生産者は嘆いている。
これらの需要期の時に、生産者は送り状や箱にどのような前処理をしたか、いつ出荷したかなどをメッセージとして買い手に伝える必要がある。またバラなら開花保証、他の花なら1週間花保ちするなど、可能な限り花持ち保証のメッセージもほしいところだ。生産者は作るだけからメーカーとしての事務仕事をきちんとできるようにしてほしい。それが需要期で欠かせないこととなっている。今後ともカーボンフットプリントや栽培履歴など見える化が必要になっているので、事務量は増える。農協の花き部会やグループの出荷団体などで早く検討し、2010年は見える化のメッセージを市場を通じて小売店にパスしてほしい。小売店は責任を持って消費者に伝える。これは農水省花き振興室がこのたび発表した日本の花き産業の振興策によるものであるが、世界の大きなうねりになっていることでもある。

今までどちらかと言うと環境について協力的でなかったアメリカは、オバマ政権になってこれまでカリフォルニア州だけが取ってきた環境や緑に出してきた補助金を積極的に出してグリーンニューディールにふさわしい新しい方向に社会を引っ張っていっている。オバマ政権と言うと、何もシリコンバレーの後見人だけではない。“新しいこと”、“グローバル”この2つが中心になって世界でリーダーシップを握っている。情報産業だけでなく、これは農業花き産業においても同様であると思っていただきたい。オランダの陰に隠れてアメリカの花き産業からのメッセージがあまり日本に伝わってこないように思えるが、確実にリーダーシップを取ってきている。これは世界のうねりになっている。環境を改善し、住みよい社会を作っていく花の産業。そのためには見える化を行い、適切に産物が消費者に評価される仕組みを作ることが欠かせないのである。この需要期に忙しくても日本の花の作り手がやっておくべきことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月19日

オランダから荷が来ない

復活祭の需要期が終わっていたので相場は落ち着いていたものの、話によるとアメリカの東海岸の入荷はオランダからの供給が途絶え、偏った荷姿となっているようだ。アメリカでは西海岸から東海岸へ飛行機で輸送する時間と、オランダからアメリカの東海岸へ出す時間とそんなに変わりない。アメリカの相場はボストンやフィラデルフィアのマーケットが建値を作る。この2つの都市は歴史ある町として、花の消費も活発で美意識も強く、素材にこだわるのも一つの特徴となっている。
日本でもアマリリスやヒヤシンスの切花など、オランダからの荷がないと困る品目がある。また国際分業しているので、ケニアやエチオピアのバラ生産会社はヨーロッパに向けて出荷できないので困っていると言う。アメリカに卸売市場があれば出荷先を変えることもできようが、アメリカは契約取引のマーケットや問屋がまとまってその地域にあるというだけだから、アフリカの生産会社は出荷できず花を捨てざるを得ないと嘆いている。
インドのバラ生産会社はヨーロッパ向けだけではなく、日本の輸入商社と取引があるから、ヨーロッパ向けのものを可能な限り多く日本で捌いてもらうよう話しをする。バラは5本に1本か4本に1本は海外から輸入されたバラで、国産と海外産地のものとの棲み分けが進みつつある。困ったときはお互い様なので、このままヨーロッパの空港の閉鎖が続くのであればインドのバラをどのように販売促進していくか、打ち合わせをしていく必要がある。

話題をもう一つ。東京地方も40年ぶりの遅い雪で、一都六県でも成りものに大きな被害が出ている。先日も水戸に行った折、梅が結実していないのを見て残念に思ったが、今ちょうど桃や梨の花の時期になっているから、今年の秋だけではなく来年までもこの天候不順は我々に大きな影響を与えそうだ。もうすぐ母の日で寒さと日射量不足からカーネーションの切花や鉢物、バラあるいはアジサイなど遅れが目立つ。年度末にバラの切花価格が高騰したが、その後一週間余り経って遅れていたものが出荷されて価格は急落した。需要期が終わって出荷されては誰も得をしないが、今年の母の日はこのまま行くと供給量が切花・鉢物とも前年を下回る。どこまで硬い切前で出荷できるか、プレゼントだから見栄えが必要だが、今年はやや硬い切前で出荷せざるを得ないので、切前について小売店と打ち合わせて、需要期中に量を確保する算段をしなければならない。景気は緩やかだが最悪期を脱しつつあり、自然災害を極力業者間の友好関係で解決し、乗り切っていきたいと考えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月12日

一つの花き業界の未来

株価が上がってきた。実体経済を7?8ヶ月先取りすると言うから、本年度の下半期は楽しみだが、経済実態からすると上がりすぎているように思う。鉱工業指数を見ると、アメリカ、ヨーロッパ、日本ではいずれも2000年から2003年レベルで、ピークと比較するとアメリカでマイナス10%、ヨーロッパと日本ではマイナス15%以上となっている。花は個人消費関連であるが、社団法人日本花き卸売市場協会の調査によると2007年度比で取扱金額がマイナス10%であるものの、実感からすると2008年度、2009年度でそれぞれマイナス10%のエスカレーターに乗っている感じであった。本年はというと確かに昨年暮れから、切花はデフレを脱却しつつあるように思うが、鉢物は依然厳しい。全体からするとマイナス5%のエスカレーターに業界全体が乗っているような感じがする。

近頃売れ方を見ていても、安くて良い花が売れる、あるいは安くて良い花を売っている店が繁盛する傾向は基調であるが、高級品でも昔に比べ少し安くなっているブランドの花店も売上が戻ってきた。結婚式も葬式も店売りも二極化しているが、そのメリハリが出てきたことは大変喜ばしい。

昨日も消費動向の実態を見に、御殿場のアウトレットに行ったが、日経新聞が報じるように中高年は消費意欲が旺盛で、30歳以下の若い人たちはその割りではなく、ファストファッションに流れているようだ。花もファストファッション的にラッピングを取ると寂しくなるような花も、手頃な小売価格であれば若い人を中心によく売れている。年配者はそういう店では買わず、本店格の地域一番店で素材がしっかりした価値ある花を買う。このようにメリハリがついてきたわけだ。

定点観測をして買い物動向を見ると、確かに二極化したメリハリの利いた消費となってきていることが分かる。この先日本人はドイツ人のようになるであろうか。花だけでなく、あらゆる消費についてドイツ人は賢い消費者である。率直に言ってケチだ。だから好不況にあまり左右されない消費金額になる。オランダからの花の輸出はイギリスや南ヨーロッパなどが2007年度まで良かったわけだが、2008年からドイツが久しぶりにNO.1に戻った。それはドイツ人のドイツ人たるところだ。日本がこのようになるのかと言うと、一部に江戸時代を恋しがっている学者や評論家がいるが、今はそうならない。もっとアメリカ的で、ややもすると少し浪費気味だ。しかしもったいない精神もある。このバランスの取れた落ち着きどころに、どのように消費生活を持っていくかは、広く国内の所得政策や税制をも考え合わせて議論すべき時期に来ている。プラグマティックに言って、幸せとは欲望分のお金ではかることができる。所得政策や税制まで行くと、中期計画にならざるを得ない。短期計画では花き業界も他産業と同様にガラパゴス化を払拭することだ。海外に出て行って、その国の国内消費を喚起させ、ビジネスすることである。花き業界にとってはそうなると当然、この東アジアの台湾や韓国、中国、香港に進出することになる。そして一番の中心地はASEANの花文化の中心地であるタイだろう。日系企業も多く、お互いに国民同士も認め合い、良い関係の国だ。その国で政治的混乱が続いており、その中で日本人ジャーナリストが死亡した。日本の花き業界の積極的な投資とタイの政治的な落ち着きが、結局東アジア、東南アジアの安定と日本の花き業界の富をもたらすと考えるのは私一人ではあるまい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年4月 5日

関心が卸売市場にも

先月末、築地市場の豊洲移転について東京都の予算が都議会で条件付ながら可決され、農業だけでなく卸売市場についても社会の関心が高まってきた。

ジョージ・ソロス氏は今世紀最大の投機家として有名で、大変アカデミックな人であるが、ソロス氏は学説に反し市場は非効率なものとしている。この場合の市場はいわゆるヘッジファンドの市場の意味でもあるが、世間と読み替えてもよいと思う。世間ではあらゆるモノに価値や価格発見があるわけだが、それがいつも偏った見方がされているのが現実のマーケットで、その中でこそアカデミックなソロス氏が必ず投機を仕掛け、そしてソロス氏の思うようになっていったとき、利益を生んできたのである。卸売市場もことほどさようで、車の走る道路は直線でもよいが、人間の歩く歩道ほどくねくねしていたほうがよい。曲線こそ本来揺らぎを持っている人間の快適さをもたらす。人間万事塞翁が馬やら、禍福は糾える縄の如し、流転したり揺らいだりしていっていることへの教えは多い。契約取引は安定した収入をもたらすサラリーマンと同じように、漁業者も農業者も必要だと思われる。そういうことから市場流通・市場外流通を問わず生産の一定割合を契約取引にすることは必要であろう。大面積の農場は生産会社として命令が行き届く、あるいは契約の通りになるが、漁業協同組合や農業協同組合は商店街と同じか商業ビルに入っているテナントと同様だから、多様な意見があり契約の履行が徹底しにくい。今の漁協や農協の生産部会はボトムアップ型であり、決してトップダウン型ではない。トップダウン型の意識をさらに強く持っていかないと目的を持った組織として契約取引を中心に行うといったことが出来にくい。だから国内の野菜の場合、現在90%以上が代替品を素早く調達できる卸売市場を経由しており、花の場合は国内の切花、輸入された切花、鉢物、苗物、これらの85%も卸売市場を経由して店頭に並んでいる。作るに天候、売るに天候、そして保存が利かない生ものや生きているものをすばやく消費者に届けるのが生鮮食料品花き流通の役目だ。「卸売市場は朝が早い仕事」、これはせりが中心の商いだったときのこと。専門店は消費者が夕飯のお買い物のときまでに今日の荷を陳列しておけばよかった時代の話である。開店のときに今日の売る品を全部を揃えていたいとする量販店の要望があった。鮮度でそれに負けてはならないとする専門店の心意気もあり、市場は24時間の仕事となった。もし卸売市場が寝るときがあるとすれば、お昼から15時頃だけであるだろうか。しかし営業の社員は翌日の販売のためにその前に出社し、情報を仕込んで販売に備える。このように宅配便業者よりもスピーディーに休みなしに荷を集散させてゆけるのは卸売市場だと自負している。不安定なマーケットの中で業界が健全に維持されうる範囲の中で卸売市場は価格を発見し、値付けして、品揃えをして流通させている。第九次卸売整備計画でグローバル時代にふさわしい日本の卸売市場として規制緩和を行い、新しいルール付けをすることによってより効率的な運営が出来るようにする必要がある。市場にいる卸や仲卸は3分の1近くが赤字に陥っているが、これは非効率さを残している証と言える。ステレオタイプである卸売市場を多様性を認めた卸売市場にしていき、地域社会に貢献するときである。このまま変わらなければ生産者と卸売市場は共倒れになる可能性を含んでいる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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