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2010年4月 5日

関心が卸売市場にも

先月末、築地市場の豊洲移転について東京都の予算が都議会で条件付ながら可決され、農業だけでなく卸売市場についても社会の関心が高まってきた。

ジョージ・ソロス氏は今世紀最大の投機家として有名で、大変アカデミックな人であるが、ソロス氏は学説に反し市場は非効率なものとしている。この場合の市場はいわゆるヘッジファンドの市場の意味でもあるが、世間と読み替えてもよいと思う。世間ではあらゆるモノに価値や価格発見があるわけだが、それがいつも偏った見方がされているのが現実のマーケットで、その中でこそアカデミックなソロス氏が必ず投機を仕掛け、そしてソロス氏の思うようになっていったとき、利益を生んできたのである。卸売市場もことほどさようで、車の走る道路は直線でもよいが、人間の歩く歩道ほどくねくねしていたほうがよい。曲線こそ本来揺らぎを持っている人間の快適さをもたらす。人間万事塞翁が馬やら、禍福は糾える縄の如し、流転したり揺らいだりしていっていることへの教えは多い。契約取引は安定した収入をもたらすサラリーマンと同じように、漁業者も農業者も必要だと思われる。そういうことから市場流通・市場外流通を問わず生産の一定割合を契約取引にすることは必要であろう。大面積の農場は生産会社として命令が行き届く、あるいは契約の通りになるが、漁業協同組合や農業協同組合は商店街と同じか商業ビルに入っているテナントと同様だから、多様な意見があり契約の履行が徹底しにくい。今の漁協や農協の生産部会はボトムアップ型であり、決してトップダウン型ではない。トップダウン型の意識をさらに強く持っていかないと目的を持った組織として契約取引を中心に行うといったことが出来にくい。だから国内の野菜の場合、現在90%以上が代替品を素早く調達できる卸売市場を経由しており、花の場合は国内の切花、輸入された切花、鉢物、苗物、これらの85%も卸売市場を経由して店頭に並んでいる。作るに天候、売るに天候、そして保存が利かない生ものや生きているものをすばやく消費者に届けるのが生鮮食料品花き流通の役目だ。「卸売市場は朝が早い仕事」、これはせりが中心の商いだったときのこと。専門店は消費者が夕飯のお買い物のときまでに今日の荷を陳列しておけばよかった時代の話である。開店のときに今日の売る品を全部を揃えていたいとする量販店の要望があった。鮮度でそれに負けてはならないとする専門店の心意気もあり、市場は24時間の仕事となった。もし卸売市場が寝るときがあるとすれば、お昼から15時頃だけであるだろうか。しかし営業の社員は翌日の販売のためにその前に出社し、情報を仕込んで販売に備える。このように宅配便業者よりもスピーディーに休みなしに荷を集散させてゆけるのは卸売市場だと自負している。不安定なマーケットの中で業界が健全に維持されうる範囲の中で卸売市場は価格を発見し、値付けして、品揃えをして流通させている。第九次卸売整備計画でグローバル時代にふさわしい日本の卸売市場として規制緩和を行い、新しいルール付けをすることによってより効率的な運営が出来るようにする必要がある。市場にいる卸や仲卸は3分の1近くが赤字に陥っているが、これは非効率さを残している証と言える。ステレオタイプである卸売市場を多様性を認めた卸売市場にしていき、地域社会に貢献するときである。このまま変わらなければ生産者と卸売市場は共倒れになる可能性を含んでいる。

投稿者 磯村信夫 : 2010年4月 5日 00:00

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