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2010年5月31日

30歳のスタート

先週、社団法人日本花き卸売市場協会の総会が愛媛県松山市であった。協会全体138社で2009年の取扱金額が4,000億円少しと、1998年からすると1,500億円あまり減った。3分の2近くになった最大の理由は単価の下落である。日本の経済問題と人口動態の問題から花の単価が下がった。今年もまだ物価は下がっている。1980年代の後半に始まったバブル経済のときですら、ニットなどの繊維産業は賃金の安い海外へ発注先を移し、空洞化した。チューリップやユリで有名な新潟の五泉や小出、そしてバラで有名な寒河江の地場産業はほとんど倒壊した。長く国内に踏みとどまっていた自動車産業も2015年までにかなり空洞化する予定となっている。外資の日本への投資は少なく、日本をウィンブルドン化するのは金融業ですら難しい。今年は40兆円の国債を出さざるを得ないが、これは消費税を15%以上にしたとき得られる金額であり、日本国民が消費税を先食いしている格好だ。生産者も消費者も小売店も高齢化してきており、それは花も同様だ。地方は昔からの農業・地場産業と工場、公共事業の三本柱で運営されていたが、この10年で公共事業が少なくなり、工場が海外に移転して、農業に期待が集まったが、米を始めとする農産物価格の下落で地方経済がうまく回っていかなくなった。とりわけ2003年、BRICsの言葉が生まれ、大国でも新たな経済力を身につけた新興国が経済発展とともに自信を付け、G7、G8ではなく、G20でないと世界経済の話し合いもできない状況になった。今また新たに*VISTAという言葉も生まれ、グローバリゼーションの中でさらに良くて安いものが産出され競争は激しくなった。日本は新しいものを作り上げていく研究開発力とそれを普及させていくことにポイントをおかないと生きていけない状況になっている。

*VISTA...ベトナム、インドネシア、サウスアフリカ、トルコ、アルゼンチンなどが新興国として注目を集めている。

新しいことを考え、積極果敢に行動していくためには意欲が欠かせない。パフォーマンスは「意欲×スキル」だから、日本のようにスキルはあっても意欲が減退している限り、パフォーマンスは上がらない。若いとスキルはまだだが意欲はある。しかし日本は人口動態から見ても分かるように若者の数は多くない。移民政策は取らない方針なので、壮年になっても熟年になっても意欲を失わないように心志を養っていかなければならない。花の法人需要は3年前の半分だ。結婚式も葬式も大きくないが自分らしいものにしたいと考える。この出費も1件当たりでは、21世紀になって半分だ。日本はすでにヨーロッパと同じ花の販売環境になっているということだ。だったら我々日本の花き業者も「良いもの安く」で勘定がきちんと合うようにしていく必要がある。日本国は面積も大きいし、人口も1億人以上と多い。しかもその人たちがスカンジナビアの人たちについで貧富の差が少ない。だから今まで内向きに考えていれば済んだ。しかし1990年代、冷戦が終わりグローバリゼーションと少子高齢化、そして借金財政という内部の問題が一挙に噴出し、新たな英知とリーダーを求めている。

花の場合、進むべき道は明確に示されている。解決方針としてまずヨーロッパの卸売価格、小売価格に近づけるよう良いものを安く作り安く売り、主力を家庭用にしていくことだ。そのために種苗から生産・市場・小売まで、意欲を持って取り組んでいく。"No pain, No gain"「後楽園」の思想で意欲を持って日本の花き業界よ立ち上がれ。1980年に新しく戦後のスタートを切った花き業界は30歳になった。これから大人としての苦労をしながら、日本がこういうときだからこそ真価を示していく。我々がへこたれて花で人々を幸せにできるか!

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月24日

団塊の世代の牽引力に陰り

それだけ花が動いたということであろうか、母の日以降の花の荷動きが重い。子どもたちからプレゼントされた花をお母さんは大事に飾っているのだろう。今年はバラの切花も鉢物も母の日の需要期に出荷が間に合わなかった。そこで母の日の翌週からバラの単価は下がったわけだが、母の日でプレゼントされた花が家にあるという以外に、団塊の世代のトップを切る昭和20年生まれの人たちが65歳になって仕事を完全にリタイアし、家族によっては年金生活家族になり、支出を控える人が増えたのではないかと思われる。近頃のゴールデンウィークや母の日は第二の人生を前にした団塊の世代中心にお墓参りが活発で、90年代のように菊類が安くならず、むしろ堅調市況となっている。昭和20年生まれの団塊の世代のトップが65歳になり、仕事をリタイアし、生活スタイルが今までと変わった。もし団塊の世代が全員65歳以上になると、今でも全国の高齢者の中で三大都市圏在住者の占める割合が50%であるのに、その比率はさらに高くなっていく。貯蓄を取り崩して生活する高齢者が多いとなると一体だれに花を買ってもらえばいいのか、今から目標を定めていく必要がある。ではどういう切り口でマーケットを見たらよいのか。

花は女性が買うか買わないかを決めることが圧倒的に多いだろうから、女性の商品という切り口で見るのが良いだろう。女性は例えハウスワイフでも1人何役と忙しく活動する。忙しい女性を手助けする花を商品開発しなければならない。組み合わせを選ばなくてもいいような出来合いの花束やアレンジメント、買って帰ってそのまま飾れる花瓶付きや器付きの花束。一週間に1回や二週間に1回取り替えてもらえる活けこみサービス。事前に年間予約が出来る時間指定お届けサービス。商品にしてもサービスにしても、その女性の予算やライフスタイルに合わせた新しいサービスを開発しなければならない。ネットで受け付ける。ケータイで発注が出来るということも大切だ。年代のターゲットとしては、ここ5年で団塊の世代が老齢化した後はその頃ほとんどの女性は家族が許す限り働いているから、働く女性が花のある生活ができるよう、団塊ジュニアの家庭に花を買ってもらえるような商品や受発注システム、流通チャネルが必要となっている。

今は結婚式のとき、新婦の教養として生け花は○○流とお仲人が紹介した団塊の世代以上の人たちが花を買ってくれている。その団塊の世代が5年以内に所得が少なくなることを思うと、あせっても仕方ないが花き業界はこのままでいいはずがない。変化を求められているので少子高齢化とグローバリゼーションにあわせた対応を業界の各分野で的確にしていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月17日

打って出る

17日まで西武ドームで「第12回国際バラとガーデニングショウ」が開催されている。今年から日本ばら切花協会もこの会場で品評会を行い、バラのイベントとしてはまさに世界最大のバラ展となった。昨日は昼過ぎに西武ドームに行ったが、会場が押すな押すなの大盛況で、嬉しかった反面、もう少し空いているときに見に来ないとせっかくの苦心作が味わえないと反省した次第。賢い消費者になっているから、物販はサブプライムローン問題以前とは異なり、抱えきれないほど買っていくという人はほとんどいない。良いものを自分の家で楽しみたいと自分の分だけ買っているのが買い物行動であった。

バラ展だけではなく、東京では新宿高島屋で「マミフラワーデザイン展2010」が開催されている。今年は"クラシサク。"というテーマで、マミフラワーデザインスクールの主任教授の先生方の作品が出品されていた。こちらも混雑していて、気に入った作品を立ち止まってじっくり見るというわけにはいかなかったが、まさに見ごたえのある作品ばかりで、室内だというのに五月晴れで澄み切った空気の中を歩いているようなそんな印象を得て、足取りが軽くなった。レベルが高く新しさを発見できる花のイベントは多数の一般消費者をひきつけて止まない。今後とも大きな花のイベントは集客が得られるとの確信を持った次第である。


話は変わるが、新宿高島屋に来たからせっかくなので伊勢丹に立ち寄った。ファッションの伊勢丹は中国や韓国の人からも大変な人気を博しており、衣料品など彼らが買い物する場所としてよく知られている。大田花きの研修所が御殿場にあり、歩いて10分足らずのところにアウトレットモールがあるが、そこも中国や韓国の人たちが箱根に行った帰りに寄る場所だ。偽物の心配をしなくて良いし、本国で買うより安いからここで買うと言う。

韓国はグローバリゼーションとIT革命で、一歩抜きん出た存在になっている。アメリカやEUともFTAを結び、日本には輸出補助金をつけてバラやユリを輸出してきている。GDPの40%以上が輸出で、今後とも輸出で稼ぎ、農業は補助金政策を採っていく。アメリカと同様、世界で最も授業時間が長く、大学進学率も高い国で、スカンジナビア半島と同様、世界最高レベルの高学歴な人たちが働く国である。また中国は外資を受け入れ、国の安定は経済成長8%以上にあると行政府は考えているから、ますます経済成長に弾みがつく。中国は大きな国でアメリカと同様、所得格差が著しくなっているが、韓国はスカンジナビア諸国、日本やバルト海沿岸諸国の次に所得格差の少ない国である。しかし韓国とても21世紀になって所得格差が出てきている。

伊勢丹の話しに戻すと、女性のものは詳しくないので、男性のもので話すと、ディオールオムやドルチェ&ガッバーナなど最先端のブランドを彼らがチェックしているのを見る。アジアの中ではこの2国はグローバリゼーションに適応し、楽観的に考え、経済成長で抜きん出た存在になろうとしている。グローバル経済時代に適合した因果律で、今後しばらく躍進していくに違いないと彼らの買い物行動を見ながらそう予感した。日本はヨーロッパ諸国と同じように内向きなままで変革できなければアジアの中で取り残され、せっかく良いものをこんなにたくさん持っているのに、宝の持ち腐れで終えて衰退してしまう可能性すらあることを自覚する必要がある。これは縮小均衡になりかねない花き業界にも言えることである。MPSの資格を取る。採花日・仕入日を明示して販売する。花保ち保証をする。Walk the Talk. 有言実行。方向は示されている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月10日

消費者の母の日チャネル

昨日母の日で池上にある実家へ行った帰り、花屋さんが10軒ほどある池上通りを大森の自宅に向けて車で走っていた。午後3時頃、高校生でたぶん野球部だと思うが、坊主頭の少年がカーネーションの花束を聖火のように持って大森の方へ駆けて行った。地元に密着した花屋さんがそれぞれ忙しく、今朝仕入に来た人たちと挨拶をしても、忙しかったので疲れているだろうに声は弾んでいた。日本中の花売り場で、普段花にあまり興味がない青少年まで花を買ってくれるのは微笑ましい光景だし、今更のように日本はお母さんで持っていると思う次第である。

さて、今年の母の日はゴールデンウィークが終わってすぐということもあり、花を地方に発送する小売の役割で変化があった。その1として、事前に発送を頼む場合、消費者は最寄りのお花屋さんよりも駅中やネットで発注することが大変多くなっているということだ。街のお花屋さんは花キューピットの加盟店やフラワーシップの加盟店が多いはずなので、地元密着でここに頼んでくれれば良いのだが、自分の行動を知られたくないということか、面倒くさいのか駅の花屋さんやネット、有名花店で頼む。有名花店以外にも通販会社や宅配会社も母の日には花を扱うのでここに頼む。今年は事前発注で街の花店が受注する割合が減った。このことはゴールデンウィーク中の花の相場に大きく影響する。今年は天候不順で、国産は1、2割減であったので、相場は昨年よりも若干高かったが、この時期街の小売店は売れておらず、また発送の受注も少ないとあって、例年並の数量が出た場合には単価は下がっていただろう。

6日の木曜日からカレンダー通りで学校や会社が始まり、そこから花キューピットなどの真価が出てきた。1日前でもこのタイミングでオーダーを受けて、新鮮な花がをお届けできるのが花キューピットやフラワーシップのビジネスモデルだ。言葉を添えて花を贈る。

その2として母の日の早割を行っている店が受注を伸ばした。航空券で当たり前になったサービスを専門店もスーパーマーケットなども積極的に行うところが増えてきた。早割だけでなく、配達日も早くさせてもらったり、母の日以降にさせてもらったりすれば仕事のピークを作ることなく確実によいサービスをすることが出来るので、そうやって値引きをしている店もあった。

今年の母の日は、店売りは地元のお花屋さん・花売場。発送の花は駅周辺やネットが多くなって、かつてはコンビニが一人気を吐いた時代があったが、ネットが強くなってきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年5月 3日

わけ合えば余る

日本人が日頃良い行いをしてきたおかげで、ゴールデンウィークは今までとは打って変わって五月晴れの天気が続いている。花き業界は9日の母の日に向け、需要期の真っ最中。作柄は遅れているがお天道様が出て、出荷物は硬めながら小売店にたくさん売ってもらおうと生産者は休日返上でがんばっている。切花のカーネーションは国内産とコロンビア産が母の日向けのギフト、中国産は母の日にご仏壇やお墓にカーネーションを供える人もいて、仏花用に使われる。カーネーションは持ちがいいので、安心して小売店は販売しようとしている。しかし、カーネーションの性質からして、一時に一つの茎から2本、3本が一緒に咲くということはない。菊の切花はこれが出来るから需要量が何倍になっても供給が追いつくが、カーネーションの場合はお兄さん→お姉さん→僕→妹という順番で、時を置いて順番に開花する。もちろん需要期に合わせて作るのだが、1株から切れる本数は限りがあるので、国内カーネーションとコロンビアのカーネーション、また中国のカーネーションは補完関係にある。鉢物では母の日にはカーネーションの鉢とアジサイ、クレマチス、バラの鉢などが補完関係にある。これを競争関係と言わなかったのは、先日面談いただき、ご指導いただいた日本経営システムの方からの教えである。相田みつを氏の言葉に「うばい合えば足らぬ、わけ合えば余る」という言葉がある。母の日の需要に対し、お母さんを想う気持ちを、また大好きなお母さんの喜ぶ顔が見たいと花を贈るとき、その花が本当にもらったお母さんの気持ちや贈る人の気持ちを伝えているだろうか。いや、伝えているに違いない。

環境に適合したものが今年も人気を博す。その時「今年は○○がよく売れた」と言うが、結局は切磋琢磨し、素晴らしいライバル同志という補完関係が背景にあるのである。“One takes all”は実際の世の中ではあり得ないし、あってはならない。


第九次卸売市場基本方針が10月に出される予定だが、それに向け「卸売市場流通ビジョンを考える会」では多様な卸売市場のあり様を提案している。新幹線や飛行場でもハブ機能を元に拠点と地元で役割を分けている。何も拠点が偉く、地元が低い地位にあるのではない。役割が違うのだ。生産者と消費者を主役にこの2人が存分に活躍できる卸売市場のあり様をマーガレットホールの法則に基づき、産地、拠点、地元の3つの機能を追及した姿を提案した。青森市のスモールシティなど美しい日本を語る地方の素晴らしい取り組みがある。日本の素晴らしさは長所を生かし、困っている人を助け合って、生きがいのある生活を送ることだ。母の日の需要期に市場の取引状況を見ていると、私たち花き業界も確実にその方向に向かっていることをありがたく思う。

最後に切花のカーネーションを作っている生産者の皆さんへ。エチレンカットの前処理を十分にしてください。カーネーションはお母さんと同様、いつも元気で長生きする花だということを、消費者にもう一度認識してもらいましょう。そのためには新鮮なエチレンカット液と前処理時間に気をつけてください。品質クレームの半分はこの問題ですから。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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