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2010年6月28日

株主総会を終えて

採花日をどう表示したら良いか迷っている産地がいるとしたら、長野県の伊那大田会の会長の森田さんがやっている表示の仕方はとても簡便で分かりやすい。三段に分かれた丸い判子で一番上に採花日表示と書き、真ん中に採花日、そして一番下に産地名を書く。例えば今日のものであれば、一番上に「採花日表示」として、2行目に「6月25日」、一番下に「南信州産」としている。ハコの面の等階級と出荷者名の欄にある余白のところに判子を押す。鮮度管理に関心が深い買参人から「ありがたい」「立派」「よくやってくれた」とお褒めをいただいている。

さて、先週の土曜日の26日、大田花きの株主総会があった。今期、特に強調して発表したわけではないが、会社の進むべき方針をこのように示した。平成20年、21年と消費行動が変わり、生産状況が変化して、その対応に追われた。リーマンショックから2年目の21年度は減収増益であった。しかしこれは働く人に我慢してもらったり、設備投資を控えたりしたためで中長期的に見れば会社の成長にとって、かえって危機的な状況に思える。よって会社そのものの品質からして、平成21年を底として、平成22年度から新たな意気込みで中長期的にも発展できるようにしていきたい。防ぐべきところと、果敢に攻めていくところのメリハリを明確にして行っていく。このような目で業界や社会を見ると、まさに平成22年度は3年前と違って見える。今流行りのベストセラーではないが、世界第5位である農業大国日本をこれからどうするのか。花の分野で明確に方針を出してやっていく。いくつもあるが、その中で最も大切なことは、購買力平価で見たとき、ヨーロッパの小売価格、卸売価格と同じ価格で取引が行われるようになっても花き業界が継続的発展の出来る体質に進化させること。花束加工業者に国産品を優先的に使ってもらえるような質や量の仕組みを産地とともに作り上げることの2つである。

新たな10年が始まった。平成32年までの間に生活文化として、家庭需要とパーソナルギフトをどのように育成、拡大していくか、具体的な取り組みが欠かせない。ヨーロッパでは若い人ほどスーパーマーケットではなく、専門店で花を買うと言う。日本でも洋服を見ているとさもあらんと思う。グローカルに考え、一歩踏み込んで仕事をするこれからの10年のスタートの年、それが平成22年度である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月21日

第一世代ならではの危機感

昨日の父の日は意気込んだ店はがっかりしたが、父の日だから花はあまり関係ないと斜に構えていた店は予想に反してまあまあの売れ具合であった。ただ父の日イコールひまわりと考えて気合を入れて、ひまわりばかりが目立った店はかえって荷が偏ってしまって残したところが多かった。

渋谷の原宿とは反対のほうの奥に松涛という東京では第一級の高級住宅地がある。そこに渋谷区立の美術館があって、中国の扇面画の展覧会を見に行った。扇子は日本から宋の時代に中国に渡り、扇面画は中国の絵画でも一つのカテゴリーになっている。明治期の日清戦争後、日本は生意気にも中国を尊敬しなくなった。しかし中国の文化や宗教、思想は極東の日本にたまっていて、我々日本人の血肉となっている。とりわけ戦後生まれは、日本の伝統文化を知らないように、朝鮮半島と中国のことを知らない。これではご近所と仲良くしてゆくことが出来ないので、私は日中の芸術文化の交流の会に入っている。古典は無論のこと、現代作家の作品も目を見張るものが多い。

日頃の仕事の仕方の中でも、東アジア三国に共通した考え方を見て取れる。それは西欧人のように物事を要素に分解し、それを組み立てて全体像を作っていくという仕事をするのではなく、まず全体を捉え、その一部からでも全体を見ていこう、その一部の仕事こそ全体の仕事の中で欠かせない仕事であるという全体と一部が一体化した仕事に対する捉え方である。

例えば大田花きの例で恐縮だが、人事異動で優秀な人たちが新たに作られた営業の一つの部署に配属された。そこの長はその社員たちに言う。「毎日○時から○時までは電話に出ることを一番の仕事にしてください」と。片っ端から電話に出る。それを数ヶ月続けているとすっかり大田花きのサプライチェーンが見えてきた。仕事をするということは自分が動くと言うことだけではなく、社内外の人たちに動いてもらって、仕事が出来上がると言うものだから、まず大田花きの営業のストラクチャーが毎日毎日電話に出ることによって解かってきた。せり前のインターネットでの受発注業務や電話でのやり取り、セリや注文の受発注業務など、社外との接点を体感することによって会社の商売の構造と実際、そしてお取引先が何をどうすれば喜ぶかなど、癖や性分が分かり、電話を取り次いだりしながら自分もお取引先との人間関係を構築してゆく。

世の中には無駄なことなぞない。況や、仕事に無駄なことなぞあろうはずがない。どの仕事も大切な仕事である。ただ時間は有限だし、体も一つだ。そこでどうすれば良い仕事が出来るか考える。
仕事は人を鍛える。可能性を開花させる。人格を高める。そして組織で働くということは自分ひとりでは出来ない、でっかいことも力を合わせてやる。出来たとき喜びを皆と分かち合う。その喜びは格別だ。しかしそんなに簡単に事が成るはずはない。しぶとく、しつこくやる。

戦後の花き業界は第一世代が作り出した。しかし近頃、第二世代、第三世代となって甘っちょろくなり、平気ですぐあきらめてしまうようになった。しかし花の仲卸は第一世代が多いので、今回のリーマンショック以来の花き産業の経済危機に一番危機感を感じている。仲卸が持っている危機感を共有して、もう一度花き業界の各分野で自分の仕事に真剣に取り組むべきだ。そうすると具体的に自社の強み弱みが確認でき、仕事の実が上がってくる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月14日

仕事の見直し方

遅れていた高冷地の菊も、そしてハウスもののリンドウの出荷も始まっていよいよ夏本番を迎える準備が出来てきた。梅雨入りで需要が減ってきたから、出荷者の方々には需給バランス上ちょっとの間辛抱してもらわなければならない時期となっている。


先週新聞を見ていたら、日本の労働分配率は70%代と先進国の中で最も高いことになっていた。アメリカ同様日本は、世界の中で法人税率は一番高いので、儲けの中から諸外国と比べ一番多く社員に支払うことになっている。社員を大切にする日本の企業としてさもあらんと思うが、だったらもっと個人消費が活発でも良いはずだ。しかしデフレで、しかも貯蓄率も下がっている。また日本は労働生産性が全産業ベースでアメリカより3割低く、サービス業においては先進諸国の平均値より4割近く低い。生産性が低いから賃金の安い非正規雇用の人を雇う。それでどうにかデフレ下でも赤字にならないようにしている。日本では非正規雇用が働く人の1/3まで増えてしまって、しかも安く使われているのだから、消費が活発になるわけはない。しかも労働生産性もせいぜい横ばいだ。このような循環がサービス産業を中心に、特に21世紀になって日本にはあった。

オランダ人と話していると、「日本はいいね。パートやアルバイトの人たちにもう来なくていいと簡単に言えるのだから」と言われたことがある。フルタイムもパートタイムも働く者の賃金や権利はそんなに変わりないのがヨーロッパの労働条件だ。だから「生産性を上げて高所得を得よう」の合言葉でIT投資をし、確実に働くものも会社側も言ったことを実現してきた。失われた10年とこの21世紀に入ってからの10年の都合20年間、生鮮食料品花き流通の分野においても、目立った投資が少なかったので、今後海外との生産性の差をどうやって埋めるか早急に対策を練らなければならない。

何も変えずに「儲からなくなった」「厳しい」と言っているのだが、利益についてはこう見ると考えやすい。利益は結果だから、その原因は外的要因と内的要因からなる。外的要因は事業を取り巻く環境で、天候やらマクロ経済やらその時々の心理状態などがある。この外的要因が46%で、内的要因は54%である。54%の内的要因のうち、その業界が持つ成長性や規模などを想定する事業領域が16%。38%は自社の要因となる。外的要因を観察し、予測する。次に16%の生鮮食料品花き流通業界、卸売業界、花き業界といった事業領域の要因を見直し、取引先により喜ばれるような新たな価値を我々は創り出すことが出来るか考える。さらに38%の自社の努力でどのように新しい価値を生み出し、取引先に好んで使ってもらえるようにするかを考える。我々農業業界の一端を担う会社として、また国民の安寧秩序を担う会社としては、明確に外的要因と内的要因、そして事業領域と自社の強みを46:54(内16:38)でハーバードビジネスレビューが言うように分けて考えるのが実際を整理しやすい。利益を出しにくくなった特にリーマンショック以降、もう一度仕事を再定義し、新しい花き業界・卸売市場業界を作っていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月 7日

輝ける仕事

今朝の2時過ぎ、高速で起こった事故の関係で和歌山の荷の延着があった。せり前取引のシールを持って荷台に乗り込んでシールを貼っている。降ろしながら荷受係はせり用とせり前搬出用に仕分けする。遠隔地に向かう運転手さんは「いつもより2時間30分遅れてしまいました」と言い、大田花きの担当者は「安全運転で行ってください。お客様には連絡しておきますから」と言った。
近隣に花の共同荷受所が3つある(羽田日通、東京花き共同荷受、永井荷扱所)大田市場では、品揃えのため4つ目の調達場所として品物を揃えて出発していく。地方市場は良い品物を届けようと努力して地元の小売店さんに荷を揃えている。

私は週3回だが、午前2時か3時には会社に出て全体の荷を把握し、花のサプライチェーンをチェックしたり、社員の労をねぎらったりしている。社員も部署によって2交代、3交代でがんばっているから、特に夜間専門の社員や派遣社員の人たちとの挨拶は私の重要な仕事だ。

ホンダのような会社にしたいと思って、30年間仕事に取り組んできた。優秀な社員が会社を担ってくれて社長自らが後継者を育てること。院政を敷かないこと。そして何よりも大切なのが社長自ら試運転し、社長が判断して車を販売する。それがホンダ流。私もそう思う。この暗黙のルールをどうしても大田花きに根付かせたい。自分の判断が曇るようなら社長を下りる。私もこうあるべきだと、物日の忙しいときなど夜っぴて荷受をしたり、荷物を分けたりする。小売の現場にお邪魔する。無論産地にうかがう。自分の見通しが間違えたら私は大田花きの社長でいることは会社に迷惑を掛けるだけでなく、トップ企業として花き業界に迷惑が掛かる。卸売のサービスだけでなく、毎日生み出す相場、価格に対しても私の責任だ。だから農業新聞をよく読む。そして入荷量も含め、実態をよく観察する。真実が見えなくなったら社長の辞め時だ。人の荷物を預かって販売させてもらっている。そうしたらその作る人の気持ちや1本1本、1鉢1鉢を販売する小売店の気持ちがわからなければ仲立ち業をする資格はない。その毎日毎日の言うなれば凡時にこそ仕事のすべてがあり、凡時に徹する勇気を持つことは森信三先生から教えていただいたことである。よくルーティンワークと言うが、それは本業のことである。核となるサービス、仕事のことである。それをルーティンワークと言う。日々の仕事を決して疎かにするな。これこそが我々が行なうべき仕事で、これを持って生命と差し替える価値のある仕事であることを認識すべきだ。それは生産者と小売店から学んだことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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