大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 仕事の見直し方 | トップ | 株主総会を終えて »

2010年6月21日

第一世代ならではの危機感

昨日の父の日は意気込んだ店はがっかりしたが、父の日だから花はあまり関係ないと斜に構えていた店は予想に反してまあまあの売れ具合であった。ただ父の日イコールひまわりと考えて気合を入れて、ひまわりばかりが目立った店はかえって荷が偏ってしまって残したところが多かった。

渋谷の原宿とは反対のほうの奥に松涛という東京では第一級の高級住宅地がある。そこに渋谷区立の美術館があって、中国の扇面画の展覧会を見に行った。扇子は日本から宋の時代に中国に渡り、扇面画は中国の絵画でも一つのカテゴリーになっている。明治期の日清戦争後、日本は生意気にも中国を尊敬しなくなった。しかし中国の文化や宗教、思想は極東の日本にたまっていて、我々日本人の血肉となっている。とりわけ戦後生まれは、日本の伝統文化を知らないように、朝鮮半島と中国のことを知らない。これではご近所と仲良くしてゆくことが出来ないので、私は日中の芸術文化の交流の会に入っている。古典は無論のこと、現代作家の作品も目を見張るものが多い。

日頃の仕事の仕方の中でも、東アジア三国に共通した考え方を見て取れる。それは西欧人のように物事を要素に分解し、それを組み立てて全体像を作っていくという仕事をするのではなく、まず全体を捉え、その一部からでも全体を見ていこう、その一部の仕事こそ全体の仕事の中で欠かせない仕事であるという全体と一部が一体化した仕事に対する捉え方である。

例えば大田花きの例で恐縮だが、人事異動で優秀な人たちが新たに作られた営業の一つの部署に配属された。そこの長はその社員たちに言う。「毎日○時から○時までは電話に出ることを一番の仕事にしてください」と。片っ端から電話に出る。それを数ヶ月続けているとすっかり大田花きのサプライチェーンが見えてきた。仕事をするということは自分が動くと言うことだけではなく、社内外の人たちに動いてもらって、仕事が出来上がると言うものだから、まず大田花きの営業のストラクチャーが毎日毎日電話に出ることによって解かってきた。せり前のインターネットでの受発注業務や電話でのやり取り、セリや注文の受発注業務など、社外との接点を体感することによって会社の商売の構造と実際、そしてお取引先が何をどうすれば喜ぶかなど、癖や性分が分かり、電話を取り次いだりしながら自分もお取引先との人間関係を構築してゆく。

世の中には無駄なことなぞない。況や、仕事に無駄なことなぞあろうはずがない。どの仕事も大切な仕事である。ただ時間は有限だし、体も一つだ。そこでどうすれば良い仕事が出来るか考える。
仕事は人を鍛える。可能性を開花させる。人格を高める。そして組織で働くということは自分ひとりでは出来ない、でっかいことも力を合わせてやる。出来たとき喜びを皆と分かち合う。その喜びは格別だ。しかしそんなに簡単に事が成るはずはない。しぶとく、しつこくやる。

戦後の花き業界は第一世代が作り出した。しかし近頃、第二世代、第三世代となって甘っちょろくなり、平気ですぐあきらめてしまうようになった。しかし花の仲卸は第一世代が多いので、今回のリーマンショック以来の花き産業の経済危機に一番危機感を感じている。仲卸が持っている危機感を共有して、もう一度花き業界の各分野で自分の仕事に真剣に取り組むべきだ。そうすると具体的に自社の強み弱みが確認でき、仕事の実が上がってくる。

投稿者 磯村信夫 : 2010年6月21日 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.