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2010年7月 5日

日本の農業のありよう

本屋で岡潔と小林秀雄の対談「人間の建設」が文庫本で出ていたので、買って読み返した。算数と体育は大の得意だったので、岡潔氏は高校時代から私の憧れる人であった。その人が大学受験にも文章が引用されるという小林秀雄氏と対談しているというので、私は高校1年のときそれをむさぼるように読んだ。若いときの読書というのは人を造るというが、本当に1ヶ月前に読んだかのようにそれぞれの箇所が思い出され、復習している気分になった。40年以上も前のことだが、当時は刹那的な快楽はいけないだとか、忘己利他だとか、人の生き方について自分を中心にした卑しい生き方を忌み嫌う価値観があった。今でも十二分に人の尊厳を旨として伝統的な美的価値観はあり、それをどのように各自が自分のものにしていくのか。真善美の価値観を体現して日々生活をしていきたいと思った。

先週、「人間の建設」を読み返したのは3回目だと思うが、2回目の大学生の頃はオランダにいて、オランダにいるときお世話になる画家のダマーベ家の長男のケイシーと夜な夜な近くのブラウンカフェで彼の友達たちと議論したりしていたことを思い出した。直近の戦争の感情を引きずるのが国と国との間の国民感情で、オランダからすると第二次世界大戦のときにインドネシアで日本と戦って、日本軍はオランダ軍に勝利したから、オランダからすると国家元首が日本に行くとなると、退役軍人たちがデモをして行かせないようにする。日本は400年前の鎖国のときもオランダと中国、朝鮮とは交易していたので、オランダとは友好の気持ちを抱いているが、オランダは日本を色眼鏡でどうしても見てしまう。そのブラウンカフェでの会話は、「日本は近年経済力をつけてきており、池田勇人首相をフランス人はトランジスタラジオのセールスマンと言ったそうだが、まさに国は保護貿易をしながら経済活動に邁進している。少しフェアーではないのではないか。」「日本より大きい面積の国はヨーロッパでは3ヶ国だけで、人口は日本はどんな国よりも多い。オランダやイギリス、ドイツから見ても日本は大国だ。」

ヨーロッパに行く度に日本の経済力は強くなって、ウォークマンが出てきたときには妬みは消えてようやくイッパシと認められるようになり、私も一日本人として嫌な思いをすることがほとんどなくなった。日本はアメリカから「もっと内需を拡大せよ」と言われていた時期があったが、日本は外需が20%、内需が80%というこのグローバリゼーション単一世界経済においても内需比率が非常に高い国である。当然農業もそうで、大企業が輸出や社会インフラの建設で儲けると、富がぐるっと回って消費者が豊かになり、いつしか本物の肉や魚、青果や花を要求するようになった。また新しい品種などを要求するようになった。世界規模で見たときに花の生産と消費は額で言えば農業生産国で2位とか3位だし、日本の農業の国内生産額8兆円は先進国ではアメリカに次いで第二位。世界では中国、アメリカ、インド、ブラジル、日本、フランスの順番で、日本は世界第五位だ。野菜や花や果樹などでも世界で5位以内の品目が大変多い。昔オランダ人と話していて、農業国はいずれも同緯度帯の横に大きい面接を持つ国が農業国すなわち穀倉地帯であり、小面積や日本のように縦長の国は今まで農業国と言っていなかった。しかしオランダや日本を見て分かる通り、日本の場合縦に長いという気候変動を利用していつの季節にも最良のものを出荷し、消費者を喜ばせると言う先進国の農業のあり方がある。日本の農業を卑下することなかれ。日本の国力と豊かさとともに、確実に好まれる農産物を生産し、農業所得で見たら世界で5、6位に入る所得をあげている。農業の多面的な機能もそれは大切だろう。しかし日本農業そのものが国民の心身の健康を十二分に支えているのである。我々は威張ることはないが、いたずらに卑下することなく、自信を持って生産と流通に取り組もうではないか。

投稿者 磯村信夫 : 2010年7月 5日 00:00

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