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2010年10月25日

2010年度下半期の注意点

今頃秋の長雨のような天気が続き、国産のマツタケを美味しくしかも手軽なお値段でいただけるなんて季節が10日から20日遅れているような気がしてならない。


10月から下半期が始まったが、上半期とは勢いが違ってしまったことを肌身で感じる。花き業界の場合、本年2010年度上半期は2009年度を上回り、2008年度に近づく勢いがあったが、下半期の10月からは、少なくとも2009年度は上回りたい(取扱金額ベース)とする状況に変わってきた。その理由は、今年は国内の花き生産量が需要量よりも少ないのは日ごろ取引している市場関係者なら誰でも肌でわかっていることだが、需要に勢いが
なくなってきたことだ。

①マクロ経済が悪い。株価が下がっている。花の売れ行きにも60歳、70歳代の株式保有者がすぐ反応するようになって来ている。少なくとも日経平均で1万円台に回復してもらわないと花を買う意欲に陰りが見える。

②ここのところ目立つようになってきたのが花き業界にあっても他の業界同様、従業員5人以下の小規模な花店の経営状態が悪化しているということだ。むしろ家族だけでやっているところの方がコストを切り詰めて、良い経営をしている。小規模小売店はリーマンショック以降ロスを少なくし、品揃えを豊富にするため、仲卸の利用率を高めた。しかしここに来て、品揃えでも仏花を中心にしていた店はスーパー等の仏花売場との競争で「ついで買い」出来るスーパーの仏花売場に負けることが多くなってきた。専門店である花店は、やはり「新しい花との生活」が提案できる。弊社が考える商売の常道「創って作って売る」が出来なければ、客が離れるのだ。これが目立ってきた。卸・仲卸からすると、売掛金の回収に一層気を配る必要が出てきた時代となったのだ。


この下半期に上半期と違い気をつけたいのが、円高で輸入品はしっかりある、しかしコンスタントに品質の優れた花を出荷してくださる商社と取り組まないとだめだということだ。円高故、いろいろな業者が花を輸入する。市場外流通で捌ききれなかったから、急遽卸売市場に出荷してくる業者もいるのだ。これで相場が崩されて次の日が安値で始まったり、軟調市況が続いたりするときがあるのだ。

卸売会社はこの下半期経営的には①売掛金の回収、②信頼のおける輸入商社との取り組みに注意を払い行動することが大切となっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月18日

社会インフラとしての卸売市場システム

国税庁から2009年の給与所得者の統計が発表された。総数は2009年は前年よりも82万人減って4,506万人となった(前年比1.8%減)。戦後最大の減り幅なのは団塊の世代がいよいよリタイアし始めたからだ。給与所得は237千円減って406万円となった(5.5%減)。景気とは関係なく15歳から64歳のいわゆる生産年齢(=最多消費年齢)が減っていくわけだから、日本のあらゆる産業分野で国内消費は減っていくことになる。

これを前提に花き業界にいる1人1人が経営をしていかなければならないが、法人需要が減っていくことは日本が今までの同一化社会から価値観の多様化する社会に移っているのでやむを得まい。しかしホームユースにおいては、食べるものと違い、胃袋が小さくなったり少なくなったりするのではなく、むしろ1人当たりの居住空間は広がる。花や緑は育て飾る楽しみがあり、しかもそれが生き物であることから、場の雰囲気を盛り立てる。花や緑は、解かった人にこそ不可欠なものとなっているので消費に不安はない。環境問題も消費を後押しする。


さて、10月15日に市場流通ビジョンを考える会では第9次卸売市場整備計画を前に、会としての提言を鹿野農水大臣に行った。新しい卸売市場ネットワークの時代を迎え、更に卸売市場が社会の進展にともない能力発揮ができるように提言を行った。

核になる考え方は生鮮食料品花き業界は卸売市場ネットワークを通じ、国民に価値、そして需給バランスを反映した価格を提供することによって、これまで以上に国民にこの国に生まれてよかったという豊かさを提供するものだ。消費者である我々一個人は、要る時そのものが価値あるものになる。よく言われるように、曲がったキュウリだろうが、葉がシラサビ病の菊だろうが、要る時消費者は必要になるからそれにお金を払う。しかし消費者は要らない時は価値を見出されていないから質が良くて安くても買わない。

生鮮食料品花き業界においては、生産者や農協、卸売市場、仲卸業、小売業の業者が価値に序列をつけ、需給バランスで相場は変動するが相対的な価値は変動しない。菊を例に取ると、名古屋以東は愛知のスプレー菊が一番の価値ある産地の品物で、他県のスプレー菊は愛知県のものよりも相場が高くなるということはほとんどない。需給バランスは絶えず変動し、価格は変動するが、価値は変動しない。それはあらゆる産地の荷を見て、触って、使っている業者による価値付け、評価があるからだ。目利きによる産地の序列付けは適正で、産地や生産者の力が衰えると、下位に落ちてかつてのブランドもコモディティー化する。

近頃、ファーマーズマーケットや道の駅が繁盛している。これも一つの成熟国家としての農産物流通、あるいは手軽なレジャーという側面からの楽しみの一つである。もちろん安全安心という側面も大変大きいと思う。しかし全部が直売所で生産流通することは出来ないのはいうまでもない。生産側から見ると直売所や地方の市場に出荷する農家。もう少し規模が大きくなると農協出荷も多くなり、地元の中核市場にも出荷する農家。そして更に規模が大きくなると地元中核市場と中央中核市場に出荷する農家。もっとプロ化して、更に中央中核市場と輸出まで考えるようになる農家がある。卸売市場はそのネットワークを通じて、市場外流通業者の需給調整機能も行ってきたが、スケールメリットが利く利益が出せる品目は市場外流通を使い、品揃えや少ししか要らないもの、あるいは余ったときや本当に不足したときなどに卸売市場を使われては経営体力が弱ってしまい、結局社会のインフラとしての役割を果たせなくなる。市場外流通している大量消費品目を市場ネットワークに更に有利に取り込めるような市場のあり方を今回提言した。価値と価格を認定する取引所としての卸売市場。価値を守ってきたのは我々卸売市場を司る業者である。今後はますます生鮮食料品業界・花き業界において素材価値が重要度を増していくだろう。それぞれの用途に応じたオープンな出荷と調達を可能とする卸売市場を活発化するのが第9次卸売市場整備計画であってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月11日

研修

モノやサービスが売れにくくなって、その分「ああでもない、こうでもない」と日々の仕事が忙しくなっている。売れなきゃ寝てれば良いと言っていた時代は良い時代だった。目先のことにあくせくする毎日だが、これではいつまでたっても流されて毎日終わってしまう。これを脱出するには、企業内研修が必要だ。

大田市場花き部では先週の6日水曜日、公益法人日本フラワーデザイナー協会(通称NFD)の花ファッション委員会のチームによる2010年秋冬デザインのトレンド勉強会が開催された。NFDは文科省の所轄だが、私は日本の花き産業の先頭にいて、今日的な人と花との関わりを、フラワーデザインを通して絶えず切り開いてくれている協会だと尊敬している。その花ファッションのデザインチームがお花屋さんの店頭で売れるフラワーデザインを目の前で作ってくれたのだから、専門店や仲卸、卸の社員の悦びや感動は高く、出来上がった作品をセリ室上の中央通路で展示したが、写真を撮るのにも大変なほどだった。大田市場で働くもの、大田市場で仕入れる人は、築地市場の人と同様の自負がある。NFDと大田市場と合同の勉強会は、「俺がやらなきゃ誰がやる」と参加者のみならず、大田市場に出入りする者の心に火をつけた。

研修というと知性とか理性に訴えかけ、磨きをかけるかのように思っている人がいるが、感情に訴えかけ、情熱の火種を燃え盛るようにすることが研修だと考えている。
心理学者ジョナサン・ハイトは私たちの感情は「象」であり、理性は「象使い」だと言ったが、「象」が私たちの感情が行動を起こす。「象使い」と「象」が一体化して、思い行動する。「思ったことしか実現しない」「やったことしか実現しない」「散歩のついでに富士山に登ったやつはいないのだ」。

大田花きでは静岡県御殿場市に研修所がある。そこで当社のバイブルである"Future Vision"と"メタセコイアになる"を繰り返し、繰り返し学ぶ。またこの秋から群馬県赤城で農業実習を行うべく宿泊施設を借りた。商売の基本といわれる「創って作って売る」を実践するためである。研修は会社の大きさに関係なく行う必要がある。研修は「象」を良き方向へ導く、「心志を養うのは養の最なり」であるからだ。花き業界のリーダーよ、後輩に研修をさせてやってくれ。それが花き業界を産業として整える。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月 4日

競争激化 仲卸・小売店

10月に入り下半期のスタートを切った。2008年、2009年と生産者と市場は単価安で利益が大幅に減ったが、再販業者である仲卸や小売店は、卸価格の下落幅ほど小売価格が下がらなかったため利益確保が出来ていた。売れ行きは鈍ったものの、利益に関して言えば、むしろ2007年よりも良かった会社があったほどだ。ところが昨年の年末から少しずつ荷が不足するようになって、とりわけ2010年には荷が足りない状況が続いている。作付面積を減らしたり、出費を減らすために遠隔地に出荷せず運賃を節約したり、運賃が割安な拠点的な市場に荷を集めたり、どうにかして手取りを増やそうとしている花き生産者は多い。

中小の市場は前年並みの売上が確保できず、荷が豊富な市場から仕入れ、セリと買い付けをすることによって売上と利益を前年並みに保つこととなった。仲卸、花束加工業者、小売店は依然として消費者の下げ圧力が衰えることなく続いているので、卸売価格は人的要因と天候によって上がってきている中で、利益が出しづらい状況になっている。まして、ここのところの23区内のスーパーの開店ラッシュは目を見張るほどで、まさに最終段階に来たのではないかと思うほどスーパー内の競争は激烈になっている。そこで花が取り扱われるわけだから、当然近隣の小売店には影響が出る。猛暑で夏場、成績の良い花店で前年比95%で、利益はマイナス30%くらいだと聞くが、それでなくても体力を落としている小売店にとって今のスーパー戦争は脅威でもある。どのように自店の特徴を出して、しっかり消費者に認知してもらうか。今そこに神経を集中させて店作りをしていく必要がある。

日本の花店は花キューピッドやフラワーシップなどの花の通信協会が日本の花店のレベルを上げた。だからこんなにすばらしい花店が日本にはたくさんある。その都市部の花店が今危機にさらされようとしているのだ。地方では優勝劣敗が済んで、すでに残るべき花店が残った。今、政令指定都市の人口密集地域で専門店とスーパーの花売場で直接の競争が起きている。お手軽なパーソナルギフトから、花を良く知る団塊の世代・団塊ジュニアから、格好いいと認められた地域専門店が頑張るときなのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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