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2010年11月29日

輸入されにくい鉢物に力を入れる

切花は素材として流通しているので、残暑で開花が遅れても、小売店さんにきちんと連絡しておけば物日でもない限り消費価値は保てる。だが鉢物は完成品が流通しているので、今年のようにポインセチアやシクラメン、シンピジュームが遅れると価値が損なわれるので、今ひやひやしながら鉢物を販売している。

大田花きの前身の一つ大森園芸市場は、昭和7年日本で初めての鉢物専門の卸売市場として大森区(現在の大田区大森)で営業が始まった。戦時中、食糧増産で花の生産が限定され、仏壇の花材がほとんどになって切花が中心となったが、昭和30年代の後半、鉢物の生産もまた盛んになって、私が大森園芸に入社した頃は切花・鉢物ともバランスのとれた荷姿になっていた。母の日を除き、12月でも3月でも、1月の中でも鉢物の需要が先で、終わると切花の時期となり、流通業者にとってちょうどいい組み合わせである。1990年、大田市場は切花鉢物とも扱う卸売会社2社が入場した。独禁法のためである。大田花きは大森園芸の流れを汲んで、切花を中心に鉢物も扱った。どちらを重点に扱うかはそれぞれ時代と競争関係が規定するものだが、ガーデニングブームが終わった後、大田花きの社長に就任した私はまず商品回転率が高い切花に力を入れた。(*注 大の切花好きの消費者は1週間に1回切花を買う。鉢物好きは多くて1ヶ月に1回だ。)

切花の菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノは国際競争をしており、先を読んだ生産をしていかないと輸入比率がどんどん高くなる。だから大田花きとしては、まず切花生産者に力をつけてもらう必要があったのだ。それと同時に需要開拓も行わなければならない。それが2005年までだ。そして現在、特に2008年のリーマンショック以降、2つの流れがある。1つは国際化で輸入切花が増えてきた。特にアジア地域から多い。もう1つは鉢物の単価の下落で目を覆いたくなるほどだ。これはホームセンターなどの量販店扱い比率が60%を超え、鉢物・苗物は量販店内の価格競争に巻き込まれた。当然、小売店は鉢物を扱いづらいので取り扱い数量を減らしている。この2つの大きな流れがある。大田花きはこれからを考え、お取引いただいている荷主さんに輸入されにくい価値ある花を生産出荷していただき、私たちが企画するサプライチェーンの源流に末永くなっていただきたいと考えている。そこで2007年から鉢物に力を入れ始めた。TPPへ参加した場合も当然考えておかなければならない。そうなると日本の価値観に根ざした価値ある花もので園芸鉢物類の占める割合を高めていく必要がある。特に専門店で売りたいと思う鉢、売れる鉢の開発だ。大田花きは1ヶ月に1回鉢物を、1週間に1回切花を買ってもらうための仕組みづくりをしながら、国内花き生産者に作付する品目の選択の幅を広げてもらい、国際競争の中でも力強く勝ち残ってもらいたいと考えている。

*注
人は1日3回お腹が減るので、3人家族の場合1週間で、3人×3回×7日で63回食べ物は消費される。
切花は1家で1つ、1週間に1回だ。
鉢物は1ヶ月4週あるとして1ヶ月に1回だ。
そうすると小売でのビジネスチャンスと上限規模はチャンスベースで63:1:0.25だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月22日

私なりの第9次卸売市場整備基本方針

今日は切物・枝物(以下:切)のクリスマスツリー市である。日本経済は決して順調だとは言えないが、それなりに落ち着きを見せており、最悪だった昨年の相場からすると平常の相場に戻り、4~5割高となった。繰り返すが、平常の状態に戻ったのであって、日経平均が10,000円に戻したのとほぼ同じニュアンスの商況であった。またアメリカ産のクリスマスツリーも小売店で販売が始まっているが、昨年よりも幸先が良く、例年並の販売を予測している小売店が多い。

クリスマスと言うと、すっかりリースが一般的になってしまったが、一本物のツリーを飾る人たちは少なからずいて、それもフェイクではなく本物のツリーが必要な人たちが専門店にオーダーをしてきている。家庭用はフェイクとリース、販促やらちょっとしたおしゃれな空間には本物のクリスマスツリー、このようにすみ分けてきている。切のクリスマスツリー市を見ていて、つくづく思うのだが、切のツリーの需要減とともに、ツリーを販売する市場の数はめっきり減った。だから大田市場はクリスマスツリーの大市をするが、他でやるところが少なくなったから活況になるのだ。

農水省卸売市場室が10月に出した第9次卸売市場整備基本方針はたぶん、宅配便やインターネットなど新しい商売環境の中で従来の卸売市場システムは大きな影響を受け、同じやり方をしていては存続することすら覚束なくなっていると警告を発して方針を出したのだろう。卸売市場は時代に適合できず、収益率が著しく低くなっている。卸と仲卸がいて卸売市場だが、青果の中央卸売市場の卸売会社の税引き前利益率は0.5%にも満たない。花も同様である。仲卸は2~3割が赤字である。花の仲卸は青果の仲卸よりもまだ良いが、本年は天候不順による不作単価高が続いているから大変だろう。少なくても1%の税引き前の売上高利益率が確保できないということは、その業界では合併するなり、新たな機能を身につけるなどして社会に役立つ存在にならなければいけないと言われる。

たまたま大田市場は魚と東洋一の青果を扱う青果市場が花よりも1年早く開場した。花き部が開場したときにはすでに日本の一流産地と各分野の一流小売店が大田市場を出荷や仕入の場所とした。だから花き部がそれなりに当初の計画を達成し、それなりに花き業界でも注目されるようになった。決して卸と仲卸の努力だけではない。まず地の利、そして卸売市場の機能を発揮させる人の利、そして大田市場は1990年の花博のときに出来たので花きが産業化するタイミングで時の利があった。このようにいくつかの幸運が重なったが、大田の後に開場した花き市場を見るといくつかの不幸が重なり、合併しても拠点化を図れなかった市場もある。もう一度花き業界の主役は生産者と消費者、準主役が小売店であることを認識し、あそこの市場に出荷したら儲かる、あそこの市場と付き合っていなければ状況の変化に的確に対応できない、明日が不安だと生産地と買参人に思ってもらえるようになっておく必要がある。

この第3四半期はもう一度地域に役立つ卸売市場としての機能と規模、そして数とネットワーク化を考える時としたい。人のことを考えられる元気なうちに一緒になるか、自分のことしか考えられなくなった赤字体質になってから合併のことを考えるかはえらい違いだ。二宮尊徳翁は我々に教えてくれる。貧乏な人も豊かな人もやっていることにはあまり変わりない。ただし豊かな人は今明日の仕事をし、乏しい人は今昨日の仕事をしている。我々は今、いつの仕事をしているのだろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月15日

輸入花と日本の花作り

先週は暖かかったので今日は荷がまあまあ出てきた。今まで高値基調だったから12月のことを考えると少し下げてきた方が流れとして良いと思う。しかし明日から寒くなってくるので、また荷が少なくなって相場ががたついたというところまでは下がらずに、ちょっと一服という感じでそれ以降年末のぴんと張り詰めた商況となっていくものと思われる。


11月15日を境に、ヨーロッパでは本格的に各都市の広場でクリスマス市が開かれる。先頭を切るのはウィーンで、15日前の金曜日から行われる。ウィーンはすばらしいカフェと花屋さんで有名な音楽の都だ。そこからクリスマス市がヨーロッパ各地で行われる。
アメリカは感謝祭が終わってからだ。感謝祭は11月の第4木曜日、今年なら25日でクリスマスに次いで2番目に大切な祝日だ。感謝祭の翌日から余った七面鳥をパンにはさんで食べるが、コールドターキーの方が好きな人も多い。感謝祭が終わって一段落してからクリスマスとなるので、アメリカは12月からとなる。アメリカはドイツ系移民が多い。だからホットドッグやハンバーガーがアメリカを代表する食べ物となっている。ドイツ系のアメリカ人が多いから、アメリカのクリスマスツリーは世界最高の質だ。まさに絵に描いたようなクリスマスツリーをオレゴン州、ワシントン州で手を掛けながら作っている。

ドイツ語を話す日本にいるゲルマンの人たちや在日アメリカ人たちは、どうしてもオレゴンのクリスマスツリーや切枝が必要だという。そこで数社の輸入商社が1本もののクリスマスツリーと切枝を輸入している。ツリーといってもマツだから、世界中で害虫のチェックが厳しい。今年も全部の輸入商社が日本に持って来られたわけではない。輸入検疫のときに引っかかり、他の国に回すか、戻してアメリカ国内で売るか、焼却かの決断を迫られたと聞く。

輸入品のクリスマスツリーは11月15日近辺に船便で日本に到着し、月末にそれぞれに配送される。国産のクリスマスツリーは関東では富士山のものが良いとされる。八ヶ岳のものも一部あるが、単独峰の富士山のあの自然の厳しさは我々がこうあってほしいと思うクリスマスツリーの姿に一番近い。大田花きではそれをまず根巻きのツリー市、そして翌週切枝のツリー市で販売する。日本の品種は「シラベ」で、アメリカの品種群とは違う。アメリカのものは温かい部屋に置いていてもアメリカの習慣どおり1月15日過ぎにクリスマスツリーの回収車が出るまで飾られる。しかし日本のものは葉が落ちてしまうのでちょうど1ヶ月。クリスマスの時までは美しさを保つ品種である。

大田市場に限って言えば、モミは切枝物を含め国産が4、輸入が6の比率である。クリスマスのリースに使う活け花素材であるクジャクヒバやヒムロ杉、セッカン杉を入れるとクリスマス花材として5分5分となる。ことクリスマスについては輸入花材が多い。

しかし1年を通してみると、輸入花材が多いのはランやハモノなどが数量ベースで5割を超えるものの、他の花はほとんどが国産である。日本の花の品質は世界に冠たるものであることは世界の花き業界が認めるところ。数量も国内消費の85%をしっかり守っている。輸入品の役割は日本にない物、ない時期、そして日本の生産が高齢化などにより減少したときにそれを補う、この3つの役割がある。3つ目の生産が少なくなって量的に補った代表がコロンビアのカーネーションである。

日本の花き業界は第二の生鮮食料品といわれるお惣菜に輸入野菜を使っていることが多いのに危機感を感じ、花もそうなってはならじと花束加工の素材を国内で提供すべく産地も取り組んではいる。しかし市場流通する規格は専門店の店頭販売の規格となっており、花束加工素材の規格や活け花・フラワーデザインの規格とは異なる。もう一度用途別に質の良し悪しを検討する必要がある。

日本の花き業界で再確認しておきたいことは、面積は小さいが手を入れて花持ちの良い見栄えのするものを提供していく花作り。そして花持ちは任せておけ、しかし丈を短く、花の輪の大きさもそこそこのものを量的に出荷する生産者。この2つにと分けていくべきである。今後農業の分野ではヨーロッパの花き園芸やカリフォルニアの農業がそうであるように、他国から労働力を導入する必要があるのではないか。そのときに数をこなす農業が日本で本格化する。これを一刻も早く花でも実現する必要がある。そうすれば日本の花作りはますます強くなるのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月 8日

パイをふくらませ棲み分けを明確にするスプレー菊

神馬という一輪菊が日本の品種だと知っているアジアの生産者はどれくらいいるだろうか。朝の現場巡回で、韓国釜山の農協から輸入会社を通じて神馬の出荷があるのを見つけた。初めての出荷なので菊の担当者に聞くと、近頃中国に加え、韓国から新しい産地の出荷があるという。白菊の神馬はマレーシア、ベトナム、中国の海南省、上海の近郊、チンタオの近郊など、そして韓国のいくつかの地域からの出荷となる。台湾でも作っているが、日本に輸出するのはほとんど黄一輪菊だけで、白は過去に叩かれた経験から出荷しない。今朝、仲卸さんが納品した仏花束が現場に置いてあり、どんなクレームなのか聞いたところ、中国の上海地区の神馬で輸入会社は○○、色がくすんで灰色っぽくなっていた。その現物を見て、栽培中の問題なのか、輸送中の問題なのか、それとももうだいぶ葉が黄色くなっているので燻蒸処理の問題なのか、それを今日解明することになっているという。

菊は輸入国産問わず、すぐに水揚げするものではなく、場合によっては定温庫で何日間か保管してから水揚げするというそれだけ長持ちする花なので、クレームのときにその原因究明に困る。特に船便を使う中国、台湾産は定温40フィートコンテナで11万本入るから、その農園の生産規模にもよるが生産時点で何日分か貯めてある。また到着してからすぐ出荷できればいいが、日本に着いて出荷まで数日置いておくとなると、一週間で着いたものが実質二週間以上となってしまうことがある。サプライチェーンの鮮度管理が輸入の神馬には欠かせないところで、これが未整備な現状を考えると輸入の神馬の最大のウィークポイントとなっている。

このように白一輪菊は国産品と輸入品が顧客を奪い合い、激しく競合しているが、スプレー菊は輸入のスプレー菊の主産地であるマレーシアは最初から日本で値段ではなく質で勝負を挑んできた。だからマレーシアのスプレー菊の単価は国産の平均単価を上回るときもあるほどで、日本の消費者にとって欠かせない産地として高い評価を受けている。これに続けと、韓国やベトナム、フィリピンのスプレー菊がある。その質の競争を見て、鹿児島県の島の産地は品質をそこそこにしながらも、価格競争で自分のポジションを確保しているところもある。スプレー菊もお手軽品を鹿児島の島の産地で、それ以外のところは一本でも見ごたえのある質の高い品種群を日本も含めたアジアのスプレー菊の産地は作っているわけだ。沖縄のようにオリジナルの品種で独自のポジションを勝ち取っている産地もある。

さてそのスプレー菊の産地が、今大田市場で「パーティーマム」という名前で展示会をしている。日本花き生産協会のスプレーぎく部会と日本花輸出入協会の合同のイベントだ。今朝せり前に、多数の買参人に向けて両代表からご挨拶をいただき、農林水産省花き産業振興室の佐分利室長より買参人にスプレーギクの消費拡大のための新しい場面での使用を呼びかけるご挨拶があった。ディスプレイはレン・オークメイド氏(オランダ)が担当され、まさにすでにグローバル化している花き産業の実態を反映したすばらしい展示会とセレモニーになった。

世の中には2つの仕事しかない。モノそのもので人を喜ばせる仕事、メーカー。コトで人を喜ばせる仕事、サービス業である。農家は農産物そのもので取引先を、そして消費者を喜ばせるのが仕事であるから、当然に今の世では国際競争を余儀なくされる。これを心に留め、日本花き生産協会はお互いに認め合い、日本花輸出入協会(海外の産地にとって農協の役目)とともに、イベントを組んだ。菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノのグローバル化した品目は、スプレー菊を見習い、ぜひとも一緒に消費拡大運動に取り組んでほしい。プロモーションするのは卸売市場の大切な役目と心得ている。やりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月 1日

新局面TPP

週末の台風でハロウィンは残念だった。子どもたちは近所でお菓子をもらいに歩けなかったので、家でパーティーをしたところも多い。土曜日の夜、仮装パーティーを楽しんだ若者たちは、台風で例年の1/3くらいだったようだ。この若者たちのパーティーのときに、バーなどで飾られる花は近年、かなりの数にのぼるようになっている。ついていない週末だったが、来年に期待したい。


昨日、荷主さんの結婚式で群馬へ行ったが、テーブルではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の話しで持ちきりであった。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の二国間協定と違い、参加者が例外なき関税撤廃を行うことを条件とするので、同じテーブルの組合長や農業委員会の方はあまりにも影響が大きすぎると交渉の参加にすら反対のようだった。

小生は先週、39年前の思い出の場所に行ってみようと親友2人と韓国へ行った。当時、我々は車で韓国に渡るため関釜フェリーに乗り(おそらく日本で第一号車)、釜山・ソウルを訪れた。当時は高速道路が出来たばかりだったので、対向車は270台くらいしか会わなかったし、鳥はスピードになれていなかったのでフロントガラスにぶつかってきた。その39年前の場所を訪ね歩いて、釜山から慶州、ソウルまで行った。朝鮮半島は日本が統治をしていたとき、北は重化学工業など、南の今の韓国は農業と漁業を主な産業としていた。今は農業をベースに、工業でも小売業でも世界的な競争力を持つ国家となっている。とりわけ農業は、国家が国際競争力をつけるよう電力や石油、あるいは温室、また輸出の際のさまざまな援助をしており、その額はここ5年で日本円にして4兆円~5兆円と言われている。そういった農家(農業経営者)とも話しをする機会があったが、すべて満足とはいかず、キムチの白菜やニンニクの輸入など困った話しをするが、しかし総じて見ると国民生活が向上しなければ我々農民も豊かになれない。我々は今後育種など、あるいは加工技術など独自のものを開発して世界に打って出るという結論に達することが多かった。そんなことを昨日思い出しながら、結婚式の間でTPPに対する可能性とリスクを話題にした。

切花は1970年代(昭和50年代)、福田赳夫総理がタイを訪問したとき、手土産に切花の関税をゼロにしますと言ったところから、日本は世界でも珍しい輸入切花関税ゼロの国となった。しかも当時は花の生産者に対して補助金などなかったから、まさに自前でやってきたのが花き業界で、創意工夫と負けじ魂に富んだ人たちであった。花のことだけ考えればTPPは相手国が関税ゼロになるので輸出の可能性が広がる。大田市場では場内を輸出検疫所に指定してもらって、輸出検疫を受けられるように、都を通じて国にお願いをしている。日本の花は世界に打って出られる実力がある。

中国そしてインドが台頭し、新しい国際情勢に合わせて自らを改革していかなければならない日本は、このTPPの問題は慎重に、かつ未来を見据えて取り組まなければならない最重要課題のうちの一つである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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