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2010年11月 8日

パイをふくらませ棲み分けを明確にするスプレー菊

神馬という一輪菊が日本の品種だと知っているアジアの生産者はどれくらいいるだろうか。朝の現場巡回で、韓国釜山の農協から輸入会社を通じて神馬の出荷があるのを見つけた。初めての出荷なので菊の担当者に聞くと、近頃中国に加え、韓国から新しい産地の出荷があるという。白菊の神馬はマレーシア、ベトナム、中国の海南省、上海の近郊、チンタオの近郊など、そして韓国のいくつかの地域からの出荷となる。台湾でも作っているが、日本に輸出するのはほとんど黄一輪菊だけで、白は過去に叩かれた経験から出荷しない。今朝、仲卸さんが納品した仏花束が現場に置いてあり、どんなクレームなのか聞いたところ、中国の上海地区の神馬で輸入会社は○○、色がくすんで灰色っぽくなっていた。その現物を見て、栽培中の問題なのか、輸送中の問題なのか、それとももうだいぶ葉が黄色くなっているので燻蒸処理の問題なのか、それを今日解明することになっているという。

菊は輸入国産問わず、すぐに水揚げするものではなく、場合によっては定温庫で何日間か保管してから水揚げするというそれだけ長持ちする花なので、クレームのときにその原因究明に困る。特に船便を使う中国、台湾産は定温40フィートコンテナで11万本入るから、その農園の生産規模にもよるが生産時点で何日分か貯めてある。また到着してからすぐ出荷できればいいが、日本に着いて出荷まで数日置いておくとなると、一週間で着いたものが実質二週間以上となってしまうことがある。サプライチェーンの鮮度管理が輸入の神馬には欠かせないところで、これが未整備な現状を考えると輸入の神馬の最大のウィークポイントとなっている。

このように白一輪菊は国産品と輸入品が顧客を奪い合い、激しく競合しているが、スプレー菊は輸入のスプレー菊の主産地であるマレーシアは最初から日本で値段ではなく質で勝負を挑んできた。だからマレーシアのスプレー菊の単価は国産の平均単価を上回るときもあるほどで、日本の消費者にとって欠かせない産地として高い評価を受けている。これに続けと、韓国やベトナム、フィリピンのスプレー菊がある。その質の競争を見て、鹿児島県の島の産地は品質をそこそこにしながらも、価格競争で自分のポジションを確保しているところもある。スプレー菊もお手軽品を鹿児島の島の産地で、それ以外のところは一本でも見ごたえのある質の高い品種群を日本も含めたアジアのスプレー菊の産地は作っているわけだ。沖縄のようにオリジナルの品種で独自のポジションを勝ち取っている産地もある。

さてそのスプレー菊の産地が、今大田市場で「パーティーマム」という名前で展示会をしている。日本花き生産協会のスプレーぎく部会と日本花輸出入協会の合同のイベントだ。今朝せり前に、多数の買参人に向けて両代表からご挨拶をいただき、農林水産省花き産業振興室の佐分利室長より買参人にスプレーギクの消費拡大のための新しい場面での使用を呼びかけるご挨拶があった。ディスプレイはレン・オークメイド氏(オランダ)が担当され、まさにすでにグローバル化している花き産業の実態を反映したすばらしい展示会とセレモニーになった。

世の中には2つの仕事しかない。モノそのもので人を喜ばせる仕事、メーカー。コトで人を喜ばせる仕事、サービス業である。農家は農産物そのもので取引先を、そして消費者を喜ばせるのが仕事であるから、当然に今の世では国際競争を余儀なくされる。これを心に留め、日本花き生産協会はお互いに認め合い、日本花輸出入協会(海外の産地にとって農協の役目)とともに、イベントを組んだ。菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノのグローバル化した品目は、スプレー菊を見習い、ぜひとも一緒に消費拡大運動に取り組んでほしい。プロモーションするのは卸売市場の大切な役目と心得ている。やりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 2010年11月 8日 00:00

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