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2010年11月15日

輸入花と日本の花作り

先週は暖かかったので今日は荷がまあまあ出てきた。今まで高値基調だったから12月のことを考えると少し下げてきた方が流れとして良いと思う。しかし明日から寒くなってくるので、また荷が少なくなって相場ががたついたというところまでは下がらずに、ちょっと一服という感じでそれ以降年末のぴんと張り詰めた商況となっていくものと思われる。


11月15日を境に、ヨーロッパでは本格的に各都市の広場でクリスマス市が開かれる。先頭を切るのはウィーンで、15日前の金曜日から行われる。ウィーンはすばらしいカフェと花屋さんで有名な音楽の都だ。そこからクリスマス市がヨーロッパ各地で行われる。
アメリカは感謝祭が終わってからだ。感謝祭は11月の第4木曜日、今年なら25日でクリスマスに次いで2番目に大切な祝日だ。感謝祭の翌日から余った七面鳥をパンにはさんで食べるが、コールドターキーの方が好きな人も多い。感謝祭が終わって一段落してからクリスマスとなるので、アメリカは12月からとなる。アメリカはドイツ系移民が多い。だからホットドッグやハンバーガーがアメリカを代表する食べ物となっている。ドイツ系のアメリカ人が多いから、アメリカのクリスマスツリーは世界最高の質だ。まさに絵に描いたようなクリスマスツリーをオレゴン州、ワシントン州で手を掛けながら作っている。

ドイツ語を話す日本にいるゲルマンの人たちや在日アメリカ人たちは、どうしてもオレゴンのクリスマスツリーや切枝が必要だという。そこで数社の輸入商社が1本もののクリスマスツリーと切枝を輸入している。ツリーといってもマツだから、世界中で害虫のチェックが厳しい。今年も全部の輸入商社が日本に持って来られたわけではない。輸入検疫のときに引っかかり、他の国に回すか、戻してアメリカ国内で売るか、焼却かの決断を迫られたと聞く。

輸入品のクリスマスツリーは11月15日近辺に船便で日本に到着し、月末にそれぞれに配送される。国産のクリスマスツリーは関東では富士山のものが良いとされる。八ヶ岳のものも一部あるが、単独峰の富士山のあの自然の厳しさは我々がこうあってほしいと思うクリスマスツリーの姿に一番近い。大田花きではそれをまず根巻きのツリー市、そして翌週切枝のツリー市で販売する。日本の品種は「シラベ」で、アメリカの品種群とは違う。アメリカのものは温かい部屋に置いていてもアメリカの習慣どおり1月15日過ぎにクリスマスツリーの回収車が出るまで飾られる。しかし日本のものは葉が落ちてしまうのでちょうど1ヶ月。クリスマスの時までは美しさを保つ品種である。

大田市場に限って言えば、モミは切枝物を含め国産が4、輸入が6の比率である。クリスマスのリースに使う活け花素材であるクジャクヒバやヒムロ杉、セッカン杉を入れるとクリスマス花材として5分5分となる。ことクリスマスについては輸入花材が多い。

しかし1年を通してみると、輸入花材が多いのはランやハモノなどが数量ベースで5割を超えるものの、他の花はほとんどが国産である。日本の花の品質は世界に冠たるものであることは世界の花き業界が認めるところ。数量も国内消費の85%をしっかり守っている。輸入品の役割は日本にない物、ない時期、そして日本の生産が高齢化などにより減少したときにそれを補う、この3つの役割がある。3つ目の生産が少なくなって量的に補った代表がコロンビアのカーネーションである。

日本の花き業界は第二の生鮮食料品といわれるお惣菜に輸入野菜を使っていることが多いのに危機感を感じ、花もそうなってはならじと花束加工の素材を国内で提供すべく産地も取り組んではいる。しかし市場流通する規格は専門店の店頭販売の規格となっており、花束加工素材の規格や活け花・フラワーデザインの規格とは異なる。もう一度用途別に質の良し悪しを検討する必要がある。

日本の花き業界で再確認しておきたいことは、面積は小さいが手を入れて花持ちの良い見栄えのするものを提供していく花作り。そして花持ちは任せておけ、しかし丈を短く、花の輪の大きさもそこそこのものを量的に出荷する生産者。この2つにと分けていくべきである。今後農業の分野ではヨーロッパの花き園芸やカリフォルニアの農業がそうであるように、他国から労働力を導入する必要があるのではないか。そのときに数をこなす農業が日本で本格化する。これを一刻も早く花でも実現する必要がある。そうすれば日本の花作りはますます強くなるのである。

投稿者 磯村信夫 : 2010年11月15日 00:00

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