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2010年12月27日

産地情報の大切さを思い知る

東北地方へのトラックの出発が雪のため早く出たいところだったが、荷物が思いのほか多く、希望時間よりも30分~1時間遅れた。大雪にはならないとの予報なのでどうにか店では売れてくれるものだと思う。年末の雪の予報は東北や北海道、北越地方にとっては気になるところだが、どうにか見通しも立ち、生産者も小売店もまあまあの年の瀬になるだろうと思う。それにしてもクリスマス前の北西ヨーロッパの大雪や、アメリカのカリフォルニア州の集中豪雨で、欧米では残念なクリスマス商戦となって、客足も完全にストップした第51週であった。

日本では暖冬で小売店は正月用のものは買うに買えず、近年まれに見る菊類の相場安であった。昨年の12月から菊類は1年を通じて堅調であったから、この12月のスプレー菊と一輪菊の大幅な相場の下げは花き業界に大きな不安を与えた。特に菊類の比率が高い地方の市場にとっては大打撃の12月の切花市況であった。

少し詳しく菊類を見てみると、小菊については事前に入手した産地情報通りで、主産地の沖縄県の情報精度は非常に高く、今後とも相対価格もセリ価格もマーケットメイクしていけるだけの精度であった。スプレーギクについては、国内の産地のものは事前にもらっていた情報どおりの出荷量であった。しかし国産が少ないので円高もあって積極的に輸入をしたマレーシアのものを中心に第50週、第51週と近年まれに見る低調な価格となった。年末に使うものは暖かすぎて買えない。また輸入品の情報が的確に卸に伝わっておらず、どこの卸売会社も情報なしで販売するといった状況。これではマーケットメイクの仕様がない。少なくともアジア産のスプレーギクを取り扱う輸入商社は出荷先の中核市場と十二分に打ち合わせの必要がある。

この12月の一大事件は先に記したように24日の金曜日に白菊が暴落したことだ。それは愛知と福岡の出荷情報が当初もう少し後ろにずれ込むとのことであったが、プロの生産者たちは結局出荷を合わせてきた。ずれ込む予定が合わせてきたので、量は潤沢というよりも溢れかえってしまった。遅れるつもりであったので、事前に大手買参人を中心に輸入品の白菊や国産のものもすっかり手当てしていたからだ。こういう状況があったので、24日にセリ場では白いものはなんでも安いと言う様相を呈し、菊のみならず白いストック、白いスナップ、白のカーネーション、白のトルコまで安くなった。円高がしばらく続き、中国や韓国で作られている神馬がこれからも物日には出てくる。国産のものと上手に棲み分けるだけの独自の品種と品質を誇る輸入品が増えてきた菊類については、まず主要産地は主要市場に出荷状況を的確に伝える義務がある。主要輸入商は主要出荷先に的確に情報を伝える義務がある。そして主要市場はトータルの作柄状況、出荷状況を主要産地や主要輸入商にフィードバックし、今年の相場見通しを伝えておく義務がある。これができなければ卸売市場の役目は果たせない。市場は品揃えだけでなく、せり前、せりともに相場を決めるのが役目である。

2010年12月の市況は情報の共有が的確でなかったために起こった低迷市況であった。二度と失敗は繰り返してはならない。


本年一年ご愛顧いただきまして大変ありがとうございました。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年12月20日

大きな流れになったETHICAL消費

道徳的、倫理的消費と言われる消費動向「ETHICAL消費」が盛んになって来ている。身近なところでは地産池消もETHICAL消費行動が下地になっていると見る見方がある。

日本のようにすでにポスト成長社会に入った国では、マズローの欲求段階の一番上の欲求である自己実現の欲求が自分の根源的欲求であるかのようにふるまう人たちが増える。高学歴になり、そうは気に入った仕事などあるわけないから失業率が高まるのだが、そういう成熟社会でETHICAL消費は一つの潮流となっている。「この自販機は地元のサッカーチーム○○を応援しています」として利益の一部をサッカーチームに寄付する消費だとか、食堂で利益の一部を貧しい国々の子どもたちの給食費として寄付をするだとかだ。

農産物はCO2を体内に取り込み成長する。野菜を多く取り、花のある生活を絶やさないようにすることは地球環境からもETHICALと言える。このETHICAL消費の対象物である生鮮食料品花きを生産するとき、生産者は今年よりも更にETHICALに農業生産する必要がある。それは花の場合MPSを批准するということになるのであろう。オランダはこうして地球環境を改善するという点からMPSの認証制度を開発してきたのである。花き業界も大きな潮流となっているETHICAL消費に応えられる商品やサービスを行っていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年12月13日

TPP参加の是非で農業政策を考える

新聞や雑誌で、韓国の経済力の強さと、日本のお家芸とも言われていたテレビや自動車も後塵を拝しているニュースがやたらと目に入る。韓国はアメリカとFTAを結んだ。オバマ大統領からすれば、負けが込んでいただけに、NAFTA以来の久々のヒットを必要以上に強調している。

先週私は用事があり行けなかったのだが、オランダ大使館で花の関係者が招かれ、クリスマスパーティーが開催された。そのときオランダ側から報告があったのは、今年の6月、下院の総選挙があり政権が交代したが、しばらく連立を組めないでいた。ようやく内閣が出来たと思ったら、イギリス同様、財政の健全化のため公務員の削減に踏み切り、農業省は経済省と合併し経済農業開発省としたと言う。世界最大の農産物の輸出国はアメリカだが、輸入も多い。輸出額2番目のオランダは輸入を差し引くとNo.1となり、世界最強の農業国である。新品種開発力やユーロ安を梃に、日本にもっと花を買ってもらおうとこの10月、花き業界のトップの人たちが全員そろって日本に来た。オランダの穀物自給率は14%と、日本の32%に比べ大変低い。しかし付加価値の高い果菜類、軟弱野菜類、花きを作って輸出しているので農業は巨額な外貨を稼いでいる。

 さて日本の経済界ではお家芸の工業が決して国際競争力No.1であるというわけではなくなった現在、どうにかFTAやEPA、そしてすべての関税が撤廃され、実質アメリカやオセアニアとのFTAとも言えるTPPをどうしても批准しなければ、少なくとも韓国に後塵を拝し、日本は立ち行かなくなってしまうと危機感を強めている。経産省は所轄官庁でないのに研究会を開き、今の日本農業の競争力が強くなってもらおうと具体的に応援策を考えている。来年の6月、農業改革基本方針が出される。このタイミングで日本のTPP加盟が間に合えばベストだと経済界は考えている。しかし間に合わなければ、11月にアメリカで開かれるAPECの会議のときに、当然会議が行われるわけだから、そこに間に合えばまだどうにかなると考えている。

私は政府民主党の所得補償がヨーロッパで行われている農家の所得補償と全く別物であることを知っている。ヨーロッパの所得補償はデカップリング方式で、作らなくても補償されるから中小零細は日本で言えば米などを作らなくても所得は補償される。よって農地不動産マーケットに土地を売っても良いと働きかけ、農地は規模の経済を活かして農業で利益を出そうと考える農業者が大規模栽培を行うようになる。
バラで言えば日本では坪300本しか切らないアバランチェを、オランダでは坪800本切る。この品種は光と二酸化炭素と温度・湿度を一定幅にしておけば、切花本数が多くなるように品種改良されたバラだ。他の作物も揃いがよく、病虫害に強い、あまり手が掛からないなど、競争力の強い品種が生み出される。
日本ではどうだろうか。米で減反をしている。うまくて生産性の高い品種を使ったら、また減反をしなければならない。政府民主党の現在の所得補償は、実際には価格維持政策に近い。消費が少なくなって、米価が下がっても、農業で食っていっている所得の50%以上が農業からである専業者は2割、そのうちの半分が65歳未満で今後期待されるプロの農家だが、専業者よりも所得の多い兼業者にも同じように所得補償がされると言うのは税金の使われ方としておかしくないだろうか。所得補償はいいが、やる気のある人たちに農地が集まり、生産性を高めて国産競争に打ち勝ってもらえるようにすべきであろう。戦後取ってきた農業政策の誤りをこの半年やそこらで政府民主党が変革できるとは思えない。この点について私は悲観論である。よって花の流通の役割を担っている花市場として生産農家には国際競争力を念頭において質でも量でも価格でも力をつけてもらう具対策を次々に取ってもらえるようにしたい。しかし日本の農業政策は明らかに政治問題であり、JAはTPP絶対反対の自分の立場を、一定のところが来たら、専業農家が農業に打ち込める方針をたがえることなく、条件闘争に持ち込むべきというのが私の希望である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年12月 6日

ポスト成長マーケットの花売場

4日の土曜日、松と千両の出来を見に行ったら、昨年よりも良いので一安心。南天の実は悪いと言うし、クマが里に降りてきて悪さをしたと聞くので成りものは不作かと心配していたが、千両は実付きがまぁまぁなので良いお正月が迎えられそうだ。

第48週、第49週とここのところに来て、花も青果物も潤沢に出回るようになって、高値から平常相場に戻ってきた。平常相場に戻って量が出てくると、売れる店舗と売れなくなってきた店舗がはっきりしているのがわかる。大手企業のボーナスは先週出たところが多いから、今朝せり場で会うと「よく売れた」と言う小売店もあれば、「どうもパッとしない」と言っているお店もある。

リーマンショック以来、ここ2年で更にお客さんが集まる店と今までより売れなくなった店とはっきりしてきた。駅中だとか駅周辺という立地条件は小売業だからもちろんあるが、それだけではないというのが小生の観察だ。日本はポスト成長市場である。年寄りが増えているから、病院や介護、アンチエイジングのサプリメントなどのマーケットは拡大する。しかし16歳から64歳までの生産年齢の人たちが減っている。この年代は物入り世代だから、活発に消費する。この年代の人たちの人口が少なくなって、ほとんどの業界は右肩下がりになっている。G7の国々はポスト成長市場で、イノベーションが起きにくく、商品の差もちょっとした差で関心のある人以外はどれもが同じに見えて選ぶのも煩わしくなってしまう。でもそうは言っても人は消費をするわけだから、フェアーのときに買う。花屋さんでも集客力のある店は選択と集中でフェアーを積極的に開催している小売会社である。

だがフェアーだけで売れているわけではない。そのお店のファンになっているのは、そのお店の理念、ポリシーが前面に打ち出されていて、商品や店員の働く姿勢にそれが現れているお店がお客様から「人生意気に感ず」で支持を集めているのだ。食品スーパーの出店が都市部を中心に盛んに行われている。総合スーパーもコンビニよりも少し大きい食品スーパーを出店してきている。そこで花束が売られていることが多い。花の小売店の競争もますます激しくなってくるが、花の商いを通じて何を実現したいのか、その哲学とフェアーを行う企画力が選ばれる花店の条件になっている。このことをまだ若いBe We Flower'Sの佐藤社長から私は学んだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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