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2011年4月25日

震災から産地名を記すようになってきた

首都圏に戻ってくる行楽地からの車の渋滞が昨日の日曜日から始まった。ETCの休日1,000円もおしまいになるし、消費することも後ろめたくないし、ゴールデンウィークを前にしていよいよ普段の生活が始まったと見て良いだろう。花の相場も株式で言うところの「上げ100日下げ3日」の通り、3日の市で下がったものが4月から3ヶ月かけてもとの相場に戻ろうとしている。外国人が戻って来なければ、一流のホテルやレストランは元に戻ったとは言えないだろうから、政府の福島原発問題終息宣言から1年以降になって外国人が戻ってくると花の市況も堅調になっていくだろう。

さて余震が続く中だが、ゴールデンウィークを前に消費生活は次のステップへと進んできた。震災以来、電力不足も相まって、エコと節約の2つのトレンドは以前よりも強くなったと実感する。エコについて言えば、4月の中旬までは放射能問題から野菜苗の相場が安くて困っていた。しかし原発問題後1ヶ月過ぎ、首都圏ではようやく子どもたちが外で遊ぶ姿を見るようになってから、野菜苗が売れ始まった。省エネ商品の代表であるゴーヤなど、日陰を作り室温を下げようとするつる性野菜苗の人気はさらに強くなってきている。エコ、省エネとグリーンや野菜苗などが珍重されている。

節約の方は花には間際買いになってあらわれている。この頁でも繰り返し言っている通り、高付加価値品はあまり注目されず、新潮流だがオーソドックスな花型や色、そして品種が売れ筋だ。店頭では売れ筋プラス間際買いとなってあらわれている。母の日に向けたカーネーションやアジサイ、カラーの鉢、切花でもカーネーションやバラを中心に、ようやく量がまとまり、日中の陽気も初夏を思わせるようになって、母の日のムードが盛り上がってきた。母の日の前の5月1日のスズランも端午の節句のハナショウブも堅調市況で、カーネーションの切花は品質の良いコロンビア産が不作であることもあって、花持ちの良い国産の産地に買いが集まってきている。東日本大震災から品種名と値段はもちろんのこと、県名だけでなく産地名もきちんと書くところが増えてきており、消費者は選びやすくなってきている。花はアレンジや花束にしてしまうので産地名の表示はむずかしいが、単品で売っているときは消費者の関心事である県名や産地名を野菜と同じように表示していくこの習慣が今回の震災によって定着してきたことは悦ばしいことである。まだ値段と品種名だけで、県名や産地名を表示していない小売店はぜひ産地名や荷主名を明記してお客さんに買ってもらうようにしてほしい。お客さんがその県の出身だったとき、必ず買ってくれるというのが今までの私の経験だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年4月18日

単価安を折り込んで帳尻を合わせる

 今朝の荷物を見ていると、例年なら切り上がっているはずのキンギョソウが多い。昨年秋からの曇天や寒波に加え、なんと言っても円高なのに油代が高くなったことが影響している。バラ生産者もそうだが、A重油が80円以上となると今の単価水準だと暖房を十分にするというわけにはいかない。燃料費高騰の故に今出荷が多いのだが、実際家に飾ってみると前処理、後処理したものは持ちが良い。現時点で為替はドル円で83円、今後円が弱くなっていくものと見られるので、光熱費高、運賃高で時期がずれたり、生産が縮小したり、流通圏が狭まったりしていく可能性が高いとキンギョソウの量の多さを見て推測できる。
 キンギョソウが時期がずれているので、今年の5月1日スズランの日や端午の節句、ゴールデンウィークにかかっている8日の母の日などの作柄はどうであろうか。まずスズランは遅れ気味で主産地の長野県や北海道などが間に合わない。だから数量は昨年の半分くらいになるのではないかといわれている。単価水準は例年並。また菖蒲は風呂用の葉菖蒲も生育が遅れている。関東では茨城産が主力で、いずれも霞ヶ浦や利根川水系の産地では、福島原発の影響できちんと放射能測定をして、安全を確認して出荷している。これも生育が遅れていて丈が短い。花菖蒲も同様で、例年の80%の出荷を見込んでいる。関東地方では伊豆の河津を中心に、愛知県産、埼玉県産の出荷が多い。作柄はいずれも遅れ気味である。先週末、鉄道や飛行機のゴールデンウィークの予約状況が開示されたが、例年の70~80%の状況だという。花き業界では、今年は旅行に行く人が少ないのでゴールデンウィークの最後の日が母の日となり、いつもの年だと需要が落ちるが、皆家にいるので母の日はゴールデンウィークの影響をそんなに受けないと強気な見通しを持つ人が多い。ようやく4月も15日を過ぎて、自粛ムードから自粛しすぎるとかえって経済がまわらないと街にも人が多く出てきた。そこで週末花屋さんも、母の日早割りセールや店をすっかり母の日ムードを盛り上げるディスプレイにしてお客様に訴求している。東京では少なく見積もる人で例年の70%、強気の人はゴールデンウィーク間近でも昨年を上回り、110%を目指す人もいる。これら「物日」とは別にこのゴールデンウィーク中、お墓参りに行く傾向がここ数年あるが、仏花需要がさらに強くなるのではないかと予測する人が多い。ETCの休日1,000円はゴールデンウィーク中も適用されるので、東北に親戚を持つ人などはお見舞いに行く。東北に行かない人は安近短で団塊の世代を中心に両親に会いに行ったりお墓参りに行ったりする。震災後2ヶ月経って、直接被害がなかった関東以北の人は、5月期、卸・仲卸ベースでようやく80%の取扱になるのではないかと思う。
 現時点で、東日本大震災で花き業界に金額ベースで与えた被害で一番大きかったものは価格の低下であると言える。この大震災の前にモエ・ヘネシールイ・ヴィトンがブルガリを買収した。これによりブランド会社としては圧倒的な強さとなったが、しかし東日本大震災が原因で株価は下がった。日本のマーケットはモエにとって10%くらいのものだが、しかし日本で評価された商品は全世界で評価を受ける。その日本が高級品を控えていく心の波長になっているので、花も相場を引っ張る新品種などが評価されにくい状況と成っている。そこが現在のところ花の単価2割安となって現れている。この傾向はまず第1四半期の6月までかなり強く残り、上半期9月までは少なくとも前年の1割安は覚悟しながら相場水準を見守っていく必要がある。今年は昨年利益を出せなかった小売店が利益を出そうとする年、そして頭を引っ張る高品質の花が震災により1割ほど安い年と仮説できるので、花き業界は余程心してまず上半期は当たらなければならない。洋服で見立てればサブカルチャーの服やカジュアルの服、食べ物で言えばB級グルメなど市民にすんなり受け入れられる花の品目で、新しい流行のもの、この花の量を販売していく。こういう年になりそうである。

投稿者 磯村信夫 : 17:41

2011年4月11日

震災後1ヶ月で小売店の重要性を思い知る

先週の木曜日7日の夜半前、大きな地震が東北でまたあった。それにより東日本の花き業界は復興の出鼻がくじかれた格好になった。東北地方の花き流通のハブは仙台であったが、言われていたとおり1ヵ月後にまた地震があった。津波はなかったものの東北各県で停電をし、新幹線が不通となった。東北では金曜日花の取引が出来なかった市場もあり、それを今日の11日月曜日持ち越して取引をしている。東北各県の卸売市場は物流の拠点を仙台と東京羽田周辺の荷受所に置いている。スマトラ沖の地震では3ヶ月目にもマグニチュード7.0以上の地震があったというので、6月までの間、再度大地震があることを想定し、営業活動を行っていく必要がある。

東日本の花の市況は日本農業新聞の日農INDEXで詳しく報じられている通りで、例年より市況が3割ほど安い状況が大震災後1ヶ月続いた。今後の市況予想は次の通り。昨年菊類が高く、他の品目も堅調市況となって小売店は利益を出すところまで行かなかったところが多い。よって本年は利益確保のため単価が下がっていく傾向の中での大震災であったので、この傾向にさらに拍車が掛かっている。しかも3月21日にこのページでお話をした通り、震災の影響により相場を引っ張る新品種などがさして注目されず、むしろ定番化した花に需要が集まる傾向が強い。(花そのものが直接生命とは関係ないものとして捉えられていて、その中でも必要だとされるものはいずれもスタンダードな花であり、その花の種類である。遊び心やイタズラ心が受け入れられにくい心理的な波長になっている。)そうなると消費者に対する新しい切り口が見つけられにくいので、リーマンショック以降続くデフレに花の市況は飲まれていく可能性が高い。(10%安の傾向が続いても収支を合わせられるようにすることが必要だと考えている)

3月11日の彼岸の需要期に東日本大震災が起き、今後の余震も2ヶ月続くことを覚悟しなければならない。また福島原発の影響も引き続き考えなければならないとすると、花き業界全体として当然に単価安の収益源を覚悟しておく必要がある。ではどうすれば需要減の単価安で日本の花の産地は踏ん張って、来期も花き農業を続けることが出来るか考えておく必要がある。

3月期の最大の経済的被害を被ったのは、お彼岸の花をお願いしている沖縄県と愛知県の菊生産者たちである。沖縄県の「太陽の花」と「JA沖縄」の二大生産団体は、今までのライバル関係を乗り越えて、地元花き生産者と内地の流通業者のために出荷調整を行うとともにハブ機能を明確化することによって出荷物流コストを下げ、農家負担を削減した。また実質赤字仕切となってしまう農家のための救済措置をスピーディーに行うことを決めている。まさに沖縄県にとっても有事と言えるこの2011年春の彼岸期、そしてゴールデンウィークや盆には墓参り需要が今までよりも大きくなると想定される中、ただ単にハブ機能だけでなく、パートナーとして価値観を共有できる、言うならば善意のサプライチェーンに出荷販売物流を組み替えていく。まさに「疾風に勁草を知る」であり、こういうときこそその会社が持っている機能と人格でこれから取り組むべきパートナーに荷を預けようとしている。仕事なので当然採算や収益を問題視するが、少なくとも全体最適で仕事をしているか、中長期の視点に立って今を生きているか、そのことが消費者や産地から我々流通業者に問われている。誰から買うのか、どこに出すのか。花き業界は10年前まで絶えず右肩上がりであったので、若い人たちが重要な仕事をしている。若気の至りでこの大震災を心に留めず、今までやってきた局地戦でしのぎを削り、競争に勝つこと、同業者を出し抜くことに勝利があると勘違いしている若い人たちがいるかもしれない。卸や仲卸や小売業の経営者は社員がこのような仕事の仕方をしていないかチェックして改めさせる必要がある。大切なことは今花を消費者に受け入れてもらうことである。復興のフェーズに入ったとき花店が仕事として成り立つように支援する。小売業者が花き業界を支えてくれなければ花き産業そのものが立ち行かない。このことが震災1ヶ月で強く感じられることである。

沖縄県の「太陽の花」、「JAおきなわ」の二大出荷団体がしているように生産者と消費者を想い、そして価値観を共有する流通業者と新たな取り組みを始める。混乱期である今、一から明日を作っていく気構えが大切なのである。繰り返すが、花き業界のアンカーである小売店にどうしても仕事として花き小売業を成り立たせてもらわなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年4月 4日

専門店と生産地を復活させる

昨日社員の結婚式があって出席したが、自粛の考え方もあろうが、何も華美な結婚式や披露宴をしているわけではなし、出席して本当に良かったと思った。改めて花の美しさに感動した。いつの間にか東日本大震災で私たちの気持ちもピンと張り詰めたものがあり、何か感覚が鋭くなっていて、花々はハッとする美しさで胸に焼き付いている。

さて、今期の日本の花き業界の目標の一つに、大震災で加速するに違いない花の小売専門店の減少に歯止めをかけること、花き生産の減少にストップをかけ花き生産農家の採算向上と後継者育成に力を入れることがある。阪神大震災の例では2年後、小資本の2割の小売店が復活しなかった。これを震災に遭われた東日本でいかに復活してもらい、今まで以上に活躍してもらうかである。花の小売専門店は地域文化の担い手としての役割がある。場合によっては料理よりも地域によって異なる場合があり、茨城県土浦近辺の例を出せば、結婚式のような七五三のお祝いと花飾りがある。このようなことは伝統的な花店しか出来ない。また花店は伝統を守るだけでなく、新しい花との生活の提案を行っており、日本の優秀な花き農家が時代に先駆けて提案する新しい花々を伝統の中にも取り入れて今を表現する。

花の小売店は専門店のほかにもあり、コンビニやカタログ販売、インターネット販売は花の買い物時間の節約の役割、スーパーの花は花代の節約の役割、ホームセンターの花はリビングから窓辺、玄関先から庭、それぞれに似合う花を販売する役割がある。花の専門店は八百屋さんや果物さんと違い、割烹やレストラン、食堂だ。品物を見極める目と腕が売り物で、だからどんなに小さくともやっていける。これが屋のついた商売でも花屋がどうしても市民社会に必要な訳で、職人もいれば芸術家もいる。この人たちを絶対に東日本大震災の後も復活させるのだ。産地も同様だ。福島県、茨城県、千葉県産は上質なものが多い。風評被害で野菜は半値以下になっているものも多いが、花については買参人はいたって冷静で、単価も他の県のものとほとんど変わりない。一部食品スーパーなど気にするところもあるが、セリ単価が他県産とほとんど変わらないところを見ても、全ての食品スーパーが買い控えているということはない。どのように販促していくかが今後のポイントとなるが、販促に注意したいのは輸出の時だ。輸出時に一言添えなければならないのではないかと考えている。
まず震災後1ヶ月で、日本中で何らかの震災の影響を受けているから、いくつかの仮説を立てて実行計画を立てる。ようやく普段の暮らしに戻りつつあり、いつの時点で旅行など市民のささやかな楽しみを追及しても後ろめたくないかの時期を探り、被災地を除き前年並みの花の消費水準と仮定したい。もし母の日以降も余暇、レジャーなどの支出を極端に控えるようであると、当然失業率が高まったり所得が下がったりしていくので、そのときには花の消費見込みの下方修正を余儀なくせざるを得ない。お金のことだけ言って恐縮だが、企業業績が急激に落ち込んでも給与が一定水準を保っている今のうちに、震災後一ヶ月経っても未だ復興に向けた活動すらできない多くの同胞がいることを片時も忘れることなく、しかし日本家族が普段の生活を送ってもらうことが必要である。国難であるから、7月のボーナスの金額に影響されるお中元は当然控えめとなるであろう。だがなんと言っても大切なのは、国難を思い、しかし慌てることなく一日一日充実した仕事生活と消費生活を送っていくことであろう。希望の朝を迎え、勤勉な昼を過ごし、感謝の夕べを迎える。そして自分の出来る限りの範囲で被災地の復興を手助けし、新しい日本の花き産業を作っていくことであろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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