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2011年4月11日

震災後1ヶ月で小売店の重要性を思い知る

先週の木曜日7日の夜半前、大きな地震が東北でまたあった。それにより東日本の花き業界は復興の出鼻がくじかれた格好になった。東北地方の花き流通のハブは仙台であったが、言われていたとおり1ヵ月後にまた地震があった。津波はなかったものの東北各県で停電をし、新幹線が不通となった。東北では金曜日花の取引が出来なかった市場もあり、それを今日の11日月曜日持ち越して取引をしている。東北各県の卸売市場は物流の拠点を仙台と東京羽田周辺の荷受所に置いている。スマトラ沖の地震では3ヶ月目にもマグニチュード7.0以上の地震があったというので、6月までの間、再度大地震があることを想定し、営業活動を行っていく必要がある。

東日本の花の市況は日本農業新聞の日農INDEXで詳しく報じられている通りで、例年より市況が3割ほど安い状況が大震災後1ヶ月続いた。今後の市況予想は次の通り。昨年菊類が高く、他の品目も堅調市況となって小売店は利益を出すところまで行かなかったところが多い。よって本年は利益確保のため単価が下がっていく傾向の中での大震災であったので、この傾向にさらに拍車が掛かっている。しかも3月21日にこのページでお話をした通り、震災の影響により相場を引っ張る新品種などがさして注目されず、むしろ定番化した花に需要が集まる傾向が強い。(花そのものが直接生命とは関係ないものとして捉えられていて、その中でも必要だとされるものはいずれもスタンダードな花であり、その花の種類である。遊び心やイタズラ心が受け入れられにくい心理的な波長になっている。)そうなると消費者に対する新しい切り口が見つけられにくいので、リーマンショック以降続くデフレに花の市況は飲まれていく可能性が高い。(10%安の傾向が続いても収支を合わせられるようにすることが必要だと考えている)

3月11日の彼岸の需要期に東日本大震災が起き、今後の余震も2ヶ月続くことを覚悟しなければならない。また福島原発の影響も引き続き考えなければならないとすると、花き業界全体として当然に単価安の収益源を覚悟しておく必要がある。ではどうすれば需要減の単価安で日本の花の産地は踏ん張って、来期も花き農業を続けることが出来るか考えておく必要がある。

3月期の最大の経済的被害を被ったのは、お彼岸の花をお願いしている沖縄県と愛知県の菊生産者たちである。沖縄県の「太陽の花」と「JA沖縄」の二大生産団体は、今までのライバル関係を乗り越えて、地元花き生産者と内地の流通業者のために出荷調整を行うとともにハブ機能を明確化することによって出荷物流コストを下げ、農家負担を削減した。また実質赤字仕切となってしまう農家のための救済措置をスピーディーに行うことを決めている。まさに沖縄県にとっても有事と言えるこの2011年春の彼岸期、そしてゴールデンウィークや盆には墓参り需要が今までよりも大きくなると想定される中、ただ単にハブ機能だけでなく、パートナーとして価値観を共有できる、言うならば善意のサプライチェーンに出荷販売物流を組み替えていく。まさに「疾風に勁草を知る」であり、こういうときこそその会社が持っている機能と人格でこれから取り組むべきパートナーに荷を預けようとしている。仕事なので当然採算や収益を問題視するが、少なくとも全体最適で仕事をしているか、中長期の視点に立って今を生きているか、そのことが消費者や産地から我々流通業者に問われている。誰から買うのか、どこに出すのか。花き業界は10年前まで絶えず右肩上がりであったので、若い人たちが重要な仕事をしている。若気の至りでこの大震災を心に留めず、今までやってきた局地戦でしのぎを削り、競争に勝つこと、同業者を出し抜くことに勝利があると勘違いしている若い人たちがいるかもしれない。卸や仲卸や小売業の経営者は社員がこのような仕事の仕方をしていないかチェックして改めさせる必要がある。大切なことは今花を消費者に受け入れてもらうことである。復興のフェーズに入ったとき花店が仕事として成り立つように支援する。小売業者が花き業界を支えてくれなければ花き産業そのものが立ち行かない。このことが震災1ヶ月で強く感じられることである。

沖縄県の「太陽の花」、「JAおきなわ」の二大出荷団体がしているように生産者と消費者を想い、そして価値観を共有する流通業者と新たな取り組みを始める。混乱期である今、一から明日を作っていく気構えが大切なのである。繰り返すが、花き業界のアンカーである小売店にどうしても仕事として花き小売業を成り立たせてもらわなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 2011年4月11日 00:00

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