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2011年4月18日

単価安を折り込んで帳尻を合わせる

 今朝の荷物を見ていると、例年なら切り上がっているはずのキンギョソウが多い。昨年秋からの曇天や寒波に加え、なんと言っても円高なのに油代が高くなったことが影響している。バラ生産者もそうだが、A重油が80円以上となると今の単価水準だと暖房を十分にするというわけにはいかない。燃料費高騰の故に今出荷が多いのだが、実際家に飾ってみると前処理、後処理したものは持ちが良い。現時点で為替はドル円で83円、今後円が弱くなっていくものと見られるので、光熱費高、運賃高で時期がずれたり、生産が縮小したり、流通圏が狭まったりしていく可能性が高いとキンギョソウの量の多さを見て推測できる。
 キンギョソウが時期がずれているので、今年の5月1日スズランの日や端午の節句、ゴールデンウィークにかかっている8日の母の日などの作柄はどうであろうか。まずスズランは遅れ気味で主産地の長野県や北海道などが間に合わない。だから数量は昨年の半分くらいになるのではないかといわれている。単価水準は例年並。また菖蒲は風呂用の葉菖蒲も生育が遅れている。関東では茨城産が主力で、いずれも霞ヶ浦や利根川水系の産地では、福島原発の影響できちんと放射能測定をして、安全を確認して出荷している。これも生育が遅れていて丈が短い。花菖蒲も同様で、例年の80%の出荷を見込んでいる。関東地方では伊豆の河津を中心に、愛知県産、埼玉県産の出荷が多い。作柄はいずれも遅れ気味である。先週末、鉄道や飛行機のゴールデンウィークの予約状況が開示されたが、例年の70~80%の状況だという。花き業界では、今年は旅行に行く人が少ないのでゴールデンウィークの最後の日が母の日となり、いつもの年だと需要が落ちるが、皆家にいるので母の日はゴールデンウィークの影響をそんなに受けないと強気な見通しを持つ人が多い。ようやく4月も15日を過ぎて、自粛ムードから自粛しすぎるとかえって経済がまわらないと街にも人が多く出てきた。そこで週末花屋さんも、母の日早割りセールや店をすっかり母の日ムードを盛り上げるディスプレイにしてお客様に訴求している。東京では少なく見積もる人で例年の70%、強気の人はゴールデンウィーク間近でも昨年を上回り、110%を目指す人もいる。これら「物日」とは別にこのゴールデンウィーク中、お墓参りに行く傾向がここ数年あるが、仏花需要がさらに強くなるのではないかと予測する人が多い。ETCの休日1,000円はゴールデンウィーク中も適用されるので、東北に親戚を持つ人などはお見舞いに行く。東北に行かない人は安近短で団塊の世代を中心に両親に会いに行ったりお墓参りに行ったりする。震災後2ヶ月経って、直接被害がなかった関東以北の人は、5月期、卸・仲卸ベースでようやく80%の取扱になるのではないかと思う。
 現時点で、東日本大震災で花き業界に金額ベースで与えた被害で一番大きかったものは価格の低下であると言える。この大震災の前にモエ・ヘネシールイ・ヴィトンがブルガリを買収した。これによりブランド会社としては圧倒的な強さとなったが、しかし東日本大震災が原因で株価は下がった。日本のマーケットはモエにとって10%くらいのものだが、しかし日本で評価された商品は全世界で評価を受ける。その日本が高級品を控えていく心の波長になっているので、花も相場を引っ張る新品種などが評価されにくい状況と成っている。そこが現在のところ花の単価2割安となって現れている。この傾向はまず第1四半期の6月までかなり強く残り、上半期9月までは少なくとも前年の1割安は覚悟しながら相場水準を見守っていく必要がある。今年は昨年利益を出せなかった小売店が利益を出そうとする年、そして頭を引っ張る高品質の花が震災により1割ほど安い年と仮説できるので、花き業界は余程心してまず上半期は当たらなければならない。洋服で見立てればサブカルチャーの服やカジュアルの服、食べ物で言えばB級グルメなど市民にすんなり受け入れられる花の品目で、新しい流行のもの、この花の量を販売していく。こういう年になりそうである。

投稿者 磯村信夫 : 2011年4月18日 17:41

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