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2011年5月30日

父の日は黄バラ?それともヒマワリ?

月末の稼ぎ時に雨で花屋さんたちは残念でしょうがないという顔をしていた。朝せり前に挨拶を交わすと、「土日の雨はしょうがないことだけど、週末もっと売れたのに」とか「月末で仏様の花を買いに来るお客さんにこの花もすすめたいのに」と異口同音に残念がっていた。

今度の震災で、当初独立店舗の花屋さんがやる気を失ってしまうのではないかと心配したが、それは全くの杞憂で、逆に「花の価値を高め販売する花屋という良い仕事をさせてもらっている」、「もっとがんばって花を届けよう」という意識に専門店は満ち溢れている。むしろスーパーマーケットの花売場の人たちや花束加工業の人たちの方がクールで、今花屋さんが持っている商売への情熱というものが伝わってこない。そう言うと少し失礼に当たると思うが、至って普通の量販店の人と比較すると、花屋さんの方がやる気だ。

さて、6月に入ると父の日となるが、父の日というと「お父さんの日」で、年配のまさにお父さんかお父ちゃんの感じだが、今は結構「パパの日」で、団塊ジュニアのお父さんもその対象者に入ってきた。そこで脚光を浴びつつある花はオーソドックス派は黄バラ、そして近頃はヒマワリである。天照大御神の時代から、女性が太陽というのは日本の伝統であったが、これが6月の父の日になるとヒマワリが近頃の父の日の花になろうとしている。パパは料理もするし、後片付けもする。子どもとよく遊んでくれて、そして何より外でタフに仕事をして稼いできてくれる。時代とともに父の日は内容が変わってきて、父の日の花も変わる。母の日には比べるべくもないが、"Say it with flowers"で、父の日に花が着実にプレゼントされるようになっていることは、成熟した国家の押さえが利いた文化のように思うが皆さんはいかがであろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年5月23日

復興に歩み出す

先週の18日水曜日、社団法人日本花き卸売市場協会の第52回通常総会が愛知県犬山市で行われた。東北からは福島花きさんにも出席いただき、元気な顔を見せていただいて我々もホッとした。そしてその引き締まった顔から決意のほどを感じた。

21日土曜日の日経新聞の朝刊に、都内のホテルの4月の客室稼働率の記事が載っていたが、国内の一流ホテルでも40%を切り、推測はしていたものの経営の大変さを思うとぞっとした。どうやら努力をすれば損益分岐点を上回るかもしれないと私自身が現場で思うようになったのは、ゴールデンウィークの直前からである。昨日の日曜日も午後から雨との予報だったが、お昼までは良い天気で、ホテルにも繁華街にも人が良く出ていた。ようやく戻りつつあるが、割安やセールじゃないと気持ちも財布も緩めないようである。

21日土曜日、政府の復興構想会議が行われた。財源をどうするかで話し合われたのだが、私見では消費税しかあるまいと考えている。ただ政治がポピュリズムに走って、復興財源の目的税化としては良いのだが、復興財源を確保できた後にも今後は福祉目的などと言い出さないようにさせなければならない。高齢化社会とは年寄りが多いわけだから、年寄りも自らが税負担をし、重すぎる若者の税負担を軽減させていかなければならない。また国際競争をしている企業の税負担も国際水準レベルまで引き下げるべきであろう。日本は消費税の導入につき、もう一度税の公平性の概念から税制改革をこの期に行うべきである。花の付加価値税はヨーロッパでは15~20%のところが多い。それでも普通に消費されているのは、それぞれの国民は税についてよく説明を聞き、判断をしたからである。国によっては将来の国民生活のために、内閣を投げ打って財政再建に備えたところもあった。私自身は現内閣にそれを期待している。

もう一つ、昨日卸売市場としてすばらしい活動だと思われた事業があった。それは築地市場で「市場まつり」ならぬ水産、野菜・果物の安全PR特売イベントが行われたことである。日曜日の休市を利用し、都民に築地市場が日ごろ取り扱っている被災地域の海産物、農産物を、安全安心をPRしながら販売した。産地から来てもらい、卸、仲卸が一緒になって、科学データに基づいた安全性をPRすることによって風評被害をまぬがれる。本来市場がやるべきことを築地は先頭になって行った。風評被害をなくすため、なんとなく触らぬ神に祟りなしで敬遠してしまうことを阻止するため、プロの我々が見立て、そして「科学的にも安全が証明された魚や野菜、果物は絶対大丈夫」、これを消費者に強く訴えるのは築地市場の開設者である地方自治体と卸、仲卸の役目である。この運動が早く日本中の卸売市場に広まってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年5月16日

拈華微笑(ねんげみしょう)

震災後、2ヶ月経って花の良い話がたくさん出てきた。仙台では水も出なかったから、とあるお花屋さんは道行く人に「良かったらもらってください」と花をプレゼントした。水戸では7割以上の墓石が倒れて墓参りどころではなかったけれど、とあるお花屋さんは「花が大好きだというお客さんに、『結婚式もなくなったのでこれも持って行って下さい』と花を差し上げたら、どうしてもその分のお金も置いていくとお客さんは聞かないのです。そんなこんなで少し押し問答していくと、両方とも泣き出してしまい困ったことがありました。それも1人だけではなくて、何人ものお客さんが『花屋さんが開いていて良かった』、『買わせてもらえてありがたい』と涙ながらに言うのです」と話していた。また「謝恩会がなくなってそれ用に用意していた花がロスになりました。でも学校から『小額だけどいつもの予算より多めに持ってきてください』と卒業式用の花をプラスしてくれたこともありました」との話もあった。

皆さんもTVで東北の被災地でけなげに咲いたサクラの映像や皇后陛下が最後まで大切にお持ちになったラッパズイセンの花束、母の日に白いカーネーションを仮設テントの花屋さんで買う若い女性など、言葉にはできない胸のうちを花が伝えている映像をご覧になったことでしょう。

この間、初めて知ったのだが、このような逸話があり、それは仏教界で、特に禅では今でも伝承されているそうだ。それは"拈華微笑(ねんげみしょう)"という話だ。釈尊はいつものように講話をしていたとき、そこにあった金色の花"金波羅華(こんぱらげ)"を無言で手にかざした。大衆も弟子たちも怪訝そうな顔をしていたが、ただ一人迦葉(かしょう)はにっこり微笑んで、釈尊の心からの教えを心で受け止めた。薬師であれば本願が「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」と言葉にするが、無言での教えが花にはある。坐禅することをすすめる人が多いが、花はまさに座禅する「無」と一体化する。座禅しなくとも静かで穏やかな心を湧き出してくれる。

私は大森に住んでいるが、若いお父さんが上の子の手を、若いお母さんはベビーカーを押しながら駅ビルの花屋さんで花を選んでいる姿を週末によく目にする。確実に若い人たちの家庭に花が根付いてきていることを一個人として私は大変うれしく思っている。
"拈華微笑"。ハッとする虜になるほどの今の美をもたらしてくれる花は、誰もが忙しい現代の私たちの心にとって欠かせないものであると言えるだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年5月 9日

震災の余波でもまぁまぁだった母の日

切花の赤いカーネーションや鉢のカーネーションが10年前と同じ相場に戻るなど、近年にない母の日らしい相場展開となった需要期であった。事前の受注状況は80%くらいだったものの、間際の駆け込み需要が多く駅周辺の店や繁盛店などは前年を上回ったところが多かった。切花、鉢物ともカーネーション類のここまでの高騰は予測していなかったが、ゴールデンウィーク中のお墓参りの仏花需要は予測通りであった。ゴールデンウィークが明け、母の日が明けた今日の荷は菊類が多いが、菊の生産地は、団塊の世代が全員65歳以上になるまでは、と言ってもあと2、3年だが、ゴールデンウィークは田舎に行ったり、あるいはリタイア後の第二の人生を考える上でも、また母の日が近いこともあってお墓参りに行ったりするということを知っておく必要がある。だから母の日明け、またゴールデンウィーク明けの今日、菊類が多いのは間違いである。

母の日以降は品目を替える、すなわちシャクヤクやカンパニュラなどの初夏の草花、トロピカルのアンスリュームやヘリコニア、ハモノなど、そしてトルコギキョウやユリのように夏にも花持ちの良いものに主力品目を入れ替え、また産地も入れ替える。これが花き流通業界の今週の消費者の支持を受ける品揃えだ。

新聞や経済誌で、デパートの売上が3月、4月と予測したほど落ち込まず、むしろこじっかりしていると伝えている。それはリーマンショック後の合併や店舗閉鎖、商品力の強化などの努力の賜物と言える。デパートが存立する地域は花の消費は活発で、客層はデパートと花店はほとんど同じだと言えるが、震災後の花の3、4月の実績はデパートより劣る。農産物は野菜、切花、果物、鉢物の順で、生活必需品の度合いが測られるが、切花、鉢物とも震災後、付加価値の高い高級品の人気が今ひとつで、全体の相場を引っ張ることが出来ない。また切花では昨年良かった白菊の生産が多く、安値で全体の相場に堅調感がない。このことを鑑みると、デパートとは違って8月の需要期までコスト削減の経営計画を立てる必要がある。そして第19週の今週であれば、初夏用に主力商品を入れ替えていく。無駄を排除する。こういった地味な努力が欠かせないのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年5月 2日

消費戻る

ゴールデンウィークに入り、関東地方はようやく人出が戻ってきた。需給ギャップはあるものの、繁華街に人が溢れ、安近短の温泉地やリゾートホテルなど割引セールもあってか、久しぶりの賑わいを見せている。節電にも慣れて、暗くて何か怖いという場所が少なくなってきた。これも消費回復につながっている。

4月の花の小売店の業績を見てみると、冠婚葬祭の通称「仕事屋」は苦戦を強いられた。特に結婚式は自粛でキャンセルが多く、半分にも満たないところが多かった。葬儀も近年家族葬に近い規模の葬儀が多くなり、今年に入ってようやくつながりを大切にした人の尊厳をもった100人以上の規模の儀式に振り子は戻ってきていたが、大震災以降、4月は内々でと規模は縮小した。売上は例年並かやや落ちるものの、利益率が上がり決して悪くなかったというのが店売りを主体にした小売店である。切花も鉢物も例年よりやや悪かった程度で、少なくても利益で見た場合、昨年より改善している。卸、仲卸では当初の予定通り売上で80%台だったところが多い。各社とも目標は70~80%であったから、いずれも目標を達成し関東地方では思いのほか消費の回復は早いと見て良い。

それにしても、昨年まではゴールデンウィーク中に結婚式をすると出席していただく方に迷惑だと考えて控えたものだが、今年は4月29日からゴールデンウィーク中にかけての結婚式がある。3月、4月と出来なかったから、そこに入れているという人が多いのだろうか。母の日前なのに結婚式で使われる花が相場を引っ張っている。それとこれは案の定だが、お墓参りに行く人が多く、仏花が良く売れている。オーソドックスな菊を中心にした仏花はもちろんのこと、季節の花やバラやユリなども含めた多様な花が使われていて、普通の花束なのか仏花なのかほとんどわからなくなっている。

原発が気がかりだが、消費は戻りつつあり、あとは震災後の共通の目標である「これから100年もつサプライチェーンを再構築する」に向かって花き業界は進むだけだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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