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2011年6月27日

自由貿易協定は輸出に有利だ

25日の土曜日、当社の株主総会が大田市場事務棟で開催された。一般株主の方から、TPPについて当社の考え方の質問があった。新聞報道によると、ベトナムのホーチミンで開かれていた会議については参加者の合意がなされず、11月にアメリカで開催される会議に最終決定を行うとされている。日本については参加の意向を待っているとの見解で終わったそうである。

TPPだけでなく、FTAやEPAについて、総会の席上でこうお答えした。
「切花については、日本は輸入の関税がゼロで植物検疫さえ通れば、輸入の切花は国内の産地のものと何ら変わりありません。これは福田総理のときからそうなっています。近年日本からの輸出機運が盛り上がっています。実際に輸出するとなると、輸入国の関税が大変障害になっています。FTAを結んでいるシンガポール等へは輸出入の時間と書類作成の手間と運賃をみれば良いので切花の輸出はビジネスとして成り立つと思いますが、特別の貿易協定を結んでいないところは関税が問題で、国内の小売価格が輸出先の卸価格となってしまうのです。これではごく一部の裕福層の需要しか見込めず、現在日本の切花輸出に関してはむしろ困っているということです。ですから自由貿易協定は賛成の立場です」と申し上げた。

 日本の農業は地形が縦長で似ているイタリアと同様、果菜類、軟弱野菜、花、そして競争力のある果物と畜産の5つでやっていくべきだ。もちろん昨今話題になっているように、日本国の種苗会社が独立を保ち、さらに開発力を発揮できるような国策も一方に必要だ。種苗から小売店まで「食と花を文化と見る人たち」によるサプライチェーンが日本の農業を国際競争力のあるものにし、観光立国日本を作っていく。国の施策は食料自給率に偏重しているように思われてならない。食料で日本に不向きな穀類があれば、それは石油と同様、輸入して備蓄しておけば良い。日本は特色のある日本ならではの美味しさを表現できるものを量的に作っていく。そして当然競争力があるから輸出される。その一端を大田市場は仲卸と一緒になって担いたいと思っているのだ。福島第一原発の災害で現状輸出の商談は止まっているが、羽田の国際化とともに大田市場の花き部では、市場の中で輸出検疫が出来るようになっている。放射能問題の解決と自由貿易協定化は日本の花き生産業界と卸売市場業界の望みであると言えるだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年6月20日

団塊の世代の退職と花

今日の日経新聞一面トップに「大卒者13.7%増」と大手上場企業が大卒者の採用に前向きになっている記事が出ていた。我が社も震災で採用試験を順延し、夏前に内定を決めようとしている。大手企業が大卒者採用に前向きなのは、戦後のベビーブーマーたちが会社を去っていくことになっているからだ。このことは65歳以上になって年金生活者が増え、財政を圧迫することを意味し、消費生活においても同じ旅行に行くにしても支出額や回数に限りが出てきたことを意味する。

花き業界においては仏花はここ5年、団塊の世代が60歳になって65歳のハッピーリタイアメントを前に、第2の人生の目標を決めるため先祖の墓にお参りをしてきた。そのため物日の需要だけでなく、1日・15日の仏壇の花の入れ替え時期に相場が持ち上がってきた。昨年のように仏花素材の菊や小菊が不足すると花の相場が高値基調になり、日本中の花き市場は久々に前年の取扱金額を上回る実績を残した。それは団塊の世代は日本列島に押しなべて居住しているからである。その団塊の世代がハッピーリタイアメントの時を迎えている。昭和20年生まれはすでにリタイアした人も多く、その分花き市場では昨年に比べて菊や小菊類の相場が出にくくなっている。この傾向が今後ますます強くなっていくのだ。

そして40歳前後の団塊ジュニアと言われる人たちは団塊の世代とは違い、日本の各地に平均的に居住しているわけではない。フリーターの世代でもあるこの団塊ジュニアの世代は、地域の道州制の中心都市に集まっている。イギリスを先頭にEU諸国と同様、日本も団塊ジュニアが中心となって政治経済を回すようになってきた。消費の分野はまさに団塊ジュニアが引っ張っている。衣料品、日用品で言えばルミネやアトレなどの駅ビルの成功事例がある。花店であれば日比谷さんや青山さん、あるいはユー花園さんの成功事例がある。小売業は立地産業であるから、立地条件を鑑み、店売り、ギフト、文化(冠婚葬祭)や物日、どれを重点に行うか、また販売手法はインターネットなのか、出張サービスなのか、路面店なのかなど、もう一度自社の強みをチェックし、自社はどういう小売店であるべきかを定義しなければならない。大筋では世界に通用する日本文化としての花活けや庭作りなどの空間美があるだろうし、団塊ジュニア世代の持っている日本人としての美意識、それはポップカルチャーをも含め、それに合う色や形状の花である必要がある。この2つの外せない条件を元に、小売、卸売市場、生産地はまだ仏花が売れている間に仮説を立て、PDCAサイクルを回して足腰の強いものにしなければならない。

2015年までの間に各自正解を見つけていく、その過程の中で合併やM&Aなど数の調整が起きてくる。避けて通れないこととして積極的にチャレンジし、次世代に花き業界のあるべき姿を5年以内に作り上げ、渡して行きたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年6月13日

新たな目的は日本の花き文化の伝播

東日本大震災後、三月が過ぎた。
2008年のリーマンショック後、長期にわたる経済の停滞で私たちは変えなければならないと新しい政治を選び、2010年、今度は自らの手で停滞を打ち破り、新機軸を作り上げ、経済成長をしようと果敢に海外に出て行くもの、国内では整理統合のための合併などを積極的に行うようになった。そして2011年3月、日本の企業は「経済成長よもう一度」ではなく、「日本の復興として」自分の事業や生き方の再出発を考えるようになった。それは日本らしさを追求し、世界と比べてみて日本が優位なものを欧米の価値観でなく日本の価値観で推し進めようというものだ。

では花き業界の震災後の目的と生き様とは何かである。日本の花き伝統文化に則った新しい花の使い方、作りである。一般には日本は環境と安全、健康が結果として他国と比べ優れていた。それは国土の7%で稲を作り、たんぱく源を魚に求めた。四季がはっきりしているので、それぞれの素材にこだわり、静かな折り目正しい生活をする。仏像を見ても左右が少し非対称であるところに美を見出し、エントロピーをかけがえのない美として崇め、味わう。その美意識に裏づけられた行動はさっぱりしているが情緒がある。自然を見ていると限られた空間の中で、その者の能力において精一杯生きている。よく言われるように、自然の掟である競争、適者生存の棲み分け、そして食物連鎖の一番上の動物も、森であれば一番上の高木も我慢している。我慢せずに自分の思うようにしてしまえば、食べる餌がなくなり、木の足元にも陽が入りすぎてしまい地表や土の中を壊して根から充分な養分を吸収できない。競争、共生、我慢は自然界で生きていくための掟である。

このことを前提に日本らしさを前面に出した日本の産業界の新しい姿があるはずだ。縦長の日本列島は、桜前線や回遊魚と同じようにいつの時期ならどこのものが良いというようになって、交換市場が発達していった。人間が長い間関わって作り上げてきた園芸植物である花きは日本古来の天然の花きとは違う。しかしそこには神仏習合の花きとして、華道の素材として、審美眼にたえてきた生命あるものの美しさがある。これを素材の美だけでなく、活け花された、フラワーアレンジされた、また庭としての美を我々日本の花き業界は供給する。種苗から小売店まで震災後新しい日本流の花き産業を作るため、もう一度華道、日本のフラワーアレンジ、日本の庭を学び、その伝統を生かした花鉢や苗物、切花類を開発・生産・流通させていく。絶えず念頭に置くのは、日本人の美意識に則った花の生産流通。これで花き業界を盛り上げていくことだ。少子高齢化ゆえ、必ずしも消費金額は増えないかもしれない。経済を一義にするのではなく、文化を伝えることを一義にしようというのが震災後の花き業界の目的である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年6月 6日

震災で結婚しだした?

いよいよ蒸し蒸ししてきた。暑くなると大田市場花き部の節電目標昨年比15%マイナスが気になるところ。節電でセリ場上の中央通路の電気も消し、定温庫の空調も荷物を入れる1時間前から入れ始めるようにし、20度未満を保てるのなら消すという作業をしている。開設者の東京都からは、「花き部は順調に節電15%マイナスをしているので、夏場も今の行動を続けてくれれば大丈夫です」と言われている。この調子で少し暑いががんばってやっていくということになる。

このたびの大震災で、葬儀は遺族だけの都合で直葬するといった葬儀が少なくなっているそうだ。つながりを大切にするようになって、普通の葬儀をする。供花もローコストにするために芳名板でやりますというところもあるが、芳名版で済ませていた葬儀社も元に戻って篭花を出すところが一般的になってきた。省略した葬儀が行くところまで行って、揺り戻しの形で良識あるものになりつつあると思う。
結婚式も同様で、震災の影響からかとにかく結婚する人が多いそうだ。昨日はお台場で定点観測したが、中国人や韓国人の旅行者は少ないが、日本の人たちはほとんど元に戻ったと言って差し支えない。そして先ほど言ったように、増えたのが結婚式だ。お台場の日航ホテルは東京では1位2位を争う人気の場所だし、アクアシティにあるレストランウェディングの場所も大人気だ。昨日も結構繁盛しており、結婚して婚姻届を出すだけの人もいれば、きちんと式を挙げる人もいる。とにかく震災の影響か急に結婚しだしたのである。ゴールデンウィーク前までのアバランチェ(白バラ)の安値は終わり、ようやく需給バランスが取れるようになったと昨日お台場を散策していて実感した。

話題として聞いてください。結婚式を仏教式で挙げる人はあまり多くない。しかし花の仕事をしている我々にとって、仏教の結婚式はなかなかすばらしいものだ。新郎が5本の花を仏様に供え、新婦が2本の花を仏様に供えて、夫婦であることを誓い、仏様から祝福してもらい功徳を得るというものだ。
それはこのような故事からだ。釈尊の前世の時代に燃燈仏様がいらっしゃって、この世に功徳を与えていらっしゃった。王様は自分で燃燈仏様に花を捧げ、功徳を独り占めしようとして、国の花をすべて持って来るよう指令を出した。とある青年が自分もぜひとも花を捧げて功徳を得たいとしたが花がない。ちょうど王様のところに7本の花を持っていこうとしている少女に出会う。青年は王様の命令だから出来ないと断る少女に全財産を渡し、5本の花を分けてもらう。それを燃燈仏に捧げる。青年からその話しを聞いた少女も2本の花を捧げて功徳を得た。そして輪廻で後世にあらわれたのがシッダールタ王子と隣国のヤショダラ姫だ。そしてシッダールタは釈尊になる。それが行華(あんげ)の逸話だ。
とにかく震災後、冠婚葬祭は変わってきている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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