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2011年6月13日

新たな目的は日本の花き文化の伝播

東日本大震災後、三月が過ぎた。
2008年のリーマンショック後、長期にわたる経済の停滞で私たちは変えなければならないと新しい政治を選び、2010年、今度は自らの手で停滞を打ち破り、新機軸を作り上げ、経済成長をしようと果敢に海外に出て行くもの、国内では整理統合のための合併などを積極的に行うようになった。そして2011年3月、日本の企業は「経済成長よもう一度」ではなく、「日本の復興として」自分の事業や生き方の再出発を考えるようになった。それは日本らしさを追求し、世界と比べてみて日本が優位なものを欧米の価値観でなく日本の価値観で推し進めようというものだ。

では花き業界の震災後の目的と生き様とは何かである。日本の花き伝統文化に則った新しい花の使い方、作りである。一般には日本は環境と安全、健康が結果として他国と比べ優れていた。それは国土の7%で稲を作り、たんぱく源を魚に求めた。四季がはっきりしているので、それぞれの素材にこだわり、静かな折り目正しい生活をする。仏像を見ても左右が少し非対称であるところに美を見出し、エントロピーをかけがえのない美として崇め、味わう。その美意識に裏づけられた行動はさっぱりしているが情緒がある。自然を見ていると限られた空間の中で、その者の能力において精一杯生きている。よく言われるように、自然の掟である競争、適者生存の棲み分け、そして食物連鎖の一番上の動物も、森であれば一番上の高木も我慢している。我慢せずに自分の思うようにしてしまえば、食べる餌がなくなり、木の足元にも陽が入りすぎてしまい地表や土の中を壊して根から充分な養分を吸収できない。競争、共生、我慢は自然界で生きていくための掟である。

このことを前提に日本らしさを前面に出した日本の産業界の新しい姿があるはずだ。縦長の日本列島は、桜前線や回遊魚と同じようにいつの時期ならどこのものが良いというようになって、交換市場が発達していった。人間が長い間関わって作り上げてきた園芸植物である花きは日本古来の天然の花きとは違う。しかしそこには神仏習合の花きとして、華道の素材として、審美眼にたえてきた生命あるものの美しさがある。これを素材の美だけでなく、活け花された、フラワーアレンジされた、また庭としての美を我々日本の花き業界は供給する。種苗から小売店まで震災後新しい日本流の花き産業を作るため、もう一度華道、日本のフラワーアレンジ、日本の庭を学び、その伝統を生かした花鉢や苗物、切花類を開発・生産・流通させていく。絶えず念頭に置くのは、日本人の美意識に則った花の生産流通。これで花き業界を盛り上げていくことだ。少子高齢化ゆえ、必ずしも消費金額は増えないかもしれない。経済を一義にするのではなく、文化を伝えることを一義にしようというのが震災後の花き業界の目的である。

投稿者 磯村信夫 : 2011年6月13日 00:00

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