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2011年7月25日

花の生産者は国際派

 先週はなでしこジャパンのワールドカップ優勝で持ちきりだったが、私は優勝の影にその日のうちに飛行機に乗り、しかもエコノミーで帰ってきたという金銭的に恵まれなかったことや決してちやほやされなかったことでの気持ちの強さというのが底辺にあったと思う。これからは一日で世界一になった者としての自覚と立ち振る舞いを期待する。
さて、サッカーはイギリス生まれで世界に広まったスポーツで、まさにグローバリゼーションの時代にふさわしいスポーツであるが、食文化はそうではない。もちろん寿司やラーメンが広く海外でも受け入れられているが、日本食全体で見れば僅かだ。だいたい食はその地にあったもので、むしろその国や地域独特のものと言える。関西の人たちは東京のうどんのつゆを真っ黒で透き通っていないのにびっくりする。キューカンバーは日本語ではキュウリだが、欧米で食べているキューカンバーと日本のキュウリは別物だ。パンプキンも我々が食べているカボチャではない。唐辛子も韓国人は日本の唐辛子は辛いと言う。韓国の唐辛子は甘くて辛いそうだ。日本が台風などの被害で不作になってレタスを輸入するとしても、アメリカのレタスはちょっと固すぎる。だから日本の品種を外国に持って行き、日本用に作るということが輸入するためには必要だ。確かにじゃがいもやたまねぎ、アスパラガスやトマトなど国際流通するものもある。だがそれは稀で、日本の野菜農家や果物農家は海外の消費動向や産地動向など知らなくても生産し続けることができる。
では花はどうであろうか。今のユリ類は江戸時代、日本からヨーロッパに渡って、ここ30年で品種改良の技術が進み、新品種がオランダから生み出されている。日本で作っているユリのほとんどはオランダの種苗会社が品種改良したもので球根も輸入している。チューリップもアイリスもそうなってきた。だからユリ生産者は韓国の生産動向や日本に向けた輸出動向をチェックしておかないと価格競争に巻き込まれることがある。菊を作っている人たちは、ライバル産地の韓国、台湾、中国、ベトナム、マレーシアの作付状況をチェックしておかなければならない。カーネーションは中国雲南省とベトナム、スリランカ、コロンビアの動向がわからずして、その時期にこの品種を作れるか、作って大丈夫か、もっと有利に売れる時期があるのではないかなどを考え、生産していく必要がある。ことほどさように切花では菊、バラ、カーネーション、蘭、ハモノは国際分業になりつつあるのだ。ここで花の生産者は信用できる海外の情報をしっかり持って、海外の産品と競争の上棲み分ける必要がある。それが野菜や果物の生産者と違うところで、花の生産者は国際派でならなければならないのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年7月18日

今年の夏の売れ筋

この3連休で行楽地はかなりの賑わいであった。高速道路は事故もあり大渋滞。もうすでに自粛を決めてしまった花火大会がないのは残念だが、日本人の余裕度と経済力はまだまだすごい力がある。

今年の夏は梅雨明け後猛暑で始まったが、15%節電から室内の温度が高い。そうなると暑さに強い花に人気が集まり、猛暑であった昨年よりもさらに花持ちが強調されている。それは小売の店内の温度、また家庭の室内温度が高いからであろう。室温28度となると夏野菜や夏フルーツではないが、真夏でも外で元気に育つ花でないともたない。2011年のスターであるひまわり、菊類、グラジオラスやチューベローズなどの暖かい地域で使われる球根類、スターチスやケイトウ類のようにインドでも使われる花々、赤道直下が原産のアンスリュームやジンジャ、ヘリコニア、クルクマ、アナナスやラン類、そして葉物と切枝。それだけでは店内が偏ってしまうので、多肉や観葉やランなどの鉢物類、これらを中心に今年は販売していかなければならない、またしている。

今は消費者もガラスの花瓶で浅水にして切花を楽しみ、鉢物は生ゴミで捨てられるコンポストや炭づつみのようなエコな培地のものになってきている。節電の今年の夏はASEANで売れている花が日本でも売れている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年7月11日

仏様の花が変わってきた

昨日10日の朝日新聞のトップに『縮む福島』と題し、福島の人口減や失業の問題が取り上げられていた。2010年の切花の1世帯当たりの購入金額がナンバーワンの都市は福島市であったから、ナンバーワンの県が困難に直面しているのは花き業界として残念で仕方ない。週刊誌でも50年前の日本中の被ばく状況を特集し、過剰反応するなと戒めている。郡山ではもう洗濯物も外に干しているし、子どもたちも外に出て遊んでいるので、政府は早く原発問題の終息の計画を正式に発表し、着実に実行して福島を安心させてもらいたい。そうでないと外国の方だけでなく日本人の私たちも旅行に行くと言ってみても、優先的に福島へ行くという気にはなかなかなれない。大切なのは安全安心で、花き業界だけのことを言うと、我々日本の花市場はこんな時こそ福島県の花を力売して少しでも地域経済に役立ってもらうよう努力したい。

東京はこの13日からお盆である。今日はお盆の大市でハス市が行われた。日本の儀式は団塊の世代と団塊ジュニアの世代によって変革がなされてきた。団塊の世代が結婚する頃には料理屋や自宅ではなく、式場やホテルで行うようになり、団塊ジュニアの世代が結婚する頃にはホテルや式場に加えてレストランウェディングや邸宅ウエディングになってきた。葬式も団塊の世代は花祭壇を好み、洋花が中心のものになってきている。行きすぎは修正されたが、まだ一定のパーセントは直葬で済ませる人もいる。このように儀式が変わってきたが、団塊の世代が60歳代になり、東京でも7月の盆をそれなりにきちんと行おうとするようになってきた。お施餓鬼、迎え火、送り火、盆に実家に集い、少なくてもお茶くらいは飲んでみんなでゆっくりと話をする。夏休みではなく平日なので、今ひとつインパクトに欠けるが、時間は短くとも非日常的なときを過ごす。今、団塊ジュニアの子どもたちも勤務の都合で来られない人は別にして、7月の盆を明確に意識する。このようになったのはここ数年からで、それまで団塊ジュニアの人たちは東京にいても盆は盆休みの8月だと思っていたくらい無関心であった。それが、両親が盆の儀式を行うようになったので、初めて7月盆を認識するようになった。

今のお墓は縦型から横型になっている。ビジネスカードである名刺も横型が圧倒的に多い。そうなると生け花で言うところの根締め、この足元が花の中心となる。仏花でもここにインパクトのある花を置く。仏花の伝統である天地人の型とは変わり、横に広がりのある花束になる。そうなるとあえて仏花としなくても、ミニブーケなどがまさに仏花として使われる。フローリングの部屋に全体の色調に合わせた家具としての仏壇を置く。そうなると当然ミニブーケを1対活けるか花瓶でやや大ぶりの花を仏様の花として飾るようになってきた。墓地や仏壇の新規需要は今盛んになってきているので、セリを見ているとまだ昔ながらの仏花素材が売れているが、確実に従来の仏花素材にこだわらないようになって行っている。バラを仏壇に飾ることも決して少なくない。お父さんやお母さんが好きだった花、自分がきれいだと思う花、季節の花を仏壇や写真の前に飾る。そういう新しい仏花の潮流が東京・神奈川では本流になろうとしている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年7月 4日

共同荷受所がきめ細かい花き流通を促した関東・東海

先月の29日、花き卸売市場協会首都圏支所の初会合があった。関東から長野、そして静岡県では浜松以東50社の花き市場で構成される首都圏支所は、日本の人口の4割強の消費者のために過不足なく花を届けることを使命としている。東北支所管内の市場まで含めると約60社が、都内にある4つの共同荷受所を経由し、出荷物を販売している。その4つの荷受所とは東京花き共同荷受、永井荷扱所、夏目荷扱所、羽田日通である。

東京になぜ4つも共同荷受所があるかというと、もう40年ほど前になるが、花き振興をはかるために静岡県経済連、愛知県経済連、長野県経済連、千葉県経済連が中心になって、環状7号線の鹿浜橋を渡ってすぐの埼玉のところに共同荷受所を作った。花はまだ取扱量が少なかったから、花専用のトラックターミナルを作ることによって、産地には輸送の合理化、出荷先の広がりを持たせること。そのためには花市場の新規参入障壁を低くすることが必要だった。花き市場の数が増えれば、花の需要が増えているときだから、従ってどこの市場でも競い合って高値で売り、品物を多く出荷してもらおうとした。

そこの鹿浜橋の産地主体の荷受所が事情により廃止されることになって、当時の新日本園芸株式会社の練馬の西部園芸市場と世田谷区上野毛の南部園芸市場に、都内だけでなく関東・東北の市場のため、共同荷受所を作ることになった。この際、一緒に経営しようと都内の4つの花き市場組合は大同団結し、東京都花き市場協同組合が出来ることとなった。そこが共同荷受を運営することになる。

東京では大島、三宅島、神津島、八丈島の4島は日本でも屈指の切葉、切花の産地である。ここは東海汽船が運航しており、東海汽船永井も共同荷受所化した。房総半島の東京への入口である小岩の夏目も房総の荷の共同荷受所になった。その後、飛行機便の花も増えると、羽田日通も共同荷受となった。

花の需要が増え、取扱金額も増えていった時代は共同荷受所引取りのコストも十分に販売手数料でまかなえ、利益を出すことが出来た卸売市場がほとんどであった。しかし21世紀に入ると単価も下がり、近年は荷も少なくなり、せり前取引も盛んになって、早く自社に荷物を到着させることが市場間競争上どうしても必要になっている。そうなると、例えば東京花き共同荷受に引取りのトラックを差し向けたとする。積載効率が良いように満載にして持ってくるということは、引き取り時間が遅くなってしまう。それでは大手の買い手に他から取るからいいと言われてしまうので、早い便と最後の荷まで引き取る便と2台出さなくてはならなくなるのだ。こうして物流コストが上がってきている。

荷受所があったから関東一円、10億円前後の年商の花き市場でも品揃えを良くし、その花市場を利用する地域の小売店が決して近所のスーパーに負けない品揃えの花店を営業し続けることが出来ている。しかし、運賃の負担増と個人の生産者が高齢化し花の生産をやめる人が出てきて、農協出荷は直送が増え、荷受所の経営もなかなか厳しいものがある。青果や水産は大正の末から昭和の初期に中央市場流通となったので、花の荷受所経由とは違い中央拠点市場経由の流通となっている。では花も青果や水産同様、中央中核市場、少なくとも中央市場と地域の公設市場、ここがターミナル駅の役割を果たし、多数の地域密着の市場は直荷とこれらの市場からの買付でその地域の小売店を、そして消費者を満足させることが出来るのか。この点が現在の花き卸売流通の課題となっている。当面の間は、各市場が直送してくれる産地と取り組みながら、共同荷受所と中核市場の花き部の両方を使うということになろう。各社に車を出すのがコスト的に無理ならどこを選択するかと言えば、自社が競争力を保てる要件を満たすところとなるだろう。それは納品時間が正確か、コストが経営上負担にならないか、品揃えがきちんと行われるかのポイントから業務の見直しを行い、自ずと選択されるであろう。一般社団になる市場協会は会員各社が社会的な役割をきちんと果たせるようになってほしいとの想いから、市場機能に踏み込み、具体的な経営に踏み込もうとしている。それは今物流機能を中心とした流通そのものに踏み込む必要があるからである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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