大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2011年7月 | トップ | 2011年9月 »

2011年8月29日

仕事の質を一段上げて生き残りを図る日本のバラ生産者

一昨日の27日(土)に第21回大田花きバラ会議が開催された。大田に出荷するバラ生産者の方々にとって、夏の終わりを告げる恒例の行事になっており、例年通り元気な顔を見せてくださった。

参加者は私と同じ団塊の世代の人たちと、代がかわった若い人たちの二層になっていた。この20年で内容は確実に変わってきた。今はヒートポンプというクーラーを温室に入れて、品質を年間高位平準化している生産者も多く、昔だったら温室にクーラーを入れてまでバラを作るなんてことは考えられなかったが、良いものを作るために実行している。当然コストは以前よりも掛かっているわけで、卸売市場が生産者のためになすべき機能をしっかり果たさないと生産者はペイする収入を取っていけないことになってしまう。それゆえ、卸は産地にこのようなサービスを提示します、一緒にこういうことをやって行き、こう小売店をサポートして、我々のバラを買ってもらいましょう。このように卸の持っている機能を生産者に再確認してもらうために、実際の成功例を発表した。

産地が今まで通りのやり方で再生産価格をクリアすることはできない。損益分岐点を超え、子どもたちの養育費や自分たちの老後の蓄えをするためには、さらに質の高い経営をしていくことが必要だ。とある大手のJAでは、2010年の秋冬期を前に出荷先を再選定した。第一次テストはアンケート方式で「あなたの卸売会社はどんなサービスがあり、あなたの会社を利用する小売店、あるいは仲卸が卸している小売店はどんなところがありますか?」とペーパーテストを行った。次に第一次テストに合格したものは面接テストがあり、今後運命共同体として一緒にやっていけるかどうか産地が卸を選考する。こういう時代に入っており、生産地も卸・仲卸も小売店も消費者を一義に考えて、自社の存続をはかるべく取り組む先を決めて適切サプライチェーンを作り上げる。こう理解してくだされば、バラ生産者に自分のポジションと自分の強み、弱みを明確にして、利益が出にくい今の状況を一つの試練として受け止めてもらえる。「輸入品に負けるはずはないのです。最適サプライチェーンで必ず勝てます」とバラ会議後の懇親会でバラの生産者と確認しあった。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年8月22日

競争力を増す輸入花

今朝の荷姿を見ていると一足早く輸入品は充実して来ている。しかし国内生産者は盆休みで、国産の花は出荷量が少ない。毎年33・34週は花の専門店が夏休みを取るところが多く、金曜日まで花の需要は少なくなるが、今年は円高だから輸入商社の人たちはがんばって出荷をしてくれている。
アメリカ経済が思わしくなくEUは金融不安、そこで今までにない円高となっているが、生鮮食料品花きの景気実感は「デフレが止まらない」である。切花の場合その理由ははっきりしており、切花相場を決める一輪菊が前年に比べ1割安い。その物価水準であらゆる花が推しはかられるから、小売店まで含め花き業界の総売上は9掛けに近くなる。もちろん新品種を投入したり、新しいサービスを付加したりして、価格維持に努めているが、8月期9月期は昨年の9掛けというのが今のところの予想である。
日本の企業はバランスシート不況を経て、手持ち資金はある。こうなると円高を利用して海外に出ていく。あるいは海外の会社をM&Aする。こういった戦略を実行するタイミングとなっている。日本はものつくりについては世界で一番こだわる国だから、上級レベルのものは日本で今後とも作っていこうとする。しかし普及品レベルのものはますます海外に工場を移し、ものによっては逆輸入をしていく。ほとんどすべての分野で国内消費は頭打ちとなっているから、国をあげて海外に出て行く動きが今強まっている。
花は日本人が出て行って、日本に輸入されているものは私の知る限り5つくらいとほとんど無いに等しいが、輸入商社が現地の生産会社と組んで日本向けに毎年毎年質を向上させている取組は多い。円高を梃子に、更に輸入量は増えていくものと思われるが、日本の花き業界に通用する品質を作れる農場はそんなにない。というよりほとんど限られている。だから無尽蔵に入ってくるなんてことは考えられない。またその生産会社はしっかり日本の専門商社とタッグを組んでいる。しかもそういった生産会社は10ヘクタールの規模ではなくて、グローバル競争の単位である30ヘクタールの農場である。そういう会社とタッグを組むというとなまじの規模の受け皿では如何ともしがたい。日本では一社でそんなに同じものをたくさん取り扱えるはずがないから、輸入商社がバルクで持ってきてリパックして荷姿をととのえ、各卸売市場に出荷するということが流通上必要になる。野菜を作っていた人が花を作るようになって、また野菜に戻ってしまった今日。しかもデフレが続いている今年、輸入商社の動向に注目が集まっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年8月15日

進化する卸売市場

8月13日土曜日の日本農業新聞に藤沢市の地方卸売市場で横浜の丸中青果が建設していた新しい市場機能工事が完成し、来年4月から民営化運営がスタートし、8月までには国分株式会社も入って、青果以外の日配品も配送すべく配送棟も建て、営業を始める旨の記事が載っていた。生鮮食料品と加工食品、これがまさに私が考える今後の卸売市場の一つのスタイルである。

市場流通ビジョンを考える会は、第九次卸売市場整備基本方針の策定に向けての提言を農林大臣に行ってきた。(平成22年4月23日赤松農林大臣、平成22年10月15日鹿野農林大臣)
また、この度休会するにあたり、我々が流通ビジョンを考える会で議論してきたものを事務局の東京農業大学藤島先生にまとめていただき、先生のご意見も加えていただいて「市場流通2025年ビジョン」という本にした。社会インフラとして卸売市場が時代の要請に応えて、形を変えながらも十二分に活躍し、日本国民に役立っていく姿を描き出した。そこには輸入品まで含めた生鮮食料品花きの供給サイドの姿、小売の変化、卸売市場の変化である。もちろん消費者である日本国民に役立っていくための変化であって、市場流通ビジョンを示すことが出来たと思う。第九次卸売市場整備基本方針では、中央中核市場が謳われている。これは現状の実態を認めたものである。しかしこのままでは卸売市場数の調整ばかりに目が行きやすい。日本全国で卸売市場が機能しているから、中堅以下の生鮮食料品花きの小売店が仕入で大手と差がつかず激しい販売競争をして、消費者に利便性を供している。仕入調達機構である卸売市場が少なくなったら、仕入機能を内在できる大手小売店のみが品揃えの出来る小売店になってしまうのだ。卸売市場の必要性は国民にとっての生鮮食料品花きの調達コストを下げ、選択の幅を広げることにある。その意味で、大規模市場だけがあれば良いというわけではない。立地条件や発揮機能によって様々なパターンの卸売市場が必要なのだ。その具体例の一つが藤沢市の地方市場の新しいあり様であると私は思う。地域の消費者の起点に立って、藤沢の卸売市場が変わっていこうとする姿を描き出さなければ、卸売市場のあるべき姿を示したことにならないと考えている。ぜひとも「市場流通2025年ビジョン」をご一読いただければと思う。

『市場流通2025年ビジョン 国民生活の向上と農水産業の発展のために』 筑波書房
監修 市場流通ビジョンを考える会(代表幹事:磯村信夫)
編集・執筆 藤島廣二

*本書の54ページに「花きの場合、我が国最初の中央卸売市場は横浜市中央卸売市場南部市場ですが」とありますが、我が国最初の中央卸売市場は仙台市中央卸売市場の誤りです。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年8月 8日

上限で契約取引半分か

遅れていた小菊の出荷が始まってきた。盆用の小菊やアスターなどは60歳で定年した人や奥様方が作るようになって、北関東や東北など農協がしっかりしているところは生産が増えてきている。

さて今日は契約取引や買付について考えてみたい。生産量が少なくなって農協が合併し、出荷先を絞り込む。選定されなかったところは契約取引である予約相対や買付販売を行う。こうした経過で青果市場の粗利率は下がってきた。委託された野菜を販売する場合は現行では手数料8.5%、果物なら7%だ。それが4%、5%になってしまっている。過去の蓄えで設備投資することは出来ても、今の粗利率では損益分岐点すれすれの経営となる。卸売市場が買い付けたり、当てがないのに契約取引したりできるのは昔なら最終的に漬物業者に、今であればカット野菜の加工業者に押し込めるからだ。キャベツなら1個でもキャベツ、2つに切ってもキャベツ、カット野菜にしてもキャベツとして使える。

では切花マーケットではどうだろうか。まず青果卸売市場業界と違う。花き卸売市場が産地より指定市場に認定されなかったとしても、他の産地もあるし、場合によっては個人出荷もある。だから花市場が産地買付をすることはレアケースと言って良い。しかし契約取引、予約相対は増えている。それは昨年の8月盆と9月は前年安かったものだから、契約取引をせずにいた仲卸や花束加工業者、大手小売店が多かった。それが猛暑で大不作。だから8月、9月と高値で、買い手は利益を出すのが本当にむずかしかった。そして12月、羹(あつもの)に懲りたのでしっかり契約をした。国内生産者は前年の12月相場が良かったものだから量的に作りこんでいて、しかも韓国、台湾、中国、マレーシアから白菊が大量に出回った。そして契約取引で手持ちがあるものだから、セリではもう買えないとセリ相場は下落した。今期の8月も昨年の12月の流れを汲むものである。契約取引、予約相対が多く、セリは期待したほど盛り上がらない。切花は1本は1本で使わなければならない。花と葉と枝のついている上の方に価値があり、その枝を半分にしてしまったら花のない茎はゴミとなる。そのへんが野菜と違うところだ。売るに天候、作るに天候、そして花は常温で見るもの。一方、店頭のショーケースから家庭の冷蔵庫へ、そしてお料理して胃袋へ、そしてなくなるのが青果の流通。店頭で買われた花は、常温もしくは少しクーラーの効いたところに飾られる。買ってから1週間くらいは持ってほしいと期待され咲く姿に美しさを見出すことも多い。だから流通業者がストックしておくということがそんなに出来るものではない。以上のような特性から売るに天候、作るに天候の花は卸売市場という取引所プラス物流センターが欠かせないということである。

そして花が品種改良されて現在に至るまでの経過は、「美しいもの」を選んできたので、栽培しにくいものであったり、性質的に弱いものだったりする。食欲を満たしたり、栄養価の高いものだったり、生命維持のための食物はまず作りやすいものを選んできたのとずいぶん違って、花は手をかけないと良いものが出来ない。天候に左右されやすい。買い手からすると少なくても契約取引をしておくのは半分くらいで、あとの半分はそんなにがちがちに決めないで、臨機応変に形も組み合わせも変えていく柔軟性が必要である。そうすれば消費者が買いたい値段でそこそこのものを提供し、小売店も適切な労働の対価を得られることになる。卸売市場は代替品を見つけるのが容易で臨機応変な処置をスピーディーに出来る。見るものゆえ、品種品目が15,000アイテムと圧倒的に多い花は、今しばらく上限で契約取引半分、あとは場なりで調達するのがみんなにとって良い取引なのではないかと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2011年8月 1日

この冬油代はそんなに心配しないで

貿易収支の均衡が取れてきたというのに、この円高には辟易する。エコノミストは理論値で75円をうかがう局面だと言うし、これでは世界第三の経済大国とは言え、輸出ではハンデを負うことになる。当然、この国の10人に1人の通称裕福層と言われる人たちも、円だけでなくドル建てや各国通貨資産を持つなど資産を分散化することになる。

生産者と話していると福島原発の問題から、この冬の油需要が逼迫するのではないか、円安に振れたとき重油は高くなってしまうのではないかなど心配する声を聞く。私はそんなとき先月7月に原油価格は新たなマーケットの局面になったので、そうは一本調子で上がるのではないことを説明し、エネルギーの節約に気を配りながら今年の冬しっかり暖房を焚いてもらうように話をしている。それはこういうことだ。今まではone-wayで、原油価格というのは投資ファンドからすると割とリスクの少ない商品であった。今の中東の情勢、南米の情勢、ロシアなど油の代金を梃に国を近代化し、産業を興そうとする産油国の力が一方にある。BRICsはじめ、VISTAなど、新興国が本格的に工業化に向かい世界経済を引っ張るようにもなってきた。そうなると石油が必要だ。資源が限られている石油は1バーレル=70ドル以上になり、先物ではたまに100ドルの声も聞かれる。株式で言うところの売り手が限られているからだ。だから何か緩ませる手立てというのが必要になってくる。少なくとも実体経済に合わせた価格でないとマネーゲームになって経済発展に支障が出る。そこで7月、two-way売り買いが交錯する局面を作ることとした。先進国では半年間の備蓄をしているがそれを3ヶ月の備蓄とし、3ヶ月分が市中に出回る。ロシアは潤沢に市中に石油を出し続ける。新たな局面はこのようにして石油先物価格が実体経済から極端に乖離しないようにtwo-wayリスク商品としての石油マーケットを形作ったのだ。そうなると極端な心配はしなくて良い。花の市況状況も2009年度に沿ったものになっているので、ちょうど石油も2009年度価格を想定し、経営計画を立てていただければ良いのではないかと思う。

特に暖地の生産者の皆様方は、3月末決算の場合、上半期が例年だと45%、本年は東日本大震災から40%の売上比率、下期に例年だと55%が今期60%になる計画をしているところが多いだろう。切花、鉢物とも需要に不安はないと見ている。そこでしっかりした作りこみを行い、いつも通りの卸売市場に出荷していただき、震災後小売店舗の優劣が起きているので、人によっては新たな小売店をその市場の担当と一緒に見つけていく必要があるだろう。震災後、まずは小売店の優勝劣敗が起こっている。本年度は自分の花を使ってくれる取引先は誰かを明確にすることによって、生産者は震災後の変化の影響をしのぐことが出来る。

小売店は変化の渦の中にあり、店売りを主体としたところは完全なる立地産業となった。もし立地が悪くても小売を主体としていくのであれば、宅配サービス、インターネットやカタログ販売など、事業内容を替える必要がある。そして立地が恵まれている店売り主体の勝負どころは、つながり消費の元である手軽なギフトに移っている。3,000円未満~1,000円で、ちょっとしたステキなプレゼントの花が用意出来るかが専門店の勝負どころとなってきた。小売業は一段上の段階に入っており、もう一段階サービスを向上させないと人に感動を与えることができなくなってきた。結局は花店も立地条件と人材育成ということになろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.