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2011年8月 8日

上限で契約取引半分か

遅れていた小菊の出荷が始まってきた。盆用の小菊やアスターなどは60歳で定年した人や奥様方が作るようになって、北関東や東北など農協がしっかりしているところは生産が増えてきている。

さて今日は契約取引や買付について考えてみたい。生産量が少なくなって農協が合併し、出荷先を絞り込む。選定されなかったところは契約取引である予約相対や買付販売を行う。こうした経過で青果市場の粗利率は下がってきた。委託された野菜を販売する場合は現行では手数料8.5%、果物なら7%だ。それが4%、5%になってしまっている。過去の蓄えで設備投資することは出来ても、今の粗利率では損益分岐点すれすれの経営となる。卸売市場が買い付けたり、当てがないのに契約取引したりできるのは昔なら最終的に漬物業者に、今であればカット野菜の加工業者に押し込めるからだ。キャベツなら1個でもキャベツ、2つに切ってもキャベツ、カット野菜にしてもキャベツとして使える。

では切花マーケットではどうだろうか。まず青果卸売市場業界と違う。花き卸売市場が産地より指定市場に認定されなかったとしても、他の産地もあるし、場合によっては個人出荷もある。だから花市場が産地買付をすることはレアケースと言って良い。しかし契約取引、予約相対は増えている。それは昨年の8月盆と9月は前年安かったものだから、契約取引をせずにいた仲卸や花束加工業者、大手小売店が多かった。それが猛暑で大不作。だから8月、9月と高値で、買い手は利益を出すのが本当にむずかしかった。そして12月、羹(あつもの)に懲りたのでしっかり契約をした。国内生産者は前年の12月相場が良かったものだから量的に作りこんでいて、しかも韓国、台湾、中国、マレーシアから白菊が大量に出回った。そして契約取引で手持ちがあるものだから、セリではもう買えないとセリ相場は下落した。今期の8月も昨年の12月の流れを汲むものである。契約取引、予約相対が多く、セリは期待したほど盛り上がらない。切花は1本は1本で使わなければならない。花と葉と枝のついている上の方に価値があり、その枝を半分にしてしまったら花のない茎はゴミとなる。そのへんが野菜と違うところだ。売るに天候、作るに天候、そして花は常温で見るもの。一方、店頭のショーケースから家庭の冷蔵庫へ、そしてお料理して胃袋へ、そしてなくなるのが青果の流通。店頭で買われた花は、常温もしくは少しクーラーの効いたところに飾られる。買ってから1週間くらいは持ってほしいと期待され咲く姿に美しさを見出すことも多い。だから流通業者がストックしておくということがそんなに出来るものではない。以上のような特性から売るに天候、作るに天候の花は卸売市場という取引所プラス物流センターが欠かせないということである。

そして花が品種改良されて現在に至るまでの経過は、「美しいもの」を選んできたので、栽培しにくいものであったり、性質的に弱いものだったりする。食欲を満たしたり、栄養価の高いものだったり、生命維持のための食物はまず作りやすいものを選んできたのとずいぶん違って、花は手をかけないと良いものが出来ない。天候に左右されやすい。買い手からすると少なくても契約取引をしておくのは半分くらいで、あとの半分はそんなにがちがちに決めないで、臨機応変に形も組み合わせも変えていく柔軟性が必要である。そうすれば消費者が買いたい値段でそこそこのものを提供し、小売店も適切な労働の対価を得られることになる。卸売市場は代替品を見つけるのが容易で臨機応変な処置をスピーディーに出来る。見るものゆえ、品種品目が15,000アイテムと圧倒的に多い花は、今しばらく上限で契約取引半分、あとは場なりで調達するのがみんなにとって良い取引なのではないかと思う。

投稿者 磯村信夫 : 2011年8月 8日 00:00

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