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2011年10月17日

青果市場は合併して大きく、花き卸売市場はネットワークを条件に多様化

先週は半袖の陽気で、青果で言えば鍋物が売れず、花で言えばバラやストックなどが安くなって、今日17日の市を迎えた。秋口の相場で20世紀と違う点は、昔よく言われていた相場が下がる特定日、10月10日、10月20日、11月10日はもうないということだ。少子高齢化とともに供給が少なくなっている点、安全安心による農薬のポジティブリスト化、ライフスタイルの変化で地元の荷があふれかえるということはなくなった。21世紀になってまだ10年しか経っていないが、日本の国内産地は農業を地域の産業としてとらえている産地はますます盛んになり、それ以外が衰退していくという風に農業の集積と希薄化が起こっている。その意味で需給バランスは取れていると言えるだろう。

さて構造的な市況見通し以外にもう一つ。小生の大田花きの社長としての発言と、社団法人日本花き卸売市場協会の会長としての発言が、自分で業界紙を見ていて食い違っているような印象を持つので本意を話しておきたい。それは卸売市場の数のことである。青果と花を比べながら話したい。

①食事の評価ポイント
人はモノとコトに対して評価し、お金を出す。食事はその素材と料理人の腕とが評価の対象となる。刺身でも料理した人によってこうも違うものかと感じるときがある。素材を生かした料理でも、素材と腕の評価は50:50だ。普通は料理人の腕が賞賛の的となる。そして食べた後、その料理はこの世からなくなる。

②活け花やアレンジメントされた花への評価
活け花芸術家が活け花作品を作ったとき、素材よりも技に賞賛が行く。しかし花はそれでおしまいではない。それから何日も花保ちする。時間との経過とともに、賞賛は素材そのもの、そして生産者の力量に移ってくる。だからその花を作った人、野山の花を選んで切った人、またその後の処理の仕方まで含めた荷主と素材としてのその花に高い評価が行くことになる。

③果物屋さん、八百屋さんと花屋さん
果物屋さん、八百屋さんは箱から小分けして消費者に販売する素材販売小売屋さんである。花屋さんでも鉢物は完成品が流通しているので1ケースで買っても、1鉢ずつ売る小分け売りの小売の分野もある。だが切花はブーケにしてもアレンジメントにしても、仏様の花もその店流の束ね方で作り、似ている業種といえば小料理屋さんである。味付けが特徴的だし、洋風だったり、和風だったりする。
結婚式の花やお葬式の花に特化したり、料理で言えばそのお店の業態にふさわしい花を作っているのが花の専門店なので、小料理屋さんのように小さい店でも生きていける。夫婦2人でやっていける仕事であるのだ。

④花屋さんと対になっているのが品物にこだわる小規模生産者
お客様の手に渡ったあとの品質にまでこだわり仕入をするのが専門店の花屋さんで、例え数量は少なくてもがんばって作っている生産者のものを買おうとする。日本では5割以上の切花は専門店を通して流通消費されているから、例え小規模な生産者でも良い評価をもらえる。専門店ががんばっているおかげで小規模でも生産者はやっていける。

⑤その人たちに有用なのが地元の市場だ
料理人の腕にポイントがある食の場合、地域独特の素材はその青果市場でないと難しいかもしれないが、一般的な食事の場合、日本国スタンダードな野菜や果物があれば家庭でおいしい料理を作ることができる。その意味でスーパーがあれば良く、どうしても八百屋さんや果物屋さんがなければならないということはない。しかし花はその地域に小さいががんばっているプロの花屋さんがある。量を買うわけではないので、遠くまで仕入に行くとコストが掛かる。できれば地元で仕入れたいという人がいる。出荷者も一年中作れるわけではないかもしれないが、どこにも負けない品質を作っていこうとする生産者がいる。花は料理人の腕前も大切だが、食べてなくなるものではないので、きちんと咲いたかや何日持ったかということが大変大切だ。花屋さんと生産者に出会いの場を供給するのが地元の花市場である。地域社会の中では必ず専門店の仕入に負担が掛からない距離に、品揃えが豊富な市場があることが必要なのである。

⑥適正な数はその地域のマーケットサイズが決める
一地域に競合し合っている市場が2つ以上あったとしよう。そのとき地域の小売店と地域の生産者のため、合併して20億円目標の花き市場、可能ならば30億円取扱規模の卸売市場になることによって、小売店の仕入に役立つ。産地市場としての行き方はこれとは別にある。卸売市場にとってまず大切なのは、小売店のニーズを満たしていくことである。この意味からすると、団塊の世代が活発に花を消費してくれている2015年までに、統合の話し合いをしてもらいたいと思う。新たなインフラ整備をお願いしたいのである。

⑦青果市場は合併を促進して規模の拡大をはからなければならないが、花き市場は過当競争は不要で
地域にフィットした多様な市場にならなければならない
青果物は川上と川下が合併して大きくなっているわけだから、当然それに合わせて大きくならなければならない。花の場合には、小売店ががんばっているし、花保ちの良いものを出荷する必要があるから、国産の比率はどうしても高くなっていなければ消費者を失望させてしまう。国内産地ががんばれば、規模の話ばかりでなく多様な市場が必要である。
市場間連携を今後促す必要もあろう。しかし日本の花き消費を考えたとき、日本の生産地、そして海外の産地を考えたとき、ネットワーク化された市場流通のあり様は日本の花き卸売市場のあるべき姿である。

大田市場のような中央中核市場としての役割は、ネットワークを前提に必要だと考えている。各卸売市場は道路網・鉄道網に似てネットワーク上の役割だから、地域の市場や多様な市場のあり様を具体的に方向付けていくことが日本国の卸売市場の仕事であると考えている。

投稿者 磯村信夫 : 2011年10月17日 00:00

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