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2011年10月24日

気になる人たち

省エネでクールビズが本格化して、秋になって日本の男性もドレスダウンが大変上手になってきた。40歳代と団塊ジュニアの世代の男性のファッション雑誌の活況が示すように、花束が似合う男の人たちが増えてきている。新宿伊勢丹の男の新館に行くと、ここまでやるかと思えるほど男子服のレベルが高い。肌着から帽子、身につけるものまで、ここまでよく世界から集めたと思えるものがある。花では若くして日本に来て、日本で名を挙げたニコライバーグマン氏が店を出しており、ソフィステケイティッドされた男性の需要が確実に期待できることを物語っている。

さて今日は産地に行って二次会でよく出る質問の話をしたいと思う。小生の知るホームレスの話である。ホームレスの勝ちゃんがたぶん奥さんだろうと思われる人に説得されて、随分前に娑婆に戻った話はしたが、ホンダのアコードワゴンから軽自動車に乗り換えた源ちゃんと4トントラックの附木さんがどうしたかと聞かれることがある。

この夏、二人とは一度も話はしなかった。暑かったのでいつも彼らが車を止めているところを私自身が通勤で通らなかったこと、そして散歩する日曜日の早朝には2人とも違うところで止まっていて、そこにいなかったからである。今は涼しくなって歩いて会社に来ているが、まだ彼らは車の中で寝ている。夜が明ける前の5時頃にはもう会社に着いているから、彼らが寝ていて挨拶することもできないで今に至っている。

何がフェアで何が寛容かわからないが、フェアとか寛容という価値観よりむしろ無私の精神というのが日本の大切な価値観ではないかと思う。彼らが駐車している場所は道路で、長距離トラックの人たちが帰り荷を待ち、時間調整をしている場所だ。駐停車禁止とは書いていないが、道路を占有しているのだから良いはずがない。でもなんらかの事情があって車で寝泊まりしているのだから、それくらい大目に見てやってもいいのではないか。2週間前、ホームレスの人がアルミニウム缶をいっぱい集めて、自転車の前後にゴミ袋に4つも積んでいたら角の交番で捕まっていた。目の前を通りかかられたら、それは捕まえざるを得ないのだろうが、ホームレスの人たちは働き者が多く、これで生活しているわけなのだから、本人のことや捕まえざるを得なかったおまわりさんのことを考えるとやるせない気持ちになった。なんらか間違いやら罪を犯し、出直したい人がいるはずだ。その人たちの再起をどうするかだが、知らないところで結局は新たに生まれ変わったその人たちを無私の尺度と寛容の尺度で見る以外にはなかろうと思う。

この話題で突飛もないことを言うが、第二次世界大戦のとき、今村均陸軍大将は部下とともに服役すべく、自分が無罪放免になったあと、インドネシアで投獄されている部下たちのところに一緒に罪を償いたいと入獄した。あらゆることを自分自身の欲望を満たすための道具とせず、いつも身の置きどころを本来人間に備わっている人間性に則って行動する。ここに日本人のというよりも、人間そのものの尊厳があるのではないかと思う。源ちゃんは軽自動車の運転席で毛布をかけて寝ているがエコノミー症候群にならないのか。附木さんはよくトラック運転手がやるようにハンドルに足を乗せて寝ているがあれで本当に休息が取れるのか。たぶん彼らにとっては他人に迷惑を一番掛けなくても済む方法が車の中で生活をすることなのだろう。これも自分を後にした無私の尺度だと私は思っている。源ちゃんも附木さんも私も今村大将のようになることはできないが、少しでも迷惑を掛けないで生活していくこと。そしてその中でも仕事を通じて少しでも社会に恩返しすることを考えている。1年前だが個別に彼らと話したとき、本当に人間味溢れる話しっぷりだと魅力を感じた。

投稿者 磯村信夫 : 2011年10月24日 00:00

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