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2012年4月 9日

もうこれ以上国内花き生産を減らさない

景気は一進一退のようである。1万円を超えた株価は、戻り9千円台で推移している。欧州経済が良くないので、欧州を第1位の輸出先としている中国の外需は減少気味で、中国の内需は住宅の高騰などで金融の引き締めが効いているので失速気味だ。主だったところのシンクタンクの今期の経済見通しを見ると、日本は復興景気があり2.5、アメリカは2.0、欧州はプラマイ0からマイナスとの見通しが多く、年後半からは中国が再び8%台に浮上し、景気をひっぱっていくことが予想されており、現状一進一退だが日本は恵まれていると言って良いだろう。日本の景気は相対的には悪くないが、足元の諸物価を見てみると資材や石油が高騰しているにも関わらず、あらゆるものが低価格になっている。売れないのでデフレは止まっていない。

花でも例えば卒業式の花、年度末に契約が更新されるレストランの生け込みの花代、そして会社のギフトの胡蝶蘭も低価格化が一段と進んだ。前年比100の受発注件数だとすると一割安の90%はまだ良い方で、交渉の末85%以上の金額を確保するといった風だ。すなわち、法人は渋い。また、花では結婚式・葬儀の経費需要は渋い。このような状況では国内の花の生産を増やしていくというようなことが難しい状況だ。それぞれの花の産地の作付け見通しと出荷予想を聞くと、2011年度対比、すなわち震災があった昨年の対比で90%台が多い。これではしんどい。それは同じ園芸作物を作るのであれば野菜の方が利益率が良いと生産者は思っており、現実に2010年の農業センサスでは立証されていた。
 
現在花き生産が増えている所は野菜の産地ではなく果物の産地が増えており、トータルで各卸売会社は前年比並みを国産で確保しようと努力している。しかし、それが出来ないのでコンスタントに入荷する輸入の花に不足分を頼っているのが現状である。まだ詳しい調査結果は出ていないが、先週の台風並みの通称「爆弾低気圧」で多くの被害が出た。また雪が多く、いつまでも寒いので8月のお盆の荷物をもう心配している人もいる。卸売会社は生産者の不安を取り除き、ともに花き生産を行っているくらいの意気込みで、連絡を密に取りながら産地生産活動に勤しんでもらい再生産価格を得られるよう、今まで以上のコミュニケーションを取って行きたい。

日本の花きは海外からどのような評価を受けているかというと、これはほんの一例だが、2011年外務省が行った対日世論調査によるとオーストリアにおいては、日本へ旅行へ出かけて行って、一番見たいのが、神社・仏閣81%、盆栽38%、相撲・武道28%、生け花26%、すなわち日本の文化に関心があるのである。海外から教えてもらい、再認識するとたしかに日本の花はすごい。今は花き業界の辛抱の時だとしても、後10年もしないうちに日本人の胃袋は小さくなり少なくなる。よって食品の需要は減る。しかし、花需要は減少しない。農業者にとって花を作って農業の経営を行っていくことは正しい選択と言えるだろう。ただし花の生産は技術がいる。野菜は、例えばキャベツは頭のてっぺんからつま先までキャベツだが、花は首から上の花に特に魅力があり、茎・葉など全身の姿が揃って価値が出る。切花はこれで1セットである。鉢物はもっと切花より全身美を競うもので作りは難しい。切花でもカットしたもので、もしつま先だけを見せたらこれはゴミだと思われてしまう。だから、花は下級品が野菜の下級品に比べて安くなってしまうのでやる気のある人、生産技術が集積している産地に頑張ってもらい、我々花き業界は支援して、その地域の人の輪を徐々に広げてもらう。そうして国内花き生産の減少に歯止めをかけ、将来のプラスへと転じていく年にしたいと思っている。もうこれ以上、単価の下落も生産消費減もさせない年度としたい。

投稿者 磯村信夫 : 2012年4月 9日 17:20

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