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2012年5月28日

人の力に危機感あり

今朝入荷した中国雲南省のカーネーションの中に、オランダからのレインボーカーネーションを真似た一輪に5-6色、色の混じったカーネーションがあった。それを見て中国の生産者の勢いを感じた。日本のカーネーション生産者は、レインボーに7色の色を花に吸い上げさせる技術はオランダでパテントが付いていることを知っている。パテントが付いているからやろうとしないのか。或いはオランダでやっているのだから日本で出来ないはずがない、やってやろうとするそういう意欲がないのか。残念ながら小生は意欲がないと感じてしまうのだ。

ライトを当てると光るバラを静岡市農協バラ部会は作った。このパテントに抵触しない作り方で韓国のバラ組合も光るバラを作った。中国も韓国も良いとすれば、貪欲に真似たりちょっとした工夫を加えてパテントに抵触しないように作ってみたりする。これはハングリー精神と言えるものだろう。日本の花作りも創業者から二世そして三世となってきた。花作りだけでなく、花屋さんも卸売市場もそうだ。だんだんおとなしくなって来ているような気がしてしょうがない。

収益とは「人の力」×「場の力」であるが、同業者が集積しているところの場の力はたしかに日本の産地や市場や小売店にある。日本は平らな土地が少なく人が多い。そこで、業者間の激しい競争があり、「場の力」そして「人の力」となるわけだ。今まで花き業界はそうしてきたので、量の成長、質の成長で伸びて来た。しかし、今、成熟した。

人の力は中国のカーネーション農家や韓国のバラ農家がそうである通り、創業者は強い。二世三世となると、日本の1980年代から1990年代初めのバブル景気を知っていたり、その頃に育ったものは柔になっている可能性がある。私が人の力としてリスクを感じているのは1960年代の後半から1970年代生まれで、家庭が急に裕福になって世の中を甘く見た人達が花き業界にも多くいる事実だ。育った環境、とりわけどういった家庭環境であったか、それによって花の小売店も卸売市場も現在の経営状況が違うように思えるのだ。その証左に花の仲卸が力を付けている理由は、ほとんど彼らは創業者であるからでベンチャースピリットに富んでいる。仲卸の人達は1960年代から1970年代生まれの社長がほとんどだが、時代に合わせて業容を変化させながら事業を拡大している。もし、開設者である地方自治体が卸のいない卸売市場を造っても良いとしたら、仲卸だけの卸売市場となってフランスのランジス市場のような新しい形になっていく卸売市場も日本に多く出来ると考える。2016年まで景気が良くならないと言われているので、再度1970年代生まれの経営者は特に心して経営に当たってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 14:46

2012年5月21日

母の日も効果抜群、「試飾」

株式市況が9千円を割って大変なことになっている。実態経済の7、8ヶ月の先行指数だと言われているから下半期から良くなると思ったら、どうもそうではないらしい。どうすれば日本経済全体が良くなるのか、なかなか糸口が見つからないが、こういう世の中になっていると認識をして自分の商売を一生懸命やる以外に手はない。

業界により、クロックタイムは違うが、今の世の中はイノベーションが急速に個性を失いコモディティー化する世の中となっている。世界的な競争激化で液晶テレビを例に取れば、家電業界がどのくらいのスピードでイノベーションが値段しか差の付けようのないコモディティーの業界になっているかがわかるだろう。

大田花きのオフィスを見ると、つい3年前まではデルコンピュータばかりだったが、レノボ、LG、NEC、そして人によってはヒューレット・パッカードなどに代わっており、デルコンピュ-タの苦境が良くわかる。携帯電話業界もそうであろう。花き業界に目を転じると、黒物家電のIT家電よりずーとゆっくり時計が回っていることに気が付く。業界としては有難いが、進化を求める消費者は一緒だから、とにかく飽きられないようにしなければならない。

花き業界に5年ですっかりコモディティー化してしまう人気商品はない。その意味で商品価値が続くことになる。その分おっとりした人が多いのは花き業界の特徴だ。こう云うじれったさがある。花小売会社の蓑口社長がイノベーションした「試飾」は本人がもっと皆に使って欲しいと希望しているが、まだまだ少数で潮流までいっていない。そこで今回の母の日用にとその前に全店舗で「試飾」を大々的に行った結果を聞いているのでお知らせしたい。
「試飾」は、'試食'と同じように、店の前を通った人に花を一本でも渡し、「飾ってみて下さい、『試飾』です」と言って渡すのだ。日頃、花を買う習慣のない若い人やご年配の男性などとにかく普段花を買わない人に渡す。母の日だから若い人からお子さんに事前に渡した。そうしたらなんと店の売上げは昨年を50%以上も上回る店舗もあり、一昨年を上回る店が多かった。景気調査によると今年の内需関連の商売は前年比で上回っても、2010年比を上回らないところが多い。ところが、「試飾」は効果抜群、お店は絶好調。渡す人が信じて行えば必ずお客さんが増える。

今まで蓑口社長のお店は普段から花を買ってくれる高齢者のお客さんを大事にしていた。しかし、これは当然なこと。「お客さんを増やすこと。そうしなければ店は続かない」こう言うのだ。「試飾」をして売上げを伸ばそう。「試飾」をして新しいお客さんに来ていただこう。どうもお花屋さんは同業者が行っている成功例をウォッチして早速取り入れる努力をしないので困る。物の競争はグローバリゼーションでクロックタイムが速くなり、コモディティー化するので、宜しくないが普及も速い。製造業といっても農業の花は生き物でそう簡単には作れない。「試飾」イノベーションは発明者である蓑口社長が「真似して下さい、そうすればもっと売れるようになって荷主さんを儲けさせることが出来るようになる」と言ってくれている。必ず効果ある「試飾」、是非とも花を買いそうもない人、買ったことのない人に小売店は「試飾」を試してもらいたい。全国のお花屋さん、お願いします。

投稿者 磯村信夫 : 10:50

2012年5月14日

信頼のコロンビア産に品質問題

花き業界にとって春の最大のイベントである母の日が終わった。お天気に悩まされた母の日前であったが、お母さんに花を贈る人が多く、花屋さんは大忙しであった。

自分達ではどうにもならない外的な要因と努力によって成せば成る内的要因とがあるが、お天気や経済動向はどうしようもないが、今年の母の日は花き業界の問題として2つ流通がうまく行かなかったことがあった。
一つはコロンビア産のカーネーションの品質の問題があった。現地コロンビアの悪天候かマイアミの物流業者の問題か、まだ原因は特定出来ていないが、一年中安定して入荷しているコロンビア産のカーネーションに日本各地の卸売市場でクレームがあった。国産のカーネーションにおいてもGWの前半は暑い日もあったのでクレームが出た。国産は明らかに手が回らなかった為の咲き過ぎだが、コロンビア産のカーネーションについては、輸入商社が成田到着後、選別したにもかかわらず、信用を傷つけることとなって誠に残念であった。それが、5月4日の金曜日、5月7日の月曜日に日本中の市場で起こったことだ。

もう一つの現象は油代が高かったので需要がしっかり見込める母の日にあらゆる切花や鉢物が集中して出荷された。それは去年、3.11以降初めて絆消費で母の日から花が本格的に売れ始めたからである。花き業界人は価格に手ごたえを感じた。去年は荷が少なく何でも売れたので、今年も何でも売れると思って母の日に合せてしまった。普通に考えれば、ギフトの花に使われる花が小売店は必要なのであって、そのアイテム数は20くらいのものであろう。それ以外のものは7日の月曜日から安めとなった。

業界内で消費者が好む物を作り、流通させ、小売店はそれらを仕入れてお客様に喜んでいただく。この当たり前の努力をさらにしっかり行う必要がある。この努力を行った品目としてカーネーションの鉢がある。品種改良により窓辺に置けば蕾が必ず咲く物しか流通していない。だからプレゼントされたお母さんには長く喜んで貰える。こういった誰がどの段階で改善すればより消費者に喜んで貰えるか原因究明をし、次回の物日のサプライチェーン作りをしていかなければならない。原因究明を先ず行い、余熱が残っているうちに来年の母の日へ向けサプライチェーンの修復をはかっておこう。

注) コロンビアの花の輸出先順位2011年
第1位 米国  9億5700万ドル
第2位 ロシア 6100万ドル
第3位 日本  5000万ドル
第4位 英国  4400万ドル
第5位 カナダ 2800万ドル
(2012年5月09日コロンビアの輸出業者の業界組織であるASOCOLFLORESが発表した報告書のよるもの)
出典元:
Hortinews / CdM

投稿者 磯村信夫 : 16:01

2012年5月 7日

小さなお店の時代

GWの後半は天候に恵まれず、関東地方では災害に遭われた方もいて、花の小売店も思った通りに売れず残念であった。しかしその中でも「レールサイド」の花店やホームセンターでは雨をそこそこ防げたので例年よりも良かった店、例年並みの店が多く健闘したと言えるだろう。

昨日の日曜日、都内では午後ちょっと雨が降っただけだったので、個店と云われる独立小売店舗の花屋さんを見に行った。私自身が感じているのは、大店舗やチェーン展開している専門店から、時代は小さな独立店舗に向かっていると感じるのだ。ラーメン屋さんがそうである通り、小さければ小さい程、個性あるラーメン屋さんは人気だし、近所に酒ディスカウント店もあるが、良い日本酒を取り揃えていたり、ワインでもまだあまり知られていないスペインワインを中心に扱っている小さなワイン屋さんは繁盛していて、地元の小さな店の方が魅力的に映るのだ。大森という街はだいたいそうで飲食店でも地元の人がやっていたり、或いはよそから来た人も独立店舗でこだわって、しかもコミュニケーションをカウンターごしで御主人とはかれたり、仲居さんと馴染になって好きなビールの銘柄がスッと出てくる店が人気で、チェーン店は予算がある若い人しかいっていないように思う。

我々は消費者として価値を買うので、花を買う時にも花という素材を買うのではない。我が家の場合、朝顔を洗う時その日花を見て花が微笑んで挨拶してくれるので、その微笑を僕は花屋さんに買いに行く。妻は週に一回玄関の花を買っている。それは外から家に帰った時に、或いはお客様が来た時に玄関で最初に目にする花が自分や家族のモットーや雰囲気をかもし出す。そういう花や枝物を買って活けている。僕は消費者として、価値=質÷価格だと思う。だから季節の花やおまかせの花で気に入ったブーケを買っている。

昨日ウォーキングをしながら、10件以上の独立店舗を見たが、改めて花店の個性の出し方の難しさを感じた。ラーメン屋さんや酒屋さんに比べてその店が何をこだわっているのかが、パッと見てわかりにくい。もちろんセレクトショップが正解なのだが、花のようにこれだけ素晴らしい素材が多くあると、"こだわり"を伝えづらい。何かデザインに優れているだとかバラにこだわっている店だとか伝統的仏花や新しい仏花など仏様の花にこだわっている花屋さん等、それぞれ店構えと店員さんのコスチュームで少しは外から見て推測出来るのだが、美容室と同じくらい何にこだわっているのかわかりにくいような気がした。店構えや雰囲気、照明やレイアウトの仕方などそれぞれ自分が目指す、花のプロとしてのこだわり。花のどの分野で東京一を目指して頑張っている店が地元にあると知ってもらうのか、僕は楽観的だ。地元の人は絶対気になっている。価値=質÷価格で小さな店はスケールメリットが出せないから価格を下げてはならない。下げる代わりにおまけをつけるのが常套手段だ。昨日廻ったお花屋さんたちは今後とも頑張っていける店だと思う。後は街の花屋さんは、花を料理する小料理屋さんだ。どんな料理で街のお客さんを惹きつけるのか。そこから、現状からもう一歩進んで今の店にない何か一点でいいから一年中こだわったモノやサービスを売り物にする店を作ってもらいたい。そうでないと、魅力的なレールサイド専門店チェーンと量販店にある花売場に負けてしまうと、昨日感じた。時代は小さなお店の時代、もっと魅力が出せるのに、このままではもったいないのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:32

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