大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2012年5月 | トップ | 2012年7月 »

2012年6月25日

前年比を大きく割った6月

 今朝のセリ前の挨拶、担当者から買参人に台風4号で露地物の被害があったとの連絡があった。詳しくはセリ室内の電光掲示板で知らせているが、伊豆のアガパンサスなど花首のところが強風で折れて、全く出荷がなくなったものもある。7月盆用のグラジオラスや小菊、ミソハギなどが一都六県で被害が出ており、卸会社は産地へ曲がり物でも出荷するようにと要請を始めた。

 花は三気商売で、天気・景気・やる気と云われているが、6月に入り去年よりほとんどの花が安い。去年は自粛でお祝い事が少なかったものの仏事が多かった。今年の冬は例年になく寒く、燃料費も高かったので暖地と高冷地の荷が重なって出荷されたのがこの6月であった。例年なら、蒸し暑く花持ちも悪くなるので、価値が下がった分だけ値段が安くなるが荷動きはそれなりになる。しかし今年は偏西風の進路が例年とは違い、一日の寒暖差があり朝晩は涼しい。よって花持ちが良い。切花の買い換えは週1回のサイクルから場合によっては2週間に1回くらいまで倍近く長くなっている。そこで、第1四半期、最終月の6月は、小売の荷動きが悪く、卸・仲卸も前年を大幅に下回る取扱い額となっている。そんな6月であるが、菊は前年より35%~40%安く、トルコギキョウは25%~30%安い。しかし、団塊ジュニアの需要に根差したバラと結婚式で多く使われるダリアは5%~10%単価が高い。和のテイストが人気だが、枝物も10%高くなっている。このように、時代の流れを反映したものになっている。賛否両論あろうが、全体最適からしたら、消費税値上げは通さざるを得ないことで、日経平均もじわじわ上がってきた。事業会社はここに来て「攻撃は最大の防御なり」と攻めの姿勢が目立つ。又、近頃日本の島国根性から政治・経済は世界の事象に大きく影響を受けているのに、何故日本の新聞やTVニュースは国内ニュースが最初なのか疑問視していた。しかしようやく日本もグローバルに社会に適応し、世界ニュースから地元ニュースの順番になって我々の生き方、グローカルに役立つようになってきた。

 慎重に事を運ばないと売上げを落とし利益を出せない状況であることに変わりはないが、毎日の仕事を慎重に油断なく、また、花育やフラワーバレンタイン、良い夫婦の日など、中・長期的な視点に立って花の消費拡大等を行うこと。自社の花き流通における、価値をより高めるよう立地条件に応じて役割と得意技を発揮すること。震災年の昨年より悪い6月の実績を見て、花卉業界の各社にそう訴えたい。

投稿者 磯村信夫 : 12:05

2012年6月18日

物流が勝敗の決め手となっている

 桜の時期、ソメイヨシノの木がこんなに沢山あるのかとびっくりするが、散歩に行くとアジサイも多いことにびっくりし、桜とは違って色々な品種があるので楽しませてもらっている。桜の時期になると卸売市場の価格は少し安くなる。それと同様、アジサイの時期になると花の相場が安くなる。今まで花き業界は、梅雨なので外に出ないし、出たとしても傘を持っているので切花を買えない。また、土がぐちゃぐちゃしているので、ガーデニングもしない。こう安値の理由を挙げていたが、日本人にとってアジサイは桜に次ぐもの、庭の花として堪能したり、切花にして室内で楽しんだりするのも相場が少し下がる理由なのである。

 ガソリン価格がだいぶ落ち着いてきたが、花き業界にとって利益を出すにはどう燃料費をトータルとして圧縮するかに懸かっている。生産者は暖房費と資材の高騰、また市場まで届ける運賃の値上がりで利幅が薄くなったと嘆く。卸、仲卸も集荷、配送費もコストがかさみ、取扱数量が増えないので利益を出すのに四苦八苦している。こういった状況の中、本年度に入り、ネット業者が最終消費者まで届ける物流を構築するとの記事を目にすることが多い。NTTドコモは、らでぃっしゅぼーやを買収し、ローソンと協業して消費者までの最終物流を持つことになった。セブン&アイホールディングスでは、ネット販売と買った物をお届けする物流を本格化させる。イオングループも通称「ネットスーパー」の形で自社で、また宅配業者と組み、買い手の手に渡るまでの物流を商売の一つに組み入れる。楽天ももちろんamazonも最後まできちっと届けるまでを仕事としている。

 卸売市場は、市場法で所有権が移った段階で、買い手は引き取り物流をするのがルールになっている。しかし、その考え方は少し時代にそぐわないのではないか。小売の場合、利益を買い手である消費者から受け取ることが出来るが、卸売市場の卸売会社は、委託品であれば利益は産地からいただく。買付けであった時に初めて再販業者として買い手からいただくことが出来る。圧倒的に委託品が多いので、卸は買い手の引き取り物流、卸からしたら搬出、或いは納品物流は別途のサービスで、受益者負担の原則で買い手に代わって行う物流だから、卸がやるとすれば、別途の代金をいただくことになる。このサービスを買い手はサードパーティーロジスティックスを得意とする物流会社に頼むという手立てもある。ロットが小さくなり物流費が割高になっている現在、ネット企業を中心に最後まで届けることまでを自社の仕事としている。そのような時代にあって、卸売市場は調達から最後の納品までのサプライチェーンを自分の仕事として捉えるべきである。市場は評価や価格発見だけが仕事ではない。もちろんそれは卸売市場ならではの仕事だが、現在大切なのはサプライチェーンのうち、分荷・配送分配物流で生産性を上げて行くことである。卸売市場こそ、物流改革を行い生産性を上げていくべき業種である。

投稿者 磯村信夫 : 12:48

2012年6月11日

女性の力で需給のズレをなくす

 旧東海道に品川宿跡がある。昨日の10日は、品川宿近辺の祭りで旧東海道はごった返していた。これだけの御神輿が出る祭りは品川区・大田区でもここぐらいであろう。商店街の人達が一致団結し、氏子共々祭りの運営に活躍しているところを見ると、地元の素晴らしさや地域社会の素晴らしさが再確認できて日頃不満に思っている政治経済の諸問題など吹っ飛んでしまい、「やはり何でもやらなければ実現しない」と実際に花き業界で努力を積み重ねて行こうと思った。
 
 アジサイの季節で花の持ちも少し悪くなり、冬・春と担当してくれていた産地の品物に品質の衰えが目立ってきた。今週末は父の日で、黄色いバラやヒマワリがお父さんの花として人気だが、今週は今日重いスタートとなった。月曜日に重いスタートとなるのは、金・土・日の週末のうち、金曜日の午後と土曜日に雨が降って、花の売れ行きが芳しくなかったことによる。日曜日は、住宅地の花屋さんなど休むところが多いので日曜日の雨は相場に然程影響がない。しかし、金曜日の午後と土曜日は、月曜日の市況にもろに影響が出る。出荷量は月曜日に比較的多い。理由は週末に普段は会社勤めの子供達も実家の花作りの手伝いをするからで、量が多い上に週末が天気が悪いと小売店は在庫がある為、安値となる。

 需要が週末型になってきたのは、21世紀になってからで、元々法事と結婚式は週末であり、小売需要の店頭に買いに来る女性達もパートにNPOにと忙しくなったので、すっかり需要が週末型になっている。そして、店頭での花の品揃えが消費者とミスマッチとなっている場合が多くなってきている。女性が花を買うが、仕入れは必ずしも女性の好みを反映したものになっているかどうか、ほとんどの仕入れの人達が男性である為に起こっているミスマッチがあるのではないかと思われる。大田花き市場には、青果や魚の市場から比べれば、女性の比率は高い。卸・仲卸の社員にしてもセリ権を持っている買参人にしても、仲卸に買出しに来る人にしても女性は多い。しかし、その特性が十分に活かされているかというと例えば市場で場内に保育所が設置されていない所などを見ると、女性の活力が十分に活かされているとは云い難い。
 
 そして、これは今後の課題だが、もっと買い手に近く、店で思わず買いたくなるようなマーケティングを大田花き市場として、また花店がそうなるようにリテールサポートをしなければならないと思う。女性の力を活かしきれていない、ここに花き業界全体が消費者とずれている原因があるのではないかと思う。そのずれの部分が何とももったいない。卸であれば、産地との品種選びやセリ順決定において、仲卸や小売であれば、何を販売促進するか、何を仕入れるか。またその他pricing(価格設定)など、今以上に女性に頑張って活躍してもらわなければならない。こう昨日の品川宿の祭りで働く女性を見ていて思った。

投稿者 磯村信夫 : 12:46

2012年6月 4日

やや消費意欲後退か

 暖地のトルコギキョウがピークを迎え始めている。もう20年以上前のことだが、菊には夏菊という品種群があって、静岡県は積算温度で咲く夏菊の大産地であった。イノベーションで秋菊を日の長さを調節することによって開花させ、一年中しっかりした菊が愛知県・福岡県から出回るようになると、夏菊の産地静岡県はトルコギキョウに品目を代え、トルコギキョウでは第1級の産地となった。時代と共に品目も産地も変わっていくが、トルコギキョウはバラ同様新品種が開発され続け、持ちも良いので大品目となっている。今日から第23週目、小売商は本格的に初夏の品揃えを始める。トルコギキョウは量的に出回っているので、需要にはドンピシャリである。

 母の日以降の相場水準は、3.11のあった昨年と同等か、それよりも少し安くなっている。その理由はGWから母の日絡みで花を沢山使ってもらい、まだ花や緑のある生活が各家庭にあるからである。そして、母の日以降に株価が極端に下がり、日経平均で8千5百円を割って裕福層と云われるご年配の株式を持っている人達は、花を定期的に買ってくださる消費者であるが、この方達の消費が鈍い。株価が花の消費の手応えに敏感に響くようになったと実感して6、7年経つ。今小売業大手は団塊の世代狙いで開店時間を早くしたり、旅行では色々リッチな企画をしているが、花は21世紀に入ってからずっとこの世代に使ってもらい、育ててもらってきた。そして近頃は、この団塊の世代は成熟した大人になるというよりも「いつまでも格好良く生きたい」という人達であることがわかってきた。アラフォーの人達が好きなバラやガーベラも団塊の世代向けに小売店が提案すると良く売れるようになってきた。「金時もち」でガーデニングもブランド苗が人気だ。

 ここのところの相場安は、暖かくなって荷が潤沢に出てくるようになってきたこと。そして、GWでお金を使ってしまって今財布の紐を締めている最中であること。さらに団塊の世代を中心に株安で何となく資産が目減りして消費意欲が低下していることに繋がっている。

 金融不安が実態経済に直結している。2016年までは景気はあまり良くないと予測する人が多い。その中で今は債券が買われているが、株が上がることによって消費マインドが変わってくる。淡い期待をよそに花き業界を運営する経営者は、2012年度も景気が悪いことを想定し、手を打って置く必要を5月締めてみて実感しているところである。

投稿者 磯村信夫 : 13:04

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.