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2012年7月30日

時代に合わせる

 先日、民主党の野菜・果樹・花のワーキングチームで発言を求められる機会があった。鹿児島県の先生から白菊の6、7月の安値の理由を問われたので、1つ目の理由に"時代で葬儀が小さくなり、その中でも白菊が使われる比率が減ったこと"、2つ目に"燃料代が高く、無加温の時期に出荷が集中したこと"の2つを挙げて、その説明とした。

 私自身の予算要望としては、1月~4月間の韓国に負けないだけの燃料費の助成をお願いしたが、日本のものつくりは鹿児島の一輪菊生産者だけでなく、あらゆるものつくりが国際化して新興国で日本と同等レベルの物が作出することが出来る能力を有していること。そして日本の生産者の唯一の強みは、同じ日本人として日本のマーケットをよく知っており、予測が出来るので先回りして消費者が喜ぶ物を作ることが出来る可能性があるということ。その点だけだと認識せざるを得なくなっていることだと思う。

 農業まで含めた日本のものつくりは、今までの路線を変更する必要はない。だが、新しい物に果敢に挑むチャレンジ魂が少なくなっていることは大いに反省すべきだ。
 
 菊ではスプレー菊の次に一輪菊生産地に今新しい枠組み作りが求められている。その為にも、生産協会輪菊部会内部での話し合いと市場協会との話し合いが待ち望まれているところである。

投稿者 磯村信夫 : 12:25

2012年7月23日

調達物流と収支

 6月の安値で産地はもちろんのこと、卸や仲卸で2桁マイナスであったところが多くある。2桁マイナスだと、6月はただでさえ赤字月なのに、さらにマイナスが多くなってしまったということだ。

 花き産業の場合、季節によって取扱高が違うのは止む得ないところだが、通年通じて赤字というのはいただけない。赤字は100%内部要因だ。それは外部で特別なことがあろうとも、状況が変化したら早速に対応しなければならない。しかし、この対応たるもの会社が大きくなればなる程難しい。例えば失礼だが、日本航空はこのままでは会社がもたないとわかっていたはずなのに、実際に潰れてみないとリストラが出来ず利益体質にならなかった。赤字企業というのは赤字を直視し赤字を改善しようとする人がいないことが問題なのだ。花き業界の中でもこういった"茹でガエル"がいるのは残念なことだ。"茹でガエル"になってはいけないと、産地は出荷先との取引でどのような収支になっているかを見直し、卸は社内と買い手との取引の収支を見直し、仲卸は仕入先と販売先の収支を見直し、小売は仕入先を見直す。厳しい経済環境下にあって、このような動きが目立ってきた。好調だった個人消費に限りが見え、消費税の値上げがほぼ決まり、値上げ前の駆け込み需要と値上げ後の消費不振で生き残りを賭けた戦いが2016年まで想定されるからだ。目立つのは産地の出荷先の選択で、利益が取れた実績のある先へ荷を寄せている。

 東京は5つの中央卸売市場の花き部があり、多摩の地方市場も頑張っている。特に23区内は、人口が増え続けており、今後とも花の消費は期待出来る。しかし、こういうところは日本全国見渡しても例外で、荷が捌け物流コストが相対的に安い場所となると産地の選択肢はそんなに多くない。どの地域も品揃えは花の場合必要不可欠だ。そうなった時に市場間ネットワークで品揃えを良くすることが地元の消費者の為に必要となる。出来れば市場協会の支所単位での品揃えの展開で、それが無理であれば近隣の市場の支所を巻き込んで調達物流を作っていく必要がある。品揃えをしても赤字になっては続かないから、地元の市場は小売店に事前に十分理解をしてもらうことが不可欠だ。地産地消と調達物流で地元の消費者が喜ぶ荷揃えをして利益を出す。その為にもまずは社内の意識改革、魅力ある商品の品揃え、さらに生産性の高い仕事のやり方への変革、この3つの改革を行わなければ自社が駄目になるという段階になっている。もう先延ばしは出来ない。

投稿者 磯村信夫 : 10:27

2012年7月17日

日本のものつくり

 日本企業のものつくりについて、議論する機会を昨日の日曜日、銀座でもった。そして、家に帰ってTVをつけると、made in Italyにこだわった中国からのフィレンツェへの移民が、衣料品を輸出している現況を知るにつれ、複雑な思いを持った。今日は花も含めた日本のものつくりについてお話したい。

 日本のものつくりは基礎研究と、そのこだわりによって今でも世界に冠たるものであるが、その作られた物については、消費者に押し付け気味であったり、消費者からすると、過剰品質で使わないものが多くあったりする。よって、作られた製品については、消費者が欲しいと思うものではなくなっている可能性が高い。特徴的には、Apple社のiphone、ipadや、Samsung社の Galaxyに負けている。Appleは、既存の技術を組み合わせ、消費者がこうあってほしい、あったらいいなという物を創りあげる。Samsungは、地球上の各地域でどんなスペックが必要か調査し、その地域に合った商品を提供している。決してSamsungは日本製品よりもTVでも安い物を提供しているわけではないのがヨーロッパに行ってみればわかる。グローバリゼーションとデジタル生産化によって競争は、その物を使って何がしたいか、どのようなサービスをもたらしてくれるか、お金を出してくれる消費者の立場にたったものつくりの競争になっているのだ。

 2010年、世界で最も大きなトラブルは、中国の毒入りミルクを抑えて、トヨタのフロアマットが引っかかりアクセルペダルが戻り難いという事故と、トヨタの対応が一位となった。日本では、大々的に報じられなかったのは日本のものつくりの強さ、とりわけ看板方式など生産プロセスに日本の強さがあり、日本のものつくりは今でも世界最高の品質だとの日本人の自負がこの2010年のThe Timesのランキングニュースを小さくさせたのであろう。グローバリゼーションそして職人芸を取り込んだNC工作機によるデジタル生産は、どこの国で作ろうが同じ品質の物を造り上げることが出来る。工業における成功は、何を造るのかにかかっているのだ。農業の分野でも数値化、デジタル化しようと現在日本のコンピュータメーカーは、職人芸と云われるものつくりをデジタル化し、誰がやっても品質を安定化させることが出来る農業にしようとしている。現状は日本列島は縦に長い。気象条件もそれぞれ違うので、良い農作物を作るには複雑な組合せがあり一筋縄ではいかないが、その努力を始めたので必ず完成するであろう。

 さて、現時点では農業と同様、人の感性や手仕事が大半のアパレル産業において中国人達がmade in Italyにこだわり、フィレンツェに移住して作って世界に輸出している。イタリア人達は、自分達は移民する民族だと思っていたのが、20世紀の後半、ユーゴスラビアが崩壊し、移民を受け入れるようになり、今度は中国人も来るようになって、国際化に慣れていないイタリアは戸惑っている。Made in Japanの衣料品が出稼ぎに来た多くの中国人達によって作られているが、made in Japanは信用出来ると思っている日本人が買い手だ。まだ移民してきた中国人が、made in Japanを輸出しているわけではない。私自身は、イタリアのメーカーにはこだわっても、それがブルガリア産であろうが、トルコ産であろうが、他国産であることにこだわらない。そのメーカーのデザイン力と品質を保証するところに信頼を置いているだけだ。これと同じようなことに日本の花き業界も既になっているのではないか。優秀なメーカーが国内では、九州と長野県に生産基盤を持っている。愛知県から大分県へ拠点を移した生産者もいる。マレーシアは日本の生産者と国際交流を重ねながら、日本の消費者にメーカーとして広く受け入れられるようになって一定の地位を占めている。

 日本の花が特段優れているというのではないのである。日本の生産者の強みは、もし日本の消費者に販売するのであれば、好みを誰よりも知っているので、先回りしてその花を作り、提案することが出来るということである。農業まで含め、ものつくりは既に国際化し、品評会に出す良いものを作るだけでお金が取れるという時代は終わったのである。

 誰に売るのかのSamsung流、何をしたいのかをイノベーションで新しい物を作るApple流、こう考えていくことが今の時代のものつくりではないかというのが、私の考えである。フィレンツェに移民した中国人はmade in Italyのファッションが格好良いと思っている人に売るのを商売にしている。これもSamsung流と云えるであろう。

 今、話題になっている、アメリカのオリンピック選手団のユニフォーム問題は、ラルフローレンデザインのmade in Chinaだそうだ。賛否両論あろうが、アメリカのビジネスを体現しているので面白い。今後日本では、made in Japanで他国の花を排除することがないようにする。売りはあくまでも自分の名だ。その産地、生産者が価値を決める。なくなっては困るというのがブランドだから、名前を覚えてもらってトレンドを先取りする。そのことにものつくりは心がけるべきなのである。これは、花作りも同様である。華道・フラワーデザインの先生方も同様である。

投稿者 磯村信夫 : 06:02

2012年7月 9日

安値の理由は自由放任だから「総合の誤謬」

 おそらくここ20年なかったことだが、7月のお盆の相場がべたべたである。8月とは違い7月のお盆は普段の日に行われるので、私も出張があり、15日(日)にお袋の所へ行く。仏壇にお線香をあげ、今あることをご先祖様に感謝し報告をする。お花屋さん達も今年は誠におっとりしたもので相場が上がる気配がないから、売れる本数は決まっているので安くても買いたくないのだが、ついつい余分に仕入れてしまう。

 今年の6月の安値と7月のお盆の安値を体験してつくづく思うのだが、誰か産地に指揮官がいて、全体の需給バランスを考え、品目別に自分の産地の時期別の作付け計画を作り、生産者はそれに基づいて生産・出荷する。こうしていかないと、バランスの取れた魅力ある産地作りは出来なくなったことを立証している。農協・花き部会の共選・共販でも生産者が各自の意向で作っていた花をまとめて選花・選別して卸売市場に分荷するのでは、リスクが大きい。こうして、今年の6月と7月は、菊や仏花素材の安値となっている。元気な商店街が少ないのもこれと同じ理由だ。商店街として魅力ある品揃えをしなければならないのに、ただ単に軒を連ねた小売店の集まりでは、地域の消費者が必要とする業種がなかったり、悪い成績の店は退場させたりするコントローラーがいるショッピングセンターやスーパーマーケットなどに利便性や魅力度で負けてしまう。成熟時代には、消費者に役立って行こうとするヘッドクォーターの役目と、それに従って行くグループ化された生産者達が必要で、ただ単に自分達が思うままに花を作って、農協に持って行き、共販にしても生産価格で売れる時代ではなくなっているのだ。

 「弱り目に祟り目」で安くなると自分だけ得をしようとしているのか、共販から離れて個人出荷の人達が多くなる。個人で出荷するには、独立店舗と同様の気構えが必要であり、一人で戦うだけの能力が欠かせない。誰もが作っている花を荷が纏まらないなら、個人で出荷しても面白くとも何ともない話だ。東京にある荷受け所を見ていると、こんな生産者もいたのかと思えるほど分裂した生産者があちこちに荷を出しているのがわかる。このような行動が安値を長引かせている。生産過剰の場合には、産地廃棄する。そして、県や出荷団体のヘッドクォーターの指示に従って出荷する。こうしていかないと、お金が取れない時代になっている。リーマンショック後、価格が下がってから、系統農協は農家各自にいつ、何を生産・出荷するのかの判断を委ねてしまっている。ここが問題なのだ。沖縄県では太陽の花・JAに出荷する生産者は、コスト上昇などで内地の生産者と同じように苦しいが、後継者が育ち若者達が希望を持って花を作っている。全農岩手県の各農協花き部会も同様だ。それはコントローラーが農協に系統に居るからだ。

 市場(マーケット)に身を委ね生活をする者は、時代の変化の中でお金を出して買ってもらえる花を作る計画、これがない限り花でお金は取れない。繰り返すが、それは商店街とシッピングモールを見ても明らかである。ヘッドクォーターを中心にチームを組んで花作りにあたる。欲しい時期に欲しがる品種を欲しいだけ作る。スポーツと同様統制化されて、生産をすることが産地の必要条件なのである。

投稿者 磯村信夫 : 12:18

2012年7月 2日

ユリの八重化

 総会の時期も終わり、今年も残すところ後半分となった。各企業の取組みを見る限り、世界経済の縮小の中で、積極的に手を打って行こうとしている企業の姿が浮かび上がってくる。とりわけ勢いづいているのが内需関連のコンビニ、量販店、インターネット販売などで時局を捉えて夫婦共稼ぎや高齢化をイメージした戦略に出ている。

 人口動態やら時代の雰囲気は花き業界も一緒で、今週末に七夕があるが、笹でも大きいタイプの2メートル以上のもののうち、約20%は老人ホーム向けであると大田花きは推測している。介護付き老人ホームが出来てから、所謂老人ホームとケア付きマンション的なものと、この分野での深掘りが始まっているが、元気なうちにマンションに引っ越すのと同様にホームに入る人が増えてきている。七夕の笹でこれだけの需要があるのだから花や緑にも需要があるはずで、頭の老化防止といっては何だが能力トレーニングの為にもう一度生け花やアレンジメント、或いはコンテナガーデンなどの教室の需要を展開するのも面白いのではないだろうか。

 そしてもう一つ。今ユリのシーズンなのでユリの向う方向性について話をしたい。まだ、先端を行く人達が使い始めた位だが、今後の潮流になっていくと感じている。それはユリの八重である。出荷の時の切り前が難しい点はある。又、蕾が大きいので移送中に花首が傷んだり折れたりする可能性がある。だがそれにも増して咲き足がゆっくりで咲いて見事だし、今流行りの重ね着である上に花粉がないから服やテーブルを汚す心配もない。八重でなく一重も処理をすることによって花粉が出ないようにしている産地もあり、花粉対策に一層の注意を払っている。八重品種改良の時間もあるから急激に増えるというのではないが、今後5年間をとってみると、この流れは1つの潮流になるのではないかと推測している。大田市場の周りでも山ユリが咲き始めた。ハイブリットユリにとって新しいものである八重化、花粉なしの潮流を大田花きとしてサポートしてゆきたい。

投稿者 磯村信夫 : 12:42

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