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2012年7月17日

日本のものつくり

 日本企業のものつくりについて、議論する機会を昨日の日曜日、銀座でもった。そして、家に帰ってTVをつけると、made in Italyにこだわった中国からのフィレンツェへの移民が、衣料品を輸出している現況を知るにつれ、複雑な思いを持った。今日は花も含めた日本のものつくりについてお話したい。

 日本のものつくりは基礎研究と、そのこだわりによって今でも世界に冠たるものであるが、その作られた物については、消費者に押し付け気味であったり、消費者からすると、過剰品質で使わないものが多くあったりする。よって、作られた製品については、消費者が欲しいと思うものではなくなっている可能性が高い。特徴的には、Apple社のiphone、ipadや、Samsung社の Galaxyに負けている。Appleは、既存の技術を組み合わせ、消費者がこうあってほしい、あったらいいなという物を創りあげる。Samsungは、地球上の各地域でどんなスペックが必要か調査し、その地域に合った商品を提供している。決してSamsungは日本製品よりもTVでも安い物を提供しているわけではないのがヨーロッパに行ってみればわかる。グローバリゼーションとデジタル生産化によって競争は、その物を使って何がしたいか、どのようなサービスをもたらしてくれるか、お金を出してくれる消費者の立場にたったものつくりの競争になっているのだ。

 2010年、世界で最も大きなトラブルは、中国の毒入りミルクを抑えて、トヨタのフロアマットが引っかかりアクセルペダルが戻り難いという事故と、トヨタの対応が一位となった。日本では、大々的に報じられなかったのは日本のものつくりの強さ、とりわけ看板方式など生産プロセスに日本の強さがあり、日本のものつくりは今でも世界最高の品質だとの日本人の自負がこの2010年のThe Timesのランキングニュースを小さくさせたのであろう。グローバリゼーションそして職人芸を取り込んだNC工作機によるデジタル生産は、どこの国で作ろうが同じ品質の物を造り上げることが出来る。工業における成功は、何を造るのかにかかっているのだ。農業の分野でも数値化、デジタル化しようと現在日本のコンピュータメーカーは、職人芸と云われるものつくりをデジタル化し、誰がやっても品質を安定化させることが出来る農業にしようとしている。現状は日本列島は縦に長い。気象条件もそれぞれ違うので、良い農作物を作るには複雑な組合せがあり一筋縄ではいかないが、その努力を始めたので必ず完成するであろう。

 さて、現時点では農業と同様、人の感性や手仕事が大半のアパレル産業において中国人達がmade in Italyにこだわり、フィレンツェに移住して作って世界に輸出している。イタリア人達は、自分達は移民する民族だと思っていたのが、20世紀の後半、ユーゴスラビアが崩壊し、移民を受け入れるようになり、今度は中国人も来るようになって、国際化に慣れていないイタリアは戸惑っている。Made in Japanの衣料品が出稼ぎに来た多くの中国人達によって作られているが、made in Japanは信用出来ると思っている日本人が買い手だ。まだ移民してきた中国人が、made in Japanを輸出しているわけではない。私自身は、イタリアのメーカーにはこだわっても、それがブルガリア産であろうが、トルコ産であろうが、他国産であることにこだわらない。そのメーカーのデザイン力と品質を保証するところに信頼を置いているだけだ。これと同じようなことに日本の花き業界も既になっているのではないか。優秀なメーカーが国内では、九州と長野県に生産基盤を持っている。愛知県から大分県へ拠点を移した生産者もいる。マレーシアは日本の生産者と国際交流を重ねながら、日本の消費者にメーカーとして広く受け入れられるようになって一定の地位を占めている。

 日本の花が特段優れているというのではないのである。日本の生産者の強みは、もし日本の消費者に販売するのであれば、好みを誰よりも知っているので、先回りしてその花を作り、提案することが出来るということである。農業まで含め、ものつくりは既に国際化し、品評会に出す良いものを作るだけでお金が取れるという時代は終わったのである。

 誰に売るのかのSamsung流、何をしたいのかをイノベーションで新しい物を作るApple流、こう考えていくことが今の時代のものつくりではないかというのが、私の考えである。フィレンツェに移民した中国人はmade in Italyのファッションが格好良いと思っている人に売るのを商売にしている。これもSamsung流と云えるであろう。

 今、話題になっている、アメリカのオリンピック選手団のユニフォーム問題は、ラルフローレンデザインのmade in Chinaだそうだ。賛否両論あろうが、アメリカのビジネスを体現しているので面白い。今後日本では、made in Japanで他国の花を排除することがないようにする。売りはあくまでも自分の名だ。その産地、生産者が価値を決める。なくなっては困るというのがブランドだから、名前を覚えてもらってトレンドを先取りする。そのことにものつくりは心がけるべきなのである。これは、花作りも同様である。華道・フラワーデザインの先生方も同様である。

投稿者 磯村信夫 : 2012年7月17日 06:02

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