大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 支出ではなく投資です | トップ | 「セリ機 2012年度セリシステム完成」 »

2012年8月13日

社会の勝利は一人一人の自尊・自立から

 盆休みの時間の使い方として、田舎に帰って墓参りという人たちが多いそうである。それに合わせて菊の相場が上がってきた。日本の素晴らしさは、信頼関係に基づいた人間関係である。オリンピックを見ても全員~や、チームプレイで泣き笑いした。「きずな」や「縁」の心は家族からチーム、会社、大きな社会まで広がっている。

 8月10日(金)の朝日新聞に社会疫学の第一人者、米ハーバード大学のイチロウ・カワチ教授の記事があった。「日本人はなぜ長寿なのか」日本は他国と比べ、塩分や酒も量も多い。働き過ぎだし、喫煙率も高い。それなのになぜ長寿なのか。お互い様、或いはお陰様の人に対する信頼関係やお互いに支えあっている気持ちが寿命に影響しているのではないか。全人的にその人を否定する、或いは人格を否定するということはない。確かに格差は広がっているが、それはグローバリゼーションであらゆる業種において競争が激しくなった為。日本での格差は他国に比べてあまりないが、仮にあったとしても、ストレスを和らげるお陰様やお互い様の社会文化があるのではないか。私はそう読んだ。

 世界保健機関(WHO)の2009年の調査だが、世界で自殺者が多い国は10万人当り、1位リトアニアの34.1人、2位韓国の31.0人、3位ロシアの30.1人、7位ハンガリーの24.6人、8位日本の24.4人だそうである。東京ではしょっちゅう人身事故で電車が止まるのでもっと多いと思っていたが、やはり「きずな」が日本全体では良き会社を作っていっているのだ。アメリカも韓国も大学進学率が大変高いが、格差社会を反映しているということであろう。とやかく言う資格はないが、両国は人を認め人格と能力とを分けて考える集団文化を作り上げていく必要があるのではないかと思う。さて、日本だが、今期のオリンピックでもチームのメンバーとして本人の実力以上の力を発揮し、チームが入賞したり、メダルを獲った種目も多い。日本人は実際個人技・ないし個人格闘技については強さがあり、一人の個人としての強さは世界でも際立った国民のうちの一つであると思うが、しかし日本人に言わせるとロシア・中国・アメリカに囲まれ国土も小さく、個人としても背も小さいと言って、個人としての強さを客観的に見ようとしないのは残念である。一個人のパフォーマンスも組織全体のパフォーマンスもいずれも掛け算で成果が出るわけだから、まず個人が強くないと運動にしても業績にしても成果は期待できない。それは、まず一人一人の個人が大切である。

 さて、業績と絆の話をもう少ししたい。2012年度の上場会社の第1四半期の結果が出揃ったが、本年1~3月期の前年比の伸びは失速し、前年をやや上回った程度のことだった。そしてそのレベルは、リーマンショック前のレベルより2割売上げが取扱いが少ない。花き業界はこの第1四半期、前年を上回ったところがある一方前年を落としたところも多くあり、全国の卸売会社の実績から推測するに、4~6月全体では震災のあった昨年と同額の取扱いであったが、6月の菊の超安値で菊を多く扱う卸売会社は前年比落ち込みは大きく、小売の業態で言えば、専門店大手と量販店が気を吐く一方、町の花店の落ち込みが大きくなっており、その格差は広がっている。

 先程、社会疫学の中で格差の話をしたが、仕事をしていく上で格差を跳ね除けるべく、事業体が小さければ「山椒でピリリと辛い」が必要で、小さい分だけ何かに秀でていなければならない、特徴がなければならない。少なくともそのお店の主人や従業員は事業規模の大きいところに負けないだけの優秀さを持っていなければならない。そうでないと、格差が広がるのは世の常だ。生鮮食料品花きの中で格差が最もついてしまったのが魚業界である。沿岸漁業者は魚資源が少なくなったり、消費者の魚離れで単価が下がったりした為に、2009年一世帯辺りの所得は251万円であった。これでは生活出来ないので、当然勤めたり副業をしたりする。花は元来、半農半漁の場所が産地であった。伊豆や千葉がその代表だ。もう一度、津波被害のあった三陸から伊豆まで、沿岸漁業者は花作りと兼業することによって生計を立ててもらいたいし、地域の農協は花作りの指導に手を貸すだろう。小面積だって花き部会で取り組めば、メダルだって取れる。JAや県が栽培指導してくれる理由は日本の少子高齢化でも花の消費は減り難いし、私自身は花を飾る場所が増えるから消費も増えると信じているからだ。このようにして、地域の一次産業を盛り立ててゆく。そして人との繋がりを大切にしていく。補助金や公共事業、新幹線に頼らなくても一人一人が地域で立派にやっていく。こうしたことが、生きがいを持った日本を作り出すことではないか。農業も漁業も、またフローリストも生涯現役でやっていける。こうすることによって生きがいを持った一次産業というものや花の小料理屋としての花き専門店が栄えていくのではないかと思う。補助金を当てにせず当たり前のことを当たり前にやって自分達の手で儲けて格差社会を無くして行く。これを花き業界でも実現ししてゆく。

投稿者 磯村信夫 : 2012年8月13日 15:32

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.