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2012年10月 8日

卸売市場システムを転位させる

 2004年の市場法の改定により、自己の計算による買付けが中央卸売市場の卸売会社に許されてから、もう少しで10年経とうとしている。力の弱い卸売会社は「買付けだったら出荷します」と云われて買い付けて販売したところ、売上高営業利益率は1000分の3になってしまったのが、青果中央市場の卸売会社である。

 ただ単に買付けをしたというよりも買付けをした場合出荷奨励金が出ないから、産地から指値で委託出荷が行われ、指値で売れないから結局残品相対の形を取り差額を卸や仲卸が補填した形になって卸の利益率は今しがたお話したようになり、また仲卸も3分の1が赤字になってしまっている。

 花の卸売会社はこの轍を踏みたくないので、どのようにすれば産地と協業の形を作れるかを模索してきた。最終商品に近いところまで考えて生産流通させる今、農水省が補助金を出してでも推奨している第6次、生・配(卸)・販同盟の型となった。リスクを一方的に産地に取って貰うという形をとらない花き業界を今後とも進めて行く必要がある。運命共同体のサプライチェーンを作るのは市場流通の基本であり、日本以外で市場流通が主流のオランダも日本の農産物の第6次産業と同じ形をとっている。

 大田花きはこのように卸売市場流通は農業と花き消費の発展の為に欠かせないものと考えているので、中国雲南省昆明市にある"昆明国際花市場"をオランダの現フローラホランド、当時のアルスメール花市場と一緒に立ち上げた。セリ機やコンピュータなどの機材をアルスメール花市場が出した。またその前年に職員を研修させた。大田花きは中国の実用に合わせた運用の企画からオペレーションを教え指導するというものだ。市場の業務は上手く行くようになったが、大田花きが考える生産地の発展に結びついていないのが残念だった。

 問屋制度だと手数料がいくらで売られているかわからないので、手数料率が決まってよりオープンになっている取引所の卸売市場が必要だ。市場そのものがオランダのように生産者の組合が運用しているのであれば別だが、そうでない別の組織となると、日本の2分の1しか耕作面積のない中国の農家は、一軒一軒ではあまりにも非力だ。小さな農家の為に一箇所に荷物を集めて選別をし、まとめて出荷する農協の花き部会・組織が必要だ。"One for all、all for one"の精神に基付いた農協の存在がどうしても必要なのだ。しかし残念ながら、昆明地域では出来ずに農家から荷を買って市場に出荷する産地商人が多くなってしまった。今でも昆明花市場は立派に機能しているが、小さな生産者の所得向上ややる気の向上に直接役立っているとは日本人の私の目からは云えないのである。

 日本は卸売市場が機能しているので、生鮮食料品花きでは大手のスーパーマーケットもG7の日本以外の国のように寡占化が進んでおらず、中小のスパーや専門店では夫婦で営んでいる花店も十二分に競争し生き残ってゆける。消費者はその分選んで買える訳だ。このシステムをアジアにと思い、ASEANの花の中心はタイだから、タイと生産地にも恵まれ人口も多いベトナムに市場システムを使ってもらいたいと大田花きは考えている。

 しかし現実はそんなに簡単ではない。既に花の分野では、多数の問屋が存在し、彼らと競合して市場システムを根付かせなければならない。その為には台湾や韓国と同様、政府が後押しして行かなければならない。卸売市場は、市場システムだけ作っても駄目で大規模農業会社プラス小農家で構成される協同組合の生産部会がどうしても必要なのである。
イギリスの植民地であったところは、"One for all、all for one"の考え方があるので、FAOやJICA共々その国の主要な方々にご理解いただき、日本のような素晴らしい市場制度が日本から移植され社会インフラになる可能性がある。又、オランダの花市場がオランダ系のブラジル人生産者の為に花市場を作り、今では1億4,800万ユーロの取扱い金額を誇るオランブラ花市場(協同組合方式)のようにするかである。

 最後に日本の市場システムの発展型として当面の問題を解決しなければならない。目前の問題として、日本の卸売市場の利益率の少なさは困ったものである。これでは時代に合わせ、変わっていく為の設備投資資金が生み出せない。まずは、合併やグループ化で数の調整を行い、利益を出していくべきである。日本では加工食品卸で売上高営業利益率を1%確保しているが、このくらいないと生産者や取引先の業者に役立つ提案が出来ない。時代に合わせて変化出来ない。日本では次なる発展の為にグループ化・合併・買収(M&A)をする時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 2012年10月 8日 12:54

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