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2012年10月22日

素材の旨味が日本文化の特徴

 昨日の21日、大田市場祭りがあった。花は文化そのもので、華道池坊流の組織は神社仏閣の建築業の金剛組に次いで現存する二番目に古い組織体であることでもわかる通り、今に生きており、世界のフラワーデザインにも強い影響を与え続けている。

 食においてはゲルマンの民やアングロサクソンの人たちのように身体を健康に保つ為のものとしている国がある一方、中国・トルコ・イタリア・フランスのように食を文化として捉えている国がある。日本食は素材そのものの持ち味を活かし料理する。素材に過度の手を加えていないように見えて適確に手を加えるその手法は現代フランス料理のみならず、中華料理、近頃はベトナム料理にも強い影響を与えている。素材を活かした装飾と食の文化、これを支えるのが我々卸売市場である。

 全国花卸協会(仲卸)は目利き会を開催し、「情報取引が多くなっている中で我々仲卸が真の目利きが出来なければならない。そうでないと、規模は小さいが本物を作りこなす生産者の品物を適切に評価出来ない」と勉強会を開き後継者の育成に力を入れている。我々卸売会社もセリ前相対の比率が大きくなり、実際に品物を触る機会がめっきり少なくなった。産地においても共選・共販が多くなると農協担当者が実際に畑に行ったり集荷場で品物を触ったりする機会が少なくなる。それでは良くない。農協の担当者も本物を見極めることが出来る人であって欲しい。

 そんな危機感から大田花きでは3年前、研修所をもう一つ作り農業実習を行っている。新聞で見るとモスバーガーやワタミ他、美味しい野菜を積極的に食べてもらおうとしている外食産業の人たちも農業実習していると云う。農業実習はとば口だが、日本の食文化・花卉装飾文化をさらに前進させる為に我々市場人は目利きを発展させなければならない。

 そう思って昨日の市場まつりを見ると、卸と仲卸が用立てしたが、花では切花・鉢物とも良い品物を即売出来たと思う。鉢物は全て国産であったが、育種は外国の種苗であるものが半分あった。切花では外国産のものが1/3。球根・切花のように外国の球根を使ったもの、或いは種苗の発案が外国産であるものが1/3あった。

 グローバリゼーションは花の場合、当然のこととして日常の取引の中に存在している。それ故、国産の切花・鉢物類であっても海外の育種動向・生産動向を見極めておく必要がある。鮮度を加味した素材そのものの価値は国産に勝るものはない。しかし、その価値の差は輸送手段の発達やケミカルコントロールによって少なくなってきている。よって、大田花きは5年前時間が経つと飛んでしまう香りを国産の花の勝負どころの一つとして提案したのであるが、香りは重要な一つと云うよりも付随の価値に今のところ留まっている。

 素材そのものを活かしきる技、お花屋さん・華道家・アレンジャー、そして料理人の技と我々プロの市場人の評価眼、これが今後とも日本の装飾・食文化を支えてゆくのである。成田屋(市川家)の歌舞伎十八番助六の紫の鉢巻きは今でも築地の旦那衆、仲卸組合が届けている。このことこそ市場の目利きの役割を象徴するものである。

 さあ、農業実習をして生きたものに触れ、良いものを味わい、実際に市場で品物に手を触れ、目利きの役割を果たして行こう。品物のプロだけでなく、市場人は相場のプロでなくてはならないこともお忘れなく。

投稿者 磯村信夫 : 2012年10月22日 11:25

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