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2012年12月24日

第4弾 今年の潮流

 今年の12月までの潮流と1年を振り返った時に言い残したことをお話してみたい。


"球根切花・鉢物少ない"
 今年は11月の上旬まで、記録的な暖かさであった。あまりにも球根切花・鉢物は少ないので、荷が遅れていると思っていたらそうでもない。球根は高いからこれに投資する人たちが少なくなっているのだ。
国内の球根産地は高齢化で生産が少なくなっているし、オランダ始め、海外の球根生産もリーマンショック以来の低調市況で生産意欲は減退しているので、球根の品質も今ひとつだ。
ラナンキュラス、ダリアを除き、他の球根切花・鉢物は少なくなってきた。この傾向はしばし続く。
しかし、自信のある産地は逆張りでしっかりと生産していこうとしている。


"松・千両屋は更に"
 鹿島から波崎にかけての松。銚子から波崎にかけての千両。年末の大市の為に日本中の市場が鹿島と波崎を訪れる。
松も千両も生産者の人数からしたらピーク時の3分の1。
安定出荷できる人のみが残った。
面積でも松はピーク時の3割以上も少ない。千両は波崎で移植する意欲のある千両農家は別だが、ほとんどの千両農家は疫病が出て箱数も今までの半分。
原因がわからず先の見通しが立たないと途方に暮れている。
今まで中小市場にも出荷していた昭和と違い、今は中堅以上の市場と取り組んでいる生産者がほとんどで、生産量は限定されている。
産地では早急に病気対策の手を打って欲しい。


"若き後継者がいて優秀な所が業績を上げている"
 生産者・卸売会社・仲卸会社・小売商の実際に花で生活している会社を見ていると、まず2通りに分けられる。
それは、後継者がいないところといるところだ。そして、次にその後継者が良いか甘いかだ。
後継者のいるところは、社会の進歩についていこうとそれなりの投資をしている。
いないところは、小売商であれば堅実に生花店を営んでいて、榊や仏花などお店に来てくれるお客様に良い花を届けようと努力しているが、自分の代で終わりなので自分を中心に考えがちだ。
 そして後継者がいるところも仕事にやりがいを感じ、小売商であればフラワーアレンジメントや生け花、寄植えの技術もさることながらマネジメントが出来るレベルまで来ているかどうか、育った時期が花き業界の調子が良すぎた時期だったので、両親から甘く育てられたかで、その農園や卸売会社や仲卸会社や小売店の優劣が明らかに決められている。
 家族で農場やフローリストを運営しているところもそこの社長は朝礼をしたり課題解決の為にミーティングを行ったりしているだろうか。
社会からの欲求に合わせて自分が進化できるだけの投資を行っているだろうか。
 広義の団塊ジュニア世代の1965年から1975年くらいに生まれた若い経営者候補のレベルによって花き業界の組織の優劣がはっきりしてきた。


"プロ野球リーグから、プロサッカーJリーグを目指す花き流通"
 楽天と日本ハム、ソフトバンク以外はプロ野球ではいずれも昭和の3大都市圏が本拠地となっている。
しかし、それでは文化の申し子、花の消費は上手くいかない。
やはりJリーグと同様、地元の応援を得て地元に根を張った花き流通を行えるようにして地域文化の消費に答えるのである。
 Jリーグ同様、日本海側で気を吐いている新潟は地元中央市場が地元の人たちの声援を受けて、荷姿で足りない物は他からも手当てをするのがJリーグ精神に則り非常に良い花き流通の仕事をしている。
たしかに1部リーグ、2部リーグ等産地から日本の花市場を見ると二層化、三層化しているかもしれない。しかし、ファンや観客である消費者、小売からすると、全て自分のところは1部リーグである。
そういう気持ちが日本中の地方中核市場・中堅市場にありありと欲が見えてきた。
是非とも産地には応援を頼みたい。


 本年もご愛読いただき誠にありがとうございました。
花き業界も「人」の問題になっています。リーマンショック前と同様、JFTD(日本生花通信配達協会)と冠婚葬祭を行っている花き事業会社、そして専門店チェーン会社、更に花束加工業者の皆様が仕事品質向上に向け、激しい競争をしながら業界を引っ張っていってもらいたいと希望します。

それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

投稿者 磯村信夫 : 15:23

2012年12月17日

第3弾 本年明らかになった潮流で、今後も続くと思われるもの

"7月盆は普通の仏花がじわじわと広がる"
 三大都市圏は集団就職世代と、長男は田舎に残っているが、次男三男が住んでいる。高齢化は大都市の方が激しいのだ。
 首都圏の団塊の世代で早いところでは親が亡くなり、お盆をし始めている。7月は夏休み前の普段月。迎え火や送り火、自宅にお坊さんに来てもらいお経をあげてもらうことはしていないが、日頃よりもお盆を意識して花とお供え物をする。そういったことが、団塊の世代のトップが65歳以上になって目に見える潮流になってきている。高冷地からは早出しのハウスリンドウや露地物のリンドウの出荷が始まってきて、少し贅沢な仏様の花として7月盆によく売れている。

"8月盆は国民的行事"
 相続が発生する平均的年齢は67歳と言われている。団塊の世代を中心に親がまだ元気なうちにとお盆に故郷へ帰るのは国民的行事にもなっている。
 故郷へ帰りご仏壇に手を合わせる。地域によってはお墓参りをする。そういったお盆休みを過ごし、それに合わせた花の需要はピークを迎えていると思われる。
しかしその後、都会に出てきた次男、三男が67歳を過ぎる頃になると、両親がいなくなった田舎の姉さんに迷惑をかけるからと盆に帰らなくなる。現在既に両親を亡くしている団塊世代の地方出身者夫婦の行動をみていると旅行などをして過ごす人たちが多いことに気づく。まずは2015年に向けて8月盆の花の需要は高まっていく。

"夏露地物、東北に期待"
 園芸先進地である長野県では、露地栽培がめっきり少なくなって施設栽培中心となっている。しかし、ハウスものだけでは物日の需要量に対応出来ない。菊・小菊など花持ちが良い夏場の花を露地栽培で量的にも生産していこうとする東北各県へ日本中の花市場は期待している。
 例えば、生産量が増えてきた秋田県への関西市場からのラブコールは年々大きくなるばかりである。出荷量が毎年少なくなってきている花き業界では露地物を頑張って作っていこうする東北各県の産地への期待が大きい。

"リタイアー組、花き栽培を始める"
 北関東や愛知県周辺の県では、60歳定年後、65歳までの再雇用を希望せず、アスターや小菊など花き栽培に携わる人たちが目立つ。意欲的な農協では花き係が普及センターの県職員と一緒になり、第二の人生の仕事として花き栽培を奨励している。今までサラリーマンだった人たちが花き部会へ入り、部会や農協の組織そのものも活性化してきたと嬉しい声を聞く事が多くなってきた。ご本人たちへ伺うと、やりがいがあり、面白くてやめられないという。小菊、アスター、ケイトウ、草花など、量的に販売できる物を多く生産している。

投稿者 磯村信夫 : 15:50

2012年12月10日

夏までの潮流 2012~

■ギリギリの加温でも母の日までに出荷
 4月から初夏にかけて表れた傾向で、今後とも続くものと思われる潮流を紹介したい。
原発停止で節電が叫ばれ電気料金が上がり、先進的なバラ農家はヒートポンプを入れても暖房経費削減に繋がったとは言い難い状況になってきた。
そうなると、3月中に出荷できないものは母の日目当てになってくる。とにかく暖かくなってから荷が潤沢なのだ。施設物も露地物もこの傾向は今後とも変わらないだろう。

■咲かせて出荷が国産
 切花は硬めに切って咲かせると、後処理をしっかりしていないと色呆けするし花が小さい。物によっては、咲かないで終わってしまう、咲かせた物を切って出荷する。
その方が綺麗な状況が長く、持ちも良いというようにバラ・カーネーションは変わってきた。輸入品との差別化だ。
球根切花は難しいかもしれないが、それ以外のものは硬すぎない切り前が評価されてきて、店頭でも「バラはある程度咲いていた方が良い」と消費者の中でも「咲いたものを買うこと」が浸透してきた。

■母の日は鉢物優位
 切花のカーネーションは母の日前、一年分の10%を売ってしまう。イギリスのバレンタインデーのバラのようだ。母の日は徐々に鉢物のウエイトが高まってきた。
団塊ジュニアが団塊世代の母親に贈る。団塊の世代がその母親に贈る。消費者の好みもそうだが、発送やラッピング、プレゼントとしてすごい数だ。
商品化する手間を考えれば鉢物が簡単だ。ラッピング、荷造りだけで良い。
新年度4月から母の日まではまさに花と新緑のシーズン、花の価値が高い時期だ。それが母の日の鉢で締めくくられる。そんな潮流になってきているのだ。
 
■母の日過ぎは夏まで輸入花が少し
 日本には花の大産地が6つある。輸送園芸地帯として、北から北海道、東北、九州沖縄。そして、地元の産地として一都六県関東地方、中京には中京地方、関西には関西地方がある。
高齢化と直売所が増えたことから、春と初夏、秋と初冬が産地である関東、中京、関西の市場出荷量が減っている。
この時期単価が下がるのだが、下がらないことも多くなって来た。高冷地の早出し物がとても必要になっている。単価が安定してきたのは、この時期母の日以降輸入品も盆まで少なくなるからである。

■無加温の時期、販売促進有効
 無加温の時期になると、天候によって一斉に出てきて、一気に終わるということがある。週で見ても月曜日に多く、需要が高まる週末は増えないから相場はやや上がる。
しかし、月曜日のたびに相場が潰れ、週末立て直したと思ったら、また月曜日にということが露地物の季節の良くないパターンだ。
月単位で見てもだいたいが生産はもう多くないのだから、出荷量が多くなると、その次が少ない。だから予測が可能で、多くなる時に販売促進を小売店に計画してもらえばいい。
そうすると、お値打ち品が割安で手に入るから消費者も喜ぶし、花を買う習慣化にも繋がる。
こうしてコミュニケーションが良くとれている産地は、出荷市場を通じて54週のうちの一つの週に多すぎる花を入れてもらって売り抜けている。
露地の時期は、よりコミュニケ-ションを密にとることが所得の向上につながる。

■試飾で売上増
 花小売会社の蓑口社長が発見し、皆さんに必ず売上が上がるからと実行を呼びかけている販促活動が、「試飾」で時々前年比30%以上増の売上になる。
普段あまり花を買いそうにない人たちに試飾をしてもらって試したところ、必ず前年よりも売上が上がるが、「お花を飾ってみてください」というと、怪訝そうな顔をする。
しかし、「試しに飾って見て下さい。試飾です。」というと笑顔で貰ってくれる。
その人たちが300円の花でも買いに来てくれるのだ。こうして花の良さを感じてもらい、店の売上に繋がっていく。
時期的に売れない時、相場が安い時は試飾を行って店の売上を伸ばそう。ただし、普段花を買わない人に渡すことが大事。

■前向きが七夕人気
 お中元の時期だが、何よりも人気なのは七夕の笹だ。団塊ジュニアの子供たちが幼稚園で、そして自宅、商店街で自分の夢を短冊に書いて吊るす。随分と日本人は前向きになった。その証が良く売れて来た七夕の笹に良く表れている。

投稿者 磯村信夫 : 16:15

2012年12月 3日

今年の1月~3月から潮流化した傾向

 今年一年を振り返り、新しく生まれた傾向を数回に分けて語ってみたい。
2012年、冬の厳しさは久しぶりのもので温暖化が吹き飛んだような感じであった。油の高騰から生産量が少なく、今後を方向付けるトレンドがいくつも生まれた。

"鉢物は需要期集中型"
 12月に出し遅れた荷物はあったが、3月までの間、鉢物は作付けが少ない。今後フラワーバレンタインで鉢物もギフト用に開発していくが、何を開発するかバラの鉢が中心になると予想は出来るが外はわからない。切花のように何でも春の花というようにはいかない。
12月の後、3月まで出荷量が少ない時期となる。

"国産白菊少なく高騰"
 従来から中国でも神馬が作られていたが、それに加え韓国、マレーシア、ベトナムと安定して日本に出荷できる体制を取ろうとするきっかけとなってしまった。円はリーマンショックの前からすると、2割以上高くなったので海外の花生産者からすると、高齢化社会のトップランナーである日本へ向けてこれならいけると思わせた。国産の大産地は神馬より素晴らしい品種を日本のチームとして開発、生産していくべきだろう。

"油高から出荷も道州制の範囲"
 九州では、未だ消費量よりも生産量の方が多い。なので、九州圏外に出荷していかないと価値が下がってしまう。秋から冬にかけて日本中に荷を今まで出荷してきたが飛行機が小さくなり、大量に運べないだけでなく大型トラック中心の輸送となってきた。
 それ故、九州の生産地はまず福岡までというのは運賃を考えた時、常識的な出荷先。せいぜい中国地方までで、関西市場までとなると競争力が強くないと運賃が高くなって出荷が難しくなってしまう。
 売上高運賃比率20パーセント以下、これ以上の運賃では手取りが少なくなって、何のために花を作っているのかわからなくなってしまう。こうして花き生産の面積の減少が九州において加速化してきた。

"トラック輸送中心になって、出荷市場を絞り込んでいる"
 燃料費高で、生産者の冬場の出荷量も少ない。そうすると市場の数を絞り込んで積載効率良く、量をつけても価格変動が少ない市場に出荷せざるを得ない。花の生産地の農協にとって、また花の卸売市場にとって売上額は1・2月は損益分岐点に達しない。よって、12月の反省をしたり、3月の計画を立てたり、もちろん節分やフラワーバレンタインや桃の節句の需要も2月はある。しかし、出費を抑える月でもある。
今年の1・2月から大型産地の市場の絞込みが本格化した。

"輸入品増える"
 今年の3月は、本当に寒かったから国内生産が少なかった。例年並みに数量を確保して頑張ってくれたのが沖縄県だけであった。不足分は輸入品で補われた。輸入花がなければ、売るものがないという中堅市場もあった。
 菊・バラ・カーネーション・ラン・葉物の国際流通5大品目は卸売市場が専門輸入商社等を頼って一定割合販売するようになったというのが、今年の冬から確かな潮流となった。

"国産カーネーションの人気"
 カーネーションの3本に1本がコロンビアを始めとする輸入品であった。市場によっては、ほとんどが輸入物となり国産が朝ドラの影響もあり、人気が沸騰してきた。そうはいっても価格のイニシアティブが輸入に握られており、国産を的確に評価できる卸売市場は限られている。よって、国産カーネーションは市場間転送しても価値ある品目となってきた。

投稿者 磯村信夫 : 16:15

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