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2013年1月28日

「2012年問題」は杞憂であった

 高齢化社会と共に元気な60歳代が依然として第一線で働き、会社側も重要な仕事を任せるようになってきた。
 仕事には、成果目標があるからリーダーシップが必要となる。リーダーとは目標に向かって進み、結果に責任を取る人のことだ。そして、60歳代でのリーダーたちは多いのだ。

 あらゆる仕事の分野で産業界のみならず、芸術の分野においても60歳代の働きには目を見張る。時勢なのであろうか。
団塊の世代の大量の退職が始まる2012年を国力の衰えと見ていたが、彼らはリタイアして安穏な生活を送りたいというよりも、むしろ今後とも頑張っていきたいという人たちが思いの他多いし、元気なうちは年金に頼らずともやっていこうとする人たちの多さに驚く。

 私自身、平日に上越へスキーをしに行くと、多くの中高年層の人たちが颯爽とスキーをしているのに近頃驚く。今のバッジテストに受かるまではいかないが、かなり上手だ。そういう人たちが本当に目につくのだ。スキー場は再び賑わって来た。
 そしてもう一つ。お父さんが60歳を過ぎても頑張ってくれるので、お母さんも今までと変わらず花を購入する。
 思ったより所得は減っていないので、仏様の花だけではなく、歌と同様、お父さんたちが社会に出て昇格していった時に流行った花を思う。菊、カーネーション、バラ、フリージア、チューリップ、ユリ、シクラメン、アジサイ、桜草などである。
 この2つのことから、これからも確実に中高年向きの花は売れていくのがわかる。

 いつまでもジーンズが似合う大人でありたいと思っている団塊の世代の人たちは、今までと所得をあまり減らさずに活躍している。
 花の消費は皆が知っている花でも"本物追求型"だ。
 そして気分は団塊ジュニアの人たちの価値観に合わせている。なので、フラワーバレンタインも期待出来るのだ。
 さらに、その子供たちの世代の団塊ジュニアは結婚しても女性は働き、自由に使えるお金がある。消費の下地は十分だ。そうなると、花き業界は何を心配すれば良いのか。
 小売店のカテゴリーで言えば、専門店が気をはいて頑張って新しい花との生活の提案をしていき、消費を刺激してほしい。
既存の花き業界からすれば、もうこれ以上専門店の店舗数を減らさないことが必要だ。

 量販店での花の売上実績が確実に伸びている時代にあって、このような要求は専門店にとってきついかもしれないが、今が踏ん張り時なのである。高齢化による花の総金額のマイナスを覚悟する必要はもうない。

 より魅力的な新しい品種や新しいアレンジメント、或いは花持ちなどの付加価値サービスを通じて、消費拡大への反転を期する時となっているのだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:01

2013年1月21日

花の単価下げ止まる、そしてこれから

 とある花のチェーン店のオーナーが、12月新政権が誕生し、株価が上がると荷動きが良くなって、「これからも株価に注目していないと花屋もだめですね」と言っていた。
 円も独歩高だったのが、購買力平価換算の91円の線に近づいてきて、新政権や日銀が的確に手を打ってくれれば、海外に工場を移したり人件費を下げることばかり考えなくても良さそうだ、と大田区の経営者も言っていたと銀行関係者が教えてくれた。日本経済は先行期待で陽が差して来た。
 
 もう5年程前になるが、オランダ系アメリカ人の友人、エイビ・ウィンパレが来日した時、
「何故今回のリーマン・ショックでもどこの国より日本の鉱工業生産が落ち込んで景気が悪くなっているのに日本政府はもっと手を打たないのか」
「日本人はバブル崩壊後、政府は的確な経済政策を打たず、失われた10年などと言っていた時に耐え忍んでいたが、今回は失われた20年と言って政府を許そうとしている。アメリカだったら大変なことだ。何故マスコミもそういう批判がないのだ」
と言っていた。
 エイビは、会社設立10年で300億円以上の売上高にした世界最大のインターネット花屋"Proflowers"の社長だ。以前はスーパーマーケット"Kroger"に花を卸していた人物だ。
 彼に言われたその時、私自身ある意味で政治に失望しており、自分たちの業界の力で何とかしなければならないと思っていたので、聞き流してしまっていた。

 91年ソ連邦崩壊後、経済力が軍事力に次ぐものとして、国力を測る上で、国際社会の中で大きな意味を持つようになった。
その中で日本は特に2007年以降、経済政策に失敗し日本人に自信を失わせてきた。
 現在、年間自殺者約3万人のうち、約1万人は経済的理由であるという。全てが日本の経済政策の問題でないにせよ、職がなくなったり給与所得者の所得は減ったりしてきたのだ。

 花の生産を
「齢をとったからもう出来ない」
「儲からないから辞める」
などで面積の縮小まで入れると、花き生産量は減少している。
 輸入品を含む花き市場の取扱高で、1990年に行われた大阪"国際花と緑の博覧会"以前の卸売市場取扱金額3,800億円まで落ち込んだ。特に2005年以降生産が減っているのに単価の下落が止まらず、また、温室園芸に欠かせない油代が高くなったことによる。
 昨年業界全体で、ようやく単価が下げ止まった感が共有出来た。これから単価はもう下がらず、反転していくだろう。
 そういった中で、2013年経済政策も適切に実行され、消費税が上がることによる一定期間の買い控えを経て、新しい国内の花き生産と花き流通の姿があらわれてくる。

 現在、花を軽減税率の適用品目にしてもらおうと運動している。中央卸売市場で取り扱われている、肉・魚・青果・花きの4品目を生活に欠かせない物として、ヨーロッパの主要国と同様にしてもらおうと思っている。
 軽減税率が適用されると得をするのは、消費者と生産者である。なので、消費と日本農業の活性化に効く軽減税率運動に花き業界あげて取り組んでいこうとしているところである。
読者の皆さん、一緒にやりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年1月14日

自立した国民が支える花き生産と消費

 この頃、日本でも"男性不況"ということをいうようになった。
 工業製品のmade in U.S.A.がアメリカ経済の空洞化と共に少なくなってきて、働き口は三次産業になったと言われるようになった。日本でも公共事業の見直しやグローバリゼーションで求人はますますサービス産業が多くなり、女性が多分野で活躍するようになってきた。

 自分の世界に引きこもり、人付き合いなどコミュニケーションを不得意とする青年は多い。困ったものだ。また、独身男性で所得の低い人が結婚しないでいる。これも社会問題だ。
 どのようにして日本男子がコミュニケーション能力と倫理性を身に付けていくか、ここに日本の活性化が懸かっているといっても過言ではない。
 悲観的な見方をすると、非正規雇用者率が上がる中、収入が十分でない独身男性にフラワーバレンタインといっても、花を買う筈はない。それでは元も子もないので、フラワーバレンタインはそこそこ稼ぐ若い人たちを相手にする。生活にゆとりがある格好良い独身男性や40代のお父さんがターゲットだ。その世代をターゲットにした広告だが、むしろ実際は、イタリアの大人の男性のように齢を取れば取るほど格好良くなる55歳以上の人たちがバレンタインデーに花を購入するのではないかと思う。
 それは何故か。
 一つには、金銭的な余裕があるから。
 二つ目にこの世代の方が主体性を持って生きているからで、お世話になっている人に花をプレゼントする確率が高いからだ。
"自立"とは、「他に依存していることを認識している」ことをいう。妻や秘書、或いは看護師さんには本当にお世話になっているのだ。

 更に主体性や自主性についていうと、積極的に他者に役立つことで、しかも自分のやりたいことを行うことを「主体性を持って生きていく」という。こういう人たちは"縁"を自分の力で良いものにして結果を生み出す人だ。
 自立を身に付けるには、現実をしっかり見つめる眼を持たなければならない。それを持つ為には、持ち前の素直さと道徳教育が必要なのである。

 花き業界がさらに良くなる為には心の糧としての農産物である"花"の生産から流通までを担当する我々が、主体的に消費拡大に向け、生産販売することが肝要だ。
 安倍首相が道徳教育を教育の重要課題として位置付けているが、花き業界にとっても大変好ましいことである。花の仕事は日本人の精神生活と深く結び付き広がっていく。

投稿者 磯村信夫 : 15:53

2013年1月 7日

国産花きは国際競争に勝つ品質を身に付ける

 あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

 12月クリスマス前からバラを始め、団塊ジュニアの好む花が期待した程、相場が出ていない。その一因に、曜日の並びがある。3連休は2011年後半から起きているレジャーブームで若い人たちを中心に遊びに出てしまう。
特に今年の正月は今日の7日から仕事始めの会社も多く、花の需要がレジャーに取られた。中高年はそれなりに家にいて、静かな休日を過ごしていた。
12月下旬から絶対量が不足しているが、そうはいっても小売店にも予算があるから全面高にはならない。確実な中高年向きの花が相場を押し上げ、仕入れ金額がかなりいっぱいになってきたので、バラを始め洋花類は安いという結果が初市まで続いた。
しかし、この第2週は成人式の週で、いよいよそれぞれの生活が通常に戻る。よって今日から洋花類は挽回していく。
そして、この寒さで昨年同様、3月までは入荷量少なめで小じっかりした市況が続いていく。

 さて、年末の衆院選で自公の圧勝となり、安倍内閣によって日本の経済再生が第一の目標となってきた。
1995年が生産年齢人口のピークでそれ以降、日本のほとんど全ての業種は売上を落としている。
人口減少の日本はベースとして内需においては、マイナス2~5%のプレートの上にのっている。そもそも日本は輸出入におけるGDPのシェアはそれぞれ20%弱なので、圧倒的な内需主導型。
そして今後は国内需要が減っていくので、景気を良くするとすれば国際競争力をつけ海外から稼いでこなければならない。。
農業の分野においても同様だが、東京電力福島原子力発電所事故による汚染で、生鮮食料品の輸出は極端に減ってしまった。

 そして、2012年の6月、中国大使館の一等書記官がスパイ容疑で捕まった。
農林大臣、副大臣を中心に対中農産物輸出事業を促進させ、日本のTPP参加を阻止する工作に出た。その時も中国は日本からの農産物を輸入禁止にしていた。
中国でのフェアは日本のマスコミにも取り上げられた。
高品質の日本の米は、値段の違いを乗り越えて中国で売れるとしたものが、結局は国を挙げてのやらせで、その活動の一環であったことが分かり、私個人としては輸出の困難さを知った。
今後何を目標に生産地に良質の生鮮食料品花きを国内外の消費者向けに生産してもらうか。
所得が増えない日本においてデフレ圧力は強いが、内需しかないのであれば、このまま本当に高品質のままで良いのかを正月に考えた。

 第55回日経・経済図書文化賞を受章した小池和男氏の「高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた」と題する本を時間をかけ正月休みに読んだ。
小池先生は、国際競争力ある日本の工業製品が生まれたのはデミング賞などのQC(品質管理)活動は、戦後のことのように言われているが、事実は戦前の1920~1930年代で綿紡績業が世界一になってからである。
いくつもの指標を具体的に取り上げ、解説をしていらっしゃる。
日本が欧米に先駆けて、現場の生産従事者に定期昇給制を敷き、経営者は毎年生産効率が上がるよう期待し、実際よくその期待に答え、会社一丸となって「共働」して行った。


 私事で恐縮だが、大学の経済学部で学んだのが、マネジメント思想家クリス・アージリスの経営学であった。
フレデリック・テイラーを始め、いくつか科学的な管理方法はあるが、アージリスはまさにこの"共働をすべき"ということを自分の経営学の基礎とした。
教わったことは"人間をこう見て欲しい"ということであった。それを日本流の経営と言って、Japan as No.1から転落し、失われた10年、20年と言っているが、これは日本流でも何でもなく日本人が思う、共に仕事をする者同士の組織のあり方と役割を言っている。
我々日本人はこれで通す。私はこの思想で会社を運営していく。

 小池氏から教わったことを言うと、物を高級品と大衆品、或いは量産品に分けると、私たち日本人からすると量産品は人件費の安い途上国に任せれば良いと思ってしまうことが多い。
しかし、小池先生は大衆品・量産品は品質が高くなく、それを作る技術は低いと断定してしまうのは危ういと注意を投げかけている。作る上では、返って高級品より高度な技術を要することもあるのだ。
車を例にとって高級品のロールス・ロイスやフェラーリは少数の技能の高い労働者が一環して組み立てる。確かに多様な作業をこなす。
しかし、カローラのラインなどは一見したところ、単純な作業を繰り返しているようだが、もう少し良く見てみると、難易度はかなり高いものであることがわかる。
それは、1ラインにエンジンの大きさ、変速機など違った組み合わせの70種類ものカローラが流れてきて、それらを的確に無駄なく自分のパートを仕上げなければならないわけだ。
このようにして、故障の少ない、多種多様なカローラが同一ラインから作られていく。

 花でいうと、かなりシステム化されている電照菊でさえも同じ畑の中でも多種多様な成育状況があり、それに合わせて一つ一つ対処し的確に自分の荷として纏める。
また、共選共販の場合、それを持ち寄って共働する仲間と統一のブランドの商品として決められた規格別に揃ったものにする。
部会の中ではあたかも大農場のように、部会長が社長になって役職者だけでなく、生産者一人一人にそれぞれの役割があり、農協の検査担当者や販売担当者と共にブランドを固めていく。これが日本の量産の花の在りようだ。なので、共選共販は、一般的な個人出荷の一段上の難しさがあるが、そこの統一感は小池氏が指摘する「共働」にあり、精神は孟子の井田法の教えにある。
日本の花作りの場合、確かに1970~80年頃に国際競争力を付けてきたわけだが、その大元には量産していく中での物つくりの品質世界一を勝取った繊維工業があり、生花の共選共販には孟子の井田法がある。

 今後ますます国産の花の品質を高めていく為には、現場で働く我々が"技術研究と研修""品質への発言""働く者としての所得と福祉"、この3点を身に付けていかなければならない。
これは共働している川上・川中・川下の全ての花き業界の人たちの責務である。

投稿者 磯村信夫 : 16:16

2013年1月 3日

新年あけましておめでとうございます

 新年あけましておめでとうございます。

 今年は、消費税率アップを国会に通す時、民主自公合意されました低減税率の対象に花をヨーロッパ諸国と同様、生鮮食料品と同位置にしてもらうべく、全花協(※)の今期会長のもと、全員で運動をしていきたいと考えております。

 また、切花で最大品目であります菊の消費拡大をはかっていきます。具体的には用途にあった色割合い、品種、長さまで含めた草姿形状、単価や納期を明確にし、無駄のない納期を守った生産をしていただくことにより、安心して物日や仕事花にもっと使っていただけるよう新しい取組みを花市場協会あげて行ってまいります。

 花は長い間、補助金の対象にならなかった為、生産から流通まで負けん気の強い人たちの集まりという産業の特徴がありました。それが、豊かさと伴に少なくなったのをもう一度元気と負けん気を復活させます。

 以上を新年に申し上げ、今年の第一回"社長のコラム"といたします。


(※)全花協(全国花き振興協議会)・・日本花き生産協会、日本花き卸売市場協会、日本生花商協会、日本生花通信配達協会、日本インドア・グリーン協会、全国花卸協会の6団体。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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