大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2013年1月 | トップ | 2013年3月 »

2013年2月25日

一定規模ないとやっていけない川中業者

 先週イタリアのチコレラグループ(フローラホランド内エキスポーター他計6社)が5千万ユーロの負債総額で裁判所に倒産手続きをした旨のニュースが飛び込んで来た。その中の1社であるZurel社は、ロシアへの販路を開拓した花の輸出会社として名高い。
 また、今から25年程前の大森園芸時代、創業者の社長が狭い大森園芸の2階の応接室で日本の花き業界についての質問をし、私が答えたことをノートの書き込んでいる姿を思い出した。
 今でもフローラホランドのアルスメール市場、ウェストランド市場の玄関に大きな機械的時計があるが、それはZurel社からのプレゼントである。

 オランダの流通業界は、ビジネスとして統廃合が活発に行われている。日本の場合、産業界でも「和を持って尊しとす」で、統廃合は思ったように進んではいない。どちらかというと独立のまま組合や協会を作り、仲間内でそれなりに仕事をして行くことを良しとしている。
 しかし、それで食べて行ければ良いのだが、利益が出ないと投資が出来ないし、人材が揃わないので、その業界の未来は明るいとは言えない。
 そもそも仕事とは人に喜んでもらうことにあるのだから、大変に決まっているので、統廃合しかないとオランダの花き業界は考える。ドイツ、デンマーク、南アフリカ、ケニアを巻き込んで花き産業を前進させている。
 しかし、ヨーロッパの花き業界でもイタリア、南フランス、スペインは少し違い自己都合を通してしまった為、利益が少なくとも旧体制のままでいる方が良いと言ったので、その人たちに花を販売し代金を回収する作業が上手くいかなくなり、結局今回のチコレラの倒産となっていった。

 日本も川中の卸・仲卸が生産地と小売店の大型化などにより、集荷・販売上、今までと違ったことをしていかないと存続すらおぼつかない状況に2008年のリーマンショック後になっている。
 2015年まで消費税の値上げが予定されており、TPP交渉参加で農業情勢も変わってくる。その中で、どのような進路を取れば良いか、少なくとも市場間ネットワーク、ホールディングスなどで規模を大きくし、事業活動を行っていくことが必要になっていることは言うまでもない。

投稿者 磯村信夫 : 13:12

2013年2月18日

要らない人に購入してもらう

 来週25日の午後4時より、築地市場の講堂で「卸売市場流通ビジョンを考える会」が開催されます。講師は3名の方で東京農業大学の藤島教授には、卸売市場と食品卸の協業と、その時の卸売市場の役割についてお話をいただきます。

 また、アベノミクスを支える内閣府大臣政務官である平将明衆議院議員には、消費税軽減税率、外税方式などと大田市場の青果仲卸社長として実際に活躍していた経験を踏まえ、農業分野まで含めた生鮮食料品花き市場がどのように経済活性化に関わっていくかお話いただきます。
 3人目として衆議院財務金融委員長で自民党フラワー議連の副会長でいらっしゃる金田勝年衆議院議員より、財政の問題と低減税率のことをお話いただき、質疑応答をしたいと考えています。
 読者でご希望の方は、事務局の東京農業大学藤島教授の研究室にご連絡下さい。
(会費:一名様 3,000円)

 今週お話したいことは、大田花きでは"創って作って売る"をモットーに社業を前進させようとしていますが、あらゆることが飽きられない為にどうしたら良いかということをお話したいと思っております。
 情報化社会で、解説記事が大変多くあります。コメンテーターが何か言うとそれだけでわかったつもりになってしまいます。何か気になることがあると、コンピュータで調べる。情報化社会はわかったつもりになり、あらゆることに対して実際に取り組もうとせず、事や物もお金を払わずに、「払いたくない要らない。これは払っても興味があるからやりたい」など、自分の興味があること以外、無用なものになってしまっています。

 花の需要からこのことを見てみますと、人生の通過儀式として大切な結婚式やお葬式もそうなっていて、人として生まれたからには、当然執り行って然るべきなどと考える人は以前より減って来ていることに驚かされます。してもしなくても良い事に結婚式やお葬式がなってしまったとすると、絶えず提案したり又宣伝したりしないと、前年と同じような売上高を得ることは出来なくなっています。
 また、提案や宣伝をしたとしても本人の関心が薄ければ当然使うお金は少なくなります。
 
 日本では国内需要を当てにした産業は、新しい提案をし、絶えず消費者に知ってもらう努力をしない限り、市場規模は小さくなっていくのは当然のことと言えるでしょう。
 花き消費の潜在需要は、少子高齢化で胃袋が小さくなったり少なくなったりするのとは違い、人口が少なくなるが豊かな居住空間が増えるということですから、所得は別として潜在需要は高まっているはずです。私たちは、これを顕在化させる必要があるのです。

 もう一度、大田花きでは"創って作って売る"。新しい素材や新しい装飾の仕方、新しいB to Bのサービスなどを創造し、それを農家の方や専門家の方に作っていただき、我々が実行することによって社業を前進させる。ここに花き業界の各社は努力のポイントを置くべきではないでしょうか。
 "待ち"の姿勢ではなく、打って出てこそ潜在需要が顕在化してきます。
 皆さん「新しい」を開発競争してここから花き業界を再出発いたしましょう。

投稿者 磯村信夫 : 12:07

2013年2月11日

BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン)(事業継続計画)

 生鮮食料品花きの中で、2005年を100とすると数量・金額共に最も落ち込んでいるのは、魚である。毎年築地の初市にマグロの相場が発表されて景気が良いように感じていらっしゃる方も多いと思うが、魚の消費は減少している。

 もう40年も行き付けの近所のお寿司屋さんがなくなって色々と新しいお店を開拓しているのだが、徒歩で行ける範囲では良いお店が見つからない。ネタはもちろんのこと、山葵の利かせ方やシャリの温かさなど、好みに合ったものを握ってもらえないとなるとやはり行き付けのお店を見つけなくてはと思う。消費者としてもオーバーに言うと、食べる楽しみがひとつなくなってしまってがっかりしているところだ。
 これがビジネスとなると、いつまでも今まで通りに花を出荷してくれたり購入してくれるか分からない。いつまでもお取引先が元気でやってくれるとは限らない。そういう時代になっているということだ。

 卸売市場の大田花きからすると、今までは買参人が期日通りにお金を払ってくれるかどうかチェックをし、与信管理をしていれば良かった。確かにこれらは大切なことだが、もうそれで良いという時代は終わった。
 出荷者においても補助金で立てた温室の返済が終了し、それを機に温室を売り出している生産者がいる。今まで花の生産面積を拡大してきたが、今度は縮小し、ここ3年で生産面積が半分になってしまった産地もある。
「出荷したいのも山々ですが、運賃が高くなって・・・」
と、地元圏内や出荷しても一番近い三大都市圏の一つまでという産地が出てきて、量だけでなく品揃えに影響が出た産地もある。

 卸売会社の立場で言えば、取引先の経営方針・収支バランスなど、BCPに関わることをしっかりと考慮し、お互いに話し合っておく必要がある。赤字の会社は言語道断だが、黒字の会社でも状況の変化によってBCPを考えておく必要があるのだ。そうでないと年次計画が描けない。

 昨年の暮れ前、関西の花き市場が倒産した。今年に入ると首都圏の2社が自主廃業をした。卸売市場だから社会インフラなので影響が大きい。
 しかし、冒頭にお話した通り、たった1軒のお寿司屋さんでも少なからず市民に影響を与えるのだ。

 足元の2013年から消費税が上がる2014年、2015年まで統廃合が激しいと見る。
 花き業界で仕事をしていく上で、BCPについて再度考える必要がある。リーマンショック後、3.11でBCPが注目されたが、現在の花き業界においてBCPは今日的な問題であり、BCPでサプライチェーンを構築するお取引先を見つめ直し、消費者に期待される花のサプライチェーンを極めていく必要がある。
 種苗から生産、川中・川下流通、いずれも取引先を確認する時代になっているのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:27

2013年2月 4日

ライブの大切さ

 昨日(2月3日(日))の道路情報では、千葉県の館山道がフラワーロードへの富浦の出口で渋滞していたという。千葉県の館山から鴨川にかけては、花の産地で露地のストック、金盞花などが有名だ。特産物のポピーもある。毎年ちょうど"関東東海 花の展覧会"開催の頃、いよいよ日も長くなってきて、花のシーズン突入となる。

 "関東東海 花の展覧会"は、花き業界では最も高品質な切花や鉢物が出品されるので、花き生産者や流通業者にとって必見の品評会である。一般の人たちは、2月下旬の雛祭りが近づく頃に需要が盛り上がっていくのだが、今年は12月1月と特に寒かったので春を待ち焦がれる気持ちが例年より強く、2月になると既に花の需要が出てきた。会場の池袋サンシャインは賑わったという。

 1月末売れ行きがあまり良くなかったのは、レジャーとバーゲンで出費がかさんで購買力が衰えていたことだ。昔と違い、ヒートテックやダウンなど女性の防寒対策グッズが豊富になり、寒さで外出したくないという理由も少なくなった。2月に入りバーゲンも終わり、気持ちの上で花に費やすお金の余裕が出てきたようだ。

 さて、大田花きでは在宅セリの比率が20%をコンスタントに超えるようになってきた。
 大田市場花き部の会議で仲卸の代表より
「市場へ足を運ばなくても花を購入できるのは、市場への来場者が少なくなってしまうので困る」
という意見があった。仲卸業者も各社が情報発信し、在宅でも仲卸の各店舗が見えるように仲卸組合でサイトを運用すると良いと思う。現に仲卸組合で案が出ているようだ。

 セリ前取引や在宅セリで困るのは、購入しようとする物の情報しか目に留まらないことだ。人はすべてのことが見えるわけではない。見ようとするものしか見えない。そうなると、その花を手にすることは出来ても、それ以外でもっと自分の顧客の嗜好に合わせた仕入れが出来ない。
 更に言うと、どのような花がどれだけ出荷されているかがわからない。絶えず、過去の経験から自分の嗜好に合った物しか扱わないとなると考え方や営業範囲が狭まり、いつの間にか自社の価値が下がっていってしまうのが常だ。

 ヘビ年ではないが、蛻変していくことが大切なのだ。まず、その為には質・量とも自身が大きく成長していかなければならない。21世紀になり、小売店が雇用者数を減らし、人件費を抑えて、事業経営をするようになったので、利便性を考え在宅セリを実行した。
 大きな小売店では、自分のコンピュータで購入することにより、自社の物流シールを発行出来るように店舗ごとの仕分けや顧客別の仕分けが自社に着いた時点で効率良く作業を行う為に在宅セリを考えた。

 しかしそれによって、現実のセリ、ライブの価値を下げるものでもない。実際の取引は現物取引。このライブを可能な限り体験し、セリ前ネット取引や在宅セリシステムを使い仕入れをすることが良い。ライブで初めて評価眼と相場観、そして知識が養われるのである。
 今後花き市場では在宅セリシステムを導入する市場が多くなると思うが、ライブの大切さを肝に銘じてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:59

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.