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2013年3月25日

2013年3月の低調市況から

 27日(水)までで卒業式は終了する。3月は、家庭需要に加えてお彼岸を中心に特別な花の需要がある月だ。
 2013年3月の市況は、私が花き業界に入って約40年、これだけ単価が安い年はなかったと言える記録すべき3月期であった。
 今、20日締めの入金が買参人から行われているが、需要期であっても量が潤沢で、その上需要もしっかりとしていたのでお客様も喜ばれ、買い上げ代金の入金状況はすこぶる良い。
 
 単価安で当てが一番外れたのは、輸入商社の方々だった。1・2月の赤字を3月で取り戻せないどころか更に傷口を広げて年度末を迎える。
 円安や現地の人件費高から、仕入れ価格が高くなり、運賃も安くならないので、今後も苦しい展開が予測される。母の日まではと歯を食いしばっても、これ以上傷口を広げられない業者も少なくない。

 国産を輸入花で補う21世紀に入って続いている花の調達の仕方が、この3月で完全に壊れた。輸入商社の皆さんと新年度に向けて早急に協議をしなければならない。
 次いでダメージが大きかったのが、3月のお彼岸用の露地花の産地である。沖縄県の小菊が価格を支えきれず、値崩れを起こし、関東では房州、関西では淡路島等の金盞花や露地のストックなどの仏花の花材が軒並み極端に安くなった。
 また、ハウス物の和歌山県のスターチスも中国雲南省のものが大量に出回り安値に泣いた。一年前のデータを見て、作付けや仕入計画を立てるのは止むを得ないこと。今年は、小菊の後にスターチスが安くなり、結局アイリスまで紫はほとんど安値の波を被った。

 さて、これからである。原因をかいつまんで見ると、昨年売れていたので、国産も輸入品も3月の作付けは多かった。秋の台風で沖縄県や鹿児島県奄美諸島は2月から本格出荷になったが、例年だと雛祭りの頃、出荷が減って相場が立ち直り、そこから彼岸商戦に入るものが、今年は途切れなく出荷があり、しかも安くても荷が減ることはなく徐々に出荷量は増えていった。
 
 内地では、稀に見る寒い冬で露地物は遅れた。ハウス物も燃料費が高く、設定温度を低めにするしかなく、2月の中旬まで出荷は少なかった。
 天候が例年よりも暖かくなって来てから、内地の露地ものも施設ものも出荷量は増えて行った。どのくらい増えたかというと、在庫がまだあるのに市場へ行くと、セリ人に勧められて購入する。或いは、見ていると安いので、購入してしまう。それがまた在庫になる。
 相場が出るパターンというのは、小売店が売ってしまってから仕入れる。相場が安いパターンというのは、売る前に荷が来る。こういう時である。

1月から2月の上旬まで荷が少なかったから、細かく品揃えして大切に売っていた小売店は中旬から多くの荷を積まれ、市場から「さあ、量を売ってください。」と言われても、そんなに急には変えられない。
 
 「疾風に勁草を知る」で、この安値でも、いざと言う時に頼りになったのは、どこの国内産地・輸入商社であったか、どの市場でどの仲卸でどの買参人であったか。このことをしっかりと心に刻み、そことの取り組みを深めていくということである。

 安倍政権が誕生し、日本が再生し再出発しようとしている。花き業界もそういう気分が盛り上がっている。その中で40年来、初めての安値で解かったことは、"花は確実に売れる"。その代わり、我々業者は食べて行かなければならないので、"誰と取り組めば最悪の時でも乗り越えて行けるか。"この方針がはっきり見えたと言うことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年3月18日

生産性は値決めの方法にあり

 今年のお彼岸の相場は安い。安いのは量が多いからだ。何の量が多いかというと"競りの量"が多い。

 "競り"といっても、20年前大田花きが競り下げ方式を採用してから、人間が競っている市場でも競り上げの威勢の良い競りは小数派となり、競り人が最初に値段を出す競り下げの市場が多くなっている。
 潤沢感がある中で、競り下げとなると、よっぽど買参人の数が多い、或いは「量を売るぞ」という意欲のある買参人が一定数いないと競りは低調となる。
 競りで価格発見された相場は、次回の競り前取引きの指標になる。今年のお彼岸の相場は負のスパイラルにはまり込み、安値となったのだ。
 では、どのようにすれば生産者が生計を立てていける程の価格を作ることが出来るかというと、

① 契約取引の量を増やすことである。
②  競りの力が年々弱くなってきているので、産地は安値しか生み出せない市場には、契約品のみとし、競りの委託出荷をなくすべきである。
③  産地は輸入品が入らないレベルの価格に抑え、その価格を割ったら出荷しない。余剰の分は産地廃棄することによって、価格を守ることである。

 卸売市場は公共性を持つ。公共性とは、差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止、それを前提に第9次卸売市場整備方針では、拠点市場を青果・水産で制定した。花きも実態はそのようになっている。その市場は今までの卸売市場の延長線上にあるのではない。
 仕事のやり方を変えて行かなければならない。それが拠点市場と市場間ネットワークの仕事のやり方だ。花き産業を成長させるには、経済成長の三原則通りする必要がある。 
 まず一つ目に、花き関連の設備投資を増加させること。二つ目に、花の生産や流通販売に携わる人たちの労働を増加させること。三つ目に、技術を進歩させること。2013年彼岸期は、この三つ目が必要なのに、旧来の競り方だけだったのだ。
 
 今までのやり方がどこの市場でも通用するわけではなくなって、競りから相対に取引のウエイトが高くなった。更に競りだけ見ると、取引所として機能する卸売市場は、全国でも小数となっている。
 こうした中、花き業界を進化させるのは、より生産性の高いやり方にしなければならないということだ。利便性の高い"せり前相対インターネット受発注システム"や"在宅せり"は、売り手も買い手も利便性の高い取引であるが、それよりも小売価格が決まっており、使う花のアイテムも決まっているとすれば、当然予約相対が最も安定した取引である。
 花き業界は、今でも"作るに天候、売るに天候"かもしれないが、量が潤沢なら発注しないで間際に安く購入しようという買参人が多数いる。買い手の立場からすると、それは分かる。
 しかし、それでは小売価格も大幅にばらつき、結局生産原価を割る価格しか生まれない。
 
 今年のように、予約相対した人が高いものを購入してしまうということがある。これではだめだ。契約取引をした人を損をさせてはならない。その為には、主産地・拠点的市場は価格に責任を持って取り組む。場合によっては、損をしてでも価格を守ることが花き業界発展の為に欠かせないことを3月の市況は教えてくれている。

投稿者 磯村信夫 : 16:50

2013年3月11日

生産技術革新を希望する

 フローラホランドの2月実績が前年比で15%も良かったので驚いている。
 1月下旬からヨーロッパでは寒波があり、2月になって温暖な気候となった。バレンタインデーの2月ではあるが、金融危機から実態経済が悪化していると言うのに、この売上の伸びである。
 一方、日本のマーケットはアベノミクスで景気が上向いて来ているのに、寒さで二桁マイナスであったから、花の消費の根強さに大きな違いがある。
 日本は仏事の物日には花は必需品となるが、日常の花、或いは花のある生活を楽しむという習慣はまだまだ弱い。
 日本の花き業界はバレンタインデーを男性が花を買う、西洋から入ってきた新しい物日にしようとしている。
 しかし、ベースになっている家庭需要というものは、やはりヨーロッパと違う。もう少し普段使いを頑張って掘り起こさなければならない。その為には、価格は大切な要素であろう。
 
 ヨーロッパに行くと、花の値段が安いので、思わず多く購入してしまう。日本の卸売価格とドイツの小売価格が同じ花もある。日本の方が安いのは苗物だけだ。後は、切花も鉢物も品質は良いが高いものが多い。

 今、アベノミクスでデフレストップと言っているが、花の場合、もう一度国際価格をしっかりと調べ、高いものがあったら農家の所得を落とすことなく、或いは農家の所得を上げても採算が合うように、どうすれば作れるかを研究すべきである。

 農業の第6次産業化で直売所や完成品を作り、売るところまでするのは良いだろう。しかし、それは抜本的な解決策にはならない。やはり生産だ。
 花や生鮮品は消耗品なのである。なので、消費者にあまり大きな金額的負担は掛けられない。もちろん高くても良いものはある。しかし、小売店が良いものを割安に販売できるようにもう一度生産の方式を研究し、実行に移してほしい。

 日本バラ切花協会の会員の方がオランダへ行き、一坪辺りの切花本数を倍近く生産する技術を学んだそうだが、天候の与件以外に必ず技術がある筈で、それをもう一度取得するべき時となっている。
 オランダの花市場の2月の取扱数量と金額を見て、やはり値段は個人消費を定着させるには欠かせない要素だと考える。
 
 生産者の皆さん、花き業界再出発の為、"良いもの安く"を始められる人から始めてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:32

2013年3月 4日

量販店花売場、健闘す

 大田市場の西側駐車場にある河津桜がようやく咲き始めた。雛祭りの時に咲くのは、2週間くらい今年は遅いのではないかと思う。その分、春を待ち焦がれる気持ちは強く、週末はよく売れたという小売店が多かった。

 2月の品目別実績を見てみると、花桃、菜の花、ラナンキュラスが昨年よりも良い結果を残した。
 昨年2月は29日まであり、結婚式用の花を手当てする水曜日から始まり、水曜日で終わったので、式場に花を入れているお花屋さんは仕入れが嵩んだ。
 一昨年、結婚式は3.11があったので年内中は見送り、週末のお日柄が良いこともあり、2012年は1月から結婚式が多かった。
 お祝い事だけではなく、仏事も絆消費で一昔前までとは言わないが、それに近い規模の葬儀が執り行われた。関東でそのようだったので、東北地方は毎週末慰霊祭のようなことが行われていた。
 昨年と比べ、2013年の今年は全て平常に戻り、1月から2月まで週末のお日柄もあまり良くないので、切花の単価は青果と同じ2割安となった。その中で、花桃、菜の花、ラナンキュラスが品目別に金額的にも前年実績を上回り、気を吐いたのである。

 花桃と菜の花が健闘したのは、スーパーマーケットや量販店で、花を購入することが日本国民に本格的に浸透し始めたことにある。その分街のお花屋さんはたまらないが、"祭事"というと量販店で間に合うようになってきたのである。
 そういう理由で、花束加工業者が増えてきた。量販店自らも自社加工するところが出てきて、今最も競争が激しくなっているのは、花束加工業界ではないかと思われる。セルフ販売の花束はパートさんが作成するので規格が揃っていることが必要で、産地は共選共販などで品質の平準化と量の確保をお願いしたい。
 そして、量販店の花売場の賑わいは、専門店の売り上げ減を意味し、新しい花のある生活を提案して、専門店としての存在意義を高めていく必要がある。そうでなければ廃業も残念ながら覚悟しておかなければならないだろう。

 また、ラナンキュラスの躍進は、バラと同等の価値あるものとして、この冬場に位置付けられている。この1月からは特に輸入品まで合わせてバラが不足しており、バラと併用する専門店が多い。
 少し話はそれるが、円安とASEAN諸国及び南米アフリカ諸国の最低賃金が上がりつつあることを懸念する輸入商社は多い。昨年の11月に比べ、一番高くなったタイは、円安2割、賃上げ2割の計4割仕入れコストが上がっている。もう国内生産減を輸入花で補うといった施策は難しいのではないか。もう少し単価を上げてくれないと、輸入も国内生産も減ってしまうという輸入商社も多い。

 さて、ラナンキュラスに話を戻して、ダリアに次いでオランダのベアトリクス女王さえ驚かせた最近の日本の花といえば、ラナンキュラスである。今後、冬場の花として、ますます消費量が増えていくと思われる。切花だけでなく、鉢物においてもその予兆は表れ始めている。

 最後に、2月末からマーケティングに優れたお花屋さんが数名言っていたことがある。それが、3月4日付けの日経MJでアイリスオーヤマの社長がお話されていたことと同じなので、ご紹介したい。
 そのお花屋さんの何軒かは70歳を過ぎると、ペットを飼うのが難しくなると考えているので、花を購入する頻度が増えたり、家の中の一箇所だけでなく、何箇所かに花を飾るという。どうも花とペットは同じお財布から出ているようで、70歳になったので、もうペットは飼えなくなり花を購入するという人も多くいるようだ。
 20世紀最後の10年が花・ガーデニングブーム、21世紀の初頭の10年からペットブーム。
 21世紀になって13年、そろそろペットは...。アイリスオーヤマの社長もまた花の需要が復活して来るのではないか。花のある生活が戻ってくるのではないかと見通しを立てている。
 そこで、需要を取りこぼすことのないように国内生産者、輸入商社の皆様方に頑張って生産して貰えるように応援をするのが、農協や普及所、市場の仕事となっている。

投稿者 磯村信夫 : 14:53

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