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2013年5月27日

今の潮流

 昨日の日曜日、日本橋の高島屋で開催されている"公益財団法人日本いけばな芸術展の展示会"と銀座松屋で開催されている"マミフラワーデザイン展2013"を見に行った。満員御礼、人の波をかき分けてしっかりと拝見したが、花材の活かし方はもちろんのこと、器は作者の身体と化していて、先のパリでの世界卓球大会やプロゴルフのトーナメントのように道具そのものが実際に身体となって花を活かしている。
 集中してみると、人ごみの中に自分がいることすら忘れてしまう。たった一振りでも宇宙の表情を表す交響曲やオペラのような味わいを魅せてくれて、時が経つのをしばし忘れた。
 ちなみに道具が身体化していることを脳科学ではプリパーソナルスペースというそうで、まさに現代は使いやすさだけではなく、道具を身体化して表現していくことが必要なのである。
 
 次にまだ水なし川だが、表面化するだろういくつかの潮流をお話したい。

 今言ったプリパーソナルスペースのように脳科学の進歩で、良く生きることについて革命が起きている。脳の仕組みが男女・国籍・年齢別により分かりつつあり、今流行のビッグデータを利用した傾向値分析にも役立っている。

○宅配便で送れない

 「取り扱えません」と、イーコマースの一般化により宅配便が増え、業者は大変忙しくなって洋ラン鉢のような規格外の大きさの物を断るようになってきた。
 また、縦にしていないと品傷みが起きてしまう花のような物も、会社によっては取扱いして貰えないところが出てきた。大手の中で一部宅配便を行っている運送会社は運賃の値上げを言ってきた。そうなると、自社ないし、友好な外部の輸送業者を持たない生産者や流通業者たちは、ラン鉢をはじめ花を送れないところが出てくる。流通チャネルの変更である。

○卸売業に参入

 葬儀関係の仕事花を行っている規模の大きい会社は、同業者や葬儀社の為に卸売を営むところが大変多くなった。花束加工の大手も卸売業を営むようになって、同業の花束加工業者に荷を卸したり、量販店や専門店に荷を卸すようになってきた。全国卸協会のメンバーは200社余りだが、日本中で専門店の数が少なくなる一方、卸売業者の数は増えている。こういったアンバランスな状況が出てきて地方市場の売上が下っている。自ら仲卸業をやっていくことが必要だということだろう。

○アジアの白一輪菊は儲からなくなっている

 この為替水準だとアジア産一輪白菊は生産減となり、中国、マレーシアの一輪菊は減る。白菊の"神馬"や"優花"を中心に日本に出荷してきたが、日本での単価安もあって、生産を見直そうとしている。円安に振れてからはや5ヶ月。アジア産地の一輪白菊生産にメスが入り始めた。マレーシアや中国では、立地条件の良い畑ならば今後チャンスがあるかもしれないが、悪い畑は作付けを止める判断をしたようだ。
 為替は小泉政権時の1ドル124円まで行く可能性もある。今後はマレーシア、ベトナムのスプレー菊の出方がどうなるかだ。

○最低価格保証をした花き栽培
 
 岩手県の安代のリンドウは自分たちで資金プールをして、天候による集中出荷の暴落時には、最低価格保証制度を用いて安心して花作りが出来るようにしているが、今伸び盛りの秋田県でも、全ての品目ではないが推奨品目に最低価格保証制度を取り入れ、生産振興をしている。
 今年は暑くなることが予想されているが、秋田県が得意とする菊類やリンドウ、トルコギキョウなど花持ちの良い物をしっかりと植えてくれれば上々の評価を受けて、更に面積拡大が出来るだろう。野菜と同様、伸ばして行く花の品目の最低価格保証制度導入は、北越・東北各県にとっては踏み込む価値がある制度だと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 16:12

2013年5月20日

ただいま菊安く、バラ良い

 今日20日は支払いの締め日と小雨が重なり、やや重たい雰囲気だが、母の日が終わり一週間が経ち、小売店も積極的にやらなくてはと先週の空気とは変わっている。
 高冷地もようやく平年並みの気候になり花が咲き始めたが、しばしの間は今までの寒さで高冷地への産地移行がスムーズに行かず、品物によっては少なくなるものが多くある。

 果菜類と花は市況の波長が似ており、20日悩みの21週目だが、団塊ジュニアの好む、野菜類や葉物そしてバラやカンパニュラなどを中心に一定水準の相場が期待できそうである。
 
 一輪菊の相場が低調なのは、現在、電照菊や夏菊などがだぶって出荷されている為であるが、構造的にはスーパーマーケットなど量販店の花売場がいつの間にか仏花に特化してしまった為、ここが動かなければ菊が安くなる。
 こういう流通構造になってしまっている為、1ヶ月以上も一輪菊が安いということになった。そうさせない為には、量販店の売り場を多彩なものにして行く必要がある。それは今期の我々の重要な仕事だ。

 また、お彼岸以降、スプレー菊の安値が続くという、ここ20年間なかった傾向が見て取れる。理由は昨年の台風被害で沖縄県、鹿児島県の小菊類が壊滅的打撃を受けた為、昨年のお正月に小菊に代わってスプレー菊を使ってみたところ、「いけるじゃないの」と言うことでスプレー菊の需要が拡大したためだ。
 
 しかし、3月彼岸はスプレー菊も小菊も多く、価格は安値となったが、4月以降もスプレー菊は国産とマレーシア、ベトナム産等がシェア競いをしている。海外産は日本に購入してもらわなければ安定した生産基盤を失いかねない。
 特にマレーシアの生産者は、安値でも我慢して出荷する。赤字でも今シェアを落としてしまうと、自分の行き場所がなくなる。通年で利益を出せば良いという考えから、国産品と輸入品がだぶって出荷され続けている。これは、カーネーションのコロンビアや中国の生産者そして輸入商とは違うところだ。
 現在、起きている現象は一輪菊とスプレー菊は安値であり、小菊の値段はまあまあ堅調ということだ。ここ20年以来、初めての現象だ。

 もう一つ、団塊ジュニアの人たちが好む花、団塊世代の人たちが好む花、どちらか一方の世代だけだと市況は決して良いとは言えない。この2つの世代が好きな物でないと、良い相場にならないのだ。
 
 今年の西武ドームで開催された"国際バラとガーデニングショウ"は、押すな押すなの大盛況。入場者もお弁当屋さんも花売場も本当に結果は良かったと主催者は言う。
 アベノミクスのおかげもあるだろうが、この2つの世代がバラとバラのある庭を格好良いと思っているからであって、今年は昨年より30歳代の人たちの数が目立った。量販店の花売場が仏花に特化してしまったのとは、逆の現象で大盛況であった。

投稿者 磯村信夫 : 12:10

2013年5月13日

復興の為に花き生産も欠かせない

 3.11で被災に遭われた地域に安倍総理は休みを返上して行っている。なかなか出来ないことだが、昨日は仙台平野に行かれ、農業の復興具合をご覧になった。
 オランダは、被災した仙台平野の復興をいち早く援助しようと長い間干拓で培った技術で塩分濃度を下げたり、オランダで成功している大規模な施設園芸のハードとソフトを使ってもらおうと、特命農商務官を派遣するなどしている。
 
 復興で大規模温室栽培される作物は花も有力候補だ。地元の流通業者は、地元の生産者が主体になって「第6次産業」(※①)政策で花の大規模栽培しているチームがあると聞く。長崎県の諫早干拓で、中国海南島の菊にも値段の点でも負けない白菊生産の協業に弊社のグループ会社は取り組んでいるが、この規模を更に大きくしたものになると復興事業として素晴らしいものになると期待している。
 
 農業は米・麦など土地利用型、果菜類・軟弱野菜・花・果物の園芸型、そして畜産の大きく三つに分けて、それぞれ戦略的に日本農業の強みを更に磨くべきである。日本の農業者の最も優れている点は、技術力やマーケティング力まで含め人の価値にある。本当に日本の農業者は人材揃いなのだ。心技揃った農業者にしか出来ないのが、生鮮食料品花きの園芸作物と果樹などであり、この分野の中で更に一歩も二歩も世界で抜き出でたものになって行かなければならない。

 日本の園芸農業は国内の良いものを分かってくれる消費者に恵まれていたので、素材としての農産物に関わるマーケティング力と製品化する力は群を抜いているが、農場をマネジメントする力や農場のシステム化など農業を進化させて行こうとする力がここ20年少なくなってしまった。
 これをもう一度蘇らせて日本の農業を政治の力も借り、本格的に強くさせていかなければならないと私は花き産業に身を置く者として考えている。

 安定出荷や財力などで不安な花き生産者は、チームを作って花き生産をしてもらいたい。農協の花き部会や自分たちだけの法人化など、色々な手法はあるだろうが、組織体が必要だ。
 是非とも、組織体を作り、資金を確保しスケールアップして消費税が上がるであろう2014年4月からの消費減退局面を乗り切ってもらいたい。

○全花協(※②)では
 軽減税率と既に話題になっている時限立法の消費税がスムーズに転嫁される為の価格表示に関する法制化の2つを議員の先生方にお願いし、実現させるべく頑張っている。
 EUでは、27カ国中、13カ国が卸売市場で取り扱われている食肉、魚、青果、花きのうち、花きも軽減税率適用となっている。(※③)
 
 花は、消費者にとって心のビタミン・ミネラルであり、生活に欠かせないものなので、農業においても日本を活性化させる重要な品目であることは国民誰もが理解していただけることだろう。また、表示方式は仲卸や花束加工業者、そして小売業者が量販店や式場等に納品する際、消費税を的確に転嫁出来るよう、本体価格+消費税=総額としてもらうことだ。
 
 当初、財務省は総額表示の原則を曲げるわけには行かないとしていたが、3%から5%に消費税を上げた時、納品した生鮮食料品花き業者が消費税分を認められなかった為、結局その分相場が安くなってしまったことの経験に基づくものだ。
 この2つを全花協が先頭に立って是非実現させたいと考えている。卸売市場で扱う生鮮4品目は、消費者にとっても日本の農業者にとっても絶対に必要なものである。
 
 是非、読者の皆さん方も地元の国会議員の先生方、行政府の長、そして役所の農林部に働きかけてもらいたい。宜しくお願いします。


※①第6次産業・・第1次産業×第2次産業×3次産業の連帯事業
※②全花協・・「全国花き振興協議会」の略。花きの生産、流通、販売等の団体で構成
※③軽減税率に関する資料(PDF)

投稿者 磯村信夫 : 15:20

2013年5月 6日

母の日にクレームを出さない

 新聞や雑誌を見ていると、政府がTPP参加の意思表示をしたものだから、マスコミや国は"日本農業は強い。こんな農業分野は輸出が出来る"など、日本農業を持ち上げる記事が目に付く。

 イタリアはEUに参加する時、国土は縦長で山も多く、農業に不向きと言えば不向きだ。しかし、食は文化で生活はおしゃれだ。そこで、結局イタリア政府は、果菜類・軟弱野菜・花・果樹・畜産、そして食品加工業を更に力を入れて競争力あるものにし、フランスなどの農業国に対抗して行こうとした。結果は成功。今ではイタリアから日本にも花き類が輸入されるなど、イタリアの農業は競争力のある産業として確固たるものになった。
 
 日本では、団塊ジュニアを中心にイタリアンが大好きな人たちが実に多い。近頃は東京でもバールが目に付き、気軽にコーヒーや軽食、ワインやカンパリソーダが楽しめる。イタリアンフェアをスーパーなどで見ると、もちろん生のままイタリアから空輸されているものもあるが、イタリア産の農産物をベースにした加工食品も多数ある。日本の農業もこういう形でアジアや世界の中で認められる存在になってもらいたいと希望する。
 
 国際化の前提の中で、物日の時にどのように消費者に花を届けるか。普段の何倍にも需要が膨らみ、切花・鉢物もそれに合わせて生産され、鮮度保持輸送され、何倍の需要に応えるべく、花束加工やアレンジメント、出荷パッキングを行う作業場も必要となる。
 花は生鮮品だから、そんなに値段が高価ではない。そうすると、いきおい溜めた荷物が流通したり、鮮度保持対策がなされていなかったり、慣れた人ではなく、丸っきりの素人が花の出荷調整などに関わって、結局消費者の期待を裏切って信用をなくしてしまう。
 4月のオランダのフローリメックス倒産の一因もそれだった。昨年の母の日はコロンビア産、国産の一部の切花カーネーション、日に当てても咲かない鉢物カーネーション、すぐに水が下がってしまうアジサイなどあった。
 
 昨年の母の日のクレームの反省から、今年は事前にクレームを排除しようと力を入れている。国内産地には社内の責任者が出向き、海外産地は輸入商社の社員が現地の圃場に出向き、国内外の圃場だけでなく選別所・集出荷所へ向かい、又物流業者と鮮度保持流通の段取りをして、入荷した品物を荷主ごとにしっかりと品質チェックをして流通させている。
 
 今年の母の日は国産は品質に慎重になり、生産量が少ないことと、この時期にしては珍しく肌寒い陽気ということもあり、花の開花は遅れ気味で去年のように手に負えない量が一度に来ることはない。
 よって、十二分に準備をして仕事が出来ていると思われるので、後は輸入品の場合、空港について輸入の花が燻蒸した物とそうでない物など、外観だけではなく中身を考慮したメッセージを添えた流通が必要となる。又、国産では、※STSがしっかり効いているのかチェックするだけで良い。これは鉢物のカーネーションも同様だ。
 
 今年の母の日は去年のクレームに学んで一歩前進した良い流通が出来るものと花き業界は、準備・実行しようとしている。

※STS・・・硝酸銀とチオ硫酸ナトリウムの混合液で、エチレンの作用を抑制し、カーネーションその他の切花の寿命を長くする。切花保存液として用いられる。

投稿者 磯村信夫 : 16:04

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