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2013年7月29日

社会の進歩を考え、組織体を作っていく

 先週と今週は梅雨の末期のようなお天気が続いている。露地物が多くなるこの時期、花を乾かして出荷するのは本当に大変だ。
 今朝、とある産地の小菊が真ん中より下の部分の葉っぱが雨で傷んでいてクレームになるところだったが、「7月末の仏花に使うから」と、その買参人さんは言ってくれたのでクレームにならずに済んだ。これがもし8月盆用に定温庫に保存するとなると、例え低温でも葉傷みがうつって、カビの病気があったならすぐに広がってしまう。長雨は生産者・買い手泣かせである。

 さて、産地には共選・共販という販売方法があるが、以下に協業体制についてお話をしたい。
 それは昨年の7月、「競争の戦略」で有名なマイケル・ポーター教授がフローラ・ホランド市場を今後の仕事の仕方、組織体の在り方として捉え、協業の大切さを表している成功事例としてハーバードビジネススクールの教材に取り上げた。

 第2次世界大戦後から、ベトナム戦争が終わった頃までを幅広く戦後のベビーブーマーとすると、この世代は子供たちの数が多く、競争主義で大量生産・大量消費の主役。そして彼らのマネッジメントスタイルは"飴と鞭"型の世代であった。
 しかし、それ以降に生まれた人たちは人数が少なく豊かになって、個性的な人たちが多くいる。仕事の仕方も個性的な人がその道のプロがチームを組んで共に課題を解決していくと言った協業の時代に入っているのだ。車にしても家にしてもシェアをして生活をする。このように仲良くやりながら、その組織も自分も進歩していくことを喜びとしている。

 日本では、失われた20年の後の3.11で、大家族ではなく、一人の大人としての協業組合活動をしたり、会社組織に加わろうとしている。
 ついこの間までの自己責任で格差を是認するような組織体から抜け出して"組織体も自分も良し"ということを理想に組織運営がなされようとしている。
 農業分野で言うと、よく農協花き部会の共選・共販が大規模農場経営の会社組織より少し古びたものであるというような印象があるという人がいるが、私はそうは思わない。
 むしろ、協同組合の生産販売組織の方が地域を考え、複雑な技術を使い、買い手と小売店と消費者に利益をもたらしているのではないかと思われる。そのような目で見ると、花き業界や青果業界では未来の芽が育ってきており、天候異変・燃料高など困難は付きまとうが今後が楽しみである。

投稿者 磯村信夫 : 14:50

2013年7月22日

信頼

 パリのオートクチュールの記事によると、新たに中国人のお客さんが増えて復活の兆しが見えてきているという。
 ファッション評論家の大内順子さんは、大田花きの新品種の目利きアドバイザーを担ってくれているが、大内さんによると1着が日本円にして1000万~1500万円する服を、春・秋物で5着ずつ揃える人が世界に200人~250人いるという。 オートクチュールのお客さんは大金持ちで、その価値が分かる人でないと1人で鏡の前でドレスアップしても仕方がない。オートクチュールの服を着て行った方が良い社交界が世界にはあるのだろう。

 さて、それを聞いてグローバリゼーションの中でフリードマンが言う「フラット化する世界」ではなく、フロリダが言う「デコボコな世界」こそが、現在のグローバリゼーションの社会の在り様ではないだろうか、と観ている。
 中国政府の執行部の月給は、日本円にして約20万円位だと言われているが、どのようにすれば300億円も資産を持つようになるのか。まさに国・地域・人など「デコボコ化する世界」になっている。
 ブランド品を身に付けている人たちは、"類は友を呼ぶ"で、ネットワークを形成し、乗る車・身に付ける衣料・使うITなど国を越えて"自分は何者であるか"ブランドを通じて信頼のクレジットを表明する。

 世界中で孤独感や疎外感が深まっているのは、「デコボコ化する世界」で見られる現象である。その要因の一つは、国や大企業、そして社会や組織、家族に対する不信感の高まりだ。本来、信頼とは人格などの人の素晴らしさであったが、忙しくなり反射的に情報交換をする現在、信頼は交渉やら取引を通じて、初めて獲得するものとなった。信頼とは、一緒に目的を共にする行動志向の感情で、未来に対する期待に基礎を置いている。
 私たちが自分以外の人、夫婦間でも組織やブランド商品でも信頼するのは、将来その人が約束を守ってくれると思うからで、信頼は未来を予測することを可能にすると思うからだ。
 
 "任せておきなさい""期待通り""期待をはるかに超えて尽くしてくれる。"人はそういったところに信頼感を持つのだ。幸せも不幸せも、お金持ちも貧乏も相対的なもので、日本で働く者の30%が非正規雇用で、この10年間最も増えた所得の世帯は、300万円以下で25%も増えた。このような状況の中で安倍自民党は参院選で圧勝した。
 
 グローバリゼーションはフリードマンが言うように国ごとの格差は少なくなっていく。
 しかし、国を乗り越え、地域を限定していくと、まさに都市・国家のように「デコボコした世界」が展開されている。日本が開発したロボットを使う自動車組み立てラインが世界で使われるようになり、アメリカの大都市の中でも大卒者の比率が最も少ない都市の一つ、デトロイト市は先週、破産申請をした。こういう中で、自民公明の信頼、民主に対する不信頼が際立って表れた参院選だった。日本国民は現政府と一緒になって日本を更生しようとしているが、まだ日本は現実の世界を直視出来ていないように思う。

 私は、人はセルフチェックも含め、ダブルチェックをしないと悪いこともし兼ねないものだという「性弱説」の立場で判断をしているが、その大元には日本人が持っている「性善説」が本能のように下地にある。
 ブランドを通じて自分の生き方を表現するのではなく、惻隠の情こそ一番格好良い生き方であることを思い、国を運営していく、一人一人が生きていく。国防は専守防衛、商売は海外に出て行くとしても、地方に出て行くにしても"地元主義"、これが日本のどの業界でも通じる日本流の生き方ではないかと思う。
 デコボコ化した社会・世界をどのようにフラットにしていくか日本流のやり方は、旅館業の星野社長がおっしゃるように働く者の一人一人のマルチタスク化、多機能化であり、日本のODAが示すように重点投資は教育であろうと思う。

 まずは、捩れがなくなり政権が安定して良かった。後は多少未来を作る為に足元に利害調整の中で困難があっても、世界の先進国でよく言われる第二次世界大戦後のベビーブーマーが自分たちだけやりたいことをやって豊かな生活をし、子供たちの世代、孫の世代に取り返しのつかない借金を残したと言われないようにする。何も財政再建を一気にせよと言っているのではない。世界の今とこれからに自分の社会を合わせる。私の場合であれば、安定的に発展できるよう日本の花き業界を作っていくことだ。

 信頼とは、共に未来を作って行こうとする力。結果を残すべく、国政の仕切り直しが終わったので、未来のあるべき姿を作り行動することである。信頼の大元は財政と哲学であることは言うまでもない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年7月15日

雨降り

 猛暑の中での東京のお盆の需要期であった。暑いのでバラは安くなったが、菊類は数量が不足して盆に入った13日のセリまで高かった。こんなことは21世紀に入って初めてだ。

 食品スーパーの競争が激しくなって、今まで花を扱っていなかった食品スーパーも本年度から物日には扱うようになったところが多い。そんなこともあり、卸の段階では盆用の花は良く売れた。
 しかし、小売店はよく売れたところと売れなかったところがはっきりとしており、立地条件よりむしろ日頃から一生懸命花店として商いしているかどうか、その姿勢が商売繁盛か衰退していくかの分かれ道のように思う。
 駅中や駅周辺の好立地でなくとも一生懸命やっているかどうかの姿勢で応援してくれるお客様が増えたかどうかわかる良い時代になっていると思う。

 さて、来週は日帰りだが、神奈川の丹沢三景の大山阿夫利神社参拝登山をする。阿夫利神社は五穀豊穣の雨降り神社であり、関東地方は干ばつ気味であるので穏やかな天候で商売繁盛をお願いして来るつもりである。
 同じ先導師のところに東京青果卸の講もある。江戸時代の神田のやっちゃばの頃から続いている青果の仲卸の講で、こちらはここ70年の講だから弟分として何かあると協同歩調をとっている。
 この大田花き大山講のメンバーのお一人に花幹 水口会長がいらっしゃる。創業者である水口会長は、社員を社長にし、現在会長を務めている。ご子息は立教大の助教で『渡航僧 成尋、雨を祈る』という本を出版された。いただいたので、通読した。
 
 成尋は平安後期(1072年)62歳で宿願の宋にわたった天台宗の僧で(1081年)、69歳で中国で没した。成尋が有名なのは、時の皇帝に3日間の祈りで雨を降らせますと約束し、台密で法華経を唱え、見事に3日目に雨を降らせ、皇帝から称号をいただいたという大人物だ。
 どこまで成尋和尚が降雨を祈ったかことが天に通じたかはわからないが、人は思ったことしか実現しない。やったことしか実現しない。それは真実であるから、雨降りが偶然であったにしても、成尋の威徳だったことは間違いない。

 「感動する」とは"気とリズム"がまさに動いていることを感じた時である。それは、芸術には欠かせない。古いものでも魂は生きている。今でも生きているように見えるし思える。これは、絵や彫刻や文だけではなく、神社や仏閣など大きな建造物に対しても我々は感じることが出来るし、富士山という山、大山という山にも感じることが出来る。
 「気韻生動」という言葉を思いながら、水口氏の成尋の本を読み終えた。人間が我欲の為にでしゃばったことをし過ぎて、神である自然からしっぺ返しをされて今暑さで唸っているが、もう一度宇宙と一体化しリズムを整え自然としての自分を知り、そして科学を使い、良き花の仕事をしたいと真夏の今日考えている。

投稿者 磯村信夫 : 16:34

2013年7月 8日

2010年度県民所得が発表されたが・・

 東京は例年よりも早く梅雨入りし、早く梅雨が明けた。昨日今日の暑さは凄まじく、今日から盆の仕入れが本格化するはずであったが、とある小売商曰く、「もう夏バテです。暑さで人の具合が悪く、店にある在庫の花も具合が悪いので、明後日の10日で花を揃えます」という仲卸・小売店が多い。
 首都圏は高齢化している。それはそうだ。子供の数が多かった団塊の世代では長男は田舎で後を継いでいるが、それ以外の兄弟は集団就職で首都圏に来たり、嫁ぎに来たり高齢化率は高い。ただ他府県と違うところは、団塊ジュニア始め、若い人たちも多くいるということだ。7月のお盆は昨日の七夕とお施餓鬼は日曜日だった。今年は曜日巡りで週末土曜日の13日からハッピーマンデーの15日の海の日までがお盆で3連休なので、7月盆も久しぶりに実家に家族全員集う家も多いだろうと思う。だから花は売れる。

 さて、話は変わるが、花市場業界では宮崎中央花き、青果市場業界では大分大同青果の伸びや利益率に注目が集まっている。
 2010年度の県民所得(※)では、花市場業界で最も伸び率の高いうちの1つ、宮崎中央花きは47都道府県の中、県民所得45位の宮崎県で頑張っている。県民平均所得は、221万1000円だ。青果市場で、堅実経営、利益率が高い卸売会社として注目されている大分大同青果が位置する大分県は33位で、平均所得は247万5000円だ。東京は大会社も多く首都圏の中心だから、県民所得は430万6000円と2位の滋賀県の326万9000円より100万円も多い。
 
 東京には大会社も多く、会社の経費需要も当然あるので、例えば胡蝶蘭の消費量から単価水準が大輪・ミディーとも他都市と当然違ってくる。なので、例えば大田花きの売上げが大きいのは、地の利の為で、決して努力の賜物ではない。小生はもっと頭を使って努力しなければ恥ずかしいと考えている。
 
 今注目されている2社は何が違うのであろうか。それは、端的に言って経営だ。市場の機能を徹底的に磨き、産地指導やリテールサポートを徹底している。設備投資を絶えず行うので、その原資である利益に対しても貪欲で、品揃えの為とはいえ、買い付け品の利幅をきちんと取る。
 こう見ていくと、確かに県民所得や民力は花き・青果市場の取扱額を決めて行く。しかし、それだけではない。日本各地ではこの2社の質の高い経営が求められており、地域の活性化の一端は一流の市場人が地域にいるかどうかに掛かっている。

 現代の日本では、ゆとり世代が成長し"本物を求める求道精神"に欠ける人材が多数輩出されて来ている。一方では、"切って捨てる""自己責任"の考えが蔓延した時期もあった。
 しかし、ようやく日本そのものがどのような国の在り方が最も日本らしいのかを真剣に考え、それに向かって進んで行くようになって来た。
 花で言えば宮崎中央花き、青果で言えば大分大同青果、このように日本の卸売市場としてあるべき方向を実現化してくれている。大いに見習うべきである。


※参考サイト
都道府県別統計とランキングで見る県民性より
"県民所得ランキング"

投稿者 磯村信夫 : 15:52

2013年7月 1日

株主総会で質問

 定点観測をしていると、ブルーの比率が花でも高まっているように見える。サッカーのサムライブルーから始まって、洋服の黒はすっかり定番になったものだから、ブルーの洋服やらアクセサリーなどが人目を引く。
 
 花は暑さを楽しむヒマワリの黄色やオレンジ、ジンジャーやヘリコニアなどの赤に代表されるものが人気だが、その他にも季節を表す白やブルー、そして葉物のグリーンがある。この中でもブルーの花は比率が上がっており、カーネーション、リンドウ、トルコギキョウ、スイレン等、時代の色として持てはやされて来ている。NFD(※)の"花ファッション"のトレンドの通りだ。

 さて、今日はもう一つ。先週の第26週は株主総会のピークの週だった。弊社大田花きはその前の週の土曜日だったが、株主の皆様から総会でいただいた質問の一部をご紹介したい。
 輸出についての質問をいただいた。農産物の輸出は日本の大きなテーマであり、可能性は十二分にある。
 
 大田市場 青果の仲卸で現在衆議院議員として活躍されている平議員は、産地がリンゴやみかんを輸出するのも良いが、卸売市場の仲卸が輸出業務をすることの方が先方のオーダーも受け易いし、日本農業の得意な傷み易いが生でいただく物(桃やびわ等切花含む)が継続的に輸出され、トータルの金額からすると、輸出金額が多くなると考えられ、この方向で政策決定され、植物検疫を市場ですることなどの実行対策も具体化されて来ている。
 
 今後、大田市場としては、韓国(ソウル圏)、中国(上海圏)、台湾(台北圏)、香港、シンガポールのそれぞれの市場か仲卸と商売したいと考えている。
 スポットの話では、パリやオランダの花市場に日本の花を輸出しているが、商売として成り立たせる必要がある。目処が付きつつあり、質にこだわる仲卸と良い物を作る生産者が一緒になって輸出業務に本格的に取り組んで行くことを簡単ではあるが説明させていただいた。

 また、為替の質問があった。円安に傾いたドル、ユーロの為替水準で日本の小売価格、或いは生産費または輸出において、どのような影響が出ているのかというものであった。1ドル95円~105円、1ユーロ125円~140円の間であれば、努力の範囲内で収益を落とすことなく生産・販売・輸出の3つが出来るであろう。
 
 しかし、今までのやり方では収益を落としてしまうので、生産者であれば製品化率を上げる。流通業者であれば、より価値のある物を扱う。ロスをなくす。輸出であれば、その地のマーケット調査をしっかりと行い、クールジャパンの一環として格好良い花のデザインを含めて素材を輸出して稼ぐということである。
 一定の円安なら、"やれば出来る"ということをお伝えした。どこの株式公開会社でも一般の株主がその会社の進むべき道を示唆してくれている。
  
 参院選挙前で、マスメディアは政局や経済活動について色々と言っているが、園芸分野の花き農業、卸売市場と仲卸、そして小売店を見ている限り、自分の花の仕事に社会的意義を見出してやる気になってやっている人は成長している。
 花き業界は泣き言を言わず、やる気を持って行えば、必ず成長していくと自信を持って言うことが出来る。

 ですから皆さん、チームを組んで一生懸命花き業界を前進させましょう。


※NFD・・・公益社団法人日本フラワーデザイナー協会

投稿者 磯村信夫 : 15:57

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