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2013年8月26日

受託拒否の禁止について

 先日、日本農業新聞に2012年の青果卸売市場で、営業赤字の会社が増えたことを報じていた。
 国内生産量が少なくなって出荷先の絞込みが進み、市場にとっての取引先(販売先・仕入先)ともに大きくなって利益を出すことが難しくなったことに由来する。
 これだけであれば、赤字になったら元も子もないから最低限の営業利益は確保出来るはずだが、豊作で産地は直取引では捌けない分を卸売市場に出荷する。予定した数量が捌けず、量販店等の大手にキャンセルされた輸入品などの数量が卸売市場に委託品として出回る。
 青果卸売市場は一般的に値決めの形で国内産地に見込み発注しているから、それが諸に営業赤字になっていく。こういったことが起こったらしい。

 花も需要がはっきりしている彼岸と盆の今年の3月と8月、同様のことが起こった。捌ききれない中国などの白一輪菊が普段ほとんど付き合いのない商社から出荷されたのだ。こうなると、市場法の中の受託拒否の禁止だけを考えると問題になってくる。
 受託した卸にとっての委託品は、所有権が荷主である国内生産者や輸入商社にある。所有権は近代国家の中で、絶対的なものである。
 ソ連邦が崩壊し、ロシア初代大統領であったエリツィン元大統領は、"所有権の絶対"を確立し、ロシアを近代国家へと導いた。所有権には使うという意味の「使用の自由」「収益の自由」「処分の自由」の3つの権利がある。
 余った青果や花など卸売市場に出荷されたものは卸側に所有権がないので処分できない。従って、その卸売会社の不利益だけでなく、週ベースや月ベースで見た時は、結局はコンスタントに取引している国内産地や輸入商社に価格的な影響が及ぶのだ。

 現在の市場法で、買い付けの自由が認められているが、卸売会社は、品揃えの為に買い付けをするのであって、決して自己の利幅を大きくする為に買い叩くということはしていない。そうであるならば、受託拒否はどのような場合にしても良いのか。
 ここを再度明確にして「売るに天候、作るに天候」の生鮮食料品花きの卸売市場法を再考する時期が来ているのではないかと思われる。

 受託拒否禁止の法律に卸売市場の公共性の意義を見出すことは出来る。ただし、買い手が登録制であるのと同様、出荷者は取引参画する資格はどうなのか。登録しなくて良いのか。どのような状況の時に受託拒否の禁止でなくなるのか等。国内生産者の保護の為だけでなく、安定して海外の青果・花きを輸入している商社に価格的なダメージを与えかねないことでよいのか。今、再度考える時期である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年8月19日

先進国の農業の取るべき道

 農業先進国は果菜類・軟弱野菜・花・畜産・一部果物に特化するべきである。
知識集約的で安全で新鮮な付加価値の高いものを作り出す農業は日本農業のお家芸だ。

 今日の日本経済新聞に北海道信用農業協同組合連合会、通称JA北海道信連が生産農家の格付けを6段階区分で行い、優秀な農家への囲い込みを図りたいとした旨の記事があった。
 今までのJA信連は、内々で格付けのようなものはあっただろうが、成績の良い農家も悪い農家も同じ貸出利率でお金を貸していると聞いていた。
 お金を貸し出すことはハイリスクなので、当然経営体の格付けと金利差があって然るべきだと思うが、とにかく再起してほしい、頑張って農業を続けてほしいという温情主義から貸し倒れることもあった。これが普通になったというべきだろう。農業は農場経営という一つの事業であるからだ。
 花き卸売市場協会でも、今期上期中に経営診断マニュアルを作成し、早速自己点検をし、問題や将来への不安があった場合、市場協会のコンサルタントに相談してもらうことにしている。

 日本農業がクローズアップされているが、例え小面積でも良いものを作ればやっていける日本農業にしなければならない。
 私自身の考えは、EUのように所得保障をし輸入関税率を下げ、農産物も国際的な価格水準となり、消費者負担を軽減し、高級品だけでなく中級品以下も価格が下がる訳だから、お惣菜や加工食品、加工花束も優先的にGM品種ではない新鮮な国産を使い、日本の農業が持続的に発展するようにする。
 そして、予定利益を上回った分はボーナスとして生産者に支給される。こういったEU諸国が行っている農業政策にしてもらいたいと考えている。
 
 さて、消費税増税まで含め、農業界・花き業界において、変化が起ころうとしている。まず現在のルールの中で力いっぱい努力し安定して消費者に花を購入してもらえるよう流通させる。
 続いて、更に力を入れていくべきことは、生鮮食料品花き業界は、種苗から小売店まで一丸となって安全・安心を絶対条件に農業生産生鮮物流通でEU並みの諸条件が獲得出来るように政治的活動をしていくことが必要である。この点がこの期に特に重点的に行うことである。

投稿者 磯村信夫 : 10:16

2013年8月12日

今年の8月盆市況

10日(土)に日本橋三越で開催されている「假屋崎省吾の世界展」と江戸東京博物館で特別展示されている「花開く江戸の園芸」を観にいった。お昼過ぎの一番暑い盛りだというのに、人を掻き分け見るようで、花や園芸文化に対する日本人の関心の強さを垣間見たようで、花卉業界で働く私としては大変嬉しく思った。
 今年は12日でお盆の市が終わる。今年の8月盆の市況の傾向が出たので、9月のお彼岸に向けての出荷や仕入計画などに参考にして頂ければと思う。
傾向は次の通り

(1)前進開花に高値なし
小菊が前進しており、作付けも多かった。
北東北の一部遅れていたところもあったので、予約相対を組んでいる人に前倒し納品をさせてもらった市場も多く、前進開花だから少なくなるのなら、前にとった人も我慢しようが、少なくなるどころか、むしろ少し増えてきてしまった為に、小菊は運賃も出ないほどの安値に泣いた産地もあった。3月の彼岸に次いで本年2回目である。

(2)スプレー菊は施設の産地がほとんどなので、国産は暑さで遅れ気味であった。
マレーシアを中心にした輸入のスプレー菊も円安と現地の人件費高や飛行機運賃高で昨年より、少なくても2割高く売れないと輸入業者は丸っきり利益が出ない。
こんなことからスプレー菊は当初、市況は順調であった。しかし、昨年の12月から台風で小菊の大産地が壊滅的な打撃を受けた為スプレー菊を小菊と同様に仏花に使う業者が日本全国で多くなった。その後、小菊が量的に出回るとともに、注文で手当てした業者はせりでスプレー菊の相場が下がるので嫌気がさしてかえって手を出しにくくなり、スプレー菊の相場がさらに下がった。本年3月の相場と同様、小菊とスプレー菊が一緒になって全体の相場を押し下げる傾向となった
露地ものが多い8月期であるのでリンドウのように開花遅れで相場が高いもの、同じ紫でチースのように施設もので前進開花して需要期になくなってしまったものもあり、3月のように全体相場がダメというわけではないが、小菊とスプレー菊が全体相場を押し下げているというのは、8月盆でも3月同様の結果であった。

(3)輸入白菊があるので一輪白はパッとしない相場が続いた。
日本の夏は暑いので高温障害で開花が遅れる。
そこで足りない、足りないで来て、堅調相場が続くというのが周年生産の白菊の8月盆の市況パターンであったが、これが崩れた。中国産に加え韓国産が市場によって出回っていることが大きい。下位等級品は輸入品で、という加工業者のニーズがそうさせたのであろう。さらに一輪菊は物日に一時的に量が必要になるのは日本だけで、日本の相場が下がると他の国へ持っていきようがない。スプレー菊とは違う。

(4)受注を中心にした輸入商社は3月のように大損を出さずに済んだ。
しかし、見込みで輸入した商社や見込み予約相対をした市場や仲卸はいずれも3月同様の損失を出したと思われる。
大手小売店や花束加工業者は、予約相対で結果として高いものを仕入れて儲け損なったが中堅輸入商社や8月盆は大丈夫、とタカをくくって見込み発注をした卸や仲卸は3月同様に手痛い損をこうむった。こうなると9月は損しないようにと、間際の仕入が多くなる。それでは輸入商社も国内産地もやってられない。
もう一度全国レベルで今年の小菊・スプレー菊・一輪菊の国内生産量はどうなっているのか?など生産状況の把握を正確にしていくことが必要だ。かっては、市場協会へのアンケートを踏まえ、国の花き室がそのへんの数字を把握していた。それができなくって、推測で相場を動かすようになっている。
3月の彼岸、8月盆と仏花関係が過去5年続いた堅調相場から「不確実化」へ動いている。こういう時こそ、正しい情報を共有していくことが必要だ。さしあたり9月のお彼岸は、3分の1~半分が予約相対で抑えておくというのが買い手の偽ざる気持ちであろう。

(5)1年間で270万人生まれた団塊の世代はあと3年で皆65歳以上になり、これまでのように盆に田舎に帰って墓参りをする人も少なくなっていく。65歳定年になっているが、年金がこれからいつから出るのかによって、いつまで働くかが決まる。
8月の盆や春の彼岸、あるいは、ゴールデンウィークなどにリタイアを前に第二の人生を考え、ご先祖様に報告する為に親父やお袋の眠っている墓にお参りを重ねてきた。分家して都会に出てきている次男、三男、あるいはお嫁に行った娘さんなどでは、中期高齢者になると急に墓参りの頻度は法事のときなどに限られてくる。その傾向が団塊の世代の初めの人が65歳以上になって、総量からすると既に盆需要減となって現れてきているのだ。
だから今から3年~5年前位までみたいに仏花が売れるという訳ではない。毎月一日、十五日の花もそうだ。先祖崇拝の日本の信仰や風習を守っていきたいとは思うが、仏花需要は確実に少なくなる。それを手軽なギフト需要と季節の中の家庭需要に代えていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 16:51

2013年8月 5日

観光では地元のものを賞味してもらう

 僕が良く行くところがそうなのかわからないが、夏休みになってから外国の人や地方の人が東京に沢山来ているように思う。

 昨日も用事があり新宿伊勢丹に行ったが、本当に外国の人や地方の富裕層が多く、本物のデパートとは、買回り品を求める「お買い場」であることを感じさせる。
 店員は親切で商品のことを良く知っており、プロ意識の高さはさすがで、海外からわざわざ伊勢丹を目的に来日することが少なくない、というデパートである。
 デパートという業態をここまで追求している会社はそうはない。ここで購入したものは損した気がしないし、損をさせない価値と価格のバランスがある。

 話は変わるが、毎夏個人的に何か思い出に残ることをしている。この夏は、国立博物館を徹底的に見て回ろうと火・木に通っている。
 今までルーヴルやエルミタージュ、オランダのアムステルダムの2つの美術館、台北の故宮博物院など、一週間そこに滞在して作品の数々を鑑賞することを夏に行ってきた。
 天気や鑑賞時間による光の明暗、見るこちらのコンディションによって見え方が違うので、大きな博物館や美術館は続けて通わないとどうしても見損なってしまう。
 そのような理由で、今年の夏は国立博物館に通っているのだが、ここでも以前より外国の方が多く感じる。
 今、縄文土器の特集が開催されているが、決して太古のものというわけではなく、身近で伝統が今の日本人に繋がっていることが良く分かる。

 自宅と会社の間を行き来しているばかりだと、グローバリゼーションの実態がよく分からないが、秋葉原に行けばロシア人が増えたことが分かり、伊勢丹に行けばアジアの富裕層が来ているのも分かる。博物館にはフランス人を始め、ヨーロッパ人とアメリカ人たちが夫婦で来ているのが分かる。

 私たち花き業界人は日本の消費者に購入してもらうのでどうしても内向きだが、観光という視点からみると、世界から日本に来てもらい、日本食と国産の花でおもてなしをしたいと考える。観光=国産化、或いは地域化であることを観光の国際化の中で思う次第である。
 
 観光するということは、その地域の文化と食、花でおもてなしを受けたいものである。すなわち、私たちの誰もがその他のローカルなものでおもてなしを受けることが観光の醍醐味なので、"グローカル"ということが観光のキーワードになっている。
 このキーワードは花の生産ということに繋がる。小さい単位では、そこの町村、少し広げて県、更に広げて地方、もっと広げて日本産、ここまではグローカルの中で観光に来た中で許される範囲だ。
 しかし、伊勢丹のように百貨店の世界の雄を目指し、プロとして世界から良いものを選ぶとなると日本への観光とは違い、外国産のものも許されるということだ。
 外国人や地方からいらっしゃった方々へのおもてなしとしての結論は、地元の特産物があれば最高だ。B級グルメでも良い。
 
 しかし、何もなくてもおもてなしの心があれば、それさえあれば工夫が必ず出てきて、そのパフォーマンスが観光の資源として成り立つのではないかと思う。
 何もなければ人と智恵の心で勝負だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:18

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