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2013年8月12日

今年の8月盆市況

10日(土)に日本橋三越で開催されている「假屋崎省吾の世界展」と江戸東京博物館で特別展示されている「花開く江戸の園芸」を観にいった。お昼過ぎの一番暑い盛りだというのに、人を掻き分け見るようで、花や園芸文化に対する日本人の関心の強さを垣間見たようで、花卉業界で働く私としては大変嬉しく思った。
 今年は12日でお盆の市が終わる。今年の8月盆の市況の傾向が出たので、9月のお彼岸に向けての出荷や仕入計画などに参考にして頂ければと思う。
傾向は次の通り

(1)前進開花に高値なし
小菊が前進しており、作付けも多かった。
北東北の一部遅れていたところもあったので、予約相対を組んでいる人に前倒し納品をさせてもらった市場も多く、前進開花だから少なくなるのなら、前にとった人も我慢しようが、少なくなるどころか、むしろ少し増えてきてしまった為に、小菊は運賃も出ないほどの安値に泣いた産地もあった。3月の彼岸に次いで本年2回目である。

(2)スプレー菊は施設の産地がほとんどなので、国産は暑さで遅れ気味であった。
マレーシアを中心にした輸入のスプレー菊も円安と現地の人件費高や飛行機運賃高で昨年より、少なくても2割高く売れないと輸入業者は丸っきり利益が出ない。
こんなことからスプレー菊は当初、市況は順調であった。しかし、昨年の12月から台風で小菊の大産地が壊滅的な打撃を受けた為スプレー菊を小菊と同様に仏花に使う業者が日本全国で多くなった。その後、小菊が量的に出回るとともに、注文で手当てした業者はせりでスプレー菊の相場が下がるので嫌気がさしてかえって手を出しにくくなり、スプレー菊の相場がさらに下がった。本年3月の相場と同様、小菊とスプレー菊が一緒になって全体の相場を押し下げる傾向となった
露地ものが多い8月期であるのでリンドウのように開花遅れで相場が高いもの、同じ紫でチースのように施設もので前進開花して需要期になくなってしまったものもあり、3月のように全体相場がダメというわけではないが、小菊とスプレー菊が全体相場を押し下げているというのは、8月盆でも3月同様の結果であった。

(3)輸入白菊があるので一輪白はパッとしない相場が続いた。
日本の夏は暑いので高温障害で開花が遅れる。
そこで足りない、足りないで来て、堅調相場が続くというのが周年生産の白菊の8月盆の市況パターンであったが、これが崩れた。中国産に加え韓国産が市場によって出回っていることが大きい。下位等級品は輸入品で、という加工業者のニーズがそうさせたのであろう。さらに一輪菊は物日に一時的に量が必要になるのは日本だけで、日本の相場が下がると他の国へ持っていきようがない。スプレー菊とは違う。

(4)受注を中心にした輸入商社は3月のように大損を出さずに済んだ。
しかし、見込みで輸入した商社や見込み予約相対をした市場や仲卸はいずれも3月同様の損失を出したと思われる。
大手小売店や花束加工業者は、予約相対で結果として高いものを仕入れて儲け損なったが中堅輸入商社や8月盆は大丈夫、とタカをくくって見込み発注をした卸や仲卸は3月同様に手痛い損をこうむった。こうなると9月は損しないようにと、間際の仕入が多くなる。それでは輸入商社も国内産地もやってられない。
もう一度全国レベルで今年の小菊・スプレー菊・一輪菊の国内生産量はどうなっているのか?など生産状況の把握を正確にしていくことが必要だ。かっては、市場協会へのアンケートを踏まえ、国の花き室がそのへんの数字を把握していた。それができなくって、推測で相場を動かすようになっている。
3月の彼岸、8月盆と仏花関係が過去5年続いた堅調相場から「不確実化」へ動いている。こういう時こそ、正しい情報を共有していくことが必要だ。さしあたり9月のお彼岸は、3分の1~半分が予約相対で抑えておくというのが買い手の偽ざる気持ちであろう。

(5)1年間で270万人生まれた団塊の世代はあと3年で皆65歳以上になり、これまでのように盆に田舎に帰って墓参りをする人も少なくなっていく。65歳定年になっているが、年金がこれからいつから出るのかによって、いつまで働くかが決まる。
8月の盆や春の彼岸、あるいは、ゴールデンウィークなどにリタイアを前に第二の人生を考え、ご先祖様に報告する為に親父やお袋の眠っている墓にお参りを重ねてきた。分家して都会に出てきている次男、三男、あるいはお嫁に行った娘さんなどでは、中期高齢者になると急に墓参りの頻度は法事のときなどに限られてくる。その傾向が団塊の世代の初めの人が65歳以上になって、総量からすると既に盆需要減となって現れてきているのだ。
だから今から3年~5年前位までみたいに仏花が売れるという訳ではない。毎月一日、十五日の花もそうだ。先祖崇拝の日本の信仰や風習を守っていきたいとは思うが、仏花需要は確実に少なくなる。それを手軽なギフト需要と季節の中の家庭需要に代えていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 2013年8月12日 16:51

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