大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2013年8月 | トップ | 2013年10月 »

2013年9月30日

上半期:花業界の成果

 今日で上半期が終わる。花き業界全体としては、アベノミクスで期待は高まったが、卸・仲卸・小売とも売上げは前年並みか、その前後といった会社が多く、期待値には届かなかったものの仕方ないと感じており、薄日は差している。
 
 国民的話題になったドラマ"半沢直樹""あまちゃん"のような大ヒットは、花き業界にはなかったが、天候不順で生産量が減少する中、価格はじわじわと上げてきており、生産者にとって先の見通しがたってきたと言って良いだろう。

 農業の第6次産業化(1次・2次・3次産業で連帯する活動)が盛んになってきたが、市場流通の中でも連携を取りながらやって行こうとする動きが出てきた。産地でフェアを行い、卸が小売店と一緒に産地フェアーに赴く。また、種苗展示会にも産地と卸・仲卸、場合によっては小売店も一緒に行き、品種を作る人、流通させ決済する人、花を販売する人の連携が出てきたのは大変好ましいことだ。
 
 「ちば 花と緑の会」が最初に行った生産者が自ら産地フェアーを開催するこのスタイルは、日本各所で行われるようになってきた。大手の市場では、産地に出展してもらい、商談会を行っているところもある。幕張で開催される"IFEX"や東京ビックサイトの"花の祭典"等もある。出店経費をどのようにしたら良いか、悩む産地も出てきた。嬉しい悲鳴だがコストはかかる。そんなに経費をかけられないという人は、選んで出たり、行ったりすれば良い。基本は商売の実行の為、製・配・販の3者がチームを組んで、「やろうか」と意気投合したところのみに出展する、或いは出かける。

 以上のように、花き産業を発展させる為には、人と人との繋がり(協力体制)が何を行うにも重要だということが再確認された。上半期で花き業界人が思い知ったのは、コミュニケーションと協力の重要性であろう。それを行っていない産地・市場・小売店では、いずれもマイナス幅が広がってきたことを付け加えておく。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年9月23日

マリッジペナルティーと事実婚

 大森近辺でお墓参りが活発に行われているかどうか見る場所が2つある。1つは、日蓮聖人が亡くなられた池上本門寺。もう一つは、鈴ケ森から品川までの旧東海道にずっとあるお寺にお墓参りをする人たちの数や花の大きさ。
 
 昨日は旧東海道を歩いて見てきたが、よく人が出ていたし、アベノミクスで花束は大きい。これで月曜日も堅調な相場が展開されると思った。
 東京・横浜は7月盆だから8月盆のところと違い、9月のお彼岸はひと月抜けたので、家族でお墓参りに行く。庭がないからお墓参りに行くとなると花屋さんで購入する。なので、9月のお彼岸は他府県よりも需要が高い。農業新聞で各市場の入荷量を見ると、いかに東京地区が秋の彼岸に需要が多いか一目瞭然だ。今年は天候に恵まれ、18号の台風の被害が残念であったが、生産者良し小売店良しの彼岸であった。
 
 今日はもう一つ、今後の結婚式の花と家庭需要の花を考えてみたい。日本は先進国の中で、結婚をすると会社を辞める女性の比率が高い唯一の国である。子育てなどで仕事を離れ、子供に手が掛からなくなってからパートやアルバイトなど外で働き家計の足しにする。だが、これでは一家の所得が減り、日本全体で見たら生産年齢の人口が減っているのだから、やはり同じ会社に勤め、産休・育児休暇を取り、社会で子供を育てる。
 まずは保育園の完備をするなど、生産人口減を防いで一家の所得を上げて行く主人公に既婚の働く女性がなること。こういった女性のライフスタイルに今日本全体が着目し期待しているところだ。

 女性が働くようになると、ヨーロッパで言われているマリッジペナルティーというのが起こってくる。一家で所得が上がるので、所得税は累進性だから余分に税金を払わなければならないということになる。
 マリッジペナルティーから法的に結婚をしないで事実婚で家族生活をしている人たちがフランス・北ヨーロッパでは大変多く、ごく普通のことである。私の知っているフランス人・オランダ人・スウェーデン人・ノルウェー人・デンマーク人のうち、4人は事実婚で、1人は結婚したが、別れて今は事実婚で彼女との間には子供もいる。
 
 日本でも8月28日、最高裁は婚外子の相続格差は法の下の平等を保障する憲法に違反する。との決定を出し9月4日に関係者に申し渡した。谷垣法務大臣はそれを受けて、関係法令の整備を行う準備を始めた。
 ヨーロッパやアメリカで起きてから、だいたい10年くらいすると日本もそんな風になっていくのが通例だったが、日本では結婚だけは明治時代からの慣習で法的に正規で結婚することが続いていた。
 東京では、結婚式・披露宴を行う人が半分、式を行わない人が半分と言われている。結婚する組数が減っても一組あたりの結婚式や披露宴の額が増えていた。なので、大安が週末にあると洋花の相場が上がるということがあった。
 
 そして、式を挙げない人も法的に婚姻届は提出しているのである。婚外子が相続などで差がつかないとなると、家族のありようが法的にフランスや北ヨーロッパのように近づいていくことになる可能性がある。こうなると、どのくらいの人たちが今の結婚式・披露宴の形を今度とも続けていくだろうか。
 
 高齢化の先頭をいく日本は、葬祭に関して東京で大まかに言って、通常の式が約3分の1、家族葬が3分の1、直葬が3分の1となっている。
 こうなると、ここ10年以内におそらく東京オリンピックの頃には、普通の結婚式が全体の3分の1、婚姻届を出して親戚や友人とレストランで食事をする人が3分の1、同棲とは違う事実婚を希望し、何もしない人が3分の1程になっていくのではないか。結婚式・披露宴の花の総需要は組数の減り具合よりも減るので、業者は寡占化する。花店はどのウェディング業者と組むかによって運命は決まる。
 
 また、女性がずっと働く中で、マリッジペナルティーを下げながら生活するとなると、子供が生まれてその子を差別することなく日本社会が受け入れて一緒に子育てしてくれるだろう。そうなると、自由になるお金はあるので、特に女性にとって楽しい生活の小道具としての普段の花の需要は高まっていく。
 
 花好きの人は気に入った花を一本一本購入し、自分で活けたり、ガーデニングをするだろう。だが、大半の人は忙しいので、出来合いのブーケや鉢物を買うだろう。この出来合いの比率がますます高まっていくのである。最初から花束やアレンジメントになったものを買うので、販売者は素材がどこの産地でどんな名前なのかを説明しなければならない。
 
 また、一週間持つ切花、ひと月はもつ鉢物、これが花持ちの条件になってくる。こういう家族の在り様の変化の中、今後専門店のフローリストはギフト以外にどう家庭需要を開発していくか。次の競争の現場はテーブルワインと同じ価格帯のアレンジした「普段の花」だ。ここに専門店の繁栄のキーがあるように思える。

投稿者 磯村信夫 : 16:22

2013年9月16日

時代遅れでは仕方がない

 時代の風というのはとても大切だ。今、切花の共選・共販(共同出荷の形態の一つ)の産地に番号ではなく、名前の表示にしてほしいとお願いしている。現代の消費者は組織に不信感を持っている。情報が氾濫しているので、事業体の評価だけでは人は信用しない。ネット上で書かれている内容も信用しない。自分の身近な人が薦めてくれたり、情報収集して大丈夫そうだと感じるものを買おうとする。
 
 共選・共販の花の場合、普通の小売店ならセリで購入するのは1ケース程だ。その花のポップが"スタッフ誰々のお薦めの花。○○農協の生産者○番さんが作った花"では信頼性に欠ける。"○番さん"ではなく、"生産者の○○さん(名前)"の花ならば、親近感が湧いて、「ちょっと買おうかな」という気持ちになるかもしれない。大切なのは匿名性ではなく、お客さんの頭の中の疑わしさを排除することだ。そして、親近感を持ってもらうことだ。そういう気持ちを表すというのが、今という時代の特徴なのだ。

 そしてこの間、都議会自民党で東京都花き振興協議会の陳情をした。その際その部屋では、なんと職務中にタバコを吸って良いようだ。今時室内でタバコを吸っている。分煙もなしに。何か時代にそぐわない感じがした。また、その帰りに電車に乗ると薄手のカーディガンを肩に巻きつけている人たちが多いことに気付く。腰巻から、時代はディレクター巻きの時代になったのだ。
 
 時代は繰り返すのか。それが改善か改悪なのかわからないが、時代は消費者にとって都合の良い方向に進化している。
我々市場も農業組織も自民党も既得権や昔は良かった調で古臭くなりがちだ。今と言う時代は、情報の氾濫とともに、逆に個が信頼できる範囲がますます小さくなってきている。
時代遅れでは仕方がない。気の合う人とチームを組んで、時代を創っていく位の気持ちで商売していこう。花は売れるのだ。

投稿者 磯村信夫 : 12:56

2013年9月 9日

上手くやるにはやることとやらないことを取捨選択すること

 先週7日の土曜日に、花の卸をしている人たちと"ブエノスアイレスで東京が2020年のオリンピックに落選した時、安倍首相始め、リーダーたちがどういうコメントをするかによって、景気が悪くなる懸念がある。"と話し合っていた。
 出来ることは何でもやろうという意気込みでここまで来たので、東京オリンピックの招致成功は、今年度の設備投資や消費意欲の活発化を更に後押しするだろうし、消費税値上げによる需要の減退、それによる腰折れのリスクはかなり少なくなったと見て良いだろう。
 
 この9月の需要期も現在のところ、小菊が前進開花していて、鮮度保持定温庫がある大手の買参人を中心に購入して貰っているが、当然セリ場にも多く出回る。そんなことから、相場が弱含みで推移するとなると、今年の夏の天気で作柄が大変悪く品質を考慮すれば、絶対量は10%以上少ないというのに、結局間際になって品質の悪いものが高値となってしまうのは消費者に迷惑をかけることなので避けたいところ。出来るだけ情報を共有化し、情報で相場上げ下げの幅を小さくしようと考えている。
 この課題については、今後生産協会と市場協会が情報交換会をして少しでも相場形成に役立てれば良いと考えている。
 なぜ生産協会かというと、21世紀になってこの10年余り続いた国内の花の生産減は輸入花で補うという供給構造が崩れたからだ。
 それは、このコラムでも記載している通り、2013年3月、8月の小菊とスプレー菊の相場を見てもらえば、いかに輸入商の人たちが損を出したかがわかる。下り坂になったとき、大手も落ちるが、中堅以下の落ち幅は大きい。
 良いときには誰でも良くなるが、比率で言えば中堅以下の会社の業績がどんと良くなる。円安に触れて花の輸入商の損益分岐点は上った。今後は国内景気がもっと良くなって単価を上げる努力が実るまで待つしかない。
 こういう状況だから、まず市場協会と生産協会が物日に向けて国内の生産状況と需要動向を話し合い、業界全体にその情報が伝われば良いと考えている。
 
 21世紀に入って単価が落ち、経費が上がって利益が少なくなった。今まで一人良かった輸入会社も皆良いとは言えなくなった。こうなると、売上げと利益を決めるのは3つの要素だから、景気はプラス方向、業界は今のところ利が薄い状況、最後に戦略。これが各自の持ち味で、この戦略でボトムラインをプラスにして消費税の値上げに備える。ここに今、成長への勘所がある。

投稿者 磯村信夫 : 15:50

2013年9月 2日

不満を少なくすれば満足するというわけではない

 先週の金曜日、バラの出荷グループ、九州大田会の会議が大田市場であり、いくつか話をした。その中で、これは役に立ったと会員からお褒めの言葉をいただいたので私が考えたのではないが、最新の"経営学"のセオリーの一つを紹介したい。
 
 それはフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」というものだ。働いていて不満に思うことは、①給与 ②対人関係 ③作業条件などである。
 給与を上げていれば、不満は少なくなるのだが、働くことへの満足感が得られるというわけではない。対人関係がスムーズに行けば不満はなくなるのだが、遣り甲斐があったとは言えない。
 人が満足に感じるのは、①達成すること ②承認されること ③仕事そのものなどである。仕事というのは、どんな仕事にも社会的に価値があり、仕事だからこそ成果を上げなければならないものである。

 そういえば、昨日の日曜日、気仙沼に結婚式でうかがったが、ボランティアの方たちが仕事をしており「炎天下なのに大変だな」と思ったが、これは遣り甲斐のある良い仕事だ。しかしお金とは縁がない。
 景気と業界そして会社独自の戦略、この3つがその事業体の売上げ・利益水準を決めて行く。
 統計によると、日本国民は気持ちを不安にさせるホルモンが多く出る国民らしい。心配性な国民なのだ。その分、手を抜かず、誠実に仕事をするのだろうが、ハーズバーグの不満要因ばかりを経営者が気にして、社員に対して処遇を設定してはいけない。
 もっと大切なことは、ともに夢を語り、やらされているのではなく自らやっていく、やりたいからこの仕事をする。と社員に思ってもらうことだ。
 
 社長や上司・先輩がどんな夢を持っていてその時代を作って行こうとしているのか、同じ夢を見てもらうことが必要だ。もちろん技術も必要だろう。技術は事を成し遂げるスキルだが、スキルがないと事は成し得ない。
 しかし、スキルがあれば良いかというと、夢やら信念がないと分かり易い音楽や絵でさえも明らかに人を感動させる力が違うことが分かる。これは仕事も同じだ。その会社はどんな夢を実現して取引先や消費者に物やサービスを与えようとしているのか。
 そもそも人を雇うのは、やりたいことが自分一人では出来ないからで、社員やパートの人と一緒になって夢を実現しようとする。そこに事業の面白さがある。
 
 ハーズバーグの「二要因理論」を花き産業に属する事業体は良く考え、新しい価値を創造して行く上で欠かせない知識だと思うのである。

投稿者 磯村信夫 : 12:37

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.