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2013年9月23日

マリッジペナルティーと事実婚

 大森近辺でお墓参りが活発に行われているかどうか見る場所が2つある。1つは、日蓮聖人が亡くなられた池上本門寺。もう一つは、鈴ケ森から品川までの旧東海道にずっとあるお寺にお墓参りをする人たちの数や花の大きさ。
 
 昨日は旧東海道を歩いて見てきたが、よく人が出ていたし、アベノミクスで花束は大きい。これで月曜日も堅調な相場が展開されると思った。
 東京・横浜は7月盆だから8月盆のところと違い、9月のお彼岸はひと月抜けたので、家族でお墓参りに行く。庭がないからお墓参りに行くとなると花屋さんで購入する。なので、9月のお彼岸は他府県よりも需要が高い。農業新聞で各市場の入荷量を見ると、いかに東京地区が秋の彼岸に需要が多いか一目瞭然だ。今年は天候に恵まれ、18号の台風の被害が残念であったが、生産者良し小売店良しの彼岸であった。
 
 今日はもう一つ、今後の結婚式の花と家庭需要の花を考えてみたい。日本は先進国の中で、結婚をすると会社を辞める女性の比率が高い唯一の国である。子育てなどで仕事を離れ、子供に手が掛からなくなってからパートやアルバイトなど外で働き家計の足しにする。だが、これでは一家の所得が減り、日本全体で見たら生産年齢の人口が減っているのだから、やはり同じ会社に勤め、産休・育児休暇を取り、社会で子供を育てる。
 まずは保育園の完備をするなど、生産人口減を防いで一家の所得を上げて行く主人公に既婚の働く女性がなること。こういった女性のライフスタイルに今日本全体が着目し期待しているところだ。

 女性が働くようになると、ヨーロッパで言われているマリッジペナルティーというのが起こってくる。一家で所得が上がるので、所得税は累進性だから余分に税金を払わなければならないということになる。
 マリッジペナルティーから法的に結婚をしないで事実婚で家族生活をしている人たちがフランス・北ヨーロッパでは大変多く、ごく普通のことである。私の知っているフランス人・オランダ人・スウェーデン人・ノルウェー人・デンマーク人のうち、4人は事実婚で、1人は結婚したが、別れて今は事実婚で彼女との間には子供もいる。
 
 日本でも8月28日、最高裁は婚外子の相続格差は法の下の平等を保障する憲法に違反する。との決定を出し9月4日に関係者に申し渡した。谷垣法務大臣はそれを受けて、関係法令の整備を行う準備を始めた。
 ヨーロッパやアメリカで起きてから、だいたい10年くらいすると日本もそんな風になっていくのが通例だったが、日本では結婚だけは明治時代からの慣習で法的に正規で結婚することが続いていた。
 東京では、結婚式・披露宴を行う人が半分、式を行わない人が半分と言われている。結婚する組数が減っても一組あたりの結婚式や披露宴の額が増えていた。なので、大安が週末にあると洋花の相場が上がるということがあった。
 
 そして、式を挙げない人も法的に婚姻届は提出しているのである。婚外子が相続などで差がつかないとなると、家族のありようが法的にフランスや北ヨーロッパのように近づいていくことになる可能性がある。こうなると、どのくらいの人たちが今の結婚式・披露宴の形を今度とも続けていくだろうか。
 
 高齢化の先頭をいく日本は、葬祭に関して東京で大まかに言って、通常の式が約3分の1、家族葬が3分の1、直葬が3分の1となっている。
 こうなると、ここ10年以内におそらく東京オリンピックの頃には、普通の結婚式が全体の3分の1、婚姻届を出して親戚や友人とレストランで食事をする人が3分の1、同棲とは違う事実婚を希望し、何もしない人が3分の1程になっていくのではないか。結婚式・披露宴の花の総需要は組数の減り具合よりも減るので、業者は寡占化する。花店はどのウェディング業者と組むかによって運命は決まる。
 
 また、女性がずっと働く中で、マリッジペナルティーを下げながら生活するとなると、子供が生まれてその子を差別することなく日本社会が受け入れて一緒に子育てしてくれるだろう。そうなると、自由になるお金はあるので、特に女性にとって楽しい生活の小道具としての普段の花の需要は高まっていく。
 
 花好きの人は気に入った花を一本一本購入し、自分で活けたり、ガーデニングをするだろう。だが、大半の人は忙しいので、出来合いのブーケや鉢物を買うだろう。この出来合いの比率がますます高まっていくのである。最初から花束やアレンジメントになったものを買うので、販売者は素材がどこの産地でどんな名前なのかを説明しなければならない。
 
 また、一週間持つ切花、ひと月はもつ鉢物、これが花持ちの条件になってくる。こういう家族の在り様の変化の中、今後専門店のフローリストはギフト以外にどう家庭需要を開発していくか。次の競争の現場はテーブルワインと同じ価格帯のアレンジした「普段の花」だ。ここに専門店の繁栄のキーがあるように思える。

投稿者 磯村信夫 : 2013年9月23日 16:22

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