大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2013年9月 | トップ | 2013年11月 »

2013年10月28日

日本通のアメリカ人が見た花の消費

 先日、オランダ系アメリカ人の友人と日本経済と花のパイが20年前と一緒だという話をした。彼は、1999年アメリカのマイアミでインターネット花店「フラワーファーム」を立ち上げ、その後ライバルのサンディエゴの「プロフラワーズ」と合併し、そこの社長をしている世界最大のインターネット花店だ。1ドル100円にして、現在450億円強の取扱金額がある。

彼は大の日本通でマレーシア、タイに洋蘭の仕入れに行く時に必ず立ち寄る。話し合った内容は、当然アベノミクスのことだ。私から「日本の現在の予算のうち、税収からは約40兆、国債等の借り替えで40兆。必要の予算の半分も税収で補えていない」このように言うと、彼は「だから私は1995年位からいつも言っているだろう。もっと金融を緩和して、デフレを止めてインフレ目標を作り、経済を成長させなければならない。ヨーロッパの主要先進国もイギリスを除いて少子高齢化だ。イタリアは日本よりもっと生まれてくる子供の数が少ない。しかし、ヨーロッパの平均でこの20年間GDPは2倍になっている。日本もまともな経済政策を行えば、GDPは20年間で2倍になっていただろう。今の赤字国債の借り換えなどなかった筈だ」というのだ。

私は今アベノミクスで最後のチャンスだと思っている。日本は綺麗に儲けて綺麗に使う。経済活動に倫理性、精神性を求めながらやって行こうとしているのだ。日本を取り戻すということは、経済の分野においても倫理性を重んじて経済活動をやっていく。石田梅岩や二宮尊徳などの「日本の仕事道」を作ってきた人たちの経済を取り戻そうというのだ。

 彼は、コロンビア大学のMBA出身なので、日本文学者のドナルド・キーン氏が日本に越してきて、自分の死に場所を日本に定めたことやアップル社のスティーブ・ジョブズ氏が時間さえあれば日本に座禅を組みに来ていたことをよく知っていた。なので、彼も日本が好きなのだが、日本は確実に良い方に変わってきていることを言っていた。

それは1970年代生まれの団塊ジュニアの人たちが顔を上げて前を真っ直ぐ見て仕事をしているというのだ。彼は私と同じ年で、日本では団塊の世代が目をギラギラさせて仕事に打ち込んでいたことを知っている。しかし、それとは違う、もっと清々しいが日本のことを想っている人たちの生き様を彼は私を説得するように伝えた。学校を卒業し、社会に出て暫く右肩下がりだった70年代生まれも上昇志向というのとは異なるが、成熟社会を受け入れながら日本人として難しい国際関係の中でしっかり生きて行けるというのだ。

又、日本の伝統を守りつつ確固たる足取りで生きていけるのではないかと彼は感じている。私からすると花で言えば華道、華道をベースにしたフラワーアレンジメントなど、日本人ならではの花の表現など更に発展させるべきだと考えているが、現実は少し壁があるように感じている。

しかし、彼はそうではないと言う。2011年の3.11の時「今バルセロナの飛行場にいるが、日本は大丈夫か。もし、花の供給が少なくなるようであれば何でも言ってくれ」と早速電話が入った。彼は日本の再生は必ず成し遂げられると感じており、私は勇気をもらったようで、花の消費もGDP同様、もう一度成長を軌道に戻して行っている気がするし、必ずそうさせたいと思った。
 
 自信を持って、日本人として日本の伝統美の上に花の消費を拡大しよう。2月14日のフラワーバレンタインも古くは奈良時代の梅や、戦後の母の日のカーネーションのように舶来のものを取り入れて自分のものとして吸収している日本の伝統にのっとりフラワーバレンタインをやって行く。こういう気持ちで、現在日本の花き業界はある。

投稿者 磯村信夫 : 16:51

2013年10月21日

利益は酸素に同じ

 今週は週中、台風27号がやって来るので、被害を心配している。26号で亡くなられた伊豆大島の五味さんは、30年前から大島の特産の切花であったブバルディアの栽培農家で、他に枝切りのフリージアや千両も作っており、大島でも有数の花き生産者であった。
 五味さんの他にも被害が甚大な方も多く、天の恵みを受け行うのが農業なので、農業者の皆様方のやるせなさは如何なるものか。ただただお見舞い申し上げるしかない。
 伊豆大島と同様に、カラーで有名な千葉県の君津でも甚大な被害が出た。いずれの地域もしっかり利益を出し、それを再投資し、時代の要望に答えて進化してきた花き生産者が多くいる地域であるだけに無念でならない。今後の復興の為、花き市場として出来ることは何でもしたいと思う。

 ところで、話は変わるがもう一月で12月。暮れの需要を前にして、花き業界で一緒に仕事をして行く為、事業体の健全経営について再確認の意味で話をしておきたい。
「組織体にとって収支を合わせる。」そして、その「利益とは私たちにとっての"酸素"と一緒なのだ。利益が出なければ本来の事業活動の目的であるお取引先に喜んでもらい、お取引先の数を増やすことは出来ない。」
「組織である夫婦、家族、NPO法人、株式会社も全ての組織が帳尻を合わせる。投資の為の或いはメンテナンスの為の利益を出すということは最低限のことだ。」
「商売であれば、お客様から利益をいただく。NPO法人であればお客様から利益をいただかないが、寄付という形で活動資金をいただく。そして経営理念の実現と収支を合わせる。」ここが出来ていない花き生産者や流通業者、小売業者がまだ多くいると思われるので心配だ。

 2007年サブプライムローン問題、2008年リーマンショック、2011年3.11、そして2013年3月末の金融円滑化法打ち切り、来年4月からの消費税3%アップ。このような文脈で企業がふるいにかけられている。
 日本では青果がそうしたのか、魚がそうしたのか分からないが、スーパーマーケットの支払いが遅すぎる。スーパーの業態を作ったアメリカのクローガーは、生鮮品は鮮度の度合いから担保にならないから、10日締めの5日後で支払うのを基本としている。日本ではイトーヨーカ堂は設立当初からこのサイトだ。また、オランダの花市場では、農協系のラボバンクに預金残高がなければ買うことすら出来ない状況だ。
 もう一度言わせていただく。組織体にとり利益は目的ではなく、必要不可欠なものであることをしっかり認識していただきたい。
 この12月と来春の消費税値上げの時、消費減退の可能性がある。その波を乗り切っていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 11:41

2013年10月14日

輸出で所得倍増

先週の11日(金)から、公益社団法人 日本フラワーデザイナー協会が主体となって大田市場で、第13回全国障害者スポーツ大会東京大会の完走者へ渡す花束プレゼントの作成を行った。
日本花き生産協会からピンポン菊と一輪カーネーションをご提供頂いたり、㈱クラシック様からはヒペリカムをご協賛頂いたりして、喜んでもらえる花束が出来上がった。
国内で使うからこの基準で良かったのだが、例年よりも気温が高かったので、保管している間にシミが出たり、虫が出てきたりする物もあった。
大田市場での花束加工ではどうにか花束にできたのだが、これが輸出となるとこうもいかなくなる。

2020年までに農業者の所得を2倍にする。安倍政権の公約に向け、輸出は所得を倍増させるための欠かせない手段である。
輸出ルートを開拓して、青果の業者も切花の業者も日本の素晴らしい農産物を輸出して、コンスタントに農家の所得を海外でも上げてもらう。これは我々流通業者が是非ともやらなければならないことだ。その時に痛感するのは、残念ながら日本は輸出を考えないで生産をしてきたから、ボトをはじめカビの病気あるいはアブラムシの防除などのレベルは、オランダよりも低い所にあるというのが事実だ。
今まで輸出をしたことがないのだから当然で、これから世界の貿易システムに合う病虫害の防除をしていけば良い。

オランダでは白サビ病が出たら、その畑一枚は焼却だ。日本では今まで100%国内で使われるから、使い方によっては白サビでも十分な場合がある。
しかし、今後の人口減を考えると、農産物は輸出が実現すれば、農家の所得の倍増が可能になる。
花では幸いなことにMPSの国際認証があり、基準もはっきりしている。これは国際食品規格委員会(コーデックス)が自分達の基準としているユーレップGAPを批准したものだ。
この基準に則ってやれば、生産から流通まで輸出はそんなに難しくなくできるのではないかと思う。国内生産者はもう一度、MPSをチェックしてもらいたい。

そして、卸売市場に植物検疫官に来てもらい、輸出検疫を行う。もし検疫が通過できなかったとしても市場の中なら代替品を持ってくることができる。検疫を通過できなかった物でも国内向けに回せる。こういうルートを主要都市の空港や港に近い市場ができれば良いと考えている。

是非とも花の生産地と主要都市の空港などに近い卸売市場は、花の輸出を考え、生産者の所得をさらに上げられるように計画を立てて頂きたいと強く思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年10月 7日

存続に必要なのはマーケティングとイノベーション

 先日、愛知県豊橋市のJAひまわり農協で講演する機会があった。そこで大田花きに勤めた後、お父様の後を継ぎスプレー菊を作っているある生産者と講演後に話す機会を持った。私が彼に「今、何坪までいった?まずは5千坪が目標だよ。」と言うと、彼は「1千5百坪までいきました。効率的に栽培できる適地を求めて頑張ります。」と言った。また、私から「渥美の人たちは同じ部会員数で倍の売上げを上げている。愛知みなみに負けないように良く学び、ひまわり農協も皆で頑張らなくてはね」と言った。
 二人で意気投合したのは、グローバリゼーションで外国産を敵視したり、阻止しようとしないこと。あらゆる事業や組織体で"マーケティング"と"イノベーション"がその事業の存続を決めているという2点だった。

 1990年の大阪での花の万博の後、10年間で数量・金額ともに鰻登り。また、その後の10年間でまず単価が落ち、次に切花も鉢物も苗物も国内生産は少なくなって、切花は国産を補うように輸入品が増えていった。輸入品の中でもマレーシアやコロンビアから輸入されたスプレー菊とカーネーションは品質も優れていたので、それらの消費量は増えた。
 しかし、花き全体で見ると市場ベースで20年前の取扱数量・金額となってしまった。「元の木阿弥じゃないか」と思う人がいるかもしれないが、見せびらかすための消費ではなく、真に楽しむ身の丈ほどの気持ちの消費になっていることは大変喜ばしいことだ。
 そこで考えなければならないことは、消費減の理由だ。ダリアやラナンキュラスは、「花×装飾」にイノベーションをもたらしたものを出している。持ちや花形の改善や新品種投入では、トルコギキョウやバラが特に頑張っている。もちろんあらゆる花が新品種投入などで頑張っているが、その努力は数々の努力の中で埋没してしまっている。
 マーケティングとイノベーションをおこすために、もう一度自分の事業が未来を本当に作っていく仕事をしているのか。少なくとも今の消費者に受け入れられる仕事をしているのか。お金を出してもほしいと言ってもらえるかチェックをし、自分の仕事を再定義する必要がある。

 産地や市場の在り様も変革の要望が社会から来ており、具体的にどのように変えていくかがポイントであると思う。まずはマーケティングだ。時代の潜在ニーズをよく聞き、それを具体的なサービスや品物に置き換えて供給しよう。沢山の潜在需要がある。産地で言えば、年間で安定した供給体制もその中の一つだ。

 来年の1、2月は寒いという。この時期にも採算を合わせ、安定して出荷をする。そうすれば、ファンはまた増えるのだ。自己都合ではなく、顧客視点でもう一度それぞれの事業を見直していこう。

投稿者 磯村信夫 : 16:45

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.