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2013年11月25日

再出発は人材の育成から

 足元の花き業界の景気は、10月11月と上半期と比べてパッとしない。流通業者が言うには、「値段が高いので売れない」というのだ。市場としては、生産量が増えていないのに、消費者の求めに応じて安く売るというのは、生産を更に少なくしてしまうことになる。
 なので、デフレをストップしてなぜこの価格なのかを消費者に説明したり、アレンジやデザインや鉢物の鉢そのものの色合いをより見栄えの良いものにしたりして、納得価格で提供するしかない。
 勤労感謝の日が終わり、ようやくクリスマスの装いをする時になった。クリスマス、お歳暮仕事の需要期のここで販売するためには、消費が二極化する中でこれ以上安くしないと売れないというのでは困る。そこで、小売店の人の力によってコストパフォーマンスを上げていくのだ。
 
 日本のあらゆる業界では、1991年のバブル経済の崩壊で新入社員の数を絞ってきた。その間花き業界は成長が続いたので、1999年まで優秀な人材を迎え入れることが出来た。
 種苗から生産、市場(卸、仲卸)、小売の各分野において、今では中堅になっている優秀な社員の人たちが他業界に比べて多数いる。
 しかし、21世紀に入ってここ10年、単価の下落が示すとおり、デフレでとにかく出血を止めて出さないことばかりに腐心をしてきた。そこで、今問題になっているのが、"花き業界を反転させよう"としても人の力がやや足りないということだ。特に第一線の若い人たちの知識とスキルが不足している。
 1960年以前に生まれた人と、それ以降に生まれた人たちとを違う日本人と分ける考え方がある。名前に関しては末尾に「~男」や「~子」と付く人は1960年以降少数になり、小学校の机も一人机になった。子供たちはお稽古で忙しく、親子で夕飯の時間が異なることも一般的になってきた。この傾向は1970年以降から更に強くなっているのだ。

 花は日本と西洋の文化、そして生活文化の上に消費がある。関心はCO2問題など環境問題の上にもある。こうなると、文化やら社会問題の知識と認識、そして花を育て、より美しく魅せる為の見せ方の技術が欠かせない。その上にマーケティングが身に付いていないと消費者の先に行くことは出来ない。こういった人材育成を読者の皆さんが属している組織でやってもらいたいということだ。"On the job training"(企業内で行われる教育訓練の手法の一つ)は当たり前、大切なことは社内で或いは花き部会でカリキュラムを作成し実行してもらいたい。

 先日、花キューピットの幹部の方と市場協会の執行役が意見交換をしたが、その際JFTD学園長が成人教育ならぬ、既に仕事に就かれている人を対象にした「出前授業」をするといった計画を聞き大変素晴らしいと思った。
 
 タダならいくらでも売れる。生産者のことを考えずに安ければいくらでも売れる。しかし、我々は生産者に適正な対価をお渡しし、花き生産をもっと活発にしてもらわなければならない。
 その為には、文化に根ざした販売をするための"知識"と"技術"が必要だ。それを勉強するのである。早速、皆さんの組織で取り組んでもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 12:04

2013年11月18日

消費拡大運動とまず黒字化から

 先週15日の金曜日、もうこれ以上生産を減らしてはならないと、2013年12月のシンビジューム、ポインセチア、シクラメンの需給見通し意見交換会が開催された。これを皮切りに、松・千両と菊類の意見交換会を開催する予定だ。
 急遽、日本花き卸売市場協会のテストランとして会議を行った。内容を市場協会会員と生産協会を始め、その品物を作っている生産者の人たちと市場を利用している買参人の人たちに伝え、適切な年末相場を出す指針にしてもらいたいと思っている。
 特にここ2・3年、需要期を見込んで荷がどんどん増えてくると、良くて相場は横ばい。場合によって相場は安くなり、減り始めてから本来の相場になる。ラスト1、ラスト2の市で、適正相場になってもピークの時に売上げが取れていないから生産者はたまらない。
 かつては、国の花き室で会議を開催していたが、今はない。現在では何をどのくらい作っているかどうかさっぱり分からなくなってしまったので、極端に言うと勘だけで動くことになっていた。例え多いとしても、昨年は天候異変で少なかっただけで、過去5年の平均値からしたら、たかだか2~3%増、しかし前年対比で2割増なので、3割安や半値になってしまいかねない。
 数字を持っていない、情報を持っていないということは、デフレを加速することに今までなっていたわけだ。"デフレストップ"それが市場協会のこの会議の目的で、どう実行性のあるものにして行くかどうか、実行しながらチェックして行きたいと思う。
 
 さて、この15日の会合の中で、更に気を引き締めなければならないと思ったことがある。鉢物のシンビジュームやシクラメンの生産者から、経営状況について"1割良い、1割プラマイの線上、8割赤字"という恐ろしいことを聞いたからだ。
 これでは、作ってくれと言うのは無理だ。花屋さんも大変厳しい経営状況だという。消費拡大運動と各事業体が損益分岐点を下げ生産性を上げる。この2つを真剣にやっていかなければならない。
 スーパーやホームセンターにおいても、積極的に販売して行かないと、花は生鮮品だから一日おいただけで価値が下がって枯れていってしまう。何もしないで売れていくようなものではないのである。
 
 なぜここで小売の現場のことを言うのかというと、来年4月の消費税上げでしっかりと増税分の転嫁は出来るのか、納品業者は量販店やショッピングセンター、結婚式場や葬儀場などの業者に消費税抜きの本体価格で、納品価格の交渉が出来るのか。
 すなわち、表示カルテル・転嫁カルテルを花き業界で結び、消費税が3%上がってかぶらないで済むかどうか。このままでは危ない。市場は国から指導があるので良いが、仲卸から小売店まで売上高経常利益率が3%以上出ている所などあまり聞かない。何も手立てをしないとすると経営は立ち行かなくなる。
 しかも買い控えは来年6月くらいまで起こる可能性がある。花き業界は20世紀の後半、良い時が続いた。しかし、21世紀に入り赤字のところがある。これでは、花き業界全体を盛り立てようとしても難しい。

 経営とは変化させること。利益は酸素だ。各自経営をしっかりして消費拡大運動や新商品開発に取り組む。これをやらなければならない。
 私の考えとしては、生産者や花屋さんに黒字化と生産拡大、販売面積拡大をしてもらい、もう一度20世紀末に記録した市場ベースの売上げで6千億円を目指してもらいたいと思っている。その可能性は十分にあるのでやって行く。

投稿者 磯村信夫 : 14:31

2013年11月11日

花持ち保証販売は、不満を少なくする販売方式

 先週の土曜日、アップル社の創立者であるスティーブ・ジョブズ氏の映画を観た。パソコンはずっとアップルで通してきたから、初期の頃、またマッキントッシュになってからもずっと愛好している。家では家内もマックを愛用している。スティーブ・ジョブズ氏は、徹底的に顧客志向で私たちの生活が豊かになる為にモノやコトをイノベーションしてきた。

 そして昨日、夕飯は鍋物にしようというので、生鮮品の品質が大森一だと思っているスーパーマーケットで買い物をした。
 しかし、そこで買ったうちの一つ、キノコのセットが、そこの店らしからぬ鮮度だと家内は言うのだ。これから家内は買い物をするとき、失望しないように疑いの目を持って吟味して買い物をするようになるだろう。
 
 以前、このコラムで書いた「不満要因と満足要因(※)」を思い起こした。
 昨日のキノコの鮮度は、「不満要因」だった。価格はともかく、そこの店と私たちとの人間関係が崩れたのだ。一方、アップル社は、iphoneにしてもipadにしても、自分の生活インフラを情報の面から支えてくれる。格好良いし、自分のライフスタイルもスマートになった気分だ。気分だけではなく、少し自分を律してスマートに生きることが出来る。これは、大きな満足だ。

 そういえば、大田花きの品質カイゼン室で、花持ち保証販売を随分前から行っている屋号「オランダ屋」(株式会社ブルーミスト)の蓑口社長にお話を聞かせてもらったことを思い出した。

「花持ち保証でお客さんが増えるのではありません。花持ち保証は不満を少なくさせるものです。ですから、皆が行えばお客さんは当然だと思うでしょう。しかし、我々はもっと沢山の人に花のある生活をして欲しいのです。そうなると、もう一度、満足してもらうことを考えなければなりません。」
 
 彼はそのようなことから、潜在需要を顕在化させる為、「試飾」を思いついたのだ。花持ち保証販売は、性善説の立場を取る人が多い日本人の不満を少なくすることを目的に展開されている販売方式であって、決して優先的に店を選んでもらおう、その花を選んでもらおうという方式ではないことを確認して実行してもらいたい。
 ただしスーパーマーケット等では、売れ残りが少なくなるという意味で、有効な販売方式であることを付け加えておく。


(※)フレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」
不満要因①給与 ②対人関係 ③作業条件
満足要因①達成すること ②承認されること ③仕事そのもの

投稿者 磯村信夫 : 11:31

2013年11月 4日

質が高いから顧客が増える

 「今年のハロウィーンはどうでしたか。」というと、読者の皆さんはカボチャやアレンジメントが売れたかどうか聞かれているのではと思うかもしれない。しかし、お孫さんや若い人が身近にいる人は、10月31日の仮装パーティーを早速イメージする。人によっては、素敵なお洋服を着て花束を持ったお嬢さんになった仮装や、デビルの仮装など、さまざまな格好をして"Trick or Treat"でキャンディを集めて楽しんだ。我が家も商売柄、カボチャを早速下げて、ポインセチアを飾り始めた。

 今月は、11月22日"いい夫婦の日"をキャンペーンしている。それは、アメリカも日本も勤労感謝の日、サンクスギビングデイまで、実りの秋を十二分に楽しんで生かしていただいていることの感謝をするのだ。それが終わってから冬になるので、クリスマスの飾り付けをする。日本では11月、さまざまな発表会で花束やアレンジメントの需要がある。七五三、いい夫婦の日と、紅葉の秋色の花以外にこういったシーンでの花々を提案しやっていかなければならないと思う。
 
 なぜ、今そんなに思いを強くするのかと言うと、日経ビジネスではないが、会社の寿命を30年として、ピークは18年、そして会社が生きながらえる、或いは活発に活動するには、創業者視点、顧客視点、共創の視点の3つが必要だとしている。
何やら、週末のたびに台風が来た今年の10月を思うと、"こんなことではいけない。もう一度創業者の思いに立ち返って基本を考えなければいけない"と花き業界全体が思っているのだ。創業者の視点で一番多かったのは何かと言うと、生産から流通まで「質」へのこだわりと探求だったように思う。

花そのものにしても、流通サービスにしても、生け花やアレンジメントの技にしてもそうだ。「質」を追求し顧客のことを想って価格を考える。今は楽して売る為に価格のことを考える業者も多数いる。これではいけない。まずは「質」だ。質を落とさない物やサービスをすることこそ、身体の栄養ではない、心の栄養の花き業界の姿勢なのである。

 今朝、東北方面に荷物を運んでいる運転手さんたちに東北楽天ゴールデンイーグルス優勝の印象を聞いた。オリンピックの招致もそうだったが、楽天イーグルスの勝利は東北の人々に勇気を与えてくれたようだ。  

 花き産地の復興もまだ思うように進まないが、そして漁業や海産物加工も復興途中だが、東北の人は何かやってくれそうな気がする。期待をしている。

投稿者 磯村信夫 : 11:30

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