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2013年12月 9日

「踏ん張りどころの専門店」

 8日の日曜日、首都圏に花を供給する東京の中央市場で松市が行われた。小さな首都圏と言われている皇居から50キロの千葉・埼玉・東京・神奈川には、日本の約4分の1の人たちが住んでいる。「東京は良いですね。一極集中で景気も良いし」とおっしゃる人がいるが、4人に一人が本当に景気が良ければ、日本の経済はもっと良くなるはずだ。
 例で、団塊の世代で言えば、長男は地元に残ったが、その弟たちは首都圏に出てきたわけで高齢化は倍して進んでいると言っても良い。しかし、人口が密集しているのは事実で、徒歩と自転車で、生鮮食料品・花きを買いに行く。花屋さんは、しっかりと商売になるエリアなのである。
 
 私は大森に住んでいるが、いつも利用しているCGCグループの食料品スーパーが花を販売するようになったのは今年からだ。徒歩で5分くらいのところに3つのスーパーがあるが、いずれも花を販売している。花屋さんも花の専門店として良い品揃えをしているので、しっかりと営業していると思う。
 このような商売の環境の中で、8日松市が行われたわけだが、私が見立てをしたところ、思っていた以上に量販店の集客力が強くなっているようだ。買参人である花の専門店の買う力が弱かったのだ。物日の店頭において、花が売れる数量は専門店では通常の2~3倍、量販店では7~10倍くらいである。花屋さんたちは頑張っているが、売れる時期になっても売り場面積をこれ以上増やすことは出来ないし、人手も沢山増やすというわけにはいかない。スーパーなどはセルフが多く、売れるときには面積を拡大することが出来るので商品を多く配置できる。なので、通常の10倍の売上げになっても不思議ではないのだ。
 
 花き市場の私たちは、お得意先であるスーパーへの納品業者である花束加工業者の優勝劣敗が今年決着したと見ている。素晴らしい花束加工をする業者がどんどんシェアを広げ、そういった勝ち組の業者は量販店からの申し出を断っているところもある。このことは分かっていた。市場での取引の内容を見ると、予約相対(注文品)やらセリ前取引も、以前に比べ多くなってきているのだ。こういう状況の中で、昨日松市のセリが行われた。消費者の気持ちは前向きだし、専門店の人たちは高級な花を扱う業者として、晴れやかな日であるお正月の花は今まで以上に頑張ってもらいたいし、彼らもやる気であろうと思う。なので、大田花きとしては、品質の素晴らしい松やブランド産地の松はしっかりセリで購入していただこうと準備をした。
 
 しかし、しかしである。セリの結果からして量が多かったということであった。素晴らしい品質のものも量が多いと食べ切れなかったのである。一年で一回の松市、良いものが安くては生産者に申し訳ない。大田花きとしては、今後とも専門店の花屋さんに期待をする。しかし、量販店の花売場は優秀な花束加工業者などの納品によって、ここまで消費者に当てにされるようになったのだ。"量販店の花売場はここまでシェアを伸ばしていたのか"と改めて思い知った松市であった。
 
 花の小売店は、新しい花との生活を提案する専門店。ワンストップショッピングで良いもの安くの量販店・スーパーマーケット。生活の場所ごとにそこに似合う花を販売するホームセンター。花の買い物時間削減のカタログ販売・インターネット販売。これらの4つが消費者にとって必要であるが、近年スーパーが激しい業態競争とともに着実に花売場を運営されているようである。
 人口密度は高いのだから、首都圏の花屋さんは絶えず新しい提案をし、消費を引っ張る花屋さんでいてほしい。昨日の松市を見ていて、スーパーと同じ若松だけでなく、もっと根引き松や他の松など、自分のデザインが活かせるものを予算内で消費者に提供していただきたいと思った次第である。
 販売額や利益は、景気と業界と各社の開発力の三重の要素に依存する。専門店と一緒になって、伝統文化に則った新しい花のあるお正月を提案しなければならないと強く感じた松市であった。

投稿者 磯村信夫 : 2013年12月 9日 15:27

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