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2014年1月27日

単なる物を販売するだけではいけない

大森の池上通りに地元の食品スーパーがあり、郵便局のすぐそばにご年配の人達を主要のお客様とした百貨店がある。そして、その隣にコンビニがあったが、目の前に「マイバスケット」ができたため、コンビニが立ち行かなくなったのだろう。閉店した。その場所に二つ目の「マイバスケット」が入った。

大森の駅から10分以内の所には、たくさんの食品スーパーとGMS、駅には複合店などがある。こんなにいっぱいあって、皆一所懸命に物を売ろうとしている。しかし、消費者である我々は物が溢れれば溢れる程、何かが不足していると感じ、満ち足りた気持ちになれないでいる。プライベートブランドと言ったって、価格遡及や利益遡及ばかりして、安さや効率、そしてシェア争いだけでは何か違うように思う。

そう感じていた時、家内が品川駅そばの花の専門店で花を買ってきた。そこのご主人は販売する花にこだわりがあると言う。珍しいカーネーションはご主人が大好きなカーネーションで、特別な物だそうだ。生産者のこともよく知っており聞いてきた。スプレーのストックも、何かそこにこのような産地や産地のこだわりなどがあり、もちろんお店のこだわりも聞いてきた。そして、一緒に飾ってあるユリもこだわりのユリで、それも家内は何か聞いてきたことを言っていた。

2週間近くなるというのに、買ってきた時から綺麗だったが、それがますます玄関で綺麗に咲いている。満開になっている今の美の調和も素晴らしく、満足に浸っている。この満足は、その品川のお花屋さんのこだわり、そして、満開になった時まで考えた取り合わせや造形のプロとしての腕、さらに、全ての蕾まで咲かせるだけのそれぞれの生産者のこだわった生産技術、想い。そういうようなものを一緒に家内は入手してきた。花の一本一本に物語があるのだ。

B to Bの卸売市場と仕入れるお花屋さんとの間ではブランドや序列があるかもしれないが、素人の私の家内にはそんなことはわからない。それをそのお花屋さんはしっかり教えてくれて、良い花を家内に持たせてくれた。この対極に、ただ単に売らんかなとしている販売方法や、その店が取り扱っているただ単の物という商品がある。価格志向と効率化などは個人の中にある価格の二極化指向で必要な販売方法であることはわかる。また、プライベートブランドを悪いとは言わないが、匿名化し、物語が何も感じられない。ここに日頃毎日生きている我々の不安や満足しない何かがあるのではないか。

不満要因と満足要因は違う。満足要因は達成感や認められることだ。小売店は、確かな利益は酸素のようなもので欠かせないが、花と一緒に過去と未来の物語を売っていくことが必要なのではないだろうか。

卸売市場からすると、共撰共販の場合にも生産者の個人名を箱に書く。完全共撰の場合には、完全共撰などと書かず、共撰所で選別した旨のメッセージを入れる。買ってくれたお花屋さんへ伝えるため、写真やメッセージを箱の中へ入れておくなどの繋がりや物語を彷彿とさせるメッセージ、情報を産地に入れてもらうことが必要だ。これは、買った人に空虚感や何か不安感を持たせないための積極的な措置である。こうして、お店は繁盛していく。

投稿者 磯村信夫 : 15:51

2014年1月20日

もう後へは引けない

 文庫本になった池井戸潤氏の「下町ロケット」を読み終えた。舞台は大田区でも大森の隣町、上池台だ。私は生まれも育ちも大森で、明治の大老たちが住んでいたお屋敷町の大森・山王と優れた町工場が多い海側の下町の両方に友達がいるが、町工場の社長をしている友人が言っているのとほぼ同じようなことを主人公の佃社長は言っていて、時間を忘れて読みふけった。
 佃社長のように格好良い社長は私の友達にはいないが、中小企業の悲哀をなめている人たちも多い。だが皆、寅さんに出てくるタコ社長の会社と同じように楽天性を持ち合わせている。小さい会社ならば、山椒は小粒でもピリリと辛くないとやっていけない。技術もそうだが、人格もそういう輩が多い。
 中小零細企業というのは、農家の方々と接していてもそうだが、本当に素晴らしい人が多い。とある町工場の友人から言われ、私も仁徳を積む為、バーでは必ずジントニックを飲む。

 さて、仕事の話をする。ここ2ヶ月で、西南暖地と言われる産地に行った経験からだ。
 東日本大震災が起きた2011年3月、昨年の2013年3月。
3年間のうち、2回3月市況は暴落し、生産者はお金が取れなかった。なので、例えば切花チューリップ。4月からは商品の魅力が少なくなってくる。新潟、富山、埼玉ともに作付けは本当に少ない。チューリップほど種苗費が高くないものでも、暮れから3月までをメインにしている品目を作っている産地は作付けそのものが少ない。
 この1月、なぜ出荷量がこんなに少ないのかと産地に問うと、「寒さが厳しく、油代が高くて」と言うが、それよりも3年間のうち、2回も収入が得られなかったので、作付けそのものが少ないのだ。だが、確かに他の花よりも少し低温でも収穫できるスイートピーはそれなりに出回っている。
 また、沖縄県のように主要2団体が農家の赤字救済の為、低利融資や国や県の助成金を使ったりして限られた範囲だが、花き生産農家に何らかの支援策をとっている所は、生産をやめないでくれていて頑張って今年も作付けている所もある。
 しかし、これは例外といって良い。関東の近辺であれば、南房総や伊豆を見たら良い。我々花き市場はエールを送っているが、過去3年のうち、2年間も丸っきり取れなかったから、生産を減らしたことで産地を責めるわけにはいかない。
 
 今現在、寒くて需要も減退しているが、それよりも入荷が少ない状況が4月の入学式の頃まで続く見込みだ。今出荷をしている生産者の荷を適切に販売し、お花屋さんや花束加工業者を通じてこんなに消費者に喜んでもらっていることを伝えていきたい。
 今年は消費税が上がるので楽観視は出来ないが、悲観的になり過ぎる必要もない。何せ節分から特にバレンタインから母の日までは花と緑の商品価値が最も高い時期だ。お花屋さんたちに頑張って売ってもらって生産者にこの冬は花を作っていて良かったと言ってもらえるよう、花き市場は頑張って行く。

投稿者 磯村信夫 : 16:24

2014年1月13日

2つのインパクト

 今月末の旧正月で需要が高まっているのであろう。アジア諸国からのラン、菊、カーネーション、バラ、ユリ、葉物の輸入品が少なくなってきた。今年は、日本からもアジア諸国へ向けて輸出が洋ラン鉢、切花とも一定量あるだろうと期待する。
 
 さて、本年日本経済に及ぼす大きな影響は、消費税アップとTPP問題である。消費税アップは、少子高齢化で今まで日本を支えてきてくれた老人に対して社会がお世話するのは、当たり前だと思われるので税負担は止むなしとするところだ。これからも税率が上がっていくことが想定されるので、業者はしっかりと転嫁出来るように、また表示方式は外税方式にして行くべきだ。来年度の第1四半期は消費が鈍ることが想定されているが、品目も期間も日本経済に与える影響は限定的なものになると言って良い。
 
 TPP問題は、日本の国民一人当たりの年間所得は4万ドル以上であるので、安い人件費の国で作られた品物と真正面からぶつかってくる。そういう状況で競争するとなると、少子高齢化の中で、IT等を使いシステム化、ロボット化する等、合理化・省力化が欠かせない。また、普通の産業でも新しいやり方をする、新しい物を作る。或いは文化的なもの、芸術文化を創っていく。そして、海外から観光客に来てもらうべく、日本をフランス並の観光立国にする。
 
 せっかく高齢化で最先端を走っているので、四苦(生・老・病・死)に関わる産業を更に深め拡大し、そのソフトを輸出する。また、優秀な人を招くことが必要となる。言いたいことは、今までの内向き、後ろ向き、下向きではいけないということだ。従来の無駄なこと、不合理なことや日本人の価値観でフェアではないことを改善し、国として生きていくということだ。
 
 人に言うことを聞かせる為には、武力や軍事力、経済力、人徳や文化の力、この3つを兼ね備えていかないと人として国として未来を確実なものには出来ない。花き産業も同様で、国や地方自治体の援助がなくても他産業に打ち勝っていくだけの強い生産力と販売力、経済基盤の力、そして文化の力が必要だ。それらの力をつけていくのが今年だ。各自、実行力、資金、人徳を心掛けて行こうではないか。

投稿者 磯村信夫 : 15:47

2014年1月 6日

人の若き頃の決心したこと

 2014年、第2週の今週から、平常の生産・消費活動となる。マンションのゴミ置き場で、宅配便により届けられた空ダンボールが目についたが、年末は最後まで、御節料理を届けるなど宅配業者が活躍していた。

 時間指定ができる宅配業者も時間に間に合わず、同系統の輸送会社が産地から荷を運んでくるのも延着となった。宅配便を事業にしているところは、これからもeコマースで大忙しとなり、花のように横積み厳禁だとか、水が入っているだとかいうものは、扱ってもらうのに一苦労する時代となっている。JFTDは再度花屋さんネットワークの業務に力を入れるときが来ており、再度ビジネスチャンスが来ていると私は見ている。

 12月の小売店の業績を聞いてみても経営者が若いところは、伸びている店が多い。中には、"父親の代の5倍の事業規模まで持って行く"と、頑張っている若き経営者もいる。もちろん若くても花の商売を甘く見て、荷を残しているところもある。概して言えば、団塊の世代以上の年齢の経営者は、縮小均衡だ。

 年末から正月にかけてつくづく思うことは、志のことだ。ファーストリテイリングの柳井氏や、ソフトバンクの孫氏とは比べものにならないかもしれないが、業績を伸ばしている小売店に共通するのは、"辛苦に遭逢するは一経に起こる"ということだ。色々と苦労するのは若い頃に立てた志によって定まった運命である。安倍総理もそうであろう。成功とはいうが、新たに苦労を買って出ているだけのことだ。
 その為には、特に若い力がどうしても必要だ。年老いても若き心が大切だ。こういう人たちは、花き業界に多くいる。この人たちと具体的に組んでサプライチェーンを作り、仕事をして行くことが大切だ。このことを正月に改めて思い、具体的に実行するプランをこれから練って行く。

投稿者 磯村信夫 : 10:42

2014年1月 3日

いつも気になる売場作りのお手伝いを

 明けましておめでとうございます。
 本年は、首都圏の花売場を「いつも気になる花売場」でいて欲しいと思い、それに向けて魅力的な素材流通だけでなく、小売店への支援をしていきたいと考えております。
 
 首都圏の花き市場として大田花きではいくつかの取引方のうち、在宅セリでの成約の伸びが最も著しくなっています。
花の商売の難しさは、工業製品ではないので、品質の見立てをするにはプロの目が必要だという点であります。それゆえ、花束にした時のデザイン力だけではなく、素材そのものの見極め方が正しいと、例え夫婦二人で花屋さんをしても十二分に繁盛店になって行ける商売です。これは、花の仲卸や花束加工業者、アレンジャーにおいても同様で、目利きである必要があるのです。
 情報売りのセリ前取引や在宅セリで懸念されるのは、プロの目利きの人がそれらを利用するのなら良いのですが、成長過程の若い人にはセリ前取引や在宅セリは弱点となるのです。これら情報取引は分かっていることしか行わない保守性があるからです。
 目利きは、日本の花き業界で生きていく為の必須条件であるとすれば、情報売りや在宅セリを利用する人は、三現主義【現物、現場、現実】を週に一回は体験しておく必要があります。栽培上の気象条件は、近年振れ幅が大きくなっています。
 お客様の手元では常温で管理され、鑑賞されるわけですから、いくら鮮度保持をし、コールドチェーンが進んでるといっても、その植物体そのものの持つ生命力を見極めないとお客様を失望させることになるのです。

 私共が売場を活性化させる為には、お客様と接する小売店の意見を良く聞き、私共から産地の生産状況や新品種状況を伝え、共に勉強し合って、プロの目が品揃えしたものを陳列し、いつも新しく目が離せない売り場にしたいと思っております。
 これが地元、首都圏の花き市場として、大田花きが仲卸と一緒に行うべき本年一番大きな仕事です。
 本年も宜しくお願いいたします。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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