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2014年1月20日

もう後へは引けない

 文庫本になった池井戸潤氏の「下町ロケット」を読み終えた。舞台は大田区でも大森の隣町、上池台だ。私は生まれも育ちも大森で、明治の大老たちが住んでいたお屋敷町の大森・山王と優れた町工場が多い海側の下町の両方に友達がいるが、町工場の社長をしている友人が言っているのとほぼ同じようなことを主人公の佃社長は言っていて、時間を忘れて読みふけった。
 佃社長のように格好良い社長は私の友達にはいないが、中小企業の悲哀をなめている人たちも多い。だが皆、寅さんに出てくるタコ社長の会社と同じように楽天性を持ち合わせている。小さい会社ならば、山椒は小粒でもピリリと辛くないとやっていけない。技術もそうだが、人格もそういう輩が多い。
 中小零細企業というのは、農家の方々と接していてもそうだが、本当に素晴らしい人が多い。とある町工場の友人から言われ、私も仁徳を積む為、バーでは必ずジントニックを飲む。

 さて、仕事の話をする。ここ2ヶ月で、西南暖地と言われる産地に行った経験からだ。
 東日本大震災が起きた2011年3月、昨年の2013年3月。
3年間のうち、2回3月市況は暴落し、生産者はお金が取れなかった。なので、例えば切花チューリップ。4月からは商品の魅力が少なくなってくる。新潟、富山、埼玉ともに作付けは本当に少ない。チューリップほど種苗費が高くないものでも、暮れから3月までをメインにしている品目を作っている産地は作付けそのものが少ない。
 この1月、なぜ出荷量がこんなに少ないのかと産地に問うと、「寒さが厳しく、油代が高くて」と言うが、それよりも3年間のうち、2回も収入が得られなかったので、作付けそのものが少ないのだ。だが、確かに他の花よりも少し低温でも収穫できるスイートピーはそれなりに出回っている。
 また、沖縄県のように主要2団体が農家の赤字救済の為、低利融資や国や県の助成金を使ったりして限られた範囲だが、花き生産農家に何らかの支援策をとっている所は、生産をやめないでくれていて頑張って今年も作付けている所もある。
 しかし、これは例外といって良い。関東の近辺であれば、南房総や伊豆を見たら良い。我々花き市場はエールを送っているが、過去3年のうち、2年間も丸っきり取れなかったから、生産を減らしたことで産地を責めるわけにはいかない。
 
 今現在、寒くて需要も減退しているが、それよりも入荷が少ない状況が4月の入学式の頃まで続く見込みだ。今出荷をしている生産者の荷を適切に販売し、お花屋さんや花束加工業者を通じてこんなに消費者に喜んでもらっていることを伝えていきたい。
 今年は消費税が上がるので楽観視は出来ないが、悲観的になり過ぎる必要もない。何せ節分から特にバレンタインから母の日までは花と緑の商品価値が最も高い時期だ。お花屋さんたちに頑張って売ってもらって生産者にこの冬は花を作っていて良かったと言ってもらえるよう、花き市場は頑張って行く。

投稿者 磯村信夫 : 2014年1月20日 16:24

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