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2014年4月28日

農業改革を花のサイドから見る

 TPP交渉が暗礁に乗り上げ、継続案件にはなっているものの、日本とアメリカ双方の意見の隔たりは大きいものがある。日本の場合は、既に農産物の関税など、自民党が昨年の選挙で約束した線ギリギリまで譲歩しているが、アメリカ側はロビー活動が大変強く、現政権が一定の譲歩をし得る権限を有していないので、交渉は続けるが、今後もなかなか難しい問題となる。

 ヨーロッパでは、関税を上げ、一定水準上げたままにしておき、消費者に高いものを購入してもらい、生産者の所得を確保する政策から、関税を順次下げていき、消費者に良くて安いものを購入できるようにするが、生産者には所得補償をする方式を取っている。税金を払う国民と農業を行う生産者双方の気持ちとメリットを考慮する必要がある。

 ここで触れておきたいのは、なぜアメリカがこのように日本から見ると硬直的になっているかである。イギリスでマグナ・カルタが行われ、人民主権の民主選挙で民意が政治に反映されるようになった。
 しかし、新しい問題が起きたり、状況が変わったりすると、国会で意見を述べることができるのは議員個人となる。それでは民意が必ずしも反映されるとは限らないと、民意を反映させるロビー活動を正式な手段として認めることをマグナ・カルタでうたっている。このようにして、ベトナム戦争でアメリカと共に戦った韓国は、戦後移民をアメリカ政府に認められ、カリフォルニア州など一部の場所に纏まって住んでいるが、そういった市などで韓国系アメリカ人によって、ロビー活動が行われ、日本人からすると反日的な像が建てられていることがある。  
 このように韓国や中国は、歴史問題をアメリカ国内のロビー活動で積極的にしかも巧妙に行っていることは、昨今の報道で読者の皆さんもご存じの通りである。アメリカの農業や自動車業界の強烈なロビー活動の中でのTPPの折衝であるが、花き卸売業者として現在起きている農業改革について述べると、もう既に福田赳夫元総理の時より輸入関税0の花きは、生産者の力は輸入品に負けないだけ大変強かった。今はエネルギーコストが上がって大変だが、まだ強い。

 しかし、花き業界全体のムードは、単価が下がったここ15年、内向き・下向き・後ろ向きになり、価格の下落率を少しでも少なくするために多品種、小ロット生産販売になって、生産サイドなら、売れ筋の品種や花に集中すべきであった。今から思うと、改善ではなく改悪の方向に来てしまったのは、結局、業者間で互いのせいにして、消費者に購入してもらう立場の者同士として連帯感が少なかったためである。
 それを通称「2014年フラワー振興法」を議員立法で国会に通していただき、改悪したり手つかずの問題事項を業界を挙げて国ベース、又は県ベースで改善していく。貿易収支が示す通り、今産油国にお金が回っている。国内で循環しないので、巡り巡ってというわけには行かない。そうなると、合理化しかない。暖房やヒートポンプをどのように使い、温度調節をするか。除湿をするか。
 運賃が高騰する中、どのように売上高運賃比率を下げ、手取りを多くするか。花き産地の中のハブ機能、積載効率の良い統一された段ボールや容器の使用など、思い切ってロジスティックまで管理して行かなければならない。

 農業改革において、花の生産流通が更に国内外の消費者に安定して購入してもらえるような生産・流通を各所に繋げて行く。急な変化を避けつつ、目に見える成果を出しながら一歩一歩上がって行く。それがTPPをきっかけに議論されている農業改革における花版の方向性である。

 大田花きで働いたのち、農家である実家へ戻り、現在スプレー菊を作っている生産者に、"企業が農業をやるよりも、農家が企業家精神を活かし農場を経営して行くことこそ、真の農業改革である"と伝え、まずは5000坪を目指して取り組むよう目標を共有している。確実に彼は実行してくれている。花の農業改革は地域のJAや普及所、卸売市場を友として確実に行われていく。

    投稿者 磯村信夫 : 16:44

    2014年4月21日

    ニューノーマル消費

     今日の日本経済新聞で、4月から消費税が8%に上がった後、今迄通りに支出する人は世論調査で全体の3分の2近くいることを知ってほっとしているが、花の商いは過去5年間の中で単価水準が下から数えた方が早いくらいのところで取引量・金額ともに低迷している。これからゴールデンウィーク、母の日とガーデニングやギフト用の花を中心に、活気を取り戻したいところだ。

     近年、燃費の良い車が多くなり、ガソリンを入れに行く回数が減ったが、先日ガソリンスタンドに行った際にスタンドの状況はどうか聞いてみると、確かに経営は大変そうだが、新たにレンタカー事業を行い健全経営しているという。ガソリンスタンドのレンタカー事業は、"ニューノーマル消費"に応えたものだ。

     ニューノーマル消費とは、2011年にニューヨークのウォール街で、マネー資本主義に対してデモがあったことを記憶されている方も多いと思うが、近年の環境変化は新たなお金に換えられない価値観や消費行動を生み出した。それは、2012年頃から特に目立つようになってきた。前年に日本は3.11があったのではっきりと分かる。持続可能なライフスタイルは、地方に新しい雇用を生み出している。勿論、観光業の復活も地方の求人においては大きな要因だが、地産地消的な動きは今日の日経新聞の有効求人倍率の記事にも表れている。日本の各地で頑張っているのだ。

     園芸作物には、小売りの現場で(生産者のことや原産地がわかる)"顔の見える表記"がされており、安全安心だけでなく○○県の繋がりの消費で国産品を選んで購入する人が多い。これを花束やカット野菜などにもしっかりと表記してもらいたい。特に切り花バラに対しては、咲き切るかどうか品定めをしたいので、是非とも原産地表示をお願いしたい。ヨーロッパでは、カーボンフットプリントや、この花を買うと現地の子供たちの給食費として寄付されます等のフェアートレードのメッセージを添えている。別の角度からのニューノーマル消費だ。

     大田市場でも自動販売機の収入は場内花壇の植栽費として、使っていることを自販機に明示している。このような社会が良くなることを考えた投資・消費スタイルが、新しい良識ある消費スタイルとして、人々の中に定着してきている。私の住んでいる大森の町がそうだ。ご家族で頑張っている飲食店が仮に値段が少し高くても、応援したいと思ってそういうお店に行くことが多い。地元、家族の繋がり、地域がより良くなるように。
     そうなると、日本全国で江戸期の藩の時代に培われた伝統や花文化が継承出来たり、場合によっては復活できる可能性がある。農家と小売店が地元の市場と一緒になって、一緒に農業の6次産業化をしていくことになる。一方で、グローバルエコノミーの中で生きていく。効率性と利便性の追求だ。生産者の立場でも消費者の立場でも、である。
     
     そしてもう一方に、ニューノーマルの価値観で生産し、消費する。この2つの使い分けのポイントだが、幸せが一つの基準となるので、売上げやら利益では推し量れないものとなる。ただ、食べて行かなくてはならないので、収支合わせが大変だ。そこだけがポイントとなるのでしっかりと行っていくことが大切だ。
    仕事の立場にたった時、得意な手立てが2つのうちどちらかに偏ることはあるだろうが、大きな企業であろうがニューノーマル消費を思い、小さな企業であれば、長期的且つ効率的に生き残れる方法でニューノーマル消費に向けていくことが必要だ。

     世界の中でも地方の文化に独特のものがあるのが日本だ。外国の方が来ると日本各所の多様な文化に驚く。この多様な文化のそれぞれの発展の時が来ていると言って良い。よく生産者と話すと、農家が生きて行く上でそこまでお金はかからないという。すなわち、ニューノーマル消費を行っているのだ。もう一度、自分の地域の素晴らしさを再確認し、それを売り物に農業、仕事、ボランティアまで含め、働く場を地元地域の維持発展のために作ってもらいたい。これが、差別のない花から学んだことである。

    投稿者 磯村信夫 : 12:51

    2014年4月14日

    踏みとどまる専門店たち

     消費税率が上がって2週間が経過し、ようやく落ち着いてきた。3月末から4月に入り、消費税が上がっても、来店客数を落とさない為にも思い切って店の衣替えをした所が多かった。桜の開花も思いのほか早かったので、その動きを加速した。

     4月に入り、市場ではストックやスナップ、スイートピー等、例年であれば4月の中旬以降に展開されるような安値相場となり、生産者の方々は随分と面を食らっただろう。思い切った季節の先取りの為だ。あれから2週間、ようやく小売店も消費者も落ち着きを見せ、通常に戻ってきた。
     そんな中で花キューピット主催の「フラワードリーム2014」が東京ビッグサイトにて12日(土)~13日(日)開催された。こんなに足の便の良い都心に近いところで、花き業界の一社団法人が開催したわけだから、さすがJFTDというところである。内容も「新しい花との生活を提案する」専門店として、また「日本の花き文化を体現する」専門店として、まさに面目躍如であった。

     花でもボーダーレスとまでは行かないが、競争が激化している。全国のホームセンターは、卸と直接取引をしたり、卸プラス仲卸で取引をしている。又、スーパーマーケットの花の70%は仲卸が花束加工をし納品したり、直接インショップで小売店として入店したりしている。現在の仲卸は第1世代で小売店出身者が多い為、仲卸が一番小売の実態を知っていると思われる。

     先月の3月末に、2年前の2012年暦年の都内5つの中央卸売市場花き部の粗利幅について掲載記事を見たが、大田市場の仲卸はほとんど花束加工を行っていないので、5市場の中で利益幅が最も低かった。他市場の仲卸は、かなり川下に踏み込んだ仕事をしているようだ。こうなると、小売の分野で専門店とぶつかることになる。

     消費者にとって下記の4つの小売の業態が必要である。①新しい花との生活提案をしてくれる専門店。②買い物時間削減のインターネット花店やカタログ販売。③花の買い物コスト削減の量販店。④生活空間の各所に似合う花の調達場所としてのホームセンター。  
    花のことを良く知る仲卸が量販店に納品し、花を販売するようになると、勉強していない花店では専門店でのポジションを確保し続けることが出来なくなるということだ。

     今後、専門店としての勉強をどのようにして行くのか、価格競争でないところに土俵を求める動きがフラワードリームを見て、益々必要であると感じた次第である。花キューピットのメンバーは勉強の機会があるので、幸せだ。

    投稿者 磯村信夫 : 17:26

    2014年4月 7日

    難しくなった花の宅配便と花き輸送

     イーコマースが増えて、大型家電販売店やセブン&アイホールディングスなど、オムニチャネルに力を入れている。今後とも益々物流と電子決済の役割が重要になっていくことだろう。

     羽田から成田までの間に、ロジスティックセンターが多く建っているが、それ故、中で働く人を集めるのも大変で、コストが上がってきた。運転手も人手不足。
     花のように、横に倒せないものや規格外の大きさのものは、容積塞ぎで手間がかかる為、運んで貰えれば良い方で、運賃はこの夏前から更に高くなるのではないかと言われている。専用物流であればまだしも、一般貨物と混載する場合、横に倒したら水が出てくるなど、言語道断。バケツ輸送や段ボールの中に、トレイを置くだけで倒したら水が出るような輸送は、台車輸送をしない限り、専用輸送でも今後別運賃を払わなければ難しくなるのではないかと思われる。

     飛行機の場合、LCCが増えたり、燃費効率から機材が小さくなり、航空貨物の容量が減ってきたので、トラック輸送に頼らざるを得ない。トラック輸送で、飛行機より一日遅れで届けるにしてもチャーター便となってしまう。こうなると、満載ならともかく、少ない荷物は割高だ。
     
     かつては、国内で物を作って日本から輸出をしていた。グローカルの時代となり、そこの国で消費するものはそこの国で作ることが企業の正しい生き方となる。そうなると、地方の県庁所在地でも、大工場が少なくなって地域のGDPは減ってしまった。
     もう以前よりも高く買えなくなっているところに運賃の上昇が起こるとなると、個別の小売店や、仲卸が荷の集まる消費地から別々に買い付け集荷を起こすと言っても、その分の負担金を消費者に負って貰うわけにはいかない。なので、運賃の面から、地方は荷揃えをする為にもグループ化するか、合併をしなければならない。

     生産、出荷サイドの農協の広域合併は更に進んでいる。全農の財務体質与信の基準に合格する卸、仲卸や取引対象企業はそうは多くない。大型JAは出荷先を絞らざるを得ない。
     そして、運転手は少なくなり、運賃は上がっていく。温度設定が出来る車やパワーゲートが付いた車への買い替え要求など、鮮度保持、物流効率化に対する要望はますます高くなって、車代は上がっている。運送店として、確実に利益を確保する為には、復路にも荷が確保出来るところでなければ運べない。高速道路のETC特割も少なくなってきている。

     こういう状況下になると、ついこの間まで自由に宅配業者が使えて、時間指定やら集金もしてもらえた。個数が少ないのなら、規格を合わせてしっかり荷作りをすれば、日本中どこでも飛行機で送れた。今から考えると、日本の花の輸送はBtoBにしても、BtoCにしても、荷主にとって我儘のきいた理想的な配送システムであった。
     これが、ヨーロッパと同じようになってきた。花の場合には、立箱や規格外の大きさのものがあるとなると、これからどうすれば良いのか分からなくなる。

     まずは、独自の物流網を持っているところが力を持つ。花のプレゼントならJFTDであろう。2014年度はまったく違うことを前提に、花き業界各自の物流網をもう一度考えておく必要がある。
     我々花き業界はBtoBとして、産地のハブ・農協の配送センター、消費地のハブ・卸売市場のインフラを今後とも発展させて行く。

    投稿者 磯村信夫 : 16:15

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