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2014年8月25日

この夏、学んだ事二つ

 藤島先生を囲んで、水産・青果・花の市場業者が「市場流通ビジョンを考える会」をつくっている。この夏の研究会では、消費税と軽減税率について、また、出荷市場の集約をし、農家所得の向上を目指さざるを得ない産地の現状と今後について研究し、卸売市場は今後どうあるべきかを考えた。

 秋が近くなり、マスメディアでも12月に安倍総理が決断する、消費税を10%にするか、このまま据え置きかの判断の是非が取り上げられているが、国の財政を預かる財務省としては、社会保障費の伸びに対して税収が追い付いていないこともあり、政治判断としながらも、また、国債の市場相場を勘案しながらも、上げるべきだとの判断を当然だが示した。しかし、BtoB企業の消費税転嫁は90%の企業でなされているが、サービス業と小売業においては70%近い企業が転嫁されていないという事実がある。青果・水産を扱っているのは、既に小売業でも、パパママストア以外のスーパーマーケット等がほとんどで消費税転嫁が進んだが、花は専門店の比率が多く、とりわけ結婚式場や葬儀場で飾る花はリベート方式をとっている所が多いので、税率UPの転嫁が進んでいなかった。また、現在団塊世代が65歳以上から年金が支給されることから、60歳以降もその企業で働くことが出来るが、所得が下がるのが日本の慣行となっており、アメリカのように定年の年齢を引き上げるか、あるいは無くさないと実質賃金は下がってくる。これが4月以降、花の低迷相場を招いた。青果・水産の相場があまり下がらず済んだのは、生活必需品であったことと、小売業者の消費税UPの転嫁がスムーズだった為だ。花の場合、2015年10月にこのまま消費税が10%になるとすると、業績が悪化することが予想される。

 EU28か国中13か国では、たとえ消費税が20%近くても、生鮮食料品・花きは7、8%の軽減税率適用品目になっている。そして、その方式は「送り状方式」と言って、送り状(インボイス)に自分の登録番号、免税業者であるか、課税業者であるかが分かる国から指定される会社番号が記載され、消費税を〇〇%支払うまたは請求する旨等を書いて取引先に送付する。ちょっとややこしいように思われるかもしれないが、軽減税率を適用しているヨーロッパ等では普通に行われていることなので、慣れが問題を解決するだろう。しかし、生のサンマは軽減税率が適用されるが、焼いたサンマは適用されないとなると、他の物についてもどこをどのように線引きするかが問題である。この、よく言われる線引き問題については、学識経験者の意見を聞くが、基本的には法律だから国会が決定する事になる。

 紙面の都合上、市場集約については簡単に記すが、生産者減と生産費の高騰、運送費高及び運転手不足から、出荷団体としては取らざるを得ない方策であり、私ども卸売市場からすると、どうネットワーク化をするか、どのように合併や業務提携をするかでこれに対応する以外にないと思われる。その為にももう一度、各市場が持っている機能や得意技、理念等を再確認する必要があると感じた。

投稿者 磯村信夫 : 14:00

2014年8月18日

ホームユース主体の鍵は小売店社員の質

 8月18日、今日も荷が少ない状態が続いている。生産者もお盆休みをしていたので荷が少ないのは致し方ないが、ようやく消費税UPによる買い控えの傷も癒え、普段の買い気が戻ってきた所なのに荷が少ないとなると、小売店での販売は会社や社員の質によって変わってきてしまう。ここが家庭消費中心になりつつある花き業界の泣き所である。

 8月16日の日経新聞によると、消費税UPを消費者に転嫁出来なかった小さな企業は多いという。そしてセリ相場を見ていると、まさにその通りだと実感する。今後、財政の健全化の為にもう一段消費税が上がっても良いよう、我々花き業界、特に小売店の皆様方は現場でより人間力を発揮し、しっかりと消費税を転嫁し買い控えがおこらぬ接客や商品作りの工夫をしてもらいたいと思う。その工夫の一つに、アメリカやEUの専門店がやっているように、ドルやユーロのマークを金額の前につけない金額提示がある。ファッション衣料の店では、セレクトショップの店が最初から金額を全面に出さず、質を前面に出し、金額タグを胸元などに入れて展示してある。お客さんは質を吟味し、最後に金額を見て自分の予算内であればその商品を買う。そういう風に、まずブーケや一鉢そのものの品質を見てもらい、すなわち右脳で判断してもらい、最後にyenがない数値、これが金額だというのは何となく分かるので、予算内だったら買ってもらう。もう一つのやり方は、プロの小売店として、そして、プロの花屋さんの従業員としての接客である。

 日本では大学に進学する人が50%を切るなど、OECD加盟国の中で半分より下の教育投資の国になってしまっている。花き業界も半分位は高卒の人で占められているのではないか。私ども大田花きでは、学歴は問わないが学力は問う。特に高卒の人には、植物、政治経済、マーケティングの三つと、NHKラジオの続基礎英語レベルの英語は必須と言い渡しているが、入社10年もすると、自分自身に引け目が薄れてきて勉強をしない社員も出てくる。もう一度研修を受けさせ、仕事は取引先に役立つためにあることを教え自分を発展させる。

 セリ場を見ていると、ドレスダウンなら良いのだがあまりにもだらしない格好で仕入れに来ている小売店がいる。これでは駄目で、もう一度しっかり社会人として普通に仕事人生が送れるようにしなければならない。花き振興法が国会を通り国産の花が増えてくるようになるには、まだ数年かかる。それまでの間、天候により生産は大きく影響を受ける可能性があるだろう。トラックの運転手さんも不足しているから、市場により荷の偏在も目立つ。そういった中で、実質所得が上がっていない消費者を相手に花を買ってもらう努力をする。結局、人間的にも好かれる花屋さんの店員さんになってもらわないと花は売れてこない。もう一度、JFMAやJFTD学園、あるいは、フローレンスカレッジなど、社会に出てから再度学び直す。また、自分でも自習する。このことが必要ではないか。やはり、何をするにもまず教育。そこからもう一度始めなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 10:42

2014年8月11日

2025年の市場像

 7月に入り街角景気は大分持ち直してきたが、花の場合まだ前年に戻ったと言えず、過去5年でも平均値より下の単価水準で推移している。しかし、8月のお盆の需要期を境に回復基調になりつつあり、上半期の締めとして9月の堅調相場を維持したい。

 8月のお盆の需要期を見ても、輸送コストの高止まりや長距離運転手の不足などにより、市場間で荷が随分と偏ってきている。大田花きは東京の大田市場にあり、横浜から成田までの特に湾岸エリアは日本で最も物流施設が並んでいる所だから、帰り荷の心配はない。また、大田の青果市場は世界でも有数の青果市場であり、園芸地帯として青果が盛んな地帯は花の産地であるので、私ども大田市場花き部は実力以上の集荷が出来ていると言えるだろう。これから10年、2025年を考えると日本の人口は減る。日本では、首都圏のようにグローバルビジネスを標榜し、効率を追いかける商売を行うエリアがある。このような所は国内では3割の大都市圏でしかない。7割の地方都市は、もちろん食べていかなければならないので、目的を持った事業体として同じように優勝劣敗の効率を重んじているかというとそうとは限らない。存続することが目的で、何やら地縁、血縁の家族のような、ゲマインシャフト(共同体)の仕事場や仕事上のつながりであることが多い。こういう所には、一年で一回のお祭りのために生きていているといった人もいて文化が伝承される。花市場も、2025年までにこの地産地消、地域の繋がりを中心にした地場の花、地場の消費を介在する市場という形に持っていかなければならない。

 花市場が相手にする消費者の対象は30万~50万の人口になり、スモールシティ構想を元に自治体が合併しながら、その中で花き流通は花市場が核となって働く必要がある。出来ればその時、青果市場と隣接しているか、青果市場と合併して一つの会社になっているか、そんな姿が望ましい。また、こうした公設市場が少なくとも各県に一つ、物流網を考えて少子化の中で機能することが望ましい。大都市圏は、地方で養育してもらい、働ける年代になったら若い働き手を吸収しているので少子化の中でも人口が減らない。すなわち、東京に来て働いてもらっているという実態がある。だからこそ、地元の花市場をサポートする。地元の花市場が中心となり地産地消する中で、地元の産地が早く咲いたりして足りなくなったら大都市圏の市場が足りない分を補う。大都市圏の花市場は、そういった機関に徹することが必要だ。

 花の価格相場をつくる、新しく需要を生み出す新商品の開発、リテイル・サポート。これらを人、モノ、金、情報で効率よく行っていく。ビジネスとしての効率重視のグローバル卸売市場の姿はすでにオランダのフローラホランドにある。国産のみならず、輸出入品を取り扱う業者として、大都市圏の市場は今から機能に磨きをかけていくことだろう。

投稿者 磯村信夫 : 14:18

2014年8月 4日

あぶくまカットフラワー、生産開始

 台風12号の大雨で九州・四国ではお盆の花が前進開花しているので早めに買ってもらいたいとする生産者や市場に打撃を与えている。

 ここ2年ほど円安や中東のイスラム原理主義者との問題・ウクライナ問題等から、アメリカでシェールガスが本格的に採掘が始まったというのに、油代が高止まりし、生産者は経費増にあえいでいる。油の要らない時期に出荷して油代を稼ごうと、葬儀や盆に必要とされている白菊を中心に特に九州で生産が増えた。一輪菊の周年産地は、いずれも油の要らない時期に生産を増やしたが、結果として日本中で供給過剰となり安値が続いていた。いよいよ需要期も間近の8月となり、持ちの良い菊や小菊は常温でも一か月近く持つので、早めに仕入れをして定温庫の中でストックしておこうという時期が、今週の8月8日前までである。そこで台風の11号の動きが気になるところだが、天候のことなので仕方がない。早く走り去ってくれて、花店の仕入れの時は悪天候でもお盆の時には店頭が賑わうよう、すっきり晴れて欲しいものだ。

 福島市から一時間弱の所にある川俣町の山木屋地区。先日3日、道の駅川俣でトルコギキョウの産地として有名なあぶくまカットフラワーの出発式が行われた。日中は30度以上あっても、夜は20度以下に下がる。桜の開花も札幌地区と同じ時期だそうだ。また、福島原発被害により避難地域に指定されている。除染も終わり、あぶくまカットフラワーメンバー全員で、今年から以前と変わらぬ自主共撰共販での出荷が始まった。通勤農業をしながら山木屋地区で花を作る。一人もかける事なくもう一度農業をやろうと決意した方たちは、福島の農業者だけでなく、広く花き生産者たちに勇気を与えてくれている。復興庁としても、先陣を切って農業を始めたあぶくまカットフラワーの方たちの後に続いて欲しいと願っているだろう。

 この川俣町でも、小菊を新ふくしま農協花卉部会のススメに従って生産する方たちがいる。2011年、食べるものは風評被害で買い手がつかない物が多く、このままでは農業が出来ない所までいった。しかし、小菊は東北と都内の市場が中心に受け入れ態勢を敷き、それなりにお金にする事が出来た。こうして新ふくしま農協は、岩手や秋田県同様、夏の小菊の日本を代表する産地となっていった。余談だが、今年は前進開花して川俣町の生産者もお盆用のものが出てしまった人もいる。

 花の復興事業はまだまだ続く。あぶくまカットフラワーの方々はその場所に住めない為、パートさん達を雇えないからだ。小さなお子さんのいるご家庭の不安がある。その地域が子供たちへ、また孫たちへと、持続的に発展し続けて行かないと農業の発展は有り得ない。今後、あぶくまカットフラワーの皆様方と、どのようにすれば最も生産歩留まりのよいトルコギキョウを生産出荷出来るのか考えていきたいと思う。まだ数年は家族労働でやって行かざるを得ないだろう。その時、労力配分等からどのようにしていけばいいのか。限られた労働力の中で、ニーズやウォンツにフィットさせる花き生産をしないといけない。お金を取らないといけない。これを一緒に解決するのが、私たち市場の役目である。

投稿者 磯村信夫 : 16:35

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