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2014年9月29日

消費税10%時に軽減税率適用を

 お彼岸後の月末、仏花は売りにくいが、秋の切花や、秋冬の苗物は人気の時期となっている。先週末は、駅ナカ、駅周辺、そして、スーパーマーケットの売り場ではよく売れていたが、専門店はお彼岸後だから日曜日はしっかりお休みをしていた。休みたい気持ちはスーパーへ納品する花束加工業者にもあって、しかも「量販店は物日の時には強いが、普段はあまり売れない」という古い考えに捉われすぎており、消費者は量販店でワンストップショッピングをしたいのに、売り場ではもう季節の花が無くなっている等、消費者からあてにされる売り場になっていない所が多くある。これは、消費者のニーズをスーパーや納品業者である花束加工業者が捉えていない所に問題がある。

 「時代のニーズ」で専門店の例だが、輸入の大輪バラが売れにくくなっているのは、花が大きすぎて、最後まで咲かせるのにテクニックが必要なだけではない。一本立ちで花が大きいという21世紀最初の10年の需要から、庭や野にある花をそっと挿す、そういった趣が好ましいと消費者が感じるようになったのに、大輪バラは立派過ぎてしまい厳つい感じがしてしまうからだ。

 時代は絶えず新しくなる。それを捉えていかないと、消費に結びつかないわけだ。今も未来も、20世紀の昔の事象も一緒くたに今の花き業界に存在している。しかし、価格安では生産から販売まで手のかかる花きでは難しい。そうなると、値ごろ感がありながら、絶えず新しいデザインや素材、色や形状などを狙っていく必要がある。価格競争ではない所で勝負してゆく必要があるのだ。先週末から今週にかけて相場が崩れているのは、各売り場が消費者とズレてしまっているからだ、と断じてよい。

 さて、今最も重要な話題は、消費税率の10%への改訂を、安倍総理が決断されるか、先送りされるかということだろう。サービス業と家族で行っている生花店の70%は、消費税を転嫁出来ていない。また、結婚式場、葬儀場などに花きを納品する業者も、式場業者や斡旋業者にマージンを支払うが、消費税の転嫁が進んでいなかった。他にも要因があるが、消費税の転嫁が出来なかったことは、全ての量販店が外税表示にし、納品業者も転嫁が出来、2005年と違って青果は相場が堅調だったのに比べ、花き業界は相場安となって表れた。10%になった時、小売業は必ず消費税を転嫁するようにして欲しい。外税方式にしてやっていけば、お客様は必ず理解をしてくれる。

 また、もし10%に2015年10月から法律通りになるとすれば、消費税は社会福祉等に使用目的が限定されている税だから、所得の低い方たちは実質負担が重くなるということで、与党は10%時に軽減税率を適用することとした。有識者のアドバイスもあるが、何を軽減税率適用品目にするかどうかは、ヨーロッパを例に見ても線引きが大変難しい。私たち花き業界は、EUの約半分のドイツ、オランダ、フランス、イタリア、スペイン等の有力国が花きも軽減税率品目にしているので、中央卸売市場で扱っている肉、魚、青果、そして花きを対象品目にして頂くよう国に陳情をしている。ぜひとも10%に上がった時には花きも軽減税率の適用品目にしてもらいたい。また、消費税は我々業者が日本の消費者からお預かりして国に納付するものだから、小売店は必ず消費者や前の業者からお預かり頂き、国に納付して頂きたい。

投稿者 磯村信夫 : 15:24

2014年9月22日

生産減と運賃高で側道の流通

 本日のセリで最初に売った一輪菊の中に、葉っぱを見なければダリアと見間違えるかのようなものがあった。菊類の生産は、日本の切花の三分の一もある最も重要な品目だが、仏様の花に向かい過ぎており、現在改革が叫ばれている。団塊ジュニアが好みをリードする消費社会において彼らに菊を買ってもらうべく、多彩な花形や、仏花であれば、値ごろ感を訴えることが出来るもの等、育種から生産販売に至るまで、「ここ3年で菊も変わったなぁ」と言ってもらえるよう構造改革を行っていきたい。

 さて、このお彼岸においてもだが、切り花、鉢物とも花きの出荷量は増えない。それどころか、まだ1、2年は減る。減らさないように花き振興法にのっとった販売や生産を頑張るが、しかし、円安基調も手伝って出荷量は減るだろう。果菜類や軟弱野菜で元気な青果物も、煮物や漬物等を食べることが少なくなって、トータルの消費量は減っている。先進国では、農家戸数は全体の1%が平均値であるにもかかわらず、日本は3%あるのだが、高齢化で今後とも減っていく。そして、軒数は少なくなっても規模拡大を図ろうとはしているものの、減少に歯止めがかからない。食生活は絶えず変化し、そのスピードは今年の新米価格の低迷が示す通り、思いのほか早い。日本列島のように縦長の国は、果菜類、軟弱野菜、花き、特産の果物と畜産。この5品目を中心に農業の展開を図っていくべきである。その方向に日本農業は舵を取り、本来の農協の役割である生産部会は真実の組織なので、そこを中心に大規模化した法人と共に農業をやっていく。農業者と農協が自信を持ってその方向に行くまで、しばし、花の生産は減る。

 明るい未来が見えているから、全農県本部や農協は出荷先を限定する。自分たちの未来がどうあるべきかを産地は理解しているので、地政学的に異なった役割の卸売市場で、財務体質は無論のこと、理念を共有する市場に出荷先を絞る。このように市場集約をしている中において、運賃の高騰や運転手不足の話が持ち上がってきたのが今年の冬からであった。系統機関も、どこの卸売市場会社との取引が具体的にいくら利益をもたらしているか、個別の取引先ごとに年度ごとの損益を把握しているし、個別に販売目標を立てている。これは卸売会社も同様で、出荷者だけでなく、販売者ごとに個別の取引収支を出しているのは、経営上当たり前のことだろう。そうなると、距離によって運賃が違うことが明確になってくる。出荷量も増えないどころか減少気味だ。では、どうしたらいいのか。産地は今までその地域に出荷してきた。急にやめるとなると、消費者にも販売店にも迷惑がかかってしまう。しかし、大型車で一定距離以上の所で配送するとなれば、走りっぱなしというわけにはいかず、運転手を二人つけないといけない。鮮度が大切なのは分かるが、コストがかかり過ぎてしまうのだ。こう考えた全農県本部や大手農協は多い。今年は夏の異常天候で作柄が悪い上、遠距離で荷物の出荷を取りやめる県連が多くあったが、その県連と協業して出荷を代行した青果、花き業者もいくつか出てきた。かつては、産地市場の役割として、弘果弘前中央青果(株)のリンゴに代表されるように、卸売市場がJAの機能を代行することがあった。それに加えて、財務的にも信用がおけ、その系統組織と理念を同じくするものが、系統組織としてはペイしないエリアで機能を代行することを、今年から取り組み始めている。その品目は、果菜類や軟弱野菜だけでなく、切花では、菊やアルストロメリア、リンドウ、小菊等、量のまとまる品目において出てきたのが新しい補完的な流通だ。流通業者として、系統共販と、卸や流通業者が取り組むスタイルの流通が出てきたのである。今後とも増えていく可能性がある。

投稿者 磯村信夫 : 14:19

2014年9月15日

経営者不足と経営理念

 13日の土曜日、イオンモール幕張新都心にて、日本花き卸売市場協会 青年部会が、東北花き産地復興支援のイベントとして模擬ゼリを行った。セリは参加型の双方向コミュニケーションであるから、会場に立ち寄られた方々も目的外で参加し、花を買って頂いた。市場の大切さを知ってもらおうと、市場協会の青年部会が積極的に模擬ゼリでジョイントさせてもらっているが、いつも人気で市場という所はわくわくする所という印象を、今回も与えることが出来たと思う。

 花のイベントを積極的に行おうと花き業界が考えているのは、プロモーション活動をしなければ花の消費が下がってしまう、という危機感からである。花き振興法が国会で可決され、花き業界が元気を取り戻そうとしているが、生産者と花き専門店の高齢化、生産資材や油代の高騰、運送費の値上がりやトラック運転手の不足、さらには消費地における流通業者の人手不足等、目の前には困ったことだらけだ。そして、一番困っているのは、需給とも変動期にある花き業界の中での経営者不足だろう。「経営者」と名のつく人は、リーダーと代表者、そして設計者の、三つの役割を果たさなければならない。また、経営とは「人にしてもらう」ことであるので、取引先を含めた「巻き込む力」が必要である。20世紀の間はずっと良かったので何も変える必要がなかったが、21世紀に入って徐々に悪くなり、変えるきっかけを失ってしまった。従って、次世代の経営者を育てる環境に花き業界がなかったと言ってよい。このような状況の中で、入社10年以降の社員で、高い志を持ち、大きな仕事を任されて結果を出し、人間的にも磨かれた人は、どの業界にもそうはいないが、花き業界には、花を扱うゆえに大きな野望もあるわけではなく、「あの人についていきたい」という、経営者として出来る人を見つけるのが難しくなった。しかし、創業者が多い仲卸の中には、魅力的な経営人がいる。しかし、全体を見てみると決して経営者の人数は多くない。

 産地が市場集約し、卸売市場の役割が地政学的な条件により何通りかに分かれ、家庭消費は量販店の花となっていく中で、花き業界の生産から小売りまでの各社は、何を目指して仕事をしていくのか。このことが今、求められている。解は、社会は広いからたくさんある。ただ一途に、その会社がそこへ向かって努力を積み重ねることが出来るのか、である。結局、その花会社の経営理念を心底信じ、社員に理念実現の為、日々仕事をしてもらうことが重要だ。そのためには経営理念を作り、それを唱えて仕事をしていくことを進めたい。変動期には、都合不都合で言えば、不都合なことが多くある時だからである。以上のことは、年下だが師であるBE WEフラワー'Sの佐藤社長から教わったことである。

投稿者 磯村信夫 : 11:57

2014年9月 8日

水面下では再編が始まっている

 今日は中秋の名月。天気予報によると、東京では月が見えないようだが、日本各地ではお月見を楽しめるところも多いようだ。花屋さんでピンポン菊とススキのセットを是非とも買ってもらいたいものである。また、明日は重陽の節句だ。今年はお彼岸の小菊や菊、リンドウ等も前進開花しており、早めに量がまとまってきた。しかし、年末の出荷物まで、天候不順で不作気味であるのはお分かりの通り。7、8月と、個人消費が振るわなかったのも、増税が一因として挙げられるが、やはり異常気象の影響も大きいだろう。消費地だけでなく、産地ももろに影響を受けているので、小売店の皆様は消費者に上手く説明をしながら販売をして頂きたい。

 さて、2015年から横浜市中央卸売市場南部市場は、横浜駅そばの本場に事業を集約し、市場関連用地となる。ただし、花き市場は横浜市唯一の中央卸売市場であったので、地方卸売市場として残すことが決まっている。主として青果流通を扱う農経新聞によると、産地が出荷する市場を絞り込む時、中央市場から地方市場になった市場には出荷を控える傾向があるとしている。そうあってはならないと、秋田市の中央市場花き部は、青果部が取引の自由を求めて地方卸売市場になったのに対して、中央市場のままで実績を残している。しかし、横浜では当初の取扱計画を大幅に下回ってしまい、農水省の指導により、このまま市場を続けるのであれば、市ではなく県が認可する地方卸売市場に、ということになった。地方の市場の場合、その役割を果たせるのは地産地消型の地元市場で対象人口が30万~50万人の市場である。そして、やっかいなことに卸が仲卸業務も行うので、既にある仲卸と共存できればいいが、現実には競争する。それより大きい道州制の中心にある地域拠点市場は、公設や第三セクターの地方卸売市場であることが多いが、この規模の場合、仲卸と協業する。

 東京の中央卸売市場五つの花き部は、いずれも県境にあり、一都六県を広域首都圏と考えた時、東西南北に延びる交通の要所にあり、東京以外の県の花き市場にここ20年、甚大な影響を及ぼしてきた。道路網が発達した上に、運賃高、そして今後とも続くと思われる運転手不足。また、トラックの平均積載稼働率は往復の2WAYで38%弱という事実を考えても、帰り荷がとれ、交通に便利で、量を多く取り扱い、そして顧客が多く相場が安定する市場に、産地は出荷してくる。横浜は、大阪市よりも人口が多く、国内第二位の"市"であるにも関わらず、花市場の場合、海側が大田市場、東名側は世田谷・砧市場、そして、川崎北部市場があり、もはや、中核市場としてはやっていけない所まで追い込まれた。これを、どう地産地消型の地元市場として、産地と買参人に喜んでもらえる市場にしていくのか。もうあと半年。南部市場の花き業者の英知が求められている所である。

 人口が減少し、市場再編が余儀なくされる花き市場は多い。可能な限り、産地も買参も共通する青果市場に隣接し合併をしながら、規模を拡大し、人材を揃え、人件費も含めランニングコストを削減し、地域の為、消費者の為、地元の生産者の為に、今まで以上に役立つ市場になってもらいたい。それを決断するのは、本年度と来年度であるように思われる。

投稿者 磯村信夫 : 12:04

2014年9月 1日

輸入花は増えそうにない

 新学期の9月に入り、ススキがたくさん出荷されるようになってきた。待ちに待っていた秋だ。今年は9月8日がお月見で、9日が重陽の節句、翌週が敬老の日と、いよいよ本格的な需要期になってきた。8月の盆と同様、小菊・菊の前進開花で菊生産者共々、市場は頭を抱えている。西日本はもちろんのこと、高冷地の産地は日射量が足りず、秋菊は日長で開花するから早く咲いてしまうのはやむを得ない。どういう風に上手に使ってもらうか。定温庫があり、しっかりとした処理が出来る業者の人に、前から仕入れてもらえるようお願いをしている所である。菊類はそういうわけだが、2月の2回の大雪で被災し、ハウスの再建をしようとしている産地は、まだ生産は軌道に乗らない。そうなると、主にカーネーション、ユリ、トルコキキョウ、バラやスプレー菊等の主要品目が不足することになる。

 輸入品が少ないのは、1ドル80円の時代からすると円安で、3割もコストが上がり、輸入花の単価が横ばいなので、採算が合いにくいからだろうと思っていた。しかし、それも一因だが、実態はもっと根源的なものであった。先月、安倍総理は外遊でコロンビアを訪問した。コロンビアは政治的にも安定してきており、経済成長が著しい。首都ボゴタ周辺のカーネーションの面積はピークの3分の1になっている。それは、一次産業以外での経済成長が著しいためである。お隣のヒペリカムやバラの産地であるエクアドルも、花の生産面積はピークの半分になっている。アフリカのケニアでも、ヨーロッパ資本や、ヨーロッパ人が大農場をつくっていたが、どんどん現地化してきている。この地球で貧しい国があり、そこで花をつくってもらい、日本に輸入して販売する。その差益を輸入商社の方が得る。こういう時代ではなくなってきているということだ。一国の中で、貧しい人と富める人がいる。その比率の差はあるものの、世界中同じように経済的に発展しつつある。そうなると、日本に輸出してくれる国で増えていく可能性が高いのは花き生産の適地があるベトナムだけになってしまう。国内で今後とも花き生産量が減らない、増えていく可能性があるのは沖縄県、長崎県、そして秋田県である。また、道州制のエリアで見た時、地域で果樹をつくっている産地に花きが導入されると、新しい産地になってゆく。

 海外の産地に目をやって、ベトナムが増える可能性があるといっても、一朝一夕に質の高い菊やカーネーション、トルコキキョウ、バラをつくれるというわけではない。ここベトナムでも経済的に伸びていった時、いつまで農業に人手が回ってくるのか疑問でもある。もう一度、新しく出来た日本花輸出入協会の方たちと、国内需要を満たし、消費を拡大する為、実際に検討を重ね、卸売市場は協業する必要がある。実際、スプレー菊やカーネーションは、高品質の物を輸入商社の方々が市場に出荷することにより、市場の中では国産と輸入品が激しく競合したことは事実だ。しかし、買参人や消費者からすれば、競争の中でますます良くなるスプレー菊やカーネーションを見て、欲しいと思い、消費が拡大しているのだ。日本の消費者の懐は深くて広い。国産も輸入品も、消費者は良いものを待ち望んでいるのである。しかし、当面の間、輸入花の増加も厳しいものがある。

投稿者 磯村信夫 : 14:02

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