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2014年11月24日

花の良さを知ってもらう。花の名前を知ってもらう

 今年最後の三連休となり、東京では消費拡大の為のイベントが、小生が関わっているだけでも4カ所で展開された。酉の市からいい夫婦の日、勤労感謝の日もあった今回の週末・三連休はお天気に恵まれ、プレゼントされた花も各家庭で綺麗に飾られていることだろう。終わったら今度は花売り場で花を手にしてもらい次の消費に繋げたい。

 この度の消費税増税先送り判断は、花き業界にとっても大変有り難い。それは、今の花き業界は時代に合った商品の提供や売場づくりが決して上手くいっているとはいえないからだ。今年4月に消費税が上がってから、花では高齢者向けの需要が少なくなった。

 よく言われる消費税増税とアベノミクスであるが、私は切り離して考えている。アベノミクスが無ければ、失業率も企業投資も、株価も国際収支も、さらには観光産業も、プラスに向わず世界の先進国の平均的なレベルに近づこうとする諸活動が阻害されていたに違いない。ようやくそのアベノミクスによってデフレがストップしつつあり、株価も上がって景気がよくなろうとしていた時、約束だからと4月から消費税が上がってしまい、嗜好性の高い花は、数量が少なくても単価が上がることはなくなってしまった。その理由は、新しさを感じさせる売場や、今を感じさせる商品群の提供が少なく、せいぜい季節に合わせた商品作りしか出来ていなかったからだ。それは特に量販店の売り場において顕著である。消費者に欲しいという気持ちを起こさせることが出来なかったのだ。

 少子高齢化でGDPは縮むという論調があるが、私はそうは思わない。確かに、耐久消費財等余るものもあるし、胃袋が小さくなっているので食品も余るだろう。しかし、高齢者に向けた介護やアンチエイジングのサービス、化粧品、健康になる食べ物等、新たな需要が出てきた。私は64歳だが、父と母が亡くなっても仏壇は家にはない。実家には妹が住んでいて、普段は妹が仏様を守ってくれている。私みたいな60歳代はかなりいる。アメリカでは、50+(フィフティプラス)といって、50歳以上は生き方に違いが出てきている。そういった新しいニーズに花は使われているだろうか。デイケアの場所でのアレンジメントスクールや、定年後のガーデニング教室、あるいは市民農園の貸出等、時代に合ったモノやコトを供給出来ていないから、消費税が上がってこのような体たらくになっているのだ。

 12月に衆院選が行われるので、慌ただしい上にさらに慌ただしさがプラスされるようで、何も12月に......という気持ちも少しある。しかし、新年を迎えるにあたり、増税とアベノミクスを一緒くたにしないこと。また、少子高齢化であってもGDPを伸ばすことは可能であること。そして、人口においても、今後とも1億人を割らないよう出生率を確保し、女性だけでなく高齢者も生きがいを持って働けるようにすること。失われた20年を主に団塊ジュニアたちがしっかり取り戻せる経済政策を打ってほしいと思う。

 花き業界は、景気によって消費が増減するが、4~11月の体たらくは自助努力が足りなかった所為である。友達三世代に向けた的確な売場作り。商品開発を「モノ」と、お教室や生けこみ、学校での花育のような「コト」との2つの分野で行っていきたいと思う。また、2017年の4月から消費税が10%になるとしているので、それまでに沢山の消費者に花の良さを分かってもらえるようにしたい。この三連休中、それぞれのイベントをしていて、花の名前や品種についての質問がお客さんから出てこなかった。もっと興味を持ってもらい知ってもらう。そうしなければ、花の需要はヨーロッパのように高位平準化されてこない。さらに私たち花き業界は、国や都道府県から後押しをして頂きながら、業界自体で花のプロモーションを行っていきたいと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:26

2014年11月17日

NFD展示 凄い

 11月15日は七五三でお天気が良かった。車窓からだが、「友達三世代」で若夫婦とお孫さんに日本文化の伝承がきちんとされているご家族が多いのを見て嬉しく思った。この日、横浜みなとみらい展示場で開催されていたNFD(公益社団法人日本フラワーデザイナー協会:以下NFD)のイベント「日本フラワーデザイン大賞2014」へ足を運んだ。みなとみらいの駅に着くと、構内の多数の液晶パネルでNFDの祭典広告をしていたので、イベントが行われていることがすぐに分かった。キレイな画面がそこらじゅうにあるので、NFDの存在はもちろんのこと、花の消費宣伝にも一役買っていたのではないか。この画面を見ただけでイベントや花に興味が湧くだろうし、花活けを習ってみたいと思った人もいただろう。実際、パシフィコの場内は、部門ごとの分かりやすい展示や参加型のイベント等、和やかな雰囲気が漂っていた。デパートの催事場で行う花の展覧会は、人込みの中で観ているようで、堪能するという域まで達しない。しかし、今回のパシフィコでは、ほどよいスペースと通路を取っていたので、じっくりと鑑賞出来た。

 同時開催で、高校生のデザインコンテストも行われていた。スポーツがそうであるように、今の若者たちは中々優れている。自分を通じて上手に花の良さを引き出しており、造形的な美しさに思わず唸ってしまう作品もあった。公益社団法人としてのNFDは、アジアのフラワーデザイン団体と交流し、ネットワークを創りながら成長している。そして、グローバル社会の中で、フラワーアレンジメントの多様な造形美を構築しようとしている。花の団体で外国と共に成長しようとしているのは、他にJFTD(一般社団法人 日本花通信配達協会)があるだけだ。

 NFDの素晴らしさをもう一つご紹介しよう。NFDから申し出があり、私が会長を務める一般社団法人 日本花き卸売市場協会が少しお手伝いさせて頂いている事業がある。それは、盲学校の子供たちに花を触ってもらい、花の良さを知ってもらおうというものだ。花を触ったら怒られるかもしれないので、実際花がどうなっているか分からなかった人に、自分の心の中だけではなく、実際に活けてもらうことで楽しんでもらおうという事業である。こういうことを思いつくだけでも、同じ花の仕事をしていて、なんと素晴らしい方々だろうと感ずる。

 団塊ジュニアがフラワーデザイン学校を卒業するようになってから少し経つ。スクールとしては、生徒さん募集をどうしていくか。こういった大変な問題もNFDにはあるだろう。しかし、広島の花満さんがセラピストの方々と一緒に、花活けの体験事業を通して年配者一人一人に喜びを感じてもらっているように、この角度からの「お教室」というものがあるのではないかと思う。昨日、小学校のクラス会で恩師がお住まいの茅ヶ崎へ行ったが、男もリタイアした人たちがほとんどで、何か楽しみを探していた。ちょっとした仕事と、趣味や新しいことに対するチャレンジ。例えば、男の料理教室だけでなく、男性のフラワーアレンジメント、あるいは、華道教室、ガーデニング等もあるのではないかと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:25

2014年11月10日

雨予報が光射す

 東京は昨日、昼前は一時陽の射す時もあり、七五三でおじいちゃん、おばあちゃんに囲まれた子供たちが両親と晴着を着ていた。ちょうどこの世代は、団塊の世代、団塊ジュニア、団塊ジュニアの子供たちと、「友達三世代」といわれる人達である。千歳アメの袋を持っていなかったので少し不思議に思ったが、二か所の神社でそんな微笑ましい姿を見ることが出来た。

 10月、11月、12月の第3四半期に、鉢物類の売上が近年、期待したほどでもなくなってきている。それは、シンビジュームの鉢、ポインセチア、シクラメンの大型商品が、いずれも30年前に登場した商品だからだ。団塊世代の方達は毎年楽しみに買ってくださるが、団塊ジュニアの方々は、シクラメンならガーデンシクラメンで済まし、ポインセチアならピンクのプリンセチアがお好みで、このように、単価の張らないものを買っているのだ。どうすれば、団塊ジュニアの方々に気に入ってもらえる花きを提供出来るかが、今、業界のポイントになってきている。

 ところで、政令指定都市を除く地方自治体では、収入の30%が年金になっている。消費税の増税で、年金者の支出も増えている。消費税が5%から8%に上がり、1%は約3兆円の税収だから、9兆円ほど日本国内で消費税をプラスして集めた。働く年金者も各所多いと思うが、支出が3%分だけ増えた。地方の景気が今一つなのも、光熱費とガソリン代の値上がり、そして消費税UPが効いているのではないか。少なくとも、ムードを悪くしているのではないかと思う。そして、花はムードに影響され荷余り感がある。積極的に打って出ようとする小売店が少なく、平均単価が5~10%下がっているのは生産者にとっても痛い。

 したがって、花の消費動向はこの年金世代の高齢者の方だけに影響されてはならない。日本の人口の次のボリュームゾーンである団塊ジュニアの方々にも買ってもらえる商品を開発しよう。

 三世代そろって七五三をしている姿。いつも街で見る、おじいちゃん、おばあちゃんと遊んでいる子供たちの姿。これを見ていると、我々花き業界も、もっと買ってもらえる花を提供しなければならないと思う。流行が続く多肉植物以外にだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:49

2014年11月 3日

地域独特の園芸農業に貢献する

 皆様方の地域では、ハロウィーンのイベントは如何だっただろうか。昨日、日本橋高島屋で開催されている生け花草月流の展覧会へ足を運んだが、その会場でとある先生とハロウィーンのイベントの話題になった。その方はマンションにお住まいだが、近くの幼稚園から子供たちが来たという。また、近くの渋谷の交差点でも、コスプレ姿の若者たちが朝まで騒いで楽しそうだったので見に行った、ともおっしゃっていた。やはり、若い人たちの力は凄いものだと思う。そして、ハロウィーンのイベントで盛り上がった後、街は急にクリスマスの装いになっていく。しかし実際は、紅葉の秋本番であるから、アメリカと同様、日本でも、勤労感謝の日までは十二分に秋を楽しむ様相が必要だ。年末商品の生産が多い鉢物類は、クリスマスを早めに演出することもあるかもしれないが、切花類・食べ物も秋本番の演出をして楽しみたい。

 28日の火曜日、国賓として、オランダ王国国王ウィレム・アレキサンダー陛下及び同王妃陛下がいらっしゃった。歓迎会場では、大田市場でオランダから輸入された花と、日本の花を調達し装飾がなされた。総理ご夫妻主催の迎賓館での歓迎晩餐会では、オランダの象徴であるチューリップやアマリリス、ライラック等を中心とした花が、大きなオブジェとして飾られていたが、テーブルの上では、オレンジ、赤を中心にチューリップ、ダリアやアルストロメリア等のテーブル花が活けられていた。返礼として、ホテルオークラで開催された国王陛下主催のコンサート・レセプションでは、ドーダンツツジとアマリリス、アルストロメリア、そして、オランダから持ってこられた赤芍薬等、大きな正面のオブジェだけでなく、コンサート会場外の通路までスタンド花の形で花が活けられていた。また、会場では参加した多くの日本人が花の前で写真を撮っていた。オランダに関係する仕事をしている方々だから、ことさら「オランダ=花」のイメージを持っている所為かもしれない。その期待を裏切らないだけの花のおもてなしがあって、私も流石、と感じた。

 オランダは独立以来、歴史的に各州で独特の花の特産がある。確かに、オランダには大学、研究所、農業関連会社等、農業を進化させるための先端的なモデル地域があるが、それ以外にも、北からベルギー近く、また、ドイツに近い2012年に花博が開催されたフェンローまで、地方には独特の園芸生産がある。オランダの面積は九州とほぼ同じだが、それでも地方分権は行き届いており、産業もそれぞれの地域でバランスよく配分されている。文化・文明を宗教の観点からみると、確かに日本とヨーロッパは異なっているが、土地と民衆の統治の仕方によって形成された文化・文明の観点からみれば、中国やロシアのような公地公民の中央集権制ではなく、トップが間接的に土地と人民を統治する間接統治の封建制を近代までとってきたので、地方分権が最も好ましいようにヨーロッパと日本では考えられている部分は同じである。そこで、日本では東京一極集中から地方再生となる。オランダは、国土は決して広くはないが、その意味で、花き園芸ひとつとってみても大変優れた農業がオランダ各地にある。花市場は、企業体としてはフローラホランドとなり一つになっているが、支所の形で、花市場としては四カ所が元気に活動している。EUが大きくなり、量販店で花の扱う率が高まった為、分割して統治されないように会社としては一つになったのだ。しかし、地域色、あるいは、それぞれの役割を明確にした花市場は、残すべきところは残すと健在である。日本もそうしなければならない。

 封建制度というと、古臭く、全て価値がないように思われるかもしれないが、封建制度が布かれた平安期、また、封建制度によって如実に栄華がもたらされた江戸期を見てみれば、現在の政治体制通り、間接統治の在り方は素晴らしいことではないだろうか。グローバリゼーションに耐えうる日本の園芸農業を、今まで以上にどう発展させていくか。その中で、私ども卸売市場がどんな仕事を通じて園芸農業と地域の消費者に貢献できるか。これを真剣に考えなければならない。オランダ農業が成功しているのは、農家の子弟が企業家農業を行っているからである。植物工場を除いては、企業が園芸農業を行って成功したとする事例を私は知らない。一方で、農家が事業家になり、事業家農業を行って成功している所は、オランダをはじめ、日本でも多く知っている。農業は、難しいが先端的なやりがいのあるカッコいい商売であること。花屋さんや我々市場は、生き物相手で大変だがやりがいがあり、素敵な商売であること。このように、自分の仕事を自慢することからやっていきたいと、オランダ国王主催のパーティーで友人に語った。

投稿者 磯村信夫 : 16:22

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